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第百五十九話 俺をなめて貰っては困る、俺にはこの剣があるから大丈夫だ。殲滅力の高い銃もあるしな

連続更新中。

楽しんでいただければ幸いです。




 毎度毎度の事だが、先日軽々しくあんなことを口走った俺をぶんなぐってやりたい気分だ。


 アレがフラグだとは思わないけど、まさかこの辺りがこんなことになってるなんて思いもしなかったよ。俺が最初に来て寝泊まりした廃村、そこで俺は一時間ほど前から戦闘を繰り返している。


「まだ変身しないで大丈夫か? 俺はこのくらいの敵は平気だがお前はそろそろきついんじゃないのか?」


「俺をなめて貰っては困る、俺にはこの剣があるから大丈夫だ。殲滅力の高い銃もあるしな」


「そうか。だったらこのままこいつらを片付けるぞ!!」


「了解!!」


 南の廃村に変な魔物の姿が見えたという報告があったのは昨日の事で、場所が場所なんで俺と雷牙(ライガ)の二人がその調査に駆り出されたわけなんだが。


「まさかこの世界でこいつらに出会うとは思ってもみなかったぜ」


「見た目は人っぽいけどやっぱりこれも魔物化してるんだな。汎用戦闘種……、いわゆる戦闘員だし中身は人間が入ってるんだと思ってたよ」


「元の世界ではサイボーグやら強化人間やらだったぜ。こいつらはどうやら魔物の出来損ないを再利用して作り出した汎用戦闘種だろう」


 ヒーロー物にかならず出てくる雑魚戦闘員。ブレイブシリーズにも当然いて、各シリーズごとに微妙にデザインが違う。


 ただ、こいつらの格好というかデザインはすっごい気になるんだよな。


雷牙(ライガ)は気が付いてると思うけど、こいつらって……」


「ああ。奴の率いる汎用戦闘種だな」


「あいつって確か改心したよな? 最終決戦前の決闘で」


 ライジングブレイブ一作目のライバルキャラにして敵幹部のゾークダース。トレードマークとして漆黒のマントを羽織り、本気で戦う時はそれを脱ぎ捨てる。


 力こそが正義と信じ、悪の側に身を置いて強い者が弱い者を蹂躙するのは当然の権利だとシーズンを通して主張していた。


「ああ。俺に負けた事で俺の説得を聞き入れて、もう二度と悪事を働かない事を誓ったぞ」


「あいつの性格からいって、一度交わした約束を違えるとも思えないんだけどな」


「奴の事も知っているのか……。あの頑固者は曲げる事を嫌っているから有り得んのだが」


 ゾークダースは力を信望するあまりに非力な正義に絶望して悪の道に走った男だが、他の幹部が企てた作戦があまりにも卑怯過ぎた場合は裏から妨害したりライジングブレイブに協力する事もあった男だ。


 放送当時はライジングブレイブと人気を二分し、初期案では途中で死ぬ予定だったにもかかわらずシナリオが変更されて最終的に改心する流れになった。劇場版でのお助けキャラとしてほぼレギュラー出演中。


