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第百九十九話 この世界だと定期的なボーナスが無い分、割と大きな儲けが出た時に従業員に還元したりするんだよね。商人ギルドとか冒険者ギルドでも一時金を出してたし

連続更新中。

楽しんでいただければ幸いです。




 十三月に突入した。というかこの十三月ってのがなんかすっごい違和感というか、十二月の後にもうひと月あるってのが慣れないんだよな~。


 この世界にもボーナスというか年末の一時金的な風習を広めるべきかどうか迷ってるんだが、今までこっちの世界に来た異世界人は誰一人ボーナスを教えてこなかったんだろう。スティーブンすらなんじゃそれ状態だったし。


「この世界だと定期的なボーナスが無い分、割と大きな儲けが出た時に従業員に還元したりするんだよね。商人ギルドとか冒険者ギルドでも一時金を出してたし」


 でなけりゃあれだけ忙しくて同じ賃金じゃやってられないよね。どっちのギルドも馬鹿みたいに儲けが出てるから、職員の給料が今はすっごいって聞いてはいるけど。


【こっそり接触ぅ……。例の約束があるから女神フローラは接触できないし、私たちもできるだけ接触しないように言われてるんだよぉ~】


 ん? この声は天使ユーニスか。


 やっぱり例の魔法の件って難航してるのか?


【魔導書そのものを渡すのはアウトみたいで、他の手段を考えてるんだけど、それもいくつか問題があるの。あなたの魔力量は多いんだけど、それでもオリジナル系って使えない可能性が高いし】


 なるほど、俺の魔法力不足とかの問題か。しかしさすが女神フローラ、その辺りまで考えて手配しようとしてくれてたんだね。


【女神も約束は守るよ。そこでこっちからアドバイス。エッチ系じゃなくてもいいから、恋愛系の娯楽小説とか送って貰えると嬉しいな。女神フローラと私たち分】


 寿買(じゅかい)で買った作品でもいい?


【あ、それはあなたの力を利用してこっちでも手に入れられなくもないんだ。代金はこっちで払ってるし、お礼もしてるんだよ】


 ワールドリンカーの力の無断使用か。流石に悪事には使ってないだろうけど、それは世界平和に関係ない気も……。


【その力で物凄くこっちの世界の平和は守られてるんだよ。ご飯の一件で分かってると思うけど、こっちには娯楽とかも本当に無いからさ~】


 粗食で終わりの無い世界救済の仕事三昧とか確かにぞっとするな。俺だってたまには息抜きしてるのに。


 最近はヴィルナと居間のモニターでいろいろな映像作品の鑑賞とかして、話が出来るのもいいんだよね。


【流石にその機械をこっちに持ち込んだら女神フローラに怒られるの。欲しいけど我慢なんだよ】


 という事は娯楽は本とかだけなのか。


 仕方ない、今度書店に行っていろいろ見繕ってみるよ。


【ありがとう!! そろそろ見つかりそうだから……。またね】


 女神フローラ用のフォルダに保存してる料理とかは減ってるけど、前よりかなり少ないというか結構我慢してる感じなんだよね。


 天使たち用のフォルダは相変わらずな勢いで消費されてるんだよな。食べてくれた方が俺も用意する張り合いがあるんだけど……。


◇◇◇


 最初に天使たちがくれたヒント、書店を探せってアレ。アレはこの世界にも元から結晶化解除の魔法の情報が書店に隠されていると考えていいだろう。


 女神フローラに貰えるからと思って、今まで行動してこなかったのは俺の怠慢かもしれないな。


「例の店は華麗にスルーして、普通の本屋。この本屋は小説系の品揃えが多いと聞いてるんだけどどうなんだろうね? 学校用の書籍も仕入れてる店だけど」


 情報源はダリアだ。


 魔法学校に置く予定の本も、堅苦しい難しめの魔法関係の本ばかりじゃじゃなくて、こういう読みやすい本も揃えたらどうかなとか言っていくつか店を教えてくれたんだよな。本の購入代金は俺持ちだが、貸し出し用の細工とかハンコ押し作業とかは全部任せた。


「いらっしゃいませ!! また学校用書籍の仕入れですか? 新書なんかもたくさん取り揃えていますよ」


「今日は私用だよ。いろいろ見ておかないと流行りとかに疎くなるからね」


「春から通い始める生徒は恵まれていますね。あそこまでいろんなジャンルの本を揃える魔法学校なんてないですよ」


 本気でこの店の書籍を丸ごとひと店舗分は別注文で仕入れて貰ったからな。


 最新のシリーズ以外は学校の図書室にあるんだけど、流石にあそこで読むのは色々と抵抗がある。それに今回買う小説はヴィルナに読んで貰おうと思ってるしね。ヴィルナって意外に本を読むのも好きっぽいんだよ。


「勉強ばかりだと息も詰まりますからね。生徒たちにはのびのびと学んで欲しいと思っていますよ」


「本当にいい理事長先生ですね。何か書籍をお探しの際には声をかけてくださいね」


 こういった店舗は大手の納入先があるのとないのでは経営上かなりの差が出てくる。


 こっちも一度仕入れたからには定期的に仕入れてあげないと、学校用に入荷させた在庫を抱えさせてしまうしな。


「料理関係の本も多いな。この辺りを今度雷牙(ライガ)にプレゼントしてみる?」


 この世界で発行された初心者用の料理入門書。


 雷牙(ライガ)には元の世界の本を渡しているんだけど、電子レンジも無い世界だとレシピがほとんど役に立たなかったんだよね。


 はっきり言って今のままで結婚して家で食事とかになると、出来合いの料理を外で買ってきてそれを食べるパターンの方が安全だろう。


「そのあたりの本は人気ですね。書いているのは冒険者ギルドのシェフですし」


「この本ってジェシカが書いてるのか。冒険者ギルド監修とか書かれてるね」


 裏書をみたら流石に剣猪(ソードボア)製フォン・ド・ブフモドキとかの作り方は載っていないみたいだね。買わないと中身は見れないから、これ以上の情報は調べられないけど。


