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第二百二十九話 そりゃあのクラスの貴族の身形に合わせるとか没落貴族の少女には少し無理だろ。あのクラスの貴族って靴ひとつでも金貨が何枚飛ぶか分からないレベルだぞ

連続更新中。

楽しんでいただければ幸いです。



 五月第三週目の金曜日。先日の一件の詳細を聞いたけど、本当になんというか青春真っ盛りな痴情のもつれというか、ある男子生徒をめぐってのむなしいやり取りだという事が分かった。


 借金をさせようと画策した女生徒のガブリエラは一組にいる男子生徒のイグレシアスにひそかに恋心を抱いていたそうだ。で、そのイグレシアスは同じ一組にいるロレーナという女生徒に少し惹かれ始めていて、借金をしたのがそのロレーナという女生徒って話だ。ロレーナもイグレシアスの視線には気が付いてたみたいでね……。


 ロレーナは僻地の領地を放置しかけてた没落貴族。そしてガブリエラとイグレシアスは伯爵家。身に着けてる物から何からがまるで次元が違う。それでガブリエラがイグレシアスに釣り合う為にもう少し身なりを整えなさいとそそのかして借金を増やしていった。


「そりゃあのクラスの貴族の身形に合わせるとか没落貴族の少女には少し無理だろ。あのクラスの貴族って靴ひとつでも金貨が何枚飛ぶか分からないレベルだぞ」


「理事長の靴とか服に比べたらそれでも普通のレベルだけどね。あのクラスの貴族って理事長に近付かないでしょ? その服に染みひとつでもつけたらどうなるか理解してるからだよ?」


「学校に着てきてるのはそこまで最高級品じゃないんだけどね。あの新年会クラスの服を着てきたら流石に引くだろうけどさ」


「アレを着てきたら多分伯爵クラスの生徒はもう魔法学校に来ないと思うよ。プライドとか何から打ち砕かれるのは間違いないし」


 今持ってる最高レベルの服はあの時よりさらに数段上の生地でこしらえてある。


 女神フローラや天使たちが女神と並んでも遜色ない服といってたから、相当人外なレベルなのは間違いない。


「そこまでの物かな? 市場に出る事は無い服だろうけど、似たレベルの服位あるだろう?」


「歴代の国王でも無理なレベルだからね!! カロンドロ男爵の着てる服でも、他の貴族のプライドを軽く潰しちゃうのに」


「そういえばあの服で会談すると貴族どもがおとなしくなって助かるといってたな。そういう意味だったのか」


 貴族も優位に立とうとして一番いい服を着てくるだろうしね。


 この世界に出回ってる生地だと、あの服より格段に劣るものしかない訳だしそりゃ凹むだろうな。


「ほんとにどこであんな生地を手に入れてくるのさ。いまさらな部分は多いけど」


「今更だな。仕入れ先は教えられないぞ。それはそうと、あの借金の一件は完全解決したんだよね?」


「う~ん。一応お金の方はちゃんと話が付いたよ。でも、なんていうかさ、他にも原因があったの」


「それは初耳だけど」


「あのね。借金をした子のスタイルというか……、ここがね」


 そのジェスチャーは分かりやすいけど、何もない空間に手を動かすのは割とキツイだろ。


 ダリアもそこまで胸が大きい訳じゃないしな。


「ああ、あの年頃の子には大きな問題だよな」


「あの年頃じゃなくても問題だからね。不穏な発言は女性教師の不信感を煽るよ!!」


 確かに本人にとっちゃ大きな問題だよな。いや、気にしてる方は大きくないから問題なんだろうけど。それでその部分の格差でガブリエラって生徒が色々と心の奥で焼いてた訳か。


