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第三百話 という訳で、例の遺跡の問題点を調べてきた。どうやら魔素や魔力の消費が凄まじいらしい

連続更新中。おかげさまで三百話まで続きました。

楽しんでいただければ幸いです。



 以前あの遺跡を掃除しにいった時、天使ユーニスはあそこに財宝は無いと言った。いや、正確には無いと思うよといってたはずだ。相手はあの天使ユーニスだ、魔物に関してはいないと断言したのになぜ遺跡の価値については思うと言葉を濁したのか?


 おそらくあの遺跡に使われていた技術があまり歓迎できる類の物ではないからだろう。それが人類に有害であればあの場で即座にそう忠告しただろう。


 そう断言しなかった理由。つまり神界側にとって都合の悪い技術だったって事だ。不老不死とはいかないけど、普通の人間が長寿になる鍵みたいなものだしな。もっとも、混血で寿命が数百年になる世界でその技術にどの位の価値があるのかは知らない。


【それでも、人間にとっては大きすぎる力なんだよ~。やっぱりあなたはあの遺跡の技術をまた世界に戻しちゃったか~】


 俺が関わった以上、そのうち何とかしてるだろうけどね。いろいろ仕込んでたし。


【あんなプランターなんて仕込んでたって事は、元々あの遺跡を色々と調べるつもりだったんでしょ?】


 正解。小型化できれば冷蔵庫にも利用できるし、利用価値は高いと思ったんだけどね。下手すりゃ不老不死の引き金になりかねないとまでは考えなかった。


【はは~ん。奥さんの事ね~。大丈夫一応結婚できる年齢だよ】


 確認するのは怖いから細かい事は聞かない。


 神界にとってあの遺跡がいいものじゃないのも理解してるけど、あの程度の技術で何か問題はあるの? (ヴリル)が高いと寿命も延びるよね? そこまで問題なくない? 特にこの世界だと長寿の種族も多いんだしさ。


【あまり大規模にするとホントに人類が滅ぶ引き金になりかねないんだけどね~。あの遺跡はものすごく魔力や魔素を消費するの、しかも禍々しくない方の魔素しか消費しない。あそこに聖域を作ってたからその浄化された魔素を吸い上げてたんだろうけど、その前は遺跡に満ちてた魔素を吸い続けてた筈なんだよ。そろそろあの遺跡が劣化し始めるタイミングであなたの奥さんがあそこに一年の大部分を過ごすようになった】


 ……ヴィルナが衰弱してた理由はそれか!!


 十分な食事をとってなかったのも原因だけど、あの遺跡に魔力を食われてたのか。それが原因で出会った時はあんな状況だったと……。辻褄はあう。


【その世界は魔素で満ちてるから維持できてるんだよ。でもあの遺跡の技術をそのままで無制限に使い続けると……】


 世界の魔素が枯渇するって事か。


 あの洞窟はよく無事だったな。


【一定範囲内の魔素や魔力が尽きたら遺跡は活動を停止するからね。千年も稼働できたのはあの洞窟が割と特殊な状況にあったから。それでもそろそろ限界の筈だったんだよ】


 運命の歯車じゃないけど、色々な偶然が重なった結果か。


 しかし、それだとなぜ王都の倉庫は普通に稼働できてるんだ?


【その技術の進化系だからかな? 能力的にはかなり劣るけど魔素や魔力の消費はかなり少ないよ】


 という事はあの遺跡の技術を改良する必要があるのか。


 そのまま使うのは危険だったと教えないといけないな。スティーブンだとその位はすぐに気が付きそうだけどな。


【寿命が延びる事より、魔素とか魔力の消費が問題だったからその方がいいかも。あの技術で作った建物の中に人がいたらどうなると思う?】


 ……魔力を吸いつくされて寿命が延びるどころか縮むのか!!


 ヴィルナはよく無事だったな。


【聖魔族は魔力が結構高いからね。それに聖域も作っていたし、色々偶然が重なった結果だね。あ、あの遺跡を調べる位は大丈夫だよ】


 もしかしてある程度調べ終わったらあの遺跡は破壊した方がいいのか?


 禍々しい魔素は残るっぽいけどそれも聖域で浄化されてるし、最終的にはあの辺りの魔力や魔素が枯渇するだろ?


【それが正解かな~。だからあの技術は廃れて今王都の倉庫に使われてる技術が開発されたの。流石にドワーフも気が付くしね】


 と、いう事はイドゥベルガもすぐに気が付くだろう。改良できるかどうかまでは分からないけど。


【できると思うよ。ドワーフが一族の誰かを里から出すって事は、一定水準に達してるって判断したからだし】


 魔法学校に通わせてるのに?


【それでも、基本はすべて叩き込んでるよ? あの遺跡を見てすぐにどんな技術が使われているか見抜いたでしょ?】


 確かに。俺自身がドワーフという種族の能力を低く見積もっていた可能性はある。


 あのスティーブンが俺の不興を買うとわかっていて彼女を学校から連れ出してきた理由が分かったぜ。旧レミジオ子爵領にいるドワーフよりもイドゥベルガの方が能力が高いと判断した訳だ。


 あの件もあれだけ金貨をばら撒かれるとこれ以上何かを追及するのは野暮だしな。ばら撒かれた金貨で色々と助かった生徒もいるみたいだし……。


【常識外れの人が多いと大変だね】


 まったくだ。


【さらっと答えた!! 一番常識外れの筈なのに~!!】


 俺はまだ常識の範囲内だぞ?


【普通の人は賢者だとか聖者だとか呼ばれないんだよ? 特に聖者の方はいい得て妙だと思うよ。あなたはあまりにもいろんな物に執着が無さすぎるから。家族と仲間以外にはね】


 金なんて稼げばいいし、二度と手に入らない物でもなければ壊れても気にしないよ?


