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第二百四十六話 おお~!! 開場前からずいぶんと盛り上がってるな。大会運営委員、俺も屋台の準備をしないといけないから進行とかよろしくな

連続更新中。

楽しんでいただければ幸いです。




 第一回料理大会校内予選!! といっても今年は規模が小さいから何の問題もないけど、来年以降は本戦の日程を少し考えて貰わないといけないな。来年は確実にこの倍参加するだろうし、再来年は一体何チーム挑戦するか想像もできない。


 流石に向こうの学校も予選の重要性に気が付いているだろう。


「第一回料理大会校内予選!! さあ、早くも屋台を完成させている各チーム。強度チェックも完璧で今まで隠されていた看板の布がはがされていきます。実況は私、二組の歩く拡声器こと、アデライデがお送りしま~す。って、誰よこの原稿書いたの!!」


「たぶん三組辺りの生徒だと思うけど、匿名で持ち込まれてるわね。拡声器ってこれよね? 理事長先生から託された魔導具だけど便利で面白いよ」 


 小型魔導拡声器。この世界にはまだマイクとかないし、盛り上げるためにはこうするしかないじゃん。


 あれのおかげで割と広範囲に声が拡散されるし、声が小さい子でも応援に参加できるし。っと、俺もそろそろ準備に入らないとな。特別枠だからほかの先生チーム同様今日は出店しなくても良かったんだけど。


 緊急時の通達とかもあれの応用で校内に張り巡らせた伝達システムでなんとかなるしな。生徒の安全の為だったら異世界の技術でもどんどん取り入れていくからね。


「屋台が設置されている近くに、大きなテーブルと椅子が用意されています。立って食べるのがちょっとという生徒は、そこで座って食べる事も可能です」


「立ち食いのどこが悪いのよ!! 天気のいい日とか外でよく見かけるでしょ!!」


 大貴族も割と多いからね。彼女たちは立食会があるから慣れてる事もあるけど、逆に中途半端な貴族はそこに呼ばれもしないから……。


 心情的にも座って落ちついて食べて貰いたいってのはある。テーブルの数に関してだけど、あれだけ並べるのは後片付けが面倒だから割と反対されたんだよな。って、中は凄い盛り上がりだ。気合の入った生徒も多いし、看板を掲げてる売り子まで用意してやがる。


「おお~!! 開場前からずいぶんと盛り上がってるな。大会運営委員、俺も屋台の準備をしないといけないから進行とかよろしくな」


「あ、勇者先生おはようございます。……あの屋台も物凄い大きいですよね?」


「使う魔導具がでかいからかなり頑丈にしたからね。あ、大会運営委員にも後でちゃんと報酬があるから楽しみにしてくれ」


「あの噂本当なんですか? 来年から運営委員の座の奪い合いになりませんか?」


 正直、大会で稼ぐよりも運営委員の方が報酬がいいように見える。今年はまだいいだろうけど、来年以降にカオス度が増すごとに割に合わなくなるだろうぜ。


「それだけの苦労はかけると思うよ。特に本戦はカオス度が今日とは段違いの筈だ」


「料理が売られ始めると大変だと思いますが、そこまでですかね?」


「学食を仕切ると考えてくれたらいいかも。本戦なんて規模的にはアレの数倍だぞ?」


 しかも学生だけじゃなく関係者まで大勢訪れる訳だし、学食どころじゃないかも。


「うわぁ……、そういわれると事前に知らされたあの報酬って妥当だったんですね」


「ははは、流石に俺でも過剰な報酬はあまり支払わないさ。ちゃんと適正な報酬でないと大会に参加する生徒にも悪いしね」


「誰に釘を刺されたんですか?」


「方々からかな? 最初に提示した金額は三秒で却下されたよ」


 文化祭の運営委員とは訳が違うんだぞ。


 超絶問題児の出す屋台約十店舗の監視や取り締まりまであるんだ。運営委員には当然教師も多数参加してるしな。


「それでもあの額は死守してくれたんですよね? 流石勇者先生です」


 そろそろ理事長って部分を思い出そうか?


 最近理事長呼びしてくれるの、ダリアたち教師とファルネーゼ位だぞ。それでも勇者って単語が入ったりするし。


「俺は屋台に集中するけど、何か問題があったらすぐに言ってくれ。その為に屋台出してるんだし」


「生徒たちにいらない気遣いさせずに常に現場にいる為ですか。流石ですね」


 トップがウロウロしてたら楽しめないだろ?


