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第二百九十七話 長かった冬休みも終わり今日から新学期だ。今、王都関係で色々とこの国は変わり始めている。しかし、そんな状況はここで学ぶことに何ら問題は無い

連続更新中。

楽しんでいただければ幸いです。



 冬休みが明けて魔法学校の授業が再開された。


 流石に王都の情報を入手している生徒も多く、今この国がどうなっているのか心配している生徒も少なくない。そりゃそうだよな。確実にここ数ヶ月でこの国の体制は大きく変わる。カロンドロ男爵を王として新しい国として時を刻み始めるんだから。


「長かった冬休みも終わり今日から新学期だ。今、王都関係で色々とこの国は変わり始めている。しかし、そんな状況はここで学ぶことに何ら問題は無い」


 学生の本分は勉強だからね。


「心配なんてしなくても春になる頃にはいろいろと決着がついてる筈だ」


「流石にそれは無理じゃないかな? 流石に王都の近くの貴族領の子たちは気が気じゃないだろうし」


「こっち陣営に来なかった貴族が壊滅したら話は終わりだ。ここにいる生徒たちの領地とは離れてるし、そこまで敵が侵攻する事はないよ」


 邪魔者が壊滅した時点でこっちから攻め込むしな。


 死ぬのが愚か者の領主じゃなくて、その領地を守る筈の兵なのがやるせないけどね。


「ここにいる以上どうしようもないからね~。おとなしく授業を受けて貰うしかないかな?」


「将来自分の住む領地で何かあった時、人を、街を、領地を守れる力を身につける為に皆はここにいる。だから今は我慢してここでいろいろ学ぶことだ」


「はい。理事長先生のありがた~いお言葉でした。一番飛び出していきそうな人に言われても説得力に欠けるけどね~」


 仕方ないだろ。それが俺の仕事なんだから。


 本心を言えばさ、何処の陣営の兵であろうと見殺しなんてしたくねえよ。その切っ先がこっちに向かう可能性もある、いずれこちらと戦いが起こる可能性もゼロじゃない。窮鼠猫を噛むじゃないけど、自暴自棄になって戦いを挑んでくる事もあるらしいしな。


 俺や雷牙(らいが)の力は誰かを守る力。別に魔物を討伐して命を奪うだけの力じゃないんだ。魔法少女物みたいに敵を助ける展開は少ないけどね。


「そうそう、今年度の最優秀生徒が決まったら奨学金とかの授与式もあるからな。後、問題を多く起こしていてもそれを差し引いて評価できる生徒の場合はちゃんと表彰する。反省文の枚数も評価対象だけど、それ以上の活躍をしてたらきっちり報酬を渡すからね」


「ひゃっほぉ~♪ 逆転劇来るか? 来ちゃうのかな? このアデライデさんはイベントの度に大活躍だったしね」


「それが許されるんだったら私だって~。わたくしことアシスタント担当のルドーネも表彰に値すると思うんですよ~」


「……流石にお前らはどうかと思うぞ。反省文タイトルホルダー」


 隣にいた学友の的確で冷静なツッコミがさえてるね。


 周りの生徒もほぼ全員頷いてるし。


「登校した日数より反省文の枚数の方が多いなんてよくある事だよ~」


 ねえよ。どうやったら一日平均で一回以上の問題を起こせるんだよ。最近は反省文を書かなくていい様にずいぶん甘い判断されてるのに。


 お前らが問題を起こす度に担任の方が頭を抱えてるんだぞ。本来だと担任の給料の査定にも影響があるから。あいつらを評価しないといけないのは間違いないけどね。


「四月になったら上級生になるんだ。後輩に見せて恥ずかしくない振る舞いをするようにな」


「はい。それじゃあこれで朝礼おしまい。二時間目から普通の授業だから真面目に受けるように~」


「面倒だな……」


 そこ、おもってても口に出さない。


 まったく、何しに学校に来てると思ってるんだよ。面倒なのは否定しないけどね。


◇◇◇


 午前中の授業が終わって昼食の時間になった。生徒たちとの約束通り、今日からデザートの種類が大幅に増えている。下の方に増設されたボタンに気が付くかどうかだけど。


「珍しいね、今日は理事長先生学食なんだ~。いろいろメニューが増えてるけど、それ関係?」


「まあね。シルキー教徒対策に卵サンドとかが増えてるぞ。美味しいバージョンと原典バージョンの両方。これに関しては購買でも売ってるけど」


「流石に例の蟹料理は置いてないんだね」


「アレは置くといろいろ問題が出るからな。司教か司祭クラスしか滅多に食べられないんだろ?」


「情報だと独占してる感じだよね~。権力ってそういうものでしょ?」


 食べ物とか装飾品とかで他に差をつけたがるのはよくある事なんだよね。俺も晩餐会の時とかに貴族対策でよくやるけど。


 蟹料理は原材料費も結構高いからここに置くには問題があるんだよな。材料が寿買(じゅかい)だのみなのも原因だし。


「ただ、料理の数は増やしたけど、やっぱり人気なのは揚げ物系か。主に食べてるのは男子生徒だけど」


(ヴリル)が高いから太らないってのはずるいよね。あれだけ食べてるのに全然太らないんだよ?」


「その代わり燃費が悪くなるだろ。下手すりゃ二時間目の休憩に購買に走る奴も多いのに」


「朝、購買で色々買ってくる生徒はいるみたいだね。二時間目とかの休憩時間って短いし」


「買いそびれる奴もいるだろうしな。さて、俺は無難に唐揚げ定食にするか」


 やっぱりこれが鉄板だよな。


 でも、無難なメニューだからこそ定期的に味を確認する必要がある。下味をつける調味料は渡してる訳だし、後は揚げ方とか肉に品質の問題だけどね。


「ああっ!! デザートが増えてる!!」


「ほんとだ。ミニケーキだけじゃなくて、いろんなケーキがメニューに入ってる」


「この値段って事は普通のサイズだよね? ……メインを減らしてデザートを選ぶ?」


「パスタセットとショートケーキを頼んじゃった!!」


 今日以降、券売機前で相当に葛藤するだろうね。美味しいデザートは高カロリー。(ヴリル)の高い男子生徒じゃあるまいし、アレを追加でもう一品なんてしてたらどんなに遅くてもひと月ほどでびっくりする結果が待ってるぞ。