「という事はこの汎用戦闘種は誰かがそれを知ってて作り出したコピー?」


「そうだろうな。以前も何度かあっただろう」


「見飽きる位見た展開だな」


 当然ゾークダースの人気にあやかってこうして汎用戦闘種をちらつかせての視聴率稼ぎは、ほんっと~にシリーズを通して何度も行われた。それこそ二作品に一回は出る頻度で。


 全十作品中、本編でゾークダースが客演で出た回数はわずかに二回なんだけどね。


「という事はこれも誰かの指金か?」


「こんな手を使う奴には心当たりが多すぎてな。正直どいつが仕掛けてきたのかは予想がつかん」


「同じ手を使ってきた奴多いしな」


 ただ、こいつらが本当にゾークダースの配下で、あいつがこの世界に来ている事を期待している俺もいるんだよね。


 あいつが本当にこの世界に来ていてこっち側に引きこめれば相当心強い。


「それにしてもだが、本当にその剣だけでも相当に強いな。格闘技の腕もよかったが剣の方が得意なのか?」


「大物相手の場合は剣の時が多いな。銃でもいいんだけど、魔物とかに攻撃した時は威力が落ちるんだよ」


(ヴリル)や魔力が高い奴は何もしないでも強力なシールドを持ってるからな。俺の攻撃でも変身前だとそこそこ威力が落ちたりするぞ」


「変身した後は?」


「威力が落ちても結果は変わらん」


 だろうな。俺の必殺技でもあの威力なんだし、雷牙(ライガ)が最終フォームとかに進化してたらどれだけ手加減しても爆死確定だろうな。


 通常攻撃でも下手な必殺技より威力あるし。


「とりあえずこの辺りにいる汎用戦闘種は退治したか。問題はこいつらが何処から湧いてきているかなんだが」


「おそらくもっと南の方だと思うぞ。この先の森には十年くらい前に竜が出たらしいけど、その竜も無関係だと思えないんだよな」


「そうなると大規模な調査が必要になるが、問題はどこまで敵の勢力が広がっているかって事だな」


 下手するとこの森の先から全部が敵の手に落ちている可能性すらある。


 そこにあった村とか街が滅んでいた場合、代わりに何が住み着いているかなんて考えりゃわかる話だよな。


「南の森を調査する場合は冒険者ギルドに許可を取らなきゃいけないし、今日の所はこれ以上の調査できないだろう」


「そうなのか? 面倒な決まりがあるんだな」


「さっき言ってた竜だ。人の臭いを嗅ぎつけて町を襲うかもしれないって話なんだけど、今の状況だったらむしろ来た方が話は早いよな?」


「少なくとも生きては帰さんな。この世界の竜種にまともな奴は皆無だ」


 今まで襲ってきた竜種っぽい魔物をこの世界の竜種っていうのは割と抵抗があるけどな。アレは別の世界から来た魔物か何かだろう?


 あの変な喋り方をする魔物はその中でも凶悪な部類だが。


「もう少しだけこの廃村を調べて、いったん街に戻るか」


「そうだな。それと、この廃村はまたこんなやつらの根城にならないように許可を貰って解体した方がいいだろう。誰も住んでいない村は魔物の巣になりやすい」


「そりゃそうか。昔一度だけこの廃村で寝泊まりした事があるが、あれから一年以上経ってるんだよな。あの時はここにこいつらが居つくなんて考えてもいなかったよ」


「汎用戦闘種だけじゃなくてな、豚と人間のハーフみたいな魔物や半人半犬の魔物なんかもいるんだ。最初見た時は新種の汎用戦闘種だと思って退治していたんだが、どうやらこの世界にいる魔物だったみたいだ」


 あ~、よくファンタジー系のゲームで見かけるアレか。


 どの辺りに出てくるのかは知らないけど、この世界にもあんな魔物がいるんだな。


「ここが異世界だって忘れがちだけど、本当だったら剣と魔法の世界なんだろうし。怪しい物も多いし俺たちの他にも異世界から来た人間も結構いたみたいだけどね」


「火縄銃を作った奴か? 俺も聞いてそいつは他の世界から来たと思ったぞ。他にもいるのか?」


「白うさぎ亭とかの建物を設計した人とかだな。あと例のあれを売った奴」


「そいつは本当に誰なんだろうな? (ヴリル)が高い奴だったらまだ生きてる可能性もあるんだが」


 ん? (ヴリル)が高いとまだ生きてる? 何か関係があるのか?


(ヴリル)が高いと死ににくいのか?」


「いや、細胞の劣化というか老化速度が落ちるんだ。俺もこの世界に来て長いが全然体の衰えを感じない。(ヴリル)の高さ次第で寿命がエルフ並みに伸びるって話も聞いたな」


「そんな秘密もあるのか……。物理法則もそうだけど、この世界にしかない便利なものも多いよな……。あ、そうだ再生の秘薬と万能傷薬を渡しておくよ。万が一用というか緊急事態用だけどな」


 再生の秘薬と万能傷薬を五個ずつ渡しておく。これで何かあっても安心だ。


「すまないな。しかしこんな薬をよく持っていたな。買うと割とするって話だが」


 そういえば雷牙(ライガ)って魔物退治で相当稼いでたか。


 旅の資金でいくらか減っているだろうけど、普通に暮らす分には百年位遊んで暮らせそうな額の筈。


「俺はいろいろ作れるからな。その薬も自作だ」


「そりゃ凄いな……。これ、あまり人には使ってないんだろ?」


「緊急時には使おうと思ってるよ。流石に知り合いに死なれて平気な性格じゃないんでね」


「ルッツァ達か? あいつも俺によく似てるというか、お節介焼きな奴だよな」


 そういえばルッツァと雷牙(ライガ)は割と似てる部分がある。


 お節介焼きな所とか特にね。


「あるからといって使い過ぎると薬の価値を落とすし、薬を頼って行動されるのも困る。お前の性格からいってそれが理解できる奴にしかこれを渡さない筈だ」


「ご明察。ルッツァ達にも渡そうとしたことがあるんだけどな」


 ルッツァには断られたんだよね。


 で、ミランダとダリアにルッツァ達には内緒で二つずつ渡してある。


 ミランダ達は万が一の事態の方を考えてくれたわけだけど、出来る限りそんな状況が来ない方がいいんだが。


「俺はありがたく受け取っておくさ。万が一に備えるのも戦う者の務めだ」


「その時にあれがあればって後悔したくないからな」


 流石に雷牙(ライガ)はそのあたりにブレが無い。


 悪を倒す為なら、出来る限りの手を打つ男だ。


「とりあえず街に帰って報告だ。南の森やその先の調査は早いうちにやった方がいいだろう」


「あの広大な森の調査か……。どれだけ手間でもやるしかないだろう」


「この先でなにが起きているのか、それだけは確認しておかないといかん」


 どんな奴が潜んでいるのかは知らないけど、さっさと退治するしかないか。


 あの竜も南方面のどこかにいるんだろうけどね。


 ついでに退治出来れば安心なんだけど。




読んでいただきましてありがとうございます。

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