 屋台運営してたら問題ないし、俺の料理を食えば身分や立場なんて気にしなくなる筈。料理大会で旨いに勝る正義があろうか。


「今回は全生徒や職員が食べられる数を用意している。特別チケットは一枚ずつ配ってるよな?」


「私たちも食べていいんですか?」


「食べないとレポートできないだろ? 順番に店を回ってくれよ」


「は~い」


 せっかくのお祭りだ。生徒はもちろん参加する人にはおおいに食って騒いで楽しんで貰わないと。生徒たちがそこからいろいろ学んでくれたら、俺はもうそれだけで満足だよ。アレンジャーは見逃さないけどな!!


◇◇◇


「午前十一時三十分。今、高らかに大会開始の合図がなりました!! 運営委員最初のレポーターはアデライデがお送りしま~す!!」


「各屋台とも気合が入っています。今日予選に参加している屋台は十八。教師枠で確定済みのダリア教頭とナディーヌ先生のチームは今回不参加になっています。料理が食べたかったという意見もありますが、正々堂々と予選で戦えという声もちらほらと……。以上、アシスタントのルドーネでした~」


 言いたい放題だな。


 暴言とかを含めて余程の事でない限り咎めないように言ってるし、のびのびとリポートしてくれるだろう。


「えっと最初の屋台はこちら!! 五組のベルナチームです。出してる料理は……、なにこれ?」


「大鋏海老の唐揚げです。下拵えを十分にしてるから美味しいですよ」


「あれ食べれるんですか? 池とかにいっぱいいますよね?」


「オウダウとかだと割とメジャーな食材だよ? この辺りだとあまり食べないみたいだけどね~」


 大鋏海老の唐揚げだと!! 尻尾の身の部分を揚げたのか? ちょっと食ってみたい気分だ。くそっ、今日は屋台を出すべきではなかったか。


「おいしいっ!! ちょっとスパイスの効いた味付けだけど、ちょぅっとピリ辛なのがこのプリプリの身によくあってるね」


「でしょ? こんな食材を放置してるんだからすごいよね。うちは材料費はほぼタダなんだよ。スパイスも殆ど森で集めてきたし、安くなった塩を少々買ったのと油かな?」


「最初の屋台から大当たり。この激戦を生き残るのはどのチームなのか? さて次は……、同じ五組のチマールチーム。えっと、これも唐揚げ?」


「無難に剣猪(ソードボア)の唐揚げだ。材料の剣猪(ソードボア)は俺達で狩ってきたからうちもタダだぞ」


「ルッツァさんが同行してくれたけどな。あれを俺達だけとは言わないぞ」


「ばれなきゃいいだろ!! トドメはルッツァさんがさしたけどさ」


 それもはもう、自分達で狩ってきたとは言わないだろ。ルッツァの好意でもらっただけじゃん。


「という訳で、貰えたのは肉の一部分でした。大会用って事で割と多めに貰えましたけど」


「ルッツァさんに報いるためにも、本戦まで進みたいですね。さてとお味の方は……、泣いています、せっかく差し出した剣猪(ソードボア)をこんな味付けにされては、ルッツァさんが草葉の陰で泣いていることでしょう」


 死んでねえよ!! ルッツァを勝手に殺すな!!


 つ~か、隠れアレンジャーひとりめ発見。誰だアレンジャーは全員出場を諦めたとかいう情報流した奴は!! しっかり参加してんじゃん。剣猪(ソードボア)の唐揚げを不味く作るなんて本当に才能だぞ。マイナス方面ぶっちぎりだけど。


「わざわざマッアサイアまで足を延ばしたチームや、滅多に食べない川魚の串焼きまで用意したチームもありましたが、やはり塩味だけでは今一つですね~」


「最初の屋台が頭ひとつとびぬけていましたね。そろそろ唐揚げは見るのも勘弁して欲しい所です」


 ほんと。うちの生徒って食材を揚げりゃいいと思ってないか?


 半数以上が唐揚げで、そのうち三チームがアレンジャー。あそこは落ちるとして、ここから十チームにどう絞られる事やら。っと、俺は屋台で大忙しだけどな。客の波が途切れやしない。


 この場で焼いているけど、予熱の終わった状態の魔導オーブンを二十、アイテムボックスに用意している。そして使い終わったオーブンはすぐにアイテムボックスに取り込んで掃除して同じ状態に戻す。本当にいえばこの辺りは反則技だ。


