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第百六十二話 しかし、此処まで幹部クラスの敵が出てくるとは思わなかったぞ。あいつら過去に全員倒されてるよな?

連続更新中。

楽しんでいただければ幸いです。




 今まで雷牙(ライガ)に教えて貰ったとおりに特訓していた成果が出て、俺も変身に関してだけはクールタイムの制限が完全に無くなった。


 といっても無くなったのは本当に再変身に必要なクールタイムだけで、必殺技の使用回数には相変わらず制限がある。といってもアルティメットクラッシュ以外だったら十回くらいは使えるっぽいけどね。


 さて、南方面の探索を始めて既に二日が経過した。俺たちはバイクの人工知能などもフル活用して夜中見張りを立てて体を休め、体力を回復させながら襲い来る汎用戦闘種や幹部連中を倒しまくっていた。


「しかし、此処まで幹部クラスの敵が出てくるとは思わなかったぞ。あいつら過去に全員倒されてるよな?」


「俺以外のブレイブが倒した敵もいるが、この辺りで見た敵は全部倒してきた幹部で間違いない。しかし、奇妙だと思わないか?」


「敵幹部のメンツか? 幹部や魔怪種などが各シリーズから一人ずつ出てきてる感じだな。戦闘強化種まで混ざっていたが」


「各組織の幹部をひとりずつだとすれば、そろそろ打ち止めの筈だ。お前が以前倒したっていう魔怪種ナメギラスも入れればだがな。この辺りで倒した汎用戦闘種の数もそろそろ千を超えるぞ」


 本当にどうやってあれだけの数の汎用戦闘種を揃えたのか不思議だ。


 この辺りにいた人を本当に全員を汎用戦闘種に改造したんだろうけど、あれだけの戦力を持ちながら今までアツキサト方面に侵攻してこなかったのはなぜだ?


 はっきり言って半分でもこの辺りの国を亡ぼすには十分すぎる戦力の筈。いったい何を考えているのか本当に理解できない。


「いったい誰が……って、あの黒龍種アスタロトが一枚噛んでるのは間違いない。あいつも竜種を生み出せるし、今まで倒した竜の何匹かはあいつの仕業なんじゃないかと思ったりするんだが」


「それも考えたが、それだけでは説明できない敵も何匹か存在している。奇妙な話し方をして、人を木の実や菓子に変えて貪る魔物なんだが」


「俺も戦った事がある。あいつらは全員、嗜虐性が高くその行動は外道でクズだ。奴らのせいで西の都市が幾つか壊滅しているんでな」


「その魔物は北にある街でも出現しているぞ。それといろいろ謎の多い結晶竜ヒルデガルトって奴の被害状況だけは確認している。あいつも胸糞の悪くなるような外道だ」


「街が襲われてたのか?」


「ああ、街の住人は全員身体を結晶のような物に変えられていた。それだけじゃない、その結晶像と化した人の口からは呻き声が漏れ続けているんだ」


 人の苦しむ姿を愉しむってところはあのへんな喋り方をする竜と同じか。


 あのへんな喋り方をする竜は人を木の実なんかに変えて喰らうが、その結晶竜ヒルデガルトって奴は人を結晶に変えたうえで苦しめているって事だ。


「確かに腐れ外道だな。その結晶像に変えられた人って助けられないのか?」


「全員助けるには数千億シェル必要だとよ。どこの教会で話をしても全員口を揃えて、その人たちはもう助からないと思った方がいいですって言いやがった」


「俺も塩食い(ソルトイーター)って呼ばれていた魔怪種ナメギラスの犠牲者を元に戻せないか聞いたんだが、死んだと思った方がいいって言われたな。金のあるなしで助からない命がある、冷たい様だけどそれもこの世界の仕組みなんだろう」


 納得はしていないけどね。


 もし仮に俺にその人たちを救える力が手に入れば、確実に助けに向かうだろうしな。


「今は、って顔だぞ。付き合いはそこまで長くないが、お前の考えは少しはわかるようになった。お前は確かにブレイブ向きの性格してるよ。だが少し優しすぎだ」


「助けられなくて後で後悔するより、出来る限り助けたい。力を得てからはそう考える事も多くなった」


「その考えは素晴らしいが、そのうち自分を殺す考えだ。確かに俺だって助けられるのであれば全員助けたい。だが俺たちの手はそこまで長くない、この両手で抱えきれる数ってのは本当に少ない」


