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第二百四十七話 こんな真似をしないでも各自で屋台を移動できるかもしれないけど、こうした方が安心だしね。本戦前の余計なトラブルとかない方がいいだろ?

連続更新中。

楽しんでいただければ幸いです。



 第一回合同料理大会!! 会場はもちろんカロンドロ男爵が理事長を務める学校の体育館!! って、街の西側にいつの間にこんなデカい学校建てたんだよって感じの大きさだ。西側にも街を拡張したからその時なんだろうけどさ。


 うちの学校からの距離もある事だし、生徒や教師の屋台は俺が全部アイテムボックスに収納しての移動という超荒業で輸送した。 


「相変わらずとんでもない大きさのアイテムボックスだよね~。全員分一括で運んだ方が楽だからいいけど」


「こんな真似をしないでも各自で屋台を移動できるかもしれないけど、こうした方が安心だしね。本戦前の余計なトラブルとかない方がいいだろ?」


「本戦参加の生徒は先に会場に馬車で移動。屋台は理事長先生が責任をもって輸送。向こうの学校に近い地区に住んでる生徒だけ徒歩なんですよね?」


「今日は馬車も多いからね。出来れば馬車で移動して貰いたかったんだけど」


「カロンドロ男爵の私兵で警備してるから大丈夫って言ってましたね。ほら、街道での馬車の誘導を行っていますし」


 そろそろ馬車なんかを対象にした交通ルールが必要なのかもしれないな。


 街での交通手段とかを急激に成長させるとこういった面でいろいろ問題が出るよね。


◇◇◇


 アツキサト学校の体育館。って、自分の学校にだけこの街の名前使うのずるくない? うちの学校って魔法学校って書かれてるだけだよな。


 来年から校名として何か頭に付ける? ……一応来月の会議の議題にして対策は今後の話だ。


 ああ、そうそう。生徒の屋台は既に引き渡して、決められた場所に設置が完了している。予選の時よりデコレーション具合が凄まじい屋台ばかりだぜ。燃えないように気を付けろよ。


「ソウマ助かったのじゃ」


「どういたしまして。ヴィルナだったら屋台くらい収納できたんだろうけど、今回は一括で預かったからな。で、何を出すの?」


「箸巻きじゃな。特製特濃ソースとからしマヨネーズが売りじゃ」


「箸巻きもおいしいよね。味の決め手はむしろ昆布出汁と鰹節だな」


「何の事か知らんのじゃ」


 昆布はともかく、鰹節はどうなんだ?


 以前料理の練習の時にどっちも大量に渡したけど、それを利用したんだろうな。プラント産だし転売じゃないからいいけど。


「ナディーヌ先生のチームは焼き鳥か? といってもグギャ鳥のモモ肉をそのまま焼いてる山賊焼だけど」


「森では人気メニューですよ」


「無難だけど、そのままはきついんじゃないかな?」


 対称的に特別なスパイスで味を調えたスペアリブチームは事前に大量に焼き上げて、低温の鉄板で温め続けてる。


 アレは旨いから相当に売れそうだ。


 しかし開場三十分前なのに一部の関係者がすでに入り込んでるんだけどアレはいいのか? 雷牙(らいが)にルッツァ達……。屋台出してる教師とかの関係者たちだな。何やってんだよ。


「こちら体育館の入り口で~す。各入り口にはすでに長蛇の列が出来上がっています。さあ、お目当ての料理を無事に手にする事が出来るのか? 実況は魔法学校アデライデがお送りしま~す!!」


「各入り口では開場前から既に火花が散っていますが、屋台を出してる生徒の関係者はいくつ食べられるかの戦いになりそうですね。今回は大食い大会じゃないのにね~。以上、アシスタントのルドーネでした」


