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第二百五十七話 あの魔族がこの世界を去ったのにまだここが存在するのは不思議だよな。普通はすぐに消滅するんだろ?

連続更新中。

楽しんでいただければ幸いです。



 昨日の俺の判断が気に入らなかったのか、エリーヌが俺を昨日ゴスロリ魔族がいた不思議空間に呼び出してきた。というか、呼び出し方法にこっそり手紙を手渡しとかドキっとするからやめて欲しい。


 この不思議空間は(ひずみ)というらしく、魔族が作ってその世界の活動拠点にするらしい。なんでも、爵位級の魔族はこの空間に城とか庭園を造るという話だ。


 この世界の魔族の能力が魔法少女マジカルルピナシリーズ通りだったらね……。


「あの魔族がこの世界を去ったのにまだここが存在するのは不思議だよな。普通はすぐに消滅するんだろ?」


「あのクラスの魔族の作った(ひずみ)です。ここまでシンプルですと魔力の消費は僅かですし、あの魔族も消滅した訳じゃないですから数日はこのままでしょうね。無理に破壊しなくても来週位には消滅してると思いますよ」


「へ~。割と面白い空間なんで作り方も教えて貰えばよかったな。で、その姿で来てるって事はやっぱり昨日のアレが納得いかなかったのか?」


 当然エリーヌは魔法少女の格好で来ている。手には大きなアクアマリンが飾られた杖まで握られていた。やれやれ、こっちは変身すらしてないってのにな。


「当然です!! 魔族は存在すら許されない邪悪な存在です。人の精気を啜り、そして精気を奪った相手を石や宝石に変えてしまう汚らわしい存在。私のこの力はすべての魔族を葬り去る為のものなんです」


「俺はエリーヌより少しだけ魔族の事を知ってるつもりだ。確かにほとんどの魔族は人を食料としてしか見ていない。だが、全てじゃないんだ。話が通じる相手であれば、交渉の内容次第で見逃してもいいだろう?」


 知識の殆どが魔法少女マジカルルピナシリーズのものだけど、今までの感じからいってあれも実際にどこかほかの世界の話なのは間違いない。あの作品でも主人公と他の魔法少女の間で同じようなやり取りもあったし。


 とはいえ、昨日のあの魔族は見逃すにはグレーゾーンギリギリの存在だったがな。


「どこでその知識を得たのか知りませんが、この指輪は代々うちの家に受け継がれてきた指輪なんです。今まで私の知っている範囲で魔族が現れる事はありませんでしたが、昨日あのどす黒い魔力を感じてこの力がこの時の為の物だって確信したのに!!」 


「返り討ちがいい所だ。大体魔法少女は力を使いすぎると最終的に神界の戦士になる。運が良くても女神見習い……。魔法少女ヴィオーラが唯一女神として活動してるくらいだぞ?」


「そんな話……」


「魔法少女ヴィオーラや妖精界の女王みたいな特殊ケース以外だと、七割程度が魔族に返り討ちって酷い状況だ。なぜかわかるか? その指輪には神の呪い……、魔族に対する敵対心を植え付け増幅する力が込められているからだ。純粋無垢な少女を魔族と戦わせるにはそれしかないのかもしれないが、その結果が返り討ちなのは間違いない」


 力の差を考えずに突っ込む魔法少女ばかりだしな。


 妖精界の女王の時は魔法少女時代に彼女の力が元々大きかったって事もあるし、いい魔族との出会いもあったからね。


「信じられません。勇者先生は女神の事をよくご存じの様ですが、そこまで知っているのはおかしいです」


「女神フローラとはそこまで滅多に話してないけど、天使とかはよく話をしてるぞ」


「信じられません」


【ん~、信じて貰えないって、意外に信用無いんだね】


「この声……、どこかからか頭に響いてきます」


 天使ユーニス。いいのか?


【その空間はこっちと繋がりやすいんだ~。(ひずみ)があるって事はその世界に魔族か何かいたの? それとも魔法少女か何かが(ひずみ)を作ったの?】


 魔族以外もこの空間を作れるんだったら、作り方を教えて貰いたいものだ。


【もう似た力は持ってるでしょ? アイテムボックスがほぼ同質の空間だよ。あなたのアイテムボックス以外は~、だけど】


 どういう事? 他の人のアイテムボックスが限定的な(ひずみ)


 それで、俺のだけ別物?


【その話はまた今度ね。えっと、あなたがこの世界の魔法少女? アクアマリンの指輪は私も知らないから、いつの間にかどこかから送り込まれたのか、それとも】


「例の事件でほかの世界から流れてきたか……、だな。ああ、この声の主は天使ユーニス。今はどういう立場なの?」


【女神見習い天使って感じ? 殆ど立場は変わってないけど、役職名だけ変わったみたいなものかな?】


「え? え? この声の主が天使様? って、どうしてそんなに気軽に話しているんですか?」


「いや、……もう割と長い付き合いだしね」


【割と最初の方からこんな感じだった気がするけどね~。えっとそっちの魔法少女さん、クライドの言う通りその力も万能じゃないの。かなり古い時代の神界産で、ものによっては回収対象まであるし】


 回収しないとヤバい指輪もあるのか?


【一部だけね。例の当たりの指輪。人が持つには力が大きすぎるんだよね~】


 それ以外のハズレはいいのか?