「おいし~っ!! ナニコレ? 忘年会の時に貰ったケーキと同レベル……」


「明日から我慢するから、今日はちょっとだけ……」


「売り切れ早い!! これ、十個ずつ位しか用意されてなくない?」


 おしい、正確には十二個だ。ワンホールを六分割してるからね。だから結構ボリュームがあるぞ。


「明日から争奪戦だね。どんなレベルのケーキなの?」


「うちでお茶請けとかでいつも出してるケーキと同レベル? クリームパイとかも同じレベルだね」


「……それ、学食で置いていい料理じゃないでしょ? 商人ギルドが黙ってないんじゃないの?」


「アクアリウム育成セットを渡したら二つ返事で了承してくれたぞ。飼育法とか餌とか水槽の清掃方法まで含めて全部渡したし」


 これで今年の春先からアクアリウムも流行るだろ。


 南方の川とかで見つかる魚のリストと飼育法も渡したしね。こういった件では天使ユーニスにはいつもお世話になってるよな。


「幾らでも渡せる知識があるってのは凄いね。それ儲かるの?」


「今のインコと同レベル? 下手するとそれ以上」


「それ、凄くない? インコもすっごいよ? あんなの飼える人なんてほんとに大商会の頭とか大貴族だよ?」


 その位でないと価値が下がるしね。


 アクアリウムは魚に登録証を付けられないからいろいろ苦労したんだけど、特殊な条件でないと飼育できないから問題ない筈。この辺りには大きな川もないしな。


「アクアリウムも嵌ると凄いんだ。水槽に入れる水草や流木、石や砂、魚以外にも金をかける部分がいくらでもある。水質を安定させるための装置とか酸素を供給する装置とかいろんな魔導具が必要だしな」


 下手すりゃインコとかより初期設置費用が必要な位だ。男爵レベルまで行くといい勝負だろうけど、アクアリウムであそこまでやると水族館だよね。


 それに海老とかクラゲとか魚以外のアクアリウムもある。可能性は無限だし、飼育に必要な水草とかその他のリスト迄渡してるからどこまで手を広げるかは商人ギルド次第だ。もうすでに半分ペットショップみたいなギルドだけど。


「それ、大変じゃないの?」


「大変だよ。生き物を飼うって事は何だって大変なんだ。その辺りも理解してほしいんだけどね」


「理解してると思うよ。インコの世話係なんて毎日命懸けだと思うし」


「値段が値段だしな。うっかり殺しましたで済む話じゃないだろう」


 寛大な主人だったら大丈夫だろうけどね。


 ペット用の薬もかなり普及し始めてるし、獣医じゃないけどペットの生態に詳しい専門家も生まれている。といっても、俺が渡した資料を基に知識を再構築した連中だけどな。


「ペットの寿命とかも詳しく教えられているから購入する時の目安になるしね~。看取る所までがペットの飼育だっけ?」


「飼う以上はその責任が伴うって事さ。無責任にそこらに放たれたらたまらない」


 遺伝子汚染じゃないけど、いろいろ問題が発生するだろうしな。


「売り切れ……。そんな」


「明日は授業終了時にダッシュね」


「券売機に何か書いてある。デザートの販売は四時限目開始後から? 先注文の裏ワザが使えない!!」


 三時限目ダッシュは禁止だぜ。


 正々堂々と勝負しろよ。


「という訳で問題は無い。明日からもう少し数は増やすし、買いやすくはするつもりだ」


「後は値段だね。ひとつ五シェルは高くない?」


「アレでも相当頑張った値段設定だ。あれ以上安いと何個も頼む奴が出てくるだろうしな」


「ケーキと御飯で十シェルだしね~。毎日だと結構キツイよ?」


「大貴族連中は問題ないし、他の生徒も今まで稼いだ賞金があるだろ?」


「お金が入って使わずに貯めこめる生徒がどれくらいいるかな~? しかもほぼ毎月イベントがあるんだよ?」


 チャージ分は使いこめない筈。それで食事はできるだろう?


「使い切れる額じゃない筈だが?」


「購買でもいろいろ売ってるからね。シャンプーとか化粧品とかに手を出すとすぐだよ?」


 そっちか。確かに購買に注文すれば色々購入可能だ。わざわざ街に行かなくて済むシステムを逆手に取られたか。


「百五十シェルは残るだろ? それ以下は学食でしか利用できないし」


「だから、その子たちはケーキ類を諦めてるんじゃないかな?」


「次の大会で高得点獲るまでの我慢だな。食事を抜いてなけりゃいい」


 最悪朝食と晩飯は宿舎で出るから最低限の食事は出来るだろうけどね。


 ……学生たちの購入欲を甘く見てたな。


 それに関してはお金の使い方をもう少し学ばないとダメか。



読んでいただきましてありがとうございます。

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