「……今日はヴィルナが臨時講師に来てるけどどうするつもりだよ。生徒レベルでの大きいとか小さいとか些細な問題になるだろ?」


「あ~。流石にアレ見ちゃうとあきらめるんじゃない? 理事長先生はアレを見慣れてるから気にならないかもしれないけどさ」


「破壊力は抜群だぞ? 俺だってアレを目の前にして動揺しない訳じゃないし」


「なにやらつまらぬ事で言い争っておるようじゃな」


 シャルの籠を下げてヴィルナが理事長室に入ってきた。一応ノックくらいはして欲しいかな……。


「……。生徒がショックで寝込まないといいけど」


 男子生徒も違う意味で大変だろうけどね。俺と結婚して落ち着いたヴィルナは表情も穏やかになったし、身内びいきじゃないけど本当に見る人の目を引く美人だしな。最初に顔に目が行く人間は少数だろうけど。


「すまないけど魔力のコントロールとか、その辺りの指導を頼むよ」


「ソウマ程の力を秘めた者などおらぬであろうが、魔力が少ないなりにうまく使う方法はあるのじゃ」


「さっすが、それじゃあこの後で指導お願いね。五組からでいいかな?」


「どのクラスからでもいいだろうけど、その方がいいだろう。場所は魔法実験場だね」


 さて、生徒たちの反応も楽しみだけどヴィルナがどんな指導をするかも楽しみだ。


 うまくいけば秋ごろまで定期的に指導して貰おうと思ってるしね。


「うなぁ~♪」


「シャルは理事長室で待っててね。トイレとおやつは置いていくから」


「にゃっ♪」


 シャルは意外に問題なさそうだな。短い期間しかいないけどこの部屋にも俺の匂いが染みついてるから?


 って、俺の椅子の上に寝てるし!!


「あ~、あの椅子座り心地良さそうだよね~。いいじゃない、今日はシャルに貸してあげれば」


「お気に入りのベッドも持ってきてたんだけどね」


 気持ちよさそうに寝てるからいいかな。一応簡易結界でここからは出れなくしてるし。


 さて、俺もヴィルナの初指導を見に行かないと。


◇◇◇


 教師側は俺、ダリア、ヴィルナ、ナディーヌの四人と五組の生徒が揃った魔法実験場。一応今日も魔法を使う予定なのでターゲットを並べてある。ここを使う場合は魔法関係の授業なんだけど、何かあっても安全ってのも大きいんだよね。


 しかし、生徒全員の視線は主にヴィルナの胸に注がれてる。そこの男子生徒、ヴィルナは俺の嫁だから横恋慕しても無駄だぞ。


「今日は臨時教師をさせて貰うヴィルナじゃ。知っておる者も多いじゃろうがわらわは聖魔族で理事長であるソウマの妻じゃ」


「はい。そういう事なので失礼な質問などは一切なしですよ」


「質問があります。胸はどうやったら大きくなるんですか!!」


「だから!! 失礼な質問はダメですって!!」


 珍しくナディーヌが慌ててるな。俺がヴィルナ関連だと割と沸点が低い事を知ってるからなんだろうけどね。大丈夫、その位だと怒らないから。


「種族特性や体質も大きいが、魔力も大きく関係してくる話じゃな。魔力が大きく、魔力のコントロールが上手いものは胸が大きいじゃろ?」


「え? 一応関係があるのか?」


「ソウマの様に魔力が高くても男はダメじゃな。男の場合は既に(ヴリル)が身体強化に影響しておるので魔力でそれ以上に身体に何か起こる事は無いのじゃ。女性の場合は体内の魔力循環、流れをコントロールする事で様々な効果があるのじゃぞ」


「えっと、それ私も教えて欲しいかな~」


「魔力の体内循環を感じ取れる者はどこに魔力が多く流れておるとか、魔力が溜まっておる事が分かるであろう。魔法を使う際は全身から使う事が可能なので基本総魔力で行使可能じゃが、体内の魔力循環をうまく活用すれば少ない魔力でも魔法が使えたり、同じ魔力量で高威力にすることも可能じゃ」


 ……普通の授業よりみんな真剣に聞いてんじゃん。ていうか、ダリアとかナディーヌまで一緒になって聞き入ってるんだけど。


「さて、一番聞きたい事じゃろうが魔力をどこにどう流せばいいのかじゃ。循環する魔力を胸に留めるように常に意識すれば胸が魔力タンクの役割を持つのじゃ。別に胸でなくてもよいが胸の場合は豊胸の効果があるのでな。同じ方法で髪に魔力を貯めこむものもおるようで、長髪のエルフなどは自然に髪に魔力が溜まっておる場合が多いの」


