第二百九十四話 はい、新しいおうちの完成!! ちょっと大き過ぎ感はあるけど、これからは人を招く機会も増えるだろうし客間とか大広間を作ったから仕方ないか。ちゃんとシャルの部屋もあるからね
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楽しんでいただければ幸いです。
さあ、今日は記念すべき引っ越しの日だ!! まずアイテムボックスから屋敷を選択、そして移動先を指定するけど当然地下にある部分は入らないから一時的に地上に地下部分まで全部上に出てくるんだよな。
で、その後は新しく建てた家の方で特殊な操作をすると、空間を削り取るように地下部分が地面に沈み込んでいく……。最終的に屋敷が現在の位置に空間固定されるから地盤が軟弱だろうと状態なんて関係なしにその場に固定される。万が一この辺りで液状化が起こっても欠片も影響が無いってのも凄いよね。
「はい、新しいおうちの完成!! ちょっと大き過ぎ感はあるけど、これからは人を招く機会も増えるだろうし客間とか大広間を作ったから仕方ないか。ちゃんとシャルの部屋もあるからね」
「わ~い!! おっきなおうちだ~♪」
「流石にこの屋敷と比べると元の家が小さく感じるのじゃ。ちと大きすぎな気がするのじゃが、ソウマの言うとおり誰かを招く機会も増えるじゃろうし、今のソウマであればこの位の屋敷の方がふさわしいのかもしれんの」
風呂も大きめにしたし、厨房は今までも大きかったけど更にその数倍のデカさだ。晩餐会の料理の準備でも問題の無いレベルだぜ。
子供部屋は全部で五つ。そこまで子供が増えない可能性はあるけど、それ以上に子供を授かった時にはまた改築すりゃいいかなとおもってる。どっちにしろかなり先の話だしさ。
「今度から和室もあるから、この部屋というか区画に入る時はここで靴を脱いでスリッパに履き替えるようになるよ。俺の私室もこの区画だけど」
「わらわの私室と離れておるのは何か含むところがあるんじゃろうか?」
「別に無いよ。家全体を和風にしてもよかったんだけど、ヴィルナとかは今までと同じ方がいいだろ? 私室は全員二階で、そこにもスリッパに履き替える所があるから別に離れてる訳じゃないしさ」
「なるほど、こういう造りにしておるのか。前の家よりも部屋の距離は近い様じゃな」
離す理由もないしね。
子供部屋とは少し距離があるけど、親の部屋と近くない方がいい時もあるだろうし。その辺りは難しいだろう。
「ここがシャルの部屋だよ~。どんなぬいぐるみがいいかな? 動物?」
「あのね、おっきな動物のぬいぐるみ~」
「動物か。……鳥なんかどうかな? 超巨大なスズメのぬいぐるみ~」
「うわ~。すっご~い!! おっきくてまんまるな鳥さんだ~」
冬場のもこもこスズメバージョン。ちょっと色が地味だけど可愛くていいよね。
「大きいにもほどがあるのじゃ。わらわと同じくらいの大きさのぬいぐるみというのはどうなのじゃ? それに色が地味すぎなのじゃが」
「でも触り心地とか、抱き心地は最高だよ? ホントにモフモフだし」
「……わらわも嫌いではないのじゃ」
「ヴィルナの分も出しておくか。スズメの他に文鳥とセキセイインコバージョンもあるみたいだけどどれがいい?」
頭が黄色で体が黄緑の丸々としたデザインのセキセイインコと真っ白な文鳥のぬいぐるみ。
シャルなんて眼を輝かせて新しく出した二つのぬいぐるみを見つめてるよ。ヴィルナも手触りとかを楽しんでるみたいだね。
「わらわはこっちの白い鳥の方がいいのじゃ。顔が愛くるしくていいのじゃ」
「シャルはこっちのインコさん。……スズメさんは?」
「スズメもいいよ。じゃあシャルはスズメとインコ、ヴィルナが文鳥だね」
「わ~い♪ おと~さん、ありがとう!!」
「ありがとうなのじゃ」
うんうん、というかヴィルナがぬいぐるみを欲しがるのが意外だったな。
意外に可愛い物好きなのは知ってたけどさ。
「後はそれぞれの部屋の飾り付けかな? ヴィルナが欲しいって言ってた物とかは渡してあるけど」
「うむ。わらわはひとりで部屋を飾り付けるのでここはソウマに任せるのじゃ。シャル、ソウマに必要な物は言うんじゃぞ」
「は~い♪」
本当に素直でいい子だよな。猫の時もあまり手のかからない子だったけど……。たぶんずっと寝てたのは人化する為の力を蓄えてたんだろうね。で、ヴィルナが調べてた時に人化が始まったと……。
タイミングがかなり忙しい今だったのは正直困ったんだけど、別にそれはシャルのせいじゃないしね。
「ベッドはここ、布団とかマクラはこのデザインでいいかな? あと今の時期だと毛布もいるか」
「かわい~。お布団は軽くてふわふわ~。毛布はすっごくきもちいい」
「かなりいいものを用意したからね。汚れた時はすぐに言うんだよ。綺麗にするのはすぐだから」
泥とかで汚すかもしれないし、先に言っておけば汚した時に隠したりしないだろう。