「ほいよ。出来たてのビーフシチューのパイ包み焼き。熱いから気を付けろよ」


「わ~、おいしそう。器も貰えるんですよね?」


「洗って再利用してもいいし、捨ててもいいぞ」


「捨てませんよ~。では……っ!!」


 だいたい食べたら驚いて無言になるよな。うちの学食でもビーフシチューは隠しメニューで出してるけど、流石にアレとはレベルが違う。


 ひと口で濃厚なコクが口いっぱいに広がるし、ビーフシチューを吸ったパイ生地も絶品だぜ。お、アデライデたちがやってきたみたいだね。


「おおっ!! 流石に勇者先生の屋台。えっと、この時点で特別チケットの数が凄まじいですね」


「レポートお疲れさん。ひとつずつ用意したからそこで食べていくといい。券は無くてもいいぞ」


「もうダントツですよね。どうしてここ用の特別チケットを用意されたのか不思議でしたけど納得です……」


「後ろが閊えてるからレポートはテーブルで食べながらしてくれ」


「「は~い」」


 あいつらもテーブルで食べ始めたな。


 周りの反応に驚いてるけど、すぐにその理由が分かるさ。


「おおおおお、おいっし~っ!! ナニコレ? 街のレストランでもビーフシチューを食べた事があるんだけど、それ以上の味だよ!! あれ、貯めたお小遣いはたいて二百シェルくらいとられたんだけど!!」


「中のお肉も柔らかい……。これって牛肉だよね? 一番高い場所を使ったのかな?」


「つかってるのは最初の規定の時の仕様で捨て値のテール肉だ。ほとんどタダだぞ」


 あ、目が点になってる。


 手間が死ぬほどかかるけど、テール肉もおいしんだよ。フォンドヴォーも含めたらホントに手間の塊みたいな料理だぜ。


「大人げない!! こんなレベルの料理は流石に大人げない!! これ、大貴族の晩餐会レベルだよね?」


「カロンドロ男爵の晩餐会と同レベルなんじゃないかな? あの時に呼ばれてたけどあの時とほぼ同レベルだよ」


 実際には今日の方が気合入ってるけどな。


 今の発言でまた生徒の数が増えた。って、教師もほとんど全員並んでるだろこれ!!


「これは……、流石にやり過ぎでは?」


「あ~、なんだかヴィルナ情報だとこれでも相当に手加減してるらしいよ。理事長先生が本気で来たらこれ以上がいくらでもあるって」


「特別枠にされたわけが分かりました。でも、これは父兄にも大人気でしょうね」


「本番は最低二千個用意するから問題ないぞ。人気の無い牛肉の安いテール肉でも美味しいだろ?」


「なるほど。理事長にとっては本当にこれでもお遊びレベルなんですな」


「この街の料理をだれが教えたか。それを考えれば当然そうなんだよね~」


 手加減はしてるけど、手は抜いてないからね。


 ヴィルナなんて今日は顔も出してないし……。勝敗は分かってるみたいだ。


◇◇◇


「結果発表!! 特別枠で表彰の対象外ですが、勇者先生のビーフシチューのパイ包み焼きがダントツでした。全員食べたんじゃないかな?」


「参加した生徒からは、大人げない、手加減しろ、一人晩餐会など多くの意見を頂いております。味に関しての意見ですが、神レベル、今までで一番おいしかった料理。本戦でも絶対食べる。量が倍でもいい。などと好意的な内容だけでした」


「本当に極端だよね。それより本戦に進む八チームを発表かな。獲得票数ですべてが決まる!! 運命の瞬間!!」


 アレンジャーどもは無事に全員落ちたな。中盤以降は口コミで客もいなかったしな。


 大鋏海老の唐揚げを出した五組のベルナが一位。最後に食べたけど、本気で店にだせるレベルだった。グギャ鳥の唐揚げを出したサルチェのチームが二位。下味で工夫してたのが勝利の鍵だ。二組のファルネーゼが出したホットドッグが三位。ボイルして軽く焼くだけって方式で相当に売り上げを稼いだ。虎海老の塩焼きを出した二組のポルタチームが四位。って、本番であまり手をかけてない料理が多かったのは、数を稼ぐためだろうね。


 スペアリブのオーブン焼きは何とか数を熟せて七位に残ったけど、野菜炒めのチームは残念ながら予選敗退か。面白かったのが八位の突撃駝鳥(チャージオストリッチ)のポトフ風煮込み。あれ、夏場じゃなかったらもっと上位にいてもおかしくなかったのにな。


「泣いても笑ってもこれで決定!! 負けたチームも本戦で応援だ!!」


「「「「「お~!!」」」」」


 甘味系の店がホントに無かった。これ、あれだけ料理を売る店があるんだし、本戦では父兄を狙ってエールブクと売った方が儲かるだろ?


 食堂サイドで飲み物の販売が可能か確かめる必要があるな。


 今週末は熱い戦いが見られそうだ。……本戦用の料理を別に用意してるチームもあるんだろうしね。





読んでいただきましてありがとうございます。

誤字報告ありがとうございます。とても助かっています。

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