第二百話 男だけだと割と茶色一色でも気にしないんだけどね。栄養のバランスとか色々考えてるしさ、この一人前用の小さな鍋は汁物の代わりだよ
連続更新中。第二百話まで来ました。ありがとうございます。
これからも楽しんでいただければ幸いです。
という事で今夜は盛大に唐揚げ大会~♪
毛長鶏のモモ肉の唐揚げはもちろん、元の世界の地鶏なんかも色々と揚げてみた。鳥の唐揚げもいいけど、豚の唐揚げもおいしいから一緒に揚げているぞ。
ソースはウスターソースに自家製ポン酢、ケチャップにレモン汁、マヨネーズや七味なんか用意してるので完璧だ。追加でソースを使わなくても十分に味はついてるんだけどね。この辺りは好みの問題なので仕方がない。
そして今回は刺身としてマグロの炙りを用意した。やっぱりまだ生で出すのはどうかと思って炙った中トロの部分を出したんだけどどうだろう? 味付け用に刺身醤油とワサビを用意してみた。
「これは凄い光景じゃな。唐揚げだけでなく、彩も考えてこの赤い何かや緑色の温野菜、それに黄色い卵焼きなどもそろえておるのが流石じゃ」
「男だけだと割と茶色一色でも気にしないんだけどね。栄養のバランスとか色々考えてるしさ、この一人前用の小さな鍋は汁物の代わりだよ」
「それでこの赤い何かはあのカツオのタタキという物とは違うのか?」
「今回はマグロだね。異世界産のなんだかすっごいマグロだったよ」
品種改良されていない魚とかは、異世界産の方が美味しいものもあるんだよな。
蟹とか海老とかも身が甘くて締まってるのとか、信じられない位にデカいのとかあるし。
「カツオのタタキと違ってほのかに暖かく、蕩ける様な脂の濃厚な旨味が凄まじいの。確かにタタキとは少し違うようじゃな」
「炙り系の刺身は暖かいうちに仕上げてるからね。タタキはどうしてもタレとかをかける分少し冷めてるというか……」
アレもやり方次第なんだろうけどね。
「にゃぁん♪」
シャルは炙りマグロの刺身だったら食べるんだ。缶詰とかとは流石に旨さが全然違うしな。
さて、メインの唐揚げはどうかな?
「相変わらずソウマの唐揚げは最高なのじゃ。同じように揚げておるのに、わらわが揚げると硬くなったりするのじゃが」
「下拵えの時点で色々してるからその差かな? 肉を柔らかくする方法も色々あるし、どれがいいとはいいがたいんだけど」
丁寧な下処理してるかどうかで揚げる前に割と完成形って確定してるからな。
下拵えを失敗した状態で揚げても柔らかくもならなければ味が浸み込んだりもしないから。
「やはり料理は奥が深いのじゃ。同じように調理しておるつもりなんじゃが、ソウマの作る料理にはまだまだかなわないのじゃ」
「俺の場合は色々あるしね。ヴィルナの料理がマズイって事は無いし、かなりの腕前だと思うよ」
実際、料理を始めてからの時間を考えると相当にセンスがあるというか、料理の才能があったとしか思えない。
俺が外出してる日とか、一日中料理の練習をしたりしてるみたいだしね。
「こうしてつけるソースを変えると味が変わるのも面白いのじゃ。このウスターソースも色々あるようなのじゃが」
「そのソースも使ってる材料で割と味が変わるよね。ポン酢醤油も使う柑橘類でかなり味が変わるし」
「これも毎回割と味が変わっておるとは思っておったが……。料理に使っておる材料に関係あるのじゃろ?」
「脂が強い食材の時には少しだけ酸味を強くしたり、香りがいい物を使ってるね」
後味が少し爽やかになる系の柑橘類ね。この世界の物だからなんて表現したらいいのかわからないけど、香辛料といい謎に使いやすい物が多いんだよな……。
「鍋は魚や蟹がメインにしておるのじゃな。このサイズというのも面白いのじゃ」
「旅館風というかね、俺のいた世界の旅館とかだとこうやって一人前ずつの鍋とかがよく出るんだ。今日は唐揚げが主役なんで、汁物代わりに小さい鍋にしてみた」
「大きな鍋じゃと持て余す可能性があるしこの方法も面白いのじゃ。蟹もおいしいのじゃ」
その蟹も何か怪しい名前だった気がした。
ズワイガニっぽいんだけど、大きさとかは結構でかかったしな。鍋に入れてるのはでかすぎたからひとり足一本ずつだけだし。
「……ヴィルナも料理ってかなりできるよね?」
「ソウマにはかなわぬがな」
「人に教えたりするのが上手い?」
「わらわも勉強中じゃが、教えたりするのはどうかわからぬな」
そうだろうね。でも、多分俺が教えると鬼の特訓コースにしちまう可能性が高いんだよ、無限キャベツの千切りとか。
「向こう次第だけどさ、雷牙と結婚予定のエヴェリーナ姫に料理を教えてやれないかと思ってるんだ」
