第二百七十九話 お前、ダリアの身体で好き勝手に……。食ったカロリー分は何とかしろよ
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楽しんでいただければ幸いです。
無事に床の修繕も完了し、二回戦を開催できる状態になった。今の休憩中にちょっと手軽に摘まめる料理や飲み物をかって来た生徒がほとんどなんだけど……。一応これ学校の行事中なんだけどな。
「おう、唐揚げ買ってきたぜ」
「いいわね。あ、ワイン出して。ちょっといいの」
「お前、ダリアの身体で好き勝手に……。食ったカロリー分は何とかしろよ」
「大丈夫よ。憑依中は半分くらい私の身体みたいなものだし、何か食べないと逆に身体に悪いんだよ~。あ~やっぱりこのワインもいいよね~♪ おつまみおつまみっと」
ワインをデカいコップで一気に呷りまくったあげく、三秒で出来上がる天使ってどうよ。
後でダリアに怒られたりしないだろうな?
「天使も色々なんだな」
「天使セレステは真面目だと思うんだけどね。ユーニスはちょっとおおらか?」
「しっつれいね!! わたしらってまじめに仕事してるのにさ~、いっつもセレステばっかりほめられんだよ~。おかしくない?」
「いきなりくだを巻き始めるな!! 酔いどれ天使。あ、始まるみたいだ」
次の試合に備えて選手が入って来た。二回戦は一組のドワーフ娘イドゥベルガとエルフ教師デルフィーヌか。
「大人の女性って感じのデルフィーヌとロリドワーフのイドゥベルガ派の応援合戦が酷いな」
「外野はどうでもいだろう。エルフとドワーフの戦いか、こういった状況だとエルフがかなり不利だが」
「エルフの方が魔力とかは高いだろ?」
「ドワーフは魔法にも強い。あいつらは元々戦闘能力が高い種族なんだ」
他の種族に比べてドワーフって割と優遇されてる種族な気はするぞ。鍛冶能力は高いし杜氏はできるし便利な種族だな。
「さあ、準備が整いました第二回戦。みんなも観戦準備は整ったかな~? 私たちも入り口の売店に行ったけど、司会進行のアルコール摂取はダメといわれました!!」
「ひっどいよね~、でも大丈夫。私にはこうしてライトブクを提供してくれる友がいる。なんて麗しき友情か!! 反省文が怖くて~、イベント中に飲み食いできるか~!! ぷはぁ~っ!! この後の試合も私たちが司会進行しま~す!!」
「流石にその態度はどうかと思うよ~。さて、第二試合はエルフ教師のデルフィーヌ先生と、ロリっ子ドワーフのイドゥベルガで行われます。実力伯仲でどっちが勝っても大番狂わせが無い無難な組み合わせ!!」
四番人気と五番人気だったか?
ちなみに一番人気は当然魔法少女のエリーヌで、二番人気はもう一人のエルフ教師のナディーヌ先生だったりする。さっきの休憩中に賭けの胴元を締め上げて情報を聞き出したので間違いない。額が大したことなかったから今回は見逃してやるけどな。
「生徒相手でも手加減はしませんよ」
「森から出たエルフは怖くないですよ?」
「それはどうですかね」
開始前から火花を散らしてるな。この世界だと別にドワーフとエルフの仲が悪い訳じゃないのに。
「あのエルフ。ちょっと変わった魔力の放出をしているな」
「ああ、そういう事か。エルフだから……」
「もう見切ったのか。あのエルフが何をするつもりなのかはこれからみさせてもらうが」
試合開始直後。デルフィーヌはちょっと変わった魔法の詠唱に入った。あの魔法は授業でも教えていないはずだ。
「隙だらけです!!」
「そちらこそ無防備ですよ、小さき妖精の輪舞!!」
「この魔法、おかしな動きを……」
デルフィーヌが使った魔法はオリジナル魔法である光の精霊の舞踏の下位魔法だ。光の粒子を自分の周りに纏い、それを自分を中心にして舞わせる事で相手の攻撃や接近を防ぐ防御魔法。
割と持続時間が長いのでこういった時間制限のある戦いでは厄介だ。
「これは授業で教わっていない初披露の魔法!! 教えてないっていいのか!!」
「多分これ、エルフ限定の魔法だよ!! 妖精魔法じゃないかな?」
「勉強熱心な司会進行役もいますね。普通の魔法と違い、軌道が複雑だから躱しにくいでしょうね」
「このままではまずいかな……。仕方がないなぁ」
イドゥベルガが一旦下がり、小さき妖精の輪舞の範囲の外に出た。このまま時間まで逃げ切ればデルフィーヌの勝ちなんだけど。
「自分が優位に立っていると思っている奴は、自分が逆の立場になるとは思っていない」
「その通りだな。教師にもいい勉強になるだろう」
イドゥベルガは攻めあぐねているふりをしながら、バレない様に小さく呪文を紡いでいる。
「眠りの槌!!」
「そんな。ダメージ覚悟で飛び込んで……、っ……」
「ちょっとダメージが大きかったです……」
イドゥベルガは小さき妖精の輪舞のダメージでその場に倒れ、デルフィーヌは眠りの槌の効果でその場で眠りに落ちた。
眠りの槌はドワーフの使う妖精魔法で、その名の通り眠りを齎す魔法の槌だ。洞窟内で魔物と遭遇した時に無力化する方法として利用されている。
「おお~っと、まさかのダブルノックアウト~!! この場合の判定はどうなるのか!!」
「両者失格!! 第二試合はラッキーカードになるという事です。大番狂わせ!! この場合は胴元はどうするのか? 今後の対応が楽しみですね~」
