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第二百六十八話 ラウロの情報は流石だな。酒などの情報もあるのはうれしい。料理の方も細かい事までいろいろ書いてくれてるな。ありがたい

連続更新中。

楽しんでいただければ幸いです。



 翌日の放課後には大量の情報提供用紙が集められた。そりゃもう、この日は朝から授業にならなかったってくらい皆が熱中して書いてくれたそうだ。うれしいけど、理事長としてはちょっと悲しい気分だぜ。


 ダリアから渡された用紙の枚数も凄かったけどね。ラウロに渡したあのワインが相当効いたみたいだな。


「ラウロの情報は流石だな。酒などの情報もあるのはうれしい。料理の方も細かい事までいろいろ書いてくれてるな。ありがたい」


「生徒や教師の情報の方は料理に限らなかったから、いろんな情報が混ざってるね。こんなの役に立つの?」


「情報はそれ単体では役に立たないものも多い。でも、いくつかの情報が組み合わさる事によって重要な情報に変わる事も多いんだ」


 今までにどんなものを食べててそれを食べてきた背景とか、生産状況や地域的な特徴とか宗教的な状況とかな。


 その食材をメインにしてきた事にはそれなりに理由がある筈なんだよな。ほんの数年前までこのアツキサトで肉といえば剣猪(ソードボア)だったように。


「これだけ大量の情報の中からそれを見つけ出すの? 情報は多いかもしれないけどさ」


「見つけ出すさ。最終的には現地に行かないといけないだろうけど」


「現地って、スハイツ伯爵領とかパスクアル伯爵領ってこの街からどれだけ離れてると思ってるの?」


「直線距離で約千キロ程度だろ。余裕だよ」


 東京から北海道位の距離?


 陸路でもなんとかなるけど、最近は馬車の数も多いからいろいろ邪魔になるしね。


「それをあっさりといえるのは理事長たち位だよ? 死ぬまで領内から出ない人も多いんだから」


「普通の生活してたらそれが当たり前なんだろうけどね。このまま世界がいい方に向かえばそのうち旅行とかするようになるさ」


「この辺りもそれが普通になってるしね。マッアサイア方面に向かう人だって、昔は行商人とか商会に所属してる商人くらいだったんだからね」


「今はリゾート気分でマッアサイア方面に向かう人も多いしな。人の流れがかなり変わったよね」


 本当に馬車の数が増えた。


 流石に高速馬車の数は増えていないけど、今はどのルートも引く馬の頭数を増やして馬車を大きくする傾向がある。そのうち大事故が起きかねないし、メインのルートだけでも早いとこ鉄道計画は進めたいんだけどね。


「後は冒険者ね。遠征する人も増えたし、拠点を変える人も多くなった。マッアサイア方面は冒険者にも人気だし」


「寒いより暖かい方が戦いやすいだろうしね」


【あ、戦いやすいから?】


 正解!! って、いきなり来たね。


 でも今回は都合がいいんだ。


【珍しいけど、なにかあったの?】


 女神シルキーと鏡原(かがみはら)師狼(しろう)の馴れ初めというか、出会いから一緒に活動するまでの詳しい話を聞いておきたいんだ。


【ちょっと長くなるから今じゃなくてもいいかな? 今晩もう一度繋げるから、詳しい話はその時でいい?】


 話して貰えるんだったらそれでいいよ。


 今は時間がないのかな?


【そんなところ。それじゃあいったん切るね】


 ……なんかすごい急だったな。


 というか、あのツッコミをするためにわざわざ繋いで来たのか? 神界って暇なの?


 今回も時間の流れが一瞬じゃなかったみたいだね。何か理由があるのかもしれない。


「確かにそれはあるね。ただ剣とかは潮風に弱いから手入れを怠る様な冒険者にはあまり人気が無いかも」


 っ!! って、ダリアの話は別か。最初の一言があまりに考えた事とリンクしてるから一瞬焦ったぜ。


「それは冒険者としてどうなんだ? 命を預ける武器の手入れを怠るとかありえないだろ?」


「昔はそんな冒険者も多かったんだよ? 剣猪(ソードボア)の角をつかった武器とかは錆びないし、今でも割と人気なんだ~」


「そうか、金属以外でも強い武器は多いもんな。そういう武器を使ってると、うっかりって事もあるのか」


「売る方もあまり説明しないしね。錆びさせて武器とか防具がダメになっても手入れの仕方が悪いって一方的に言って終わりだし」


 冒険者にとっては大事な商売道具なんだから武器とか防具の手入れなんて詳しくないとダメだろ?