「あの小娘か。一年ほど前に楽しい事をしてくれたが、結果としてこうしてソウマと結ばれたのでよしとしておる。料理か……」
「金は持っているだろうし食事なんて外食で済ませりゃいいんだろうけどさ、家で食べる料理ってのもいい物だと思うんだよ」
そのうち子供もできるだろうし、そうなると料理位できた方がいいだろう。
大きなお世話かもしれないけど、一回くらい聞いてあげてもいい気がするんだよね。
「簡単な料理からじゃな。あの小娘がどの位料理が出来るか知らぬしな」
「聞いた限りでは経験値はほぼゼロだろう。晩酌用の肴もほぼ七輪で焼いた物らしいし」
「それはちょっとアレじゃな……」
雷牙は貧乏舌というか、割と何でもおいしく食べられる奴だからいいだろうけどさ。エヴェリーナ姫の方がかわいそうだろう。
雷牙に料理の腕を期待するのは間違ってるし、仕込むんだったらエヴェリーナ姫の方なんだよね……。
さて、向こうに持ち掛けてどう反応するかだよな。
◇◇◇
雷牙にブレイブフォンで話を持ち掛けたら、さっそく次の日にエヴェリーナ姫が訪ねてきた。当の雷牙はというと、邪魔なので家に置いてきたというエヴェリーナ姫の好判断だった。
「すいません。私は料理を始めたばかりで全然だめでして」
「最初はみんなそうだよ。雷牙を連れてきてもよかったのに」
「あの人は七輪で炙れば酒のつまみが出来ると思っている人です。牛丼もおいしいですけど、あれ多分……」
「俺が以前渡した分だね。他に料理は?」
「ほとんど外食ですね。この街は美味しい店も多いので、食べるのに困らないんですけど」
流石に毎日は飽きるだろうし、家庭料理とかの素朴な料理もいい物だよね。
「ソウマのレベルは無理じゃが、簡単な料理であれば作れるようにはなる筈じゃぞ」
「流石にわかっています。あの新年会の料理を超える料理にはいまだに出会っていませんので」
「街のレストランであのクラスの料理は出ないと思うよ。全部超特級品だったから材料揃えるのも一苦労だし」
あれを店で出すといくらくらいになるんだろうね?
最低でも一万シェルクラス? コンソメスープの材料とか、デザートだけでも再現が不可能なレベルだから。
「あの時出されたワインにかなうものもありませんよ」
「水代わりのワインと違って本格的なワインだしね」
「さて、話しておらんと料理に入るのじゃ。こっちが台所なのじゃ」
「わかりました」
「俺も見学に行くかな」
「ソウマはシャルの相手じゃ。声だけでもわかるじゃろう?」
「うなぁ~♪」
いや、シャルも足に手を置いて遊んでモードになってるし。
「わかったよ。あ、傷薬を渡しておくから怪我をしたら使ってくれ」
「本当に甘いのじゃ」
包丁とかで怪我をしたら嫌じゃん。傷薬を使えば傷跡も残らずに治る訳だしさ。
……シャルも我慢できずに俺の足を登ってきたし、向こうで遊んであげるかな。
「そうじゃ。包丁を使う時は指の形を……」
「まだ慣れないのでそこまで……。っ!!」
「集中せぬとそうやって手を切るのじゃ。傷薬があるので、そこで傷を水で流してこれを使うのじゃな」
「本当にすいません」
割とスパルタ? 声の感じからそこまで厳しくはなさそうだけどね……。
◇◇◇
「それで今日作ったのがこれかな?」
「茄子の焼き浸しと、大根の煮物じゃな」
ちゃんと面取りされた大根の煮物と、多分フライパンで焼いた茄子の皮を剥いで出汁に浸したもの。面取りとか皮むきは結局ピーラーを使ったらしい。その辺りの調理道具は雷牙にも渡してあるし問題ないだろう。
煮物に関しては手順さえ間違えなければ失敗しにくいしね。
「感動です、わたしにも料理が作れました。ヴィルナさんがご迷惑でなければ、週に何度か教えていただければ」
「そうだね。ヴィルナの都合が良ければだけど……。あとこれは簡単な料理の入門書。家でも練習をするといいよ」
「ソウマも用意周到じゃな。今日作った料理はもって帰るがよい」
「試食はしたし、問題ないと思うよ。雷牙も喜ぶだろうし」
「本当にいろいろとありがとうございます。私たちもソウマさんやヴィルナさんみたいな夫婦になれるように頑張ります」
そういわれると少し恥ずかしいけど、多分雷牙とエヴェリーナ姫だったら大丈夫だと思うよ。
雷牙は浮気をするような男じゃないし、抵抗しない誰かに暴力を振るう奴でもない。
子供に関しては……、溺愛しそうな気がするよな。
読んでいただきましてありがとうございます。
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