第二百四十八話 それじゃあ、第一回合同料理大会の成功とヴィルナ&ダリアチームの優勝を祝って、かんぱ~い♪
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楽しんでいただければ幸いです。
第一回合同料理大会も無事に終わり、本日はその打ち上げを行っている。
会場は当然俺の家。参加者は俺、ヴィルナ、ルッツァ、ミランダ、ラウロ、ダリア、雷牙、エヴェリーナ姫の八名だ。土方も誘ったんだが今回は部外者なんでって遠慮された。顔色が少し悪かったから消化がよくて栄養たっぷりの料理セットは渡しておいたが大丈夫か? あと超強力な栄養ドリンク類ね。
打ち上げ会場のうちでは料理は今回の大会に出した料理は全員持ち込んで、その上で俺が唐揚げなども用意してみた。あの大挟海老の唐揚げの代わりに伊勢海老の唐揚げを用意している。おいしそうだったし、作ってみたかったんだよね。他にも摘まみやすい様に大皿にいろんな料理を用意した。
「それじゃあ、第一回合同料理大会の成功とヴィルナ&ダリアチームの優勝を祝って、かんぱ~い♪」
「「「「「かんぱ~い!!」」」」」
ラウロは料理より酒って感じで、開始直後からワインの瓶を手元に引き寄せて味わうように飲んでいる。今日のワインも割といいの出してるしな。
言ってくれたらすぐに燗もできるけど、今日は冷やした方が美味い清酒を揃えている。燗用はまた別の酒だ。
「しかし、まさかタコ焼きを出してくるとは思わなかったな。特濃ソースはどうしたんだ?」
「聞いて驚け。あのソースは醤油と果物や野菜それに各種スパイスでエヴァが仕込んだものだ。といっても、元はピューレを煮込んで作ったウスターソースにトロミが付いただけのものだったんだがな。数日寝かせたら驚いたって訳だ」
「偶然の産物か。ヴィルナの方のソースはレシピ通りに作ったものなんだよね?」
「醤油だけはソウマに貰った物じゃがな。野菜や果物は市場で買い集めた物じゃぞ」
「お祭りであのソースの匂いは流石に強力だったな。他が唐揚げばかりだったのも人気が高かった原因だが」
来年の大会に向けての問題点はかなり出てきている。向こうの学校は予選を行う事にしたし作る料理も事前に報告、あまり同じ料理ばかりだといけないので多すぎた場合は変更させる形になった。
「屋台料理といえば粉物が強いのに、この辺りだと大体肉を焼くだけだろ? マッアサイアだとそれが魚介類に変わるだけだ。それで人気メニューの唐揚げがいいと踏んだ生徒があまりにも多すぎたんだよな。具材もグギャ鳥が多かったし」
「若い奴らは唐揚げが好きだし読みは悪くなかったんだよな。あまりに同じ事を考えた生徒が多すぎだ」
「……唐揚げ、美味しいですよね」
ミランダが唐揚げを食べながらそんな事を言ってるけど、ちょっとこめかみに血管浮いてる気がするな。相変わらずルッツァは地雷を踏み抜くのが得意だ。
「その中で箸巻きとタコ焼きは目新しさもあってよく売れたよな。あの空間でソースの焼ける匂いは反則だ」
「数が捌ける箸巻きとタコ焼きってのもよかったよな。本気モードだったら俺もりんご飴とカキ氷で他の屋台を潰しに行くところだけど」
「もう少し手加減しないと大人げないって言われるんだよ? あの料理を食べられた生徒は感謝してるけどね。滅多に食べられるレベルの料理じゃないし、あのクラスを食べた事のある人って本当に一握りだよ?」
「たまには本当においしい物を食べるのもいいだろ? 流石に生徒の多くがこのクラスの料理を食べる機会なんてないだろうし」
「大貴族出身の一部の生徒くらいかな? カロンドロ男爵の晩餐会とか新年会に呼ばれる人たち」
うちの生徒に何人かいたよな。
スペアリブ出してたチームの生徒だったか?
「とりあえず来年からは教師枠は撤廃。その代わり全部特別枠に統合だって」
「今回教師陣が強すぎたのと、誰とは言わんが特別枠とはいえ一人だけ晩餐会レベルの料理を出した奴がいるからな。来年の出場は禁止した方がいいんじゃないかという意見も出たが、生徒たちから出店を懇願されたらしいな」
それ言ってるも同然だろうが。俺以外に特別枠の人間がいたか?
「あの値段であのレベルの料理が食える機会なんて他に無いだろうからな……。五回並んだ奴もいたぞ」
「それだけの価値のある料理だったね~。ヴィルナとかは並んでなかったみたいだけど?」
「あの時に並んでもソウマの邪魔になるだけじゃ。あれが食いたければソウマに頼めば済む話じゃしな」
「いつでもあのレベルの料理が食えるなんて凄い話だよな。このレベルのワインもだけどよ」
「ラウロは料理より酒だからな。そのレベルのワインは残念ながらどう頑張ってもこの辺りで売りに出されるのは二十年位後だぞ」
ブドウの品種改良とかから考えたらそれどころの話じゃないけどな。ブドウの品種改良だけでも二十年くらい掛かるし。
そこからワインを仕込んで熟成。今の方式でいいとしても熟成がある程度終わるまで最低でも十年くらい?