 今回の解説もあいつらか。


 前回の実況で凄くファンというか友達が増えたらしくて、大喜びで今回も引き受けたらしい。うちの学校の名物生徒になりそうだな。それにしても。


「用意されたテーブルの数が半端じゃない。それに冒険者ギルドとかがエールブクの露店を出してやがる。あれだけ現金払いとかおかしくない?」


「アレまで券で買われるとカオス度が上がるよ? 券は中央の露店で売ってるけど」


「今回は本当に何でもありにする気だな。料理の数が多い方が有利じゃないか?」


「うん。用意した在庫次第だと美味しい店でも数で売り負ける可能性まであるよ」


「特別チケットは一枚十シェル、他のチケットは各五シェルです。十枚綴りもありま~す」


 なんで? 俺用のチケットだけ十シェル? というか、束で買ってる奴もいるんだけど。


「用意した枚数で決めたんだって。五シェルだとすぐに売り切れるでしょ?」


「十シェルでも変わらないだろ? 二千食があっという間に完売しそうな気がするぞ」


 在庫はまだまだあるけど、俺だけ売っても仕方がないだろ。向こうの学校の屋台も気になるけど、ヴィルナの屋台も気になってるんだよな。箸巻きは家で試食させてくれなかったし。というか、練習には箸巻きが無かったよな? アレは作戦なのか?


「あ、勇者先生の屋台には食堂から援軍が来ます。ひとりで売るのは大変でしょうし」


「誰の発案か知らないけど感謝するよ。正直助かる」


「教頭先生ですね。流石に本戦に一人はきついと思われたんでしょう」


 回転数から考えてギリギリだったんだよな。正直助かるというか、彼女たちが援軍に来るんだったらもっと数が売れる。


「お待たせしました。今日はよろしくお願いしますね」


「こちらこそ援軍感謝です」


 こっちも準備は万全だ!!


 さあ、正々堂々と勝負だぜ!!


「第一回合同料理大会開幕です!! 押さないでください!! 会場内は走らない!! そこっ!! 割り込んだりしない!!」


「開場と同時に怒号が響き渡っております。目的の屋台はどこなのか? 相変わらず勇者先生の屋台は人気ですが、他の屋台も負けていませんよ」


 ここが体育館でよかった。


 野外だったら、砂埃で凄い事になってたぞ。


「実況のアデライデで~す。今回は向こうの学校から先に紹介しま~す。……えっと? 向こうの生徒チームの屋台も変わり映えのしない商品が多いですね。もう唐揚げは見飽きましたよ」


「こらこら、いろいろ工夫してる店も多いと思うしちゃんとリポートしなきゃ。最初は大山雉(グレートファゼント)の唐揚げですね。……安心して食べられる平凡な唐揚げでした」


「平凡な料理が並ぶ中、見た事の無い料理の屋台が!! なんですかこれ?」


「タコ焼きという料理です。主人に教えて貰ったんですよ」


 エヴェリーナ姫の屋台はタコ焼きか。って、アレかけてるのは特濃ソースとマヨネーズ!! この世界で特濃ソースなんてどうやって入手した?


 というか、雷牙(らいが)だよな? タコ焼き自体も教えてるみたいだし、全部あいつの指金に決まってる。


「美味しいっ!! このかかってるソースもおいしいですし、マヨネーズ? も、最高です!!」


「中に入ってる具は少ないですが、タコの存在が凄いですね。というかタコ?」


「この辺りではあまり食べられていない食材ですが、マッアサイア周辺ではよく食べられているんですよ」


「このおいしさは本物だ~!! 美味しいといううわさを聞き付けた人で少しずつ行列もでき始めています。売り切れる前に食べられてよかった~♪」


「他はあまり変わり映えしないね。って、あの屋台はヤバそうです。この状況でも誰も近付いていません」


「アレンジャーさんかな? なんか酸っぱそうなにおいがここまで漂ってるし……」


 やはりいたのかアレンジャー。ああなるとかわいそうだから落としたんだよな。


 来年からは予選必須になるだろうね。っと、俺はひたすらビーフシチューのパイ包み焼きを売るだけだ。


「箸巻きとエールブクの組み合わせが大人気です!! 積みあがる券の山!! 優勝候補の一角なのは間違いありません」


「一番凄いのは例のあそこだけどね。優勝に関係ないけど、特別枠にしといてよかったよね」


「もう少し行列が短かったら並ぶんだけどね。あそこのレポートは後にしようか」


「食べるのは確定だよね。食べないと後悔するし」


 客がどんどん増える!! いや、焼き上げたやつもすでに相当用意してるから間に合わないなんてことはないけどさ。


「美味しいっ!! うそ、向こうの学校こんな料理食べてるの?」


「いやいや、ありえないって!! レストラン以上だよ!!」


「だって勇者様の店だよ? 元々ビーフシチューって勇者様がこの街に広めたんだし……」


「追加の特別チケットは十シェルか……。もう二杯いけそう?」


「最低でもその位いけそうかな?」


 マテ。何度も同じ顔を見たと思ってるけど、特別チケット買って何度も食べてる生徒とかもいるのか!!