 雷牙(ライガ)は最初のシリーズで仲の良かった親子を敵の幹部に攫われ、汎用戦闘種に改造された経験を持つ。


 拳を血で汚す覚悟は他のブレイブより出来てるし、その事でほかのブレイブとけんかになった事もある。


 一番苦しんでるのはいつだって雷牙(ライガ)自身だったのにな。


「それを理解しているから、無理に救おうとはしてないさ。自分の無能さは誰よりも理解してる」


「男爵やスティーブンに言わせれば、百年先まで見通してる化け物って評判だがな。それでも自分を無能者呼ばわりか……。お前とこうして戦えてる事は、俺にとって最高のご褒美かもしれん」


「人間一人でできる事には限りがある。俺が全部お膳立てして一から十まで全部面倒を見てやれば、そりゃこの辺りの文化レベルはあっという間に元の世界に迫るだろう。でもそれだけじゃダメなんだ。だから少し意地が悪いかもしれないが、ヒントとわずかな現物を見せてあとは静観する。この世界の人の可能性を信じてな」


「それはかなりもどかしいだろ? 俺だったらつい手を出したくなっちまう」


 俺だって手を出したいさ。あのガキどもにも色々渡してやりゃよかったなんてたまに考える事すらある。


 でもあの時持ってた武器は渡せないし、この世界の武器を買ってやるってのも筋が違う。それをやるんだったらあの辺りの冒険者全員にやらなきゃいけないからな。だから後であんな手段に出たんだが……。ん? この反応は……。


「さて、休憩はそろそろ終わりっぽいな」


「ああ。でかい反応がこっちに向かってやがる」


「もう幹部連中はいないだろうに、それでもこんな反応をする敵が残っていたのか?」


「黒龍種アスタロトの可能性は低いな。しかし同じレベルの敵だ」


 という事は劇場版に出たラスボスシリーズ?


 どいつが来るかはわからないけど、強敵なのは間違いないぞ。


「来たみたいだな……。なんだ、あいつか?」


「暗黒魔怪将軍ブラック。蜘蛛とタツノオトシゴを融合させて作られた強化魔怪種だな。意外に強いぞ」


「なぜ俺の事を知っている? 俺は貴様なんか知らぬぞ。そっちの男は知っているぞ、宿敵ライジングブレイブ」


「そりゃそうだろう。もし仮にお前が俺の事を知ってたら異常としか言いようがない」


「この世界に来てまで悪事を働くか。お前たちは本当に救いが無いな」


 俺は住んでる世界が違うし、俺の事を知る方法はない筈だ。俺はこいつらの情報を殆ど持ってるけど、あまりそれを信じすぎないようにしないとダメなんだよな。生半可な知識は変化に弱い。こいつらがモニターの向こう側にいた存在と同じ存在だと思っちゃいけない。


「まあいい、ここであったが百年目。お前達など今の俺の敵ではない」


「取り巻きの汎用戦闘種も無しで大丈夫か? それとももう種切れだったか?」


「汎用戦闘種やほかの幹部を倒していたのもやはりお前達か。情報に無いブレイブというのはそこのお前の事だな?」


 ……今まで戦ってきた敵に生き残りはいないし、ただの一人も討ち漏らしもしていない。なのに俺の情報を持っているという事はどこからか情報を集めてるって事?