シャルが使うのはかなりいい布団類だけど、それでも別に代わりが無い訳じゃないんだしさ。汚した事を気にしてシャルが変に気まずい思いをするよりマシだ。
「後は机と本棚、あとこれはおもちゃ箱だよ」
「おもちゃ箱?」
「これから玩具も増えると思うから遊んだらここに仕舞っておくこと。ぬいぐるみとかは部屋に置きっぱなしでもいいからさ」
「今はおもちゃが無いよ?」
「何か欲しいものがあったら言ってくれれば出せるんだけどね。お人形とかぬいぐるみ系がいいかな? 積み木とかパズルとか色々あるよ」
木製の動物パズルとか積み木とかだるま落としとか色々ね。
何を欲しがるか分かんないからとりあえずひと通り出してみる。おおっ、シャルが目を輝かせて玩具の山を見つめてる!! ネコの時はホントに玩具に興味なんて示さなかったのに。
「おもちゃがこんなにっ!! いいの?」
「ああ。全部シャルのだから、遊んだ後はあそこのおもちゃ箱に仕舞うんだよ」
「は~い」
早速木製のやや大きめの車とか積み木で遊び始めた。って、積み木を積んだところに車を突っ込ませるのはヤバいだろ。
「お昼ご飯になったら呼びに来るから、その時は遊ぶのをやめるんだよ」
「わかった~♪」
人の姿になったから急に興味がわいたのかなと思いもしたけど、なんとなく違和感。
ぬいぐるみの時は本当に喜んでいたけど、玩具に関してはそうでもないような印象なんだよな。一応目は輝かせてたけど、もしかして無理して楽しそうにしてる?
このまま少し様子を見て、本当に無理をしているんだったらその事を話してみよう。
◇◇◇
とりあえず無事に引っ越しが終わったけど、何の連絡もしていないのにスティーブンや雷牙達が家を訪ねてきた。
うん、何の連絡もせずにこんな物が俺の家の庭に建ってたらそりゃ押しかけてくるよな。
「という訳で新しい家族……、というか今までも家族だったけど人の姿になったシャルだ」
「まったく。お前は目を放すといろいろやらかすが、猫が精霊憑きだった訳か。実害はないのか?」
「天使の話だと大丈夫って事だね。今まで通り家族の一員として暮らす。というか、娘として育てるから手を出すと容赦はしないよ?」
「お前の娘か……。色々と微妙な立場になると思うが、お前がそういう以上こっちは口出しをしない」
色々問題があるのは分かってるよ。俺に近付くにはシャルと仲良くなるのはかなりの近道だしな。
シャルがどのくらい警戒心が強いかのか分からないけど、猫形態の時に会ってた人には警戒しないみたいだね。
「いきなり娘が出来た気分はどうだ? 見た感じ完全に甘やかしているようだが」
「やっぱり娘っていいよな~。シャルの為に子供部屋が必要なんでこの屋敷を建てた訳だし」
「親馬鹿だ……。この子に手を出す奴は命懸けだな」
「毛の先ほどの傷でもつけようものならどれほどの報復が来るかわからん。恐ろしいくらいだ」
そこまでしないよ。……いや、相応以上の報復はするかな?
流石にヴィルナやシャルに手を出したらただじゃ済ませる気はないし。
「屋敷に関しての手続きなどはこっちでしておこう。お前の家とその敷地内は一応お前の領地として独立しているんだが」
「それ初耳だぞ。っていうか、そうなってるのか?」
「周りの家なんかが無くなったのがおかしいと思わなかったのか? 区画整理の一環だが、お前の領地を確保するためだぞ」
道理で庭にしては馬鹿に広い敷地が貰えてると思ったんだよ。
貴族の屋敷……、といっても十分な大きさの家になったしな。
「家とお前の娘の件はそれでいいだろう。王都方面で動きがあった」
「動き?」
「内乱だ。王都内の兵が塩喰いの件で王家を完全に見限った。王都の城壁や城門を破壊して民を他の貴族領に逃がし始めたという話なんだが」
「完全に崩壊が始まったのか。住民は無事に逃げられてるのか?」
「軍用の馬車なんかを全部持ち出して、それで逃がしてるって話だ。王都に残った財宝や食料も運び出してる」
そこまでやると火事場泥棒的で好きじゃないんだがな。
餓えた民を逃がすだけだったらそれだけでいいだろ?
「今状況を確認している。すまないが明日、カロンドロの屋敷に来て貰いたい。今日中に向こうの情報は把握する」
「頼んだ。……決戦が近そうだな」
「黒龍種アスタロト辺りとの戦いは近いかもしれん。流石に黒幕はまだ出てこないがな」
いずれ出てくるだろうね。
あいつは王城のどこにいるんだ? おそらくそこが最終決戦の舞台になるだろう。
「では今日はこれでな。ここだと広くて色々話し合いとかしやすい。カロンドロぬきの時は今度からここでやるとしないか?」
「おお、それはいいな。エヴァもシャルを見たら驚くだろうぜ」
そりゃみんな驚くだろうね。
しかし王都の状況は良くないな。
本当に今月が王家の最後の月になる可能性まであるぞ。
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