 購入回数の制限はしてないからな。これ、幾ら売れるか分からないぞ!!


「上位陣は接戦です!! このスペアリブもおいしいっ!! でも、ボリュームがあるからあまりここで買いすぎるとお腹いっぱいになりそう」


「エールブクやワインの売り上げも凄いですよ。一体何樽売れるんでしょうか?」


「飲み物が無いときつかったから、ライトブクとかも売って欲しいですね~」


 後はソフトドリンクとかか?


 この世界だとジュース類が無いからハーブティーとかになるんだよね。いかん。無心でこの客を捌かないと……。しかし食堂の職員は流石だな。この人数を難なくこなしてるし。


「まだまだ時間はあります。しかし、早くも売り切れたチームがありますね」


「この数は想定外でしょう。というか、参加者の数多くない? この大きな体育館に相当な数の人が集まってるよ」


「これは最後まで売り続けたチームに勝利の女神が微笑みそうですね。あ、勇者先生チームはもう少し離れた場所にした方がよかったんじゃないかな?」


「私もそう思うよ。何処かの壁際に特別設置でよかったんじゃないかな? でも、流れてきた人が近くの屋台の売り上げに貢献してるし、これが順位にどう影響するのか!!」


◇◇◇


 開場から実に四時間。激戦が終わりを告げ、俺の屋台には麻袋に詰め込まれた特別チケットの山が出来上がっていた。


「はい!! 結果発表!! 第三位は魔法学校スペアリブチーム!! 四位のポトフチームも途中で売り切れなければ三位に届いたかもしれませんが、これも作戦のうちですよね」


 こんな規模じゃなければ純粋に味で勝負できたんだけど……。というか、予算の上限撤廃した伯爵家のお嬢ちゃんチームはどうやらあのアレンジャーだったみたいだ。あれじゃあ、予算関係ないだろ!!


「続いて第二位はアツキサト学校教師チームのタコ焼き!! こちらも途中でタコが尽きなければ優勝も狙えていたかもしれませんね~。今後しばらくあの特殊な鉄板の発注が大忙しになりそうですね」


 流石にあの数は想定外だろ。


 この長時間良く焼き続けたよ。途中から雷牙(らいが)が焼いてたけどな。


「そして栄光の第一位は、魔法学校教頭チームの箸巻きです!! おめでとうございます!! でも、上位二チームが教師って大人げなくないですか?」


「いや~、あの人に比べたら私たちなんて十分に控えめな方だよ。あそこって何千杯売ったの?」


「あのバカでかい麻袋に特別チケットが山盛りですからね。四千杯くらい売れてるんじゃないですか?」


 その位かな?


 五回くらい並んだ人もいたしな……。って、誰か途中で止めろよ!! 特別チケット出されたら売らないといけないけどさ。


「大好評のうちに終了しました第一回合同料理大会。優勝した魔法学校教頭チームに、もう一度大きな拍手をお願いします」


「ありがとう!! 試食をしてくれたリーダーも草葉の陰で喜んでるよ~」


「俺を勝手に殺すな!!」


 打ち上げというか、試合終了後に残ってた料理は無料でふるまわれたりしていた。


 一番の勝者は飲み物を売ってた冒険者ギルドの屋台だろう。笑いが止まらないレベルで売れてたしな……。


 今回は唐揚げを出す屋台が多すぎて大鋏海老の唐揚げが売れなかったみたいだけど、これも勝負ゆえの弊害だな。


 俺はヴィルナのチームが優勝したからうれしいけどね。でも、来年から教師枠が撤廃されそうな気はする。



読んでいただきましてありがとうございます。

誤字報告ありがとうございます。

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