 それでもやる事は変わらないけどね。雷牙(ライガ)はもうブレスを構えてるし。


「セットアップブレス、雷牙(ライガ)勇慈(ユウジ)


【セットアップ、雷牙(ライガ)勇慈(ユウジ)。アクセス。セットアップ完了】


「正義はここに、ブレイブ!!」


【ライジングブレイブ。真・迅雷フォーム!!】


 黒を基調に金色の雷が装飾された劇場版フォーム。何度見ても造形が凄いよな。


 俺も家に稼働フィギュアを持ってたし、関連グッズも結構出てるしね。そんな事よりも俺も変身だ。


「セットアップブレス、鞍井門(くらいど)颯真(そうま)


【セットアップ、鞍井門(くらいど)颯真(そうま)。アクセス。セットアップ完了】


「究極の勇気は此処に!! ブレイブ!!」


【アルティメットブレイブ。ベーシス!!】


 俺は相変わらずベーシスモードだけど、能力値は最初の頃とは比べ物にならない。


 (ヴリル)を制御できるようになったことで本来の力を引き出せるようになっているからだが、正直スラッシュフォームと同じくらいの出力があるんじゃないかと思う。


「アルティメットブレイブか。よかろう二人揃ってかかってくるがいい」


「それじゃあ、遠慮なくいくぜ!!」


「こっちも参戦だ!!」


 番組で見ている時になぜいきなり必殺技に行かないのかとか、武器を使わずに素手で攻撃するのかはなんとなくだが理解した。


 こうして実際に相手と拳を交わす事で相手の実力を理解し、そしてどのタイミングで仕掛けられるかを計算しているんだ。


 それは相手も同じだけど、じゃんけんみたいに相手と自分でタイミングを合わせ、有利な方法で仕掛ける訳さ。


「アルティメットリッパー!!」


 本当はどんなものでも簡単に斬れるアルティメットリッパーも、流石に幹部連中には簡単に防がれる。


 奴らが作り出す謎シールドで防がれると、なぜか光の粒子に分解されるんだよな。もちろん計算通りなんだけど。


「一度に出せるのは、そのシールド一枚だけだったな。こっちがお留守だぜ!! ライジング・ブレット!!」


 ああ、氣弾(ヴリル・ブレット)の変身した時バージョンか。あの技ってシリーズで出てきてないんだよな。俺が知らない技のひとつだ。


「忌々しい技だ。ぬ!! これは」


「スゥクトゥマ・ホールド……、貴様の動きを封じる技さ」


「アレを仕掛けるのか、いいぞ」


「アレを仕掛ける時にはその光のリングを通過してくれ、それじゃあ行くぞ」


 俺が上空高く飛びあがると、それに合わせてライジングブレイブも飛び上がった。そして何故か空中で静止して暗黒魔怪将軍ブラック目掛けてその技を放った。


「「ダブルブレイブ、クラァァァァッシュ!!」」


「こんな威力など有り得ぬ!! なぜ強化したこの身体で、わずか二人のブレイブに……」


 光の粒子に分解された暗黒魔怪将軍ブラックは、負け惜しみの言葉を残してこの世界から消えた。


 確かに劇場版だとダブルブレイブクラッシュを防いでたけど、あの時はアルティメットブレイブがいなかったのが原因だしな。


「貴様なんぞ二人で十分だ」


「もう二度と復活するんじゃねえぞ!! しかし、あの威力はなんだ? 放った技がいつもの威力の数倍……、いや十倍以上あったぞ?」


「あの光のリングには力を増幅する能力がある。見た目はダブルブレイブクラッシュでも、威力はオールブレイブクラッシュ並みだ」


「思っていたよりも恐ろしい能力を秘めているんだな」


「使いどころを間違えなければいいだろ? 俺が蹴り倒したいのは不幸を撒き散らす悪だけだ」


 変身だって滅多にしないしな。今はもうあの痛みは起こらないけど、それでもこの力を行使していい相手位選ぶさ。


「確かにお前だったら大丈夫だろう。明日までこの辺りを探索して、何もなければ街に戻るか」


「そうだな。しかし予想していたとはいえ、全ての町や村が壊滅状態ってのはな……」


「手が届かない場所の不幸にまで心を痛めるな。そのうち本当に潰れるぞ」


「わかっちゃいるんだけどね」


 裏で糸を引いてる黒幕に、犠牲者の無念は全部まとめて叩き込んでやるさ。


 黒龍種アスタロトや結晶竜ヒルデガルトを操って世界に悲しみを増やす奴。


 何処に隠れていても、そのうち絶対に追い詰めてやる!!





読んでいただきましてありがとうございます。

誤字報告ありがとうございます。

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