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第百七十四話 ヴィルナ、シャルの目が怖いからウズラモドキが怯えてるんだけど……。台所には流石に入ってこないけど、そこから動かないよな?

連続更新中。

楽しんでいただければ幸いです。




 安請け合いをすると苦労するものだけど、今回の一件は俺にもいろいろ考えがあるから仕方がない。


 大量の種子とかも入手できたし完全にタダ働きって訳じゃないけど、ここ数日はほぼ無報酬で南方で入手した様々な物を調べたり何が作れるのか試したりしている。


 作った料理の多くは俺やヴィルナのおなかに納まってるんだけど、今日の食材についてはシャルの視線が怖い位だ。すでに絞めた鳥もいるけど、まだ生きたまま籠に入れてる鳥もいるしね。


「ヴィルナ、シャルの目が怖いからウズラモドキが怯えてるんだけど……。台所には流石に入ってこないけど、そこから動かないよな?」


「普段狩りの練習をせぬくせに、籠に入ったその鳥には興味を持っておるようじゃな。シャルこっちに来るのじゃ、今のソウマの邪魔をすると流石に怒られるのじゃぞ」


「にゃぁぁぁぁっ!!」


 よほどこののウズラモドキを襲いたかったのか、連れていかれるのをすっごい嫌がってたな。でも、シャルは怒っていてもヴィルナを噛んだり引っかいたりはしないんだよね。


 台所には一歩たりとも入ってこないのも流石だ。


「ウズラモドキはつくねとかローストとか幾つか料理のレシピはあるけど、どっちかというと卵目的の方が大きいかもしれないな」


 食材にする方向と、愛玩動物コース? 割とかわいいし飼いたいっていう人もいるかもしれない。飼うんだったらちょっと色が地味なんだよね。


【その鳥はもともと愛玩動物ではないんだし、仕方がないんじゃないかな? 食べるのは少しかわいそうな気がするし……】


 話し方からして天使かな? 今回の件で割と手伝って貰ってるからこっちも助かってる。


 確かに食べるのはかわいそうだけど、食べると割とおいしんだけどね。女神用フォルダに完成してるウズラモドキのつくねとローストを保存してみるか。


【ん? ああ、コレがその鳥の料理ね。……うん、この鳥は食用ね、名前もウズラモドキでいいわよ】


 この鳥には正式な名前が無いのかよ!! 天使が勝手に命名して怒られても知らないぞ。


 面倒だし、ウズラモドキでいいんだったらそれでいくか。卵は中華丼の具で決まりだな。串焼きにしても絶対おいしいぞ。


「正直、食用になりそうにない鳥とかは最初っから持ち帰らなかったんだよね。南国インコ系とかは愛玩用にした方がいい」


 鑑定には食用可とか出やがったけどな。極限状態でもなけりゃインコとか食わないっての。食べられるかどうかの判定は重要だけどさ。


 今回持ち帰ったものの中で、このウズラモドキとかは割と扱いが早く決まったものの一つだ。


 他にもイタリアントマトによく似たトマトとか、フルーツトマト系は鑑定後に即座に使い道が確定した。これをこの辺りでも育てられれば、トマト料理の幅が広がるぞ。そのまま食べるんだったらこの辺りのトマトでもいいんだけどさ。


「で、このナッツ類とか、珈琲の実なんかは処遇に困るんだよな」


 中の種を珈琲豆に加工するには時間も無けりゃ数も圧倒的に足りない。すでにいくつかはプラントに送ってるからあっちで育てられてるけど、近い種類の珈琲豆を完成品として提供してみるか?


【さっきの料理のお礼でとりあえず調べた限りそこまで特殊な力を持つ木の実は混ざっていなかったよ。生命の樹なんかはその辺りには生えていない筈だしね】


 生命の樹?


【生命力をものすごく高めたり、死者とかを生き返らせる力を持つ樹。主にその力は木の実に宿るんだけど、ごくまれに樹液とか葉っぱにも宿る事があるの】


 割とよく聞く話ではあるね。俺としては見つからなくてよかったと思ってるよ。


 そりゃ強力な傷薬が出来るのはいいんだけどさ、どうせ冒険者とかには使えない値が付くだろ? それに、死者蘇生の薬はそこまで出回っていいものじゃない。


【クライドってほんとこっち寄りの考え方してるよね。天使とか神様とかの考え方に近いんだけど、本当に人間よね?】


 正真正銘人間だっての。失った命を取り戻すのは悪いとは思わないよ。でも、色々限度があるし、それが当たり前の世界になるのはまずい気がするんだよね。


 やっぱりさ、死にましたじゃあ生き返らせましょうってのは理にかなってないだろ? 四肢の再生とかは悪いとは思わないけど。


【例えばヴィルナさんが死んだとして、あなたはそれを受け入れるの?】


 蘇生手段があるんだったらそりゃ試すよ。蘇生手段も最後の最後までいろいろ足掻くだろうね。


 でも、ヴィルナがそれを喜ぶかどうかはわからないし、俺の自己満足に終わる可能性だってあるんだ。天寿を全うした場合は仕方ないと思うし、絶対に受け入れられない状況でもない限りそのまま看取る事はあるよ。


【なるほど、寿命までは守ってみせるって考えなのね。そして天寿であるならばその死を受け入れると……】


 その時までにヴィルナとは色々話しあうし、お互いの意思を確認しておくさ。


 少なくとも俺の目が黒いうちは誰かにヴィルナを殺させたりしない。


 その件はこっちに置いておくとして、何か特殊な力を持つ木の実とか混ざってなかった? そこまでって事は、多少は特殊な力を持つ何かがあるんだろ?


