第二百四十九話 さて、今日は例の問題をもう少し真面目に考えてみるか。といってもやってるのは朝からライジングブレイブシリーズを通して観てるだけだが
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楽しんでいただければ幸いです。
第一回合同料理大会も終わり、魔法学校は通常の授業に戻り俺も学校へ顔を出す機会が減った。といってもヴィルナが出勤の時は一緒に魔法学校に行くんだけどね。
今日はヴィルナも学校に出勤しない日なんだけど、朝から何処かに出かけたみたいだ。ヴィルナって温かくなると割と行動的になるんだよな。シャルの方は相変わらずだけど。
「さて、今日は例の問題をもう少し真面目に考えてみるか。といってもやってるのは朝からライジングブレイブシリーズを通して観てるだけだが」
これがヒントというよりはほぼ答えなんだよな。
幾らなんでも別世界の人間がここまで似てる訳もないし、それが数人ならまだしもここまで何十人単位で似てるって事なんて流石に無理がある。
そのうえ、舞台となった街並みと俺のいた世界の一部の地域がほとんど同じとなるとその事実を受け入れるしかない。
「俺のいた世界も雷牙達のいた世界も並行世界のひとつにすぎないって事か。ただし、俺の世界ではブレイブチームは組織されなかったし、魔怪種を始めとする世界の平和を脅かす存在はいなかった」
その代償として俺のいた世界では戦争が割と起きている。紛争というか戦闘行為自体が少ない小競り合いも多いが、戦争という行為自体が無い雷牙達のいた世界とどっちが平和なのかは考えさせられるな。
巨悪が世界を荒らしまわり、ライジングブレイブの様な超兵器を所有する国が相手だと戦争自体が成り立たないって事なのか? 経済戦争とかはあるんだろうけど。
「必要悪。でも、その存在のせいで多くの不幸を生み出す。凄惨な事件で犠牲になるのはいつも力を持たない者たちだ」
……俺もそうだがな。
俺には七歳以下の記憶がない。というか、何か大きな事件に巻き込まれたのは覚えているんだが、それ以前の記憶がすっぽりと抜け落ちている。
その時に両親を失い、遠い親戚の叔父さんの家で面倒を見てもらってたんだけど、両親の残した遺産は全部その叔父が使い込み俺は小さい頃からバイトで小遣いや必要な金を稼ぐ日々だった。あのやけに中華料理の多い洋食店のマスターには今でも感謝している位だ。
「俺が何者なのか。それを答えてくれる人はとっくにいなかった。灰色というよりもほぼ黒に近い青春時代、思いだすのは部活ではなくあの厨房で鍋を振るってる俺の姿だ。料理が楽しくなかったかといわれると嘘になる。アレはあれで充実した日々だったからな」
そのスキルがこっちの世界に来て大いに役立ってるけどな。
役に立っているといえば特撮の知識もそうか……。
「でも、真魔獣なんて存在は知らない。他の怪しい魔物もそうだ。この世界には多くの世界からいろんな厄災が訪れている」
邪神の残滓が呼び寄せたのかもしれないけど、あまりにも多すぎるんだよな。
黒龍種アスタロトが作り出した可能性もあるけど、少なくとも真魔獣って奴は異質な存在だ。アレは世界に存在していいものじゃない。
【おひさしぶり~。ようやく暇が出来たんだよ~】
おお、天使ユーニスか。こっちの時間でも割と長かったから、相当こってり絞られたんだな。
で、何があったんだ?
【いろんな世界の後始末を押し付けられてさ、魔王とか討伐後の世界で食料とかの手配とか住居建設なんかのアドバイスとかをずっとしてたの。それ、天使の仕事じゃなくない? 酷過ぎると思わない?】
謹慎とかよりマシだろ。
人を助ける仕事に貴賤はないし。
【ほんっとうに女神様たちと同じ事言った~!! なにさ、あなたは私の味方だと思ったのに】
いや、味方だと思うよ。
人助けでもどぶさらいみたいな仕事あるじゃん。敵を倒してめでたしなんておとぎ話の中だけだって。最近は特撮物でも事件の後始末とかの描写が多いよ?
【そうなんだけどさ~。あなたってそんなところもよくわかってるよね。きれいごとは割と口にするのに、やけにリアリストな部分もあるっていうか】
そりゃあ、いろいろ苦労してきたからな。
俺は金とかモノを出すだけの事も多いけどさ、本当はもっといろんな人が協力して彼らの生活を再建してる事くらいわかるよ。
領主や役人の仕事を完全に奪う訳には行かないし、俺でもある程度は手を出してない部分があるんだよ?
【それでも、その世界ではあなたに感謝してる人は多いし、祈りを捧げる人も多いんだ~。ほとんど神様扱い。女神フローラの祝福とか関係無くて、それだけ救われてる人が多いの。たぶんそのうち神様として祀られると思う】
クライド教会とかできる訳か。
勘弁して欲しいけどね。
【でも、誰かの感謝の気持はあなたの力になるよ。本当にあと少し力が及ばない時に、あなたがそれまでにしてきた事が助けてくれる】
そんな事態にならない事を祈るしかないな。
で、俺の元いた世界の考察なんだけど。
【知らない】
え?
【今話したらまた怒られるに決まってるでしょ!! もう少し後でないと無理。もうあんな後始末はごめんなの】
そりゃ分かるけどさ。この世界を救うのに必要……。
【ない】
……バッサリ来たな。
【完全になくはないけど、その情報が特に必要ないのは間違いないよ。あなたの力はもう覚醒してるし、余程の事が無いと負ける事なんてないわ】
ワールドリンカーって、そこまでの力かね?
世界を繋ぐだけのハブだろ?
【そのセリフは流石にどうかと思うよ? 全世界にたった二人しかいない超レア能力なんだし】
そりゃ、レアなのはわかるけど。
もし仮に俺が死んだら、世界の繋がりとかが消えたりする?
【一度繋がった世界はそのままだよ。というか、もういろんな世界とリンクしてるから今更この繋がりを絶ったりできないから】
まだ繋がってない世界とかあるの?
【それはもうたくさんあるかな? あなたが望んでもそう簡単に繋がらない世界もあるし】
そういう世界もあるのか。
あの別の世界の特撮とか、繋がったりすると凄い力になるんだけどね。
【大きな力を持つ世界とは繋がりにくいの。同じ位の力の世界の方が繋がりやすいかな】
……という事は、俺の元いた世界とこことは同じ位の世界バランス?
【ノーコメント】
まあいいや。
あと一つだけ。俺はこの世界を救う予定だけど、その時に天使ユーニスはもう一度女神見習いになりたいと思う?
【神様の裁定次第かな。あ、あとそういう事は他の天使とかに言っちゃだめだよ。あなたは妻帯者だから大丈夫だけど、独身の場合はプロポーズと同じ意味だからね】
ぷっ、プロポーズ!! そういう意味になるのか。
そっちの事情には疎いから、いろいろやらかしてる気がするな。
【今更な気がするけどね~】
やっぱり?
【あ、そろそろ切るね。仕事しなきゃね♪】
ちょ、やらかした件のフォローよろって、もう切れてるか。
……あの口ぶりから、俺の力とこの世界に来た因果関係はなさそうだな。そもそも俺の力が覚醒する前に雷牙達はこの世界に来てる訳だし……。って、土方が五十年前に来てた理由がまだ不明か。
やっぱり厄介な問題がそのまま残ってるな。
時機を見て女神フローラに聞くしかないか?
読んでいただきましてありがとうございます。
誤字報告ありがとうございます。助かっています。