 命に関しては大切にしないといけないと思うし、家族や仲間は絶対に守ってみせる。俺が地獄を見る状況でも、俺だけが痛い目を見て済むんだったらそれでいい。


【本当に勇者の鑑だね。あの力に選ばれたのは偶然じゃないと思うよ。選ばれるべくして選ばれたのかな?】


 この力は確かに便利なんだけどさ、恩恵に預かってるのは俺よりそっちの方が多いよね?


 いろんな世界を救う手段が増えた訳だし。


【そこは否定しないよ。ワールドリンカーの力を持つ誰かが神界の味方に付くなんて想定すらしてなかったし】


 もう一人は?


【絶対に協力してくれないと思う。あの存在は自分の決めた基準でしか動かないから】


 多くの人を救う力なのにね。


 悪用すると相当に厄介な力ではあるけど。


【そうだね。他の世界を征服したり破滅させる為に使えばこれ以上に無い力だよ。その意味でもあなたって存在はかなり異常なの。ひとというより神に近い思考をするし、どちらかといえば私たちよりの存在に近いの】


 俺は人だよね?


【今のところかろうじて人かな? はっきり言うとあなたはとんでもない力を得る資格を有してるの。その力に手を伸ばした時、割と簡単に人じゃなくなるよ】


 ……魔法剣士の力?


【そこまで知ってたの!! あなた、ほんとうに界渡り(ワールドブレーカー)じゃないのよね?】


 魔法少女シリーズで割とおなじみの存在なんだ。


 確かにアレは人の姿をした神だね、というか、魔法剣士って界渡り(ワールドブレーカー)の卵でしょ?


界渡り(ワールドブレーカー)になれる人は少ないけどね。で、魔法剣士の力を得るものは持ってるの?】


 持ってないよ。


 アルティメットブレイブの力だけで十分だと思ってるしさ。ヴィルナとの間に子供も欲しいし、魔法剣士の力に手を伸ばす可能性は低いよ。


【そのうち手を伸ばしそうだけどね。でも、あなただったら神界も歓迎すると思うよ】


 こっちの世界を平和にしたら、そっちに遊びに行くのも考えるけどね。


 とりあえずあの遺跡の件は何とかするから心配しなくてもいいよ。


【ありがとう。あなたなら分かってくれると思ってたの】


 世界を平和にしようとしてる俺が世界を破滅に導く技術を蘇らせたら本末転倒だしね。


 この世界を平和にした後の百年後も、この世界が平和であってほしいとおもってるよ。


【ホントに人とは思えないよね。あなたにだったらその世界を任せてもいいと思うよ】


 世界全部を背負い込めるほど俺は強くないさ。


 今はただ、伸ばせるところまで手を伸ばすだけだ。そこに奴がいるんだろうけどね……。


【それは答えられないけど……。それじゃあそろそろ行くね】


 通信が切れたか。


 このシステムも不思議なんだよな。あの的確なツッコミのタイミングから見て緊急用の通信手段でもあるんだろうか?


 そのシステムをツッコミの為だけに使われるのもアレだけどね。


◇◇◇


「という訳で、例の遺跡の問題点を調べてきた。どうやら魔素や魔力の消費が凄まじいらしい」


「みたいだな。イドゥベルガから貰った報告書でもその点が指摘されていた。能力を限定して再現する術式のおまけ付きでな」


「本当にドワーフ凄いな。いや、イドゥベルガが優秀なだけかもしれないのか」


「その通りだ。流石に族長の娘、英才教育を施されているんだろう」


 あの歳であそこまで遺跡に詳しい人間なんていないだろうしな。


 得難い人材であることは間違いない。


「それで、あの遺跡の技術は役に立ちそうなのか?」


「食糧庫に必要な能力だけ残して魔力の消費を最低限にした。それでも大きさ次第で年に大き目の魔石をひとつ使うんだが」


「食糧の破棄率と比較してどうかって話だな。小型の冷蔵庫に組み込むって手は?」


「……やっぱりお前は異常だ。どうしてそれを簡単に思いつく。確かにそれだとそこまで大掛かりにならないし、魔力の消費も最低限だ」


 元々ある能力に少し足すだけだからな。


 冷却能力もあるんだったら本当に食糧の破棄は少なくなる筈だ。


「あの遺跡の件はこれで解決だな。で、神託じゃないけど向こうの意見だとあの遺跡は壊した方がいいって話だ」


「ああ、あのままだと魔力を食い続けるからな。その解決策もイドゥベルガが提案してきた。あいつはうちの商会に引き抜けないか検討中だ」


「ギュンティ男爵が手放すか?」


「ドワーフたちを説得する材料はある。先日お前が売ってくれたからな」


「あのウイスキーを使うのか」


「アレは割と痛い出費だったが、あいつらの説得にこれ以上の物は無い」


 そりゃね。でも、あそこもウイスキーを造り始めてるし俺が毎年提供する分もある。簡単に引き抜けるとは思わないけどね。


「イドゥベルガは卒業まであと四年ある。かなり気の長い話になるぞ」


「他のドワーフを先に数名引き抜く予定だ。あの男爵領にも十分な投資をする」


「引き抜きはほぼ確定事項か」


「俺が抱えているドワーフとこれほど差があるとは思わなかった。あの貴族領をあの形で取り込んでくれたお前に感謝するぜ」


 なるほど。ひよっこ呼ばわりしていたのは本当だったって事か。


 これで完全に遺跡の問題は解決した。後は王都の動向に注視して、攻め込むタイミングを計ればいい。


 それももう遠くない先の話だろうな。




読んでいただきましてありがとうございます。

誤字報告ありがとうございます。とても助かっています。

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