【流石にそこを聞き逃さないわね。この辺りなんかは単体ではそこまで役に立たないけど、モリヨモギとか組み合わせれば少しは強力な傷薬が作れるわよ】


 なるほど、この小梅みたいな木の実ね。この辺りは傷薬も高いんだよな……。


 装備の質は上がってるしこの辺りの魔物はそこまで強くないから問題ないけど出来ればもう少し安くなるとありがたい。


【その実は大量に生るから、今よりは安く供給できるようになると思うわ】


 売る側が安く提供すればね。


 多分そのまま傍観してたら今と同じ値段で売ると思うし、この街で売れないんだったら他に持って行くだろう。どこに需要があるか次第だ。


 特別な木の実は傷薬の材料だけ?


【他はあまり効果が無いわよ。後は美味しいおやつとか料理のお供かな?】


 ナッツ系は加工に時間がかかるものも多いから、すぐに商品化するのは難しいかもしれない。


 でも、うまく加工出来たらナッツ系って保存食としてもかなり優秀なんだよね。美味しいものも多いし。


「とりあえず料理はこの位で、イタリアントマトは水煮にして瓶詰にしたし、ケチャップにも加工した。イタリアントマトをケチャップにするのは暴挙だと思うけど……」


 ピザにパイナップルを乗せる位の暴挙だろうか?


 個人的にはフルーツピザはあまり受け入れたくないけど、フルーツのサンドイッチとかは普通においしいし加熱したら甘くなったり食べやすくなる果物も結構あるしね……。


【乗せる果物次第じゃないかしら? アップルパイだっておいしいでしょ?】


 それとフルーツピザを比べるのはどうよ? アップルパイも含めてパイ生地使う料理にデザート系は多いし、そもそもパイ生地はいろんな状況で使えるだろ? ポットパイスープとかさ。


 冬場には喜ばれるし、それ以外の季節でも一品料理として追加したらお弁当とかが豪華になるんだぞ。以前作ったのがあるからフォルダに保管するけど。


【これはいいわね……。あ、そろそろ見つかりそうなので仕事に戻るわ】


 というか、さっきの天使って仕事をサボってたのか? 女神用フォルダ内のアイテムが減ってるのが見つかったらすぐに何してたかバレるだろうに……。


 さて、天使の件はほっといて俺は他にも色々料理を作って……、とりあえず昼ご飯にするかな。


◇◇◇


 少し遅めのお昼ご飯。


 ウズラモドキのつくね串とこんがりローストした丸焼き。卵も幾つかあったから、茹でた後で揚げてつくね串と一緒に並べてみた。


 ホールトマトは使わなかったけどケチャップはチキンライスに使って、果物はフルーツタルトにしてみたんだよな。流石にフルーツピザにはしなかったぞ。


「肉に少々癖があるようじゃな。そこまで気にはならぬが、毛長鶏(けながどり)の方があらゆる面で上じゃろう?」


「流石に毛長鶏(けながどり)と比べたら殆どの鶏肉は数段落ちるよ。あれだけ旨味があるのに肉は柔らかいし卵も凄く美味しい。卵に関してはウズラモドキも凄いけどね」


「確かにこの串焼きの卵は美味しいのじゃ。シャルは肉の方が好きなようじゃが」


「うみゃぁん♪」


 なんとなくうまいって言いたいんだろうとは察した。ほとんど人間と過ごしてるし、猫語より人語に近い発音にしようと頑張ってるんだろうな。


「チキンライスもおいしいのじゃ。ここまで細かく刻めば、骨の部分を避ける事が出来るじゃろう」


「ウズラモドキは小さいのがネックなのは認めるし、料理として出す場合は一人数羽ずつの丸焼きがメインになる気もするね。手づかみで食べるんだったらいいんだけど」


 骨から外す場合には焼くよりも柔らかくなるまで煮込んだ方がいいかもしれないな。


 それこそクリームシチューとかの具にするか、鍋料理で使う方が食べやすい?


「この鶏がどの位おるのかは知らぬが、わざわざ飼う事の程でもないじゃろ?」


「群生地は凄いらしいぞ。俺達が敵を探してた時には見つけられなかったけど」


 そもそも俺たちの時は敵の出す電波というか波動を頼りに探してたからな。でなけりゃあんな短期間であれだけの敵を探せないっての。


 結果的にはその方がよかったんだろうね。


「内海で獲れる魚介類が無いようじゃが?」


「船が無いからまだ無理っぽいな。状況を知らないまま海に出る馬鹿が居なくてよかったよ」


「いろいろあるのじゃな。もし獲れるようになれば、またいろいろ問題は出るじゃろう?」


「海に関してはそこまで問題じゃないと思うよ。交易するにも海図が必要だし、それに船なんかもいろいろ必要だ。少しでもそのあたりの知識があれば、誰か詳しい人間に丸投げするのが早いと判断するだろう」


 海にも魔物がいるんだろうし、船とか船員を揃えて交易とかする商会がどの位いるかだな。


 漁師に関してはマッアサイア方面から引き抜いてくるだろうけどね。


「ご馳走様なのじゃ。今日のご飯もおいしかったが、南方までわざわざ出向いていくほどの事も無い気がするのじゃ」


「珍しい食材をありがたがる人も多いしね。このウズラモドキとかは他の街でも受けると思うぞ」


 その辺りは晩餐会で披露した後だろうね。


 晩餐会の前に色々説明しなきゃいけないだろうけど。





読んでいただきましてありがとうございます。

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