 俺みたいに錆びない様な装備だったら問題ないけどさ。ブレスやスーツも手入れ無用だ。


「剣とか鎧に魔物の血とか付いたら綺麗にしないとすぐに錆びるだろ? 魔法使いはあまり問題ないだろうけど」


「魔法使いも剣とかを使わない訳じゃないし、問題大ありだよ? 魔力にも限りがあるんだから」


「そりゃそうか。そういえば弓とかも装備してたよな」


「魔法は便利だけど、その日の体調とか魔力残量で威力が変わるからね。パーティで討伐に向かって、今日は体調が悪いから見学ですなんてできないでしょ?」


「状況次第じゃない? 魔法を一回も使わない場面もあるだろうし」


「そうなると取り分で揉めるパーティも割とあるんだよね。うちとかはリーダーがしっかりしてるからそんな事は一度もないけど」


 ヴィルナもそういえばあまり役に立たなかった時には報酬を受け取るのに抵抗したっけ。


 そういう所も含めてパーティだろうに……。


「臨時のパーティとかだともめる事は多そうだな。怪我をしてないのに回復職に癒し(ヒール)治癒(ハイ・ヒール)を使えっていうようなもんだろ?」


「回復職でも速度強化とかの身体強化系の魔法は使うけどね。もちろん回復用の魔力は残すけど」


「なにか仕事はしろって事か。ついてくるだけの簡単なお仕事もあるだろうに」


 話をしながら用紙の内容を確認してるけど、同じような内容の物も多いな。


 これもしかして、誰かが箇条書きした物をそれぞれで情報を出したりしてない? そうすれば提出する枚数は増やせるからね。


「……もしかして、同じような内容の用紙を纏めてる?」


「そういう事だけど、別にこの事に対して怒ってはないよ。むしろ、同じ情報をいろんな角度で書きだしてくれてるから助かる」


「ずるっぽいけど、百シェルが魅力的だったからかな?」


「むしろ奴らが欲しいのは免状の方だろう。年末に向かって何かデカいイベントでも企画してるんじゃないのか?」


「新年は帰郷する生徒も多いだろうしね。その前段階の交渉?」


「あまり風紀を乱すと停学もありうるからな。俺の目の届かない所でしろよ」


 ああ、あの丸太小屋とかツリーハウスはそっちの目的もあったのか?


 教師の対応が異様に早かったし、アレを撤去する理由としては生徒の寝泊まりだけだと理由としては少し薄いしな。


「そこまで無法地帯じゃないけど割とね……。風紀を乱してる生徒は比較的少ないみたいだけど」


「それが霞むくらい盛大にやらかしてる奴が多いからな。校舎を頑丈にしてなけりゃ、教室のいくつかは使えなくなってた所だぞ?」


「魔力の制御がうまくいってない子が何度かやらかしてるしね。ヴィルナが魔力制御を教え始めてから起こってないけど」


「誰かを怪我させて後悔するのはその生徒だからな。変なトラウマを抱えると、いざって時に足が竦むぞ」


「実戦で仲間を巻き込んだ魔法使いが冒険者家業をやめる理由のひとつだね。火炎弾(フラムマ・グロブス)クラスの魔法でも使い方次第で酷い事になるから」


 火魔法や風魔法の怖さだよな。


 何も燃える物を持っていない状況とかありえないし、風魔法に関しては飛んできた風の斬撃が見えないってのも大きい。


「生徒たちにはその辺りをしっかり学ばせないとね。失敗する前に実例を混ぜながら説明してくれ」


「了解。凄いね。あれだけあった用紙がもう後それだけなの?」


「ああ。一応それぞれの伯爵領別に分けてるし、共通してる部分も割と見つかってる。一日でこれだけの情報が集まったのは本当にありがたい」


「報酬が魅力的だったからね」


 なお、免状の使用に関しては過去の盛大なやらかしの免除もあるから、反省文は既に書いてるけど内申書から消去したい場合は使用可能だ。


 どこかに就職する時に内申書を見せる訳じゃないからそこまで問題ないんだけどね。


「よし。ある程度情報は集まった。食材とかはこっちで入手可能な物と現地でしかない物があるから、向こうに行く前にリストアップだな」


「お疲れ様。今回の報酬のシェルは予算の中からチャージしたけど、免状の方はどうするの?」


「この札を配ってくれるかな? 人気があるようだったら今後も報酬として出すから、この金庫の中から持ち出してくれ」


「了解。……足りるかな?」


「これだけあればいいか?」


「ありがとう。流石に足りると思うよ」


 用意していた免状を二百枚出してみた。一人五枚までだし、四十人分の免状だ。というか、生徒数と同じ数の免状を出すってどうよ? まじめな生徒もいるのに……、いるよな?


「それじゃあ、俺はそろそろ終業時間だから帰るけど、教頭先生はどうするんだ?」


「私たちはもう少し残業かな? 購買でワインと御飯を買って帰るよ」


「そうか。それじゃあまた来月な」


「お疲れさまでした」


 今月はもう学校に顔を出せないからね。


 今晩、天使ユーニスに話を聞いて、それからスハイツ伯爵領とパスクアル伯爵領に出向かないとな。


 遠征する事だし、ヴィルナとかにもお土産を買ってこないとね……。




読んでいただきましてありがとうございます。

誤字報告ありがとうございます。とても助かっています。

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