「料理系の本はいくつも出ていますよ。剣猪(ソードボア)製フォン・ド・ブフの作り方が書かれているこの本なんて大人気なんですけどね」


「アレの作り方を公表してる奴がいるのか。情報を流したのはたぶん冒険者ギルドの元職員だろう」


 作れるのが分かっても、アレを作る根性があるかどうかは別だろうしね。


 はっきり言って真面目に作ったら先に心の方が折れるぞ。相当デカいレストランが目玉メニューにする為だったらいいけど、必要な剣猪(ソードボア)の骨とかは冒険者ギルドが押さえてるから割と不利なんだよな。


「料理にもお詳しいんですね」


「趣味で色々していますので。この辺りの本と新しく出た小説はありませんか?」


「新刊はあの辺りですね。出始めは少し高いですけど」


「ほとんどが手書きですからね。魔法を使う人もいますけど」


 この世界の割と割のいいバイトにこういった書籍の複写がある。なんでも目の前の書物をそっくり写す魔法があるそうで、それを使って本を量産すれば一冊当たりの給金を考えると肉体労働をするよりはかなり割りがいいという話だ。


 違法コピーは当然処罰対象で、正規に仕事を受ければそれなりに収入になるのでわざわざそこに手を出す人間はいない。


「この辺りの新刊は一冊八十シェル。あっちは百シェルです」


「流石に出たばかりだから高いか。でも、本を書くのって大変だしね」


 他のあまり娯楽の無いこの世界だと一冊買ってそれを人に貸して回し読みとかするらしい。


 そうすると百シェルで何冊も別の本が読めるし、新刊でなければ半値位だから今のこの街の状況だったら小遣いで買える人も結構な数で存在するしね。


「この価格の本を買える人が結構いる街ってすごいですよね。私も移民組ですが、元の街ですと今の半分も売れませんでした」


「金も物も仕事も溢れていますからね。いまだに人手不足とか凄い状況ですよ」


「絵本とか簡単な読み書きの本も売れていますよ。この街で生まれてくる子供たちは、本当に幸せですね」


「もうこの街で教会に我が子を置き去りにしないといけない人はいませんからね。すべての街がこうなればいいんですけど」


 流石にそこまで世界を安定させるのは一苦労だけど、せめて誰もが好きな物を食べられる位に食料事情は良くしたい。


 この世界は不思議と戦争があまりないのが救いといえば救いだな。人同士で争う前に魔物の存在を何とかしないといけないのも大きいけど。


「まずはこの国からですね。本は心を豊かにします。この店を始めた時は少し不安でしたが、今はこの仕事を初めてよかったと思ってます」


「それじゃあこの辺りの本を……。新刊と料理本を合わせて十冊ほど」


「はい、毎度ありがとうございます。八百シェルです」


 とりあえずヴィルナへのお土産にはなるけど、この中に当たりがあればいいんだけどね。


 天使と女神フローラ用の本は別の店でそれぞれに十冊購入してみた。全部恋愛ものにしたけど、どうだろうね?


◇◇◇


「それでまた本を買ってきたのか? こうして本を読むと割とシャルが邪魔をするのじゃが」


「なぁぁぁぁっ♪」


「うん。猫ってそういうことするよね。わざと構ってモードに入るっていうか」


 寝てた筈なのに近くで鳴いてたり、膝に乗ってくるんだよね。


 普段遊びもしない玩具持って来たり。


「シャルを膝にのせて読む本も悪くないのじゃが、たまに本の間から顔をのぞかせたりするしの」


「構って欲しいのは分かるけどね……。まあそれを読んで何か分かったら教えて欲しいかな」


「ソウマはこれから晩御飯の準備か?」


「そうだね。今日は天使たちの分も作るから結構な量を仕込むよ」


「ソウマは本当にお人好しじゃな。天使たちもそこまで強請らんでもよかろうに」


 そういわれても俺の料理の方が美味しいって言われたらやる気も出るって。


 俺の力を利用して寿買(じゅかい)の総菜系は買えるはずなのに、わざわざ俺の料理を頼んでくるくらいだしさ。


「何か食べたいものがあったら作るよ」


「そうじゃな。久しぶりに唐揚げなどどうじゃ?」


「そういえば普通の唐揚げは最近作ってなかったな。今日は唐揚げをメインに何か考えるよ」


 つけダレとかを変えれば色々楽しめるしね。


 汁物と副菜を何にするかな? シャルの分の唐揚げは先に作って冷まして小さく刻んどかないといけないし、天使たちの分も考えたら早めに始めてしまおう。毛長鶏(けながどり)は漬け込んで仕込んだ状態で保存してあるし、後は揚げるだけか。その揚げるのも大変なんだけどね。


 ヴィルナや天使たちが喜んでくれるからまあいいか。




読んでいただきましてありがとうございます。

誤字報告ありがとうございます。助かっています。

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― 新着の感想 ―
[一言] 俺だったたまには息抜きしてるのに。 →俺だって偶には息抜きしてるのに。
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