「今回は闘技場に問題は無いので、すぐに第三試合になりま~す。次のカードは一組のミウッチャ対四組のエリーヌ。純粋な魔力ではミウッチャが上だけど、流石に魔法少女の相手は厳しいか~?」
「今後の対魔法少女戦の参考になりそうなこのカード。さあ、どうなるか!!」
この戦いは順当にエリーヌが勝ち、残りの対戦はなんとエルフ教師のナディーヌを下したグアルディが勝ち上がった。
男子生徒のグアルディは氣を上手く使ってナディーヌを場外に叩き落としたんだけど、七番人気のグアルディが勝ち上がった事で胴元は割と頭を抱えていたりするそうだ。ダブルノックアウトとラッキーカード分の払い戻しもあるしね。
「次はいよいよ準決勝か。どっちが勝ち上がってもひと試合しかしていないマルティンが有利だな」
「それはそうだけど、エリーヌが勝ち上がった場合はそこまで影響ないだろう。健闘してきたけど、流石にグアルディの戦法はエリーヌには通用しない。まともに戦ったら勝ち目なんて元々ないぞ」
「普通は飛ばれると終わりだしな」
俺や雷牙の場合は飛ばれても撃ち落す方法がいくらでもある。
というか、氣を使ってジャンプしたらこの闘技場に浮いているエリーヌ位だったら余裕で届くしね。
「お待たせしました!! 午前の部最後の試合。魔法少女エリーヌ対一組グアルディの戦いです!!」
「いや~、まさか男子生徒が準決勝まで残るなんて誰も予想していませんですよね。グアルディは魔法少女相手に何か策はあるのか? 流石に戦力差が大きすぎると思うんだけど」
「あの顔は何かあると思っていいでしょう。もしグアルディが勝ち残れば八番人気と七番人気の戦いという注目の一戦になりそうです」
「もし仮に五組の生徒が優勝という事になると、今後の授業内容とかに影響があるかな? そこの所、後で勇者理事長先生に聞いてみたいな」
変わりはしないよ。
来年のクラス分けの参考にはなるだろうけどね。この九ヶ月でかなり力を付けた生徒もいるし、大幅に組み直さないといけないだろう。
「変身しても問題ないという事ですので、この姿でやらせていただいてます」
「持てる力を出すのは当然。こっちも全力でやらせて貰うよ」
「それでは」
お互いに開始位置に付き、そして開始の合図と共にエリーヌは空中に浮かび上がった。
ここのモーションが割と隙だらけなんだけど、グアルディはそれを見逃して空中に浮かび上がるのを許した。どうして? 女生徒だと無理でも氣で身体強化した男子生徒だったらあのスキを狙って攻撃できる筈。
「エリーヌ、今まで通りに空中に浮かび上がった~!! あそこから攻撃されるとかなり厳しいですよね~」
「撃ち込まれる魔法を躱しやすく、向こうからは攻撃がやりたい放題。ルールミスなんじゃないかと思われる状況ですが……」
「ここだ!! 強風!!」
「おおっと!! ここで動いたグアルディ。生み出した風が空中に浮かんだエリーヌを襲う!!」
「他の魔法と違って風魔法は見切りにくい。そこをねらったか~? って、これまずくない? 危うしエリーヌ!!」
「え? 何……? っ!!」
ああ、エリーヌも何が起こったか理解したみたいだな。
顔を真っ赤にしてそそくさと地上に戻ってきた。確かにああすればもう二度と飛び上がらないだろうけどさ。
「地上に降りてきた。これで……、って!!」
「な……、なんてことするんですか―――――!!」
「ぐはぁぁぁっ!!」
「おおっと、グアルディ。エリーヌの魔力の籠った拳を顔面に喰らい、そのまま場外迄ぶっ飛んだ~!!」
「勝者エリーヌ!! は~い、救護担当、場外に転がってるグアルディを回収してね。アレは仕方ないよ」
グアルディがとった策。それは強風を使って下から強風を起こしてエリーヌのスカートを物理的に巻き上げるというものだ。
ただでさえ見えそうな状況だったけど、下からあれだけの風を受けりゃそりゃああなるよな。ほぼまる見えだし。
「悪くない作戦だが詰めが甘かった」
「命懸けの戦闘だと、あんなことを気にしてる暇なんてないのにな。ただ、学校の行事でやる戦法じゃないのは確かだ。今後苦労するぞ」
「そうだろうな。あの魔法を使うんだったら浮かび上がる直前に上から抑えるようにする方が効果的だ。飛べなくて混乱しているところに接近戦を仕掛ければいい」
「グアルディもそれでいい勝負ができるはずだったのにな。なんでああするかな?」
多分今後グアルディには不名誉な二つ名がつくだろう。
スカートめくりかスケベ系のどっちかだろうね。ご愁傷様。
「はい、ハプニングはありましたがこれで午前中の試合はすべて終了です。この後二時間ほど休憩をとって最終試合の決勝戦。そしてその後に一流冒険者ルッツァさんとの模擬戦がありま~す。その後はお楽しみ、勇者理事長先生のエキジビションマッチも控えていま~す」
「間違っても、水玉とか言わないように。いいですか水玉……」
「いやぁぁぁぁぁっ!!」
エリーヌが全速力で魔法実験場を飛び出した。流石にアレはかわいそうだろ。
「トドメ刺してんじゃないの!! ああ、コレはもう後で反省文だね。ご愁傷様」
「水玉反省文……」
傷口を抉るなっての。
しばらくエリーヌの前で水玉は禁句だな。
やはりあんな短いスカートで空中戦なんて無理だって。これは決勝戦での影響もでかいだろうね。
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