「それで森にいた姉様方は皆髪が美しく……。確かに魔力の高い姉様はそうでした……」


「主らの年齢であれば顔の出来物に悩むであろう。高価な傷薬を使えば跡も残さずに完治するのじゃが、魔力の流れをよくすれば、そもそもそんな出来物など浮いてこぬのじゃ」


「今日の授業は永久保存版よ。これは書き留めとかないと!!」


「今までで一番ためになる授業だわ!! 流石は勇者理事長先生の奥様」


 ノートに書く事も推奨してるけど、女性は全員ノートにヴィルナの言葉を漏らさず書き留めてる。


 本当に今までの授業で一番真剣に聞いてるんじゃないかと思うぞ。眠そうな生徒なんて一人もいない。


「あの……、魔力の体内循環ってのがよくわからないんですが」


「ふむ。ソウマも最初はそうであったな。そこのお主、こっちに来るがよい」


「あ、はい」


 ん? ああ、俺の時みたいに背中に抱き着かずに、背中に軽く手を当てているだけ?


「こうすれば背中から魔力が流れてくる事が分かるであろう?」


「……はい。これがそうなんですね」


「そうじゃ。お主の場合は元の魔力量が少ないのも問題じゃが、魔力の体内循環がうまく働いておらぬのじゃ。こうして身体に魔力を循環させれば少しずつ魔力も上がってくるじゃろう」


「凄い。魔力の流れが私でもわかる」


「その状態で魔法を使ってみるがよい。普段よりも威力が上がっておる筈じゃ」


「……魔弾(マギーア・グロブス)!! あ……、凄い今までより威力が上がってる!!」


 魔力循環とコントロールが少し良くなったから魔法の威力も上がる訳か。


 他の生徒も試したがってるな。


「魔力の体内循環が掴めない生徒はヴィルナが指導。他の生徒は自分で練習して魔法の実践でいいかな?」


「そうですね。それで問題ないと思います」


「ちゃんと一列に並ぶのじゃ!! 割り込んだりすれば指導はせぬのじゃ」


「うわ~。あの一言でみんなまじめに並び始めたよ」


「五組の生徒でこれだけ変化があれば、一組の生徒は凄いかもしれませんね」


「一組の生徒は割と自分でなんとかしてるんじゃないですかね? ヴィルナみたいに完全に把握はしてないでしょうけど」


 胸の格差というか、確かに一組の生徒の方が胸が大きな子が多い。それ以外の子だと髪を伸ばしてたりしてるみたいだし、なんとなく感覚で気が付いてるんじゃないかな?


 魔力の体内循環をあそこまで把握できるのは聖魔族だからだろうね。禍々しい魔素とかの流れを読んだりできるのも聖魔族だからだろうし。


「大人気だね。ヴィルナ先生」


「神をみるような目でヴィルナをみてる女生徒もいるな。魔力量は少しあるけど使いこなしてなかった生徒もいるんだろうし」


「今日の授業は衝撃でしょうね」


 この後も昼休憩をはさんで一組まで授業を続け、全てのクラスでヴィルナの授業は超が付くほど好評だった。


「定期的に授業を行って欲しいそうなのですが……」


「よくて週一じゃな。イベントの無い金曜日に特別授業を行うとするかの」


「来週はクイズイベントだし、次の授業は六月だな」


 この日の授業でヴィルナは全女生徒の憧れの存在になり、なんだかお姉様呼びする生徒が一定数存在するようになった。


 魔力循環をうまくコントロールし始める生徒も増えてきたみたいで一週間ほどで肌や髪が綺麗になった生徒が増え、購買での下着購入申請も増えた事からあの授業でいろいろと効果はあったんだろう。


 そうそう、心配していたシャルは理事長室でおとなしく夕方まで寝ていた。


 一応休憩時間のたびに様子を見に戻ってたんだけどね。




読んでいただきましてありがとうございます。

誤字報告ありがとうございます。とても助かっています。

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