第二百四十一話 やっぱり長期休養期間の学校って独特の雰囲気があるよな。生徒の声も少ないし、あの問題児どもも流石にこの時期くらいおとなしくしてるだろう
連続更新中。ちょっと高熱が出てるので今日は短めになります。
楽しんでいただければ幸いです。
七月の最終週。
貴族領から来ていた生徒は殆ど地元に帰郷し、この街で暮らす生徒だけがいまだに学校でいろいろやっている。
仲が良くなった友達を実家に誘う生徒の数も結構いたが、アレはどう考えても青田買いというか外堀を埋めに入っているだけだろうな。男子生徒の数が少ないから能力が高くて見た目がいい生徒は争奪戦が割りと凄いと聞いているからね。
「やっぱり長期休養期間の学校って独特の雰囲気があるよな。生徒の声も少ないし、あの問題児どもも流石にこの時期くらいおとなしくしてるだろう」
「調理室から煙が!! 水!! 水をかけて!!」
「オーブンの調整間違えた!! そっちのフライパンも焦げてないか?」
「あ!! 肉が炭化してる」
言ってる傍からこれか?
夏休み期間中ぐらいおとなしくしてくれんものかな?
第一回合同料理大会に向けて料理の練習をしている生徒もいるけど、流石にオーブンはダメだろ。あれけっこう使い方難しいんだから。おとなしく簡単な料理にしとけばいいんだけど。
「いったい何を作っているんだ?」
「あ、勇者先生。スペアリブのオーブン焼きです。剣猪の肉が安く手に入ったので」
「肉醤まで買ってきたのか。割りと焦げやすい料理だからオーブンの加熱時間は気を付けた方がいいな」
スペアリブとはなかなかい所に目を付けたね。肉は美味しいし、数本単位で出せばボリュームも満点だ。
タレに使う香辛料は安いからいろいろ試しやすいだろうし、組み合わせ次第で本気で優勝も狙えるぞ。
「こっちのフライパンは野菜炒めですね。こうやって小さめのお皿で出そうと思うってんですが」
「どれだけ売れるかだけど、炒め物だったら大量に仕込めるし大勢の客が来ても対応しやすくていいな」
「慣れてないんで、割と焦がしちゃうのが問題ですね」
「本番までに腕を磨くしかないな。火をかけてるフライパンから目を離さない事だ」
大体料理中に目を離すってどうよ?
「オーブンから煙が出たから……」
「それは確かに目を離すかもしれないな。掃除をしてもう一度初めからやり直しだな」
「は~い」
流石にこうして使ったものに関しては、自分で掃除をさせる。
夏休み期間中も掃除の業者さんはいるけど、自分のミスは自分でなんとかしないとね。
「おいしそうな料理だな、本番も楽しみにしてるぞ」
「はい。優勝目指して頑張ります」
「向こうの学校には負けません!!」
対抗心なのか、今までのイベントより気合が入ってる生徒も多いんだよな。
その分、暴走する生徒も多いし問題行動の数々も枚挙に暇がないけど。
◇◇◇
校庭では屋台を組み立てている生徒の数も多いんだよね。屋台の購入費は出すって言ったのに自分で作りたいって生徒の数が多かったから、材料を大量に持ち込んで倉庫に保管していたりする。あそこから持って行くのは自由という形にした。
「だいぶ出来てきたな」
「あ、勇者先生。見てくださいよこの出来!!」
「市販の屋台にはない良さがあると思いませんか?」
作る料理に合わせて自分でカスタマイズできるのは大きいよな。敵に手の内を知らせないために看板はまだ掲げられていない。
「いい出来に仕上がってるな。これだったら料理の訴求力は十分だろう。まだ何を作るかは秘密だろうけどね。でも、屋台の材料は幾らでもあるんだ。想定するよりも何割か丈夫に作っておけよ」
「わかりました。商品を並べてから崩れたら大変ですしね」
「そこが一番重要だな。商品を並べるテーブル部分は特に頑丈にしておいた方がいい」
「それじゃあ、もう少し材料を取ってきます。この辺りを頑丈にしたらいいですかね?」
「上からだけじゃなくて、他からも力が入る事もあるからね。ここはもう少し丈夫にして、この辺りも少し補強した方がいいな」
「ありがとうございます。その辺りを改良しますね」
多少のハプニングもいいけど、流石に屋台が崩れるとか勘弁して欲しいだろうし。
この大会を通じて向こうの学校といい交流が出来ればいいとおもってんだけど、どう考えても敵対心しか生み出してないよな。
教師連中も割と対抗心燃やしてるし、盛り上がるのは間違いないと思うんだけどね。
◇◇◇
いろんな料理が出来てるのはいいんだけど、甘い商品はホントに見かけないんだよね。
米飴があるんだし、りんご飴的な物とかあってもいい気がするんだよな。
向こうの学校でエヴェリーナ姫が出場する場合、雷牙が色々アドバイスするだろうから、目新しい料理を出してきそうな気もするんだけどね。
問題は彼女がアレンジャーだって事だ。
「ポップコーンをキャラメル味で出すって手もあるんだけどね。キャラメル自体は売りだしてるし、たまに注文も来るからね」
タマゴボーロは乳幼児や子供のおやつとして今も割と売れてたりもする。
昔みたいに大量注文はないけど、商人ギルドが片手間程度でやってるレベルでね。
予算に制限が無いんだから、生徒たちでもバタークッキーとか売れるんだよな。あれだったらそこまで難しくないし。
料理と聞いてお菓子を連想する生徒が少なかったといいう事か。
スペアリブとかおいしそうな料理も出るみたいだし、俺も当日食べ歩きたいな……。店の商品が完売した後で食べ歩いてみるかな。
読んでいただきましてありがとうございます。
誤字報告ありがとうございます。