「二十年……。流石にそりゃないぜ」
「ウイスキーも造り始めるんだろ? あっちも同じレベルか?」
「試行錯誤して最低でも十数年後だな。酒造りなんて地道で長い年月が必要なんだ。清酒みたいに造って火入れすりゃ飲める酒も何種類かあるけど。これだって料理とかいろいろ味わいとか凝り始めるとホントに際限が無いんだぞ」
「アレも悪くないが、俺はワインなんだよ。昔は輸入でちょっとはいいワインもあったんだ。去年あたりからホントに入らなくなってな」
入ってこなくなった? 造ってる国のブドウに何か問題でもあったのか? それも数年前に。
それはある意味大問題だろうけどね。この国のワインは質が悪いし。特に大貴族は晩餐会用ワインの確保に一苦労だろう。
「俺に言えば少しは都合するぞ?」
「流石にこのクラスのワインを貰うのは気が引けるんだぜ。如何に知り合いとはいえそこまで俺は面の皮が厚くない。売ってもらうって選択肢も無しだ」
「これよりツーランク下のワイン……。このワインだったら問題ないぞ。流石にそれに比べると若干落ちる」
「ん? ああ、舌触りとか香りがやや落ちるな。それでもこの辺りで売られてるワインよりはるかに旨い」
「基本的に料理とかに使うワインだからな。そのワインを寸胴にぶち込んで肉や野菜を一緒に一晩漬け込んで、その後で煮込んだら目の前にある牛すじ肉のワイン煮込みになるぞ」
割と多めのワインが必要だけど、このクラスだったら全然問題ないしな。むしろアイテムボックスに保存している量を減らしてもいいくらいだ。
「贅沢な使い方をするよな。……もしかしてあのビーフシチューも?」
「アルコールは十分に飛んでると思うけど、今回使ったのはこのレベルのワインだな。本気モードだとこの十ランク位上のワインを使うぞ」
「流石というか、このクラスのワインが水レベルなのは分かった。でもタダでもらう訳にはいかない」
「そこは譲れないラインか? 学校の購買で売り始めるからダリアにでも買って帰って貰え。購買でのワインの販売については一応男爵とかスティーブンにも話は通してるしな」
売れるのはさっきの飲ませたツーランク下のワインだけだけどね。
それ以上のワインを売るとか言ったら、スティーブンがキレそうだったし。商人ギルドもいい顔をしないだろうしな。
「ダリア!!」
「はいはい。でも、週一本まで!! 脱稿した週は三本までいいよ」
「新作を書くしかないか? ……いい素材は目の前にいるんだが」
「マテ、今誰を見た?」
ラウロの視線先にいたのは間違いなく俺。いや、今でさえ勇者呼ばわりが酷いんだからこれ以上状況が悪化するのは避けたいところだ。
「ソウマよりも小説の主役にふさわしい男がおるじゃろう? 王族を娶った勇者がおるではないか」
「ん? 俺がなんだって?」
「ラウロが小説の主役にお前を選びそうって話だ」
「俺か? あまり楽しい話はないぞ」
「噂で聞いてる武勇伝の数々は既に伝説レベルだ。細かい話を聞かせて貰えば、そこから俺がなんとか形にするぜ」
異世界版ライジングブレイブ!! あの映像ソフトをラウロに見せてやったら創作意欲沸くんだろうけどな。
流石にアレを貸し出すのはためらわれる……。この中であの映像機器の存在を知らないのはルッツァとラウロだけなんだけどね。
「いいじゃないですか。あなたの雄姿を多くの人が知るいい機会ですし」
「そうか? それじゃあちょっと協力してみるかな」
ちょろい。
しかし雷牙ってエヴェリーナ姫にはああまで甘々なのか?
「これでしばらく新作をかけそうだ。よし、今日は祝いって事で大いに飲むぞ」
「お前は初めから飛ばしてるだろうが。すまんな」
「いいさ。今日の面子だったら無礼講でいいだろ。遠慮すんなよ」
「そうだがな、毎回このレベルの料理を用意して貰うのも悪いと思ってるんだぞ。こっちから出す代償なんていつもないだろ?」
金とかを差し出されても困るしな。
たまにルッツァとかが見つけてきた珍しい食材とかをくれるんだよ。後は情報?
「最初の頃にいろいろ世話になっただろ。ダリアには今も助けて貰ってるし、この前はうちの生徒が迷惑かけちまったからな」
「あいつら本戦に居なかったんだが」
「奴らは残念ながら予選落ちだ。半分以上落ちてるし仕方ない」
アレンジャーだったしな。
「次回からは生徒枠が純粋に十枠あるし、今回涙を呑んだチームも出れるかもな」
「今年かなりハードル上げたけどね。特に誰かさんが」
「特別枠だから問題ないだろ? あれで少しでもおいしい料理を作れる様になってくれればね」
「流石にあのクラスは無理だと思うよ。何日かかる料理なの?」
「フォン・ド・ヴォーの時点で六日だな。美味しい物を作る陰には莫大な努力がある。あの料理の事を調べたら必ずそこにぶち当たるぞ」
だからこの世界でも料理人がいるんだ。今までは素材が無かったから努力の仕様が無かったけど。
「クライドってほんとに料理人なんだね。なんで理事長なんてしてるの?」
「料理より生徒を育てたいからさ。あの生徒たちは世界をいい方に導いてくれる。そう期待を込めていろいろ教えてるつもりなんだけど」
「教育者の鑑だな。信じられない程私財を突っ込んでるんだろ?」
「未来への投資さ」
その成果が分かるのは十年後くらいか?
その時、みんなが笑ってられる世界が出来てるか、それともこの世界が滅びに直面してるかは今からの努力次第だろう。
「難しい話は抜きにして飲もうぜ。これも未来への投資だぜ」
「違いない。遠慮なく飲んでくれ」
「ははははっ」
とりあえずこれで第一回合同料理大会は終わったな。
泣いた生徒、笑った生徒といろんな姿をみれたけど、みんないい経験になったはずだ。
特別枠で出たのに大人げない扱いはやめて欲しかったけどな。本当に大人げなかったのはガチで勝ちに行ったダリアたちだっての。賞金は辞退したみたいだけどね。
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