【アレは使ってもそうそう使いすぎたりしないから。今は魔族の侵攻もそこまで起きてないし】


 あの真魔獣(ディボティア)は? アレもかなり禍々しい魔素を帯びてたぞ。


【あ~。アレも近いかも。でも、本気でその世界に侵攻してきてないから大丈夫。真魔獣(ディボティア)の本拠地もあの人が壊滅させたしね】


 鏡原(かがみはら)師狼(しろう)か。ホントにいろんな世界を救ってるんだな。


【あの人の世界を襲ったのが真魔獣(ディボティア)だったの。覚醒したあの人に滅ぼされたんだけどね。一方的に……】


 あの化け物を一方的にか……。


 本気で化け物っていうか、物凄い力を持っているんだな。


「それはいったい何の話なんですか? 説明して欲しいんですけど」


【物凄い力を持った神様みたいな人の話かな? 近い人ならあなたの目の前にいるよ】


「俺はそこまでか? まだまだ力不足だろう?」


【この前、その世界からものすっごい神力(プラーナ)を感じたんだけど。あれ、あなたでしょ?】


 そっちまで届いてたのか?


【流石にあれだけ大きけりゃね。そっちの魔法少女の力はこうして繋いで何とか感知できるレベル】


「私の力はその程度なの?」


【力はね。大きければ大きいほど責任が伴うわ。あなたには世界を背負えるだけの覚悟があるの?】


「私にはあります。この力でこの世界の全てを支えてみせる」


「残念だが、その程度の力でその言葉を吐く時点で資格がないんだ。世界はな、エリーヌが考えているより遥かに大きくて重い」


【そうだね。クライドの言う通りかな? 抱えきれない存在を守ろうとした時、正義であった力を持った誰かは力を持たない誰かを傷つけるの。それも、悪事を働く者よりもより多くの人をね】


 結晶竜ヒルデガルトはその典型だ。


 あいつは人を守ろうとした結果、多くの人を犠牲にして人を魔族に変えようとした。


 途中で抱えきれなくなって、目的と手段が狂っちまったのさ。


「では……、私のこの力は無駄なの?」


【無駄じゃないよ。その力で世界じゃなくて、まずはその力で救える身近な人だけ助ければいいの。その時、ちゃんと敵の強さを測る事。あなたが犠牲になって悲しむ人もいるでしょ?】


 実戦経験がないのに敵の強さはなかなか測れないしな。


「経験を積む事だ。その姿で流石に剣猪(ソードボア)を狩ったりできないだろうけど」


「……ここで」


「ん?」


「ここで変身して私と戦ってください!!」


 いや。変身したらベーシスフォームで手加減してても大怪我確定だから。


 それに今の俺だと……。でも、仕方ないか。


「変身はしない。武器も無しだ。この条件でよければかかってきな」


「流石にそれは……、私をあなどり過ぎです!! マジカル・ブラスター!!」


 おおっ、杖から放っているからなのか昨日より少し威力があるな。


 でも、結果は同じだ。


「よっ……」


「私の魔法が掻き消された!! そんなに簡単に!!」


「例のアナグマの話を聞いている筈だぞ。魔力の流れを正確に掴めば、それ以上の魔力を込めて魔法自体を打ち消す事が可能だ」


 魔力の流れというか。今の俺にはどこを潰せば魔法が消えるのかが分かるんだよ。


【あ~、また反則な力を手に入れてるね。変身しなくても使えるの?】


 殆どの力がね。技とかの威力は別だけど、魔力を使う技なんかは関係ないよ。未来予知と超加速はその気になったら使えるし。


「そんな……。変身もしていないのに」


「実戦経験の差だ。それでもその力は校内でも最強だろう」


「つまり。うちの生徒では先生に勝てないと言っているんですね」


「最初からな。俺の力はそれこそこの世界を救う為の物だ。まずはこの手が届く範囲を守る。そして最終的にこの世界の平和を脅かす存在も倒してみせるさ」


 邪神の残滓な。


 今どこに潜んでいるのかは知らないけど、いずれ見つけ出して倒す。


【えっとその指輪、ちょっと前に出して貰える?】


「え? こうですか?」


【ありがとう。……これで魔族に対する敵対心はなくなるよ。あと、魂に悪影響が出にくくしてあげたから、その力を気軽に使っても大丈夫】


 おお!! そんな事が出来るのか?


【かなり昔に作られてるからね。無害化させる方法は知れ渡ってるよ】


「ありがとうございます。私、強くなります。皆を助けられるように。そして、道を間違えない様に」


「そうだな。その心掛けがあれば大丈夫さ。さあ、そろそろここから出ようか」


「はい」


 サンキュウ。今回は色々助かった。


 俺だけの説得だとエリーヌは納得しなかっただろうし、やっぱり天使ってすごいんだな。


【神に仕える存在だからね。それじゃあまたね】


「本当に天使様と懇意にされているんですね」


「皆には内緒な。天使ユーニスが女神フローラに怒られたら悪いし」


「女神フローラとも懇意なんですか!!」


「だから、それは絶対に内緒な。向こうも色々あるみたいだから」


 これでエリーヌが正しく魔法少女の力を使ってくれるんだったら問題ない。


 俺だって、彼女が道を間違えた時に敵として立ち塞がりたくないしな。


 ホント、今日は一杯天使ユーニスに借りが出来た。今度何かいい物を送らないと……。



読んでいただきましてありがとうございます。

誤字報告ありがとうございます。とても助かっています。

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