第百五十二話 こんな貨幣もあったんですね。三十億以上になると大金貨でも三千枚以上になりますから。アイテムボックスで持って帰られますけど、かさばるのは間違いないですし
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三十二億千三百万シェル。手数料の三億五千七百万シェル引かれた俺の取り分だが、なんだか大金貨以外の通貨というか、金の延べ棒みたいな物で出てきたんだけど。なんとなく色も黄金というよりは見た事も無いような感じの色でしかも変な輝き方をしてるんだけど
「その貨幣は神金貨といいまして、特殊な金で鋳造されています。神金貨一枚で一億シェルの価値があります。ただ、それを手にした事があるのは侯爵以上の大貴族の一部と王家だけですね」
「こんな貨幣もあったんですね。三十億以上になると大金貨でも三千枚以上になりますから。アイテムボックスで持って帰れますけど、かさばるのは間違いないですし」
どっちにしても使いどころも無いしね。
大体大金貨でも使う事ないよ? 一枚一億円もするし、そんな額で売ってる物なんてほとんど必要ないしな。必要な時はアイテムボックスの方で探すし。
「大金貨や神金貨を目の前にしてそんな言い方をされた方は初めてです。神金貨一枚で末代まで遊んで暮らせますよ?」
「普通に暮らすとしたらそうでしょうね。多少の事でしたら使いきれる額でもないですし」
「何者なんだあの男は? 着ている服にも驚かされたが、あれだけの金を目の前にしてあの態度とは」
「虚勢を張ってできる事ではない。ともにいる女性の服をみろ。あの服など神金貨でも手に入るかわからぬ代物だろう」
「クライドといったか。カロンドロ男爵領に突然現れたと聞いているが、今後の動きには気を付けねば」
周りの貴族の皆様、かなり声を絞ってるつもりだろうけどしっかり聞こえてますよ~。
今後の動きどころか今までの動きも知られたら面倒な事になりそうだな。一部の貴族は気が付いてるけどまだ知らない貴族もいるんだね。結婚前にいろいろ仕掛けてきた貴族はあんなにいたのに……。
「それではこの後、陛下との謁見になります。クライド様ですと何も問題はありませんので、そのままお待ちいただけますか?」
「わかりました。控室まで案内してもらえますか?」
「こちらになります」
オークション会場ではまだ多くの貴族が色々な物を見せ合いながら話を続けていた。今回は暴君鮮血熊をはじめとする魔物関係の商品ばかりだったけど、どうやらそういったものを集めている貴族ばかりだったようだね。そりゃ話が弾むだろう。
◇◇◇
王城の謁見の間……、の控室。王城が古いといっても流石に綺麗に整備されているうえに、置かれている調度品も俺でもわかる位に芸術性の高い物ばかりだ。
「椅子や机も先ほどの物とは比べ物にならぬな。椅子に布を敷こうとするメイドもおらぬしな」
「この椅子に何か敷こうとしたら流石に失礼だろう。ホコリひとつ落ちてない位に掃除が行き届いてるのに……」
「逆に言えば先ほどのオークション会場の控室はそこまで掃除が行き届いておらぬという事か」
「そんなに頻繁にオークションが開かれてないんだろしね。今回みたいな手数料が入るんだったら頻繁に開催してもいいんだろうけどさ」
俺が払った手数料だけで三億五千七百万シェル。日本円で三百五十七億だぞ。臨時の税収としては十分すぎる額だろ。
今から俺に払う討伐報酬がそれ以下だったら笑うけどな。貴族領をひとつ潰す魔物を討伐した報酬ってどんな額だろう?
「あのような額のオークションなどそう滅多にあるまい。他のオークション品もそうであったであろう」
「最高額が大金貨数枚程度だったしな。今回の目玉が俺の出した暴君鮮血熊の腕だったのは間違いないし」
両手が落札された後に結構な数の貴族が帰ったみたいだしな。
もし、もう一度あいつを討伐する機会があれば、出来るだけ傷つけずに倒したいものだね。そうすればまたこうして売りに出せるし。……そんな状態で倒すのは俺の実力だと無理っぽいけど。
そう思うとなんとなくこれで氣の鍛錬をしたくなるんだよな。
「最近はそれをよく触っておるが、それは何なのじゃ?」
「ああ、これか。ほら俺自身は弱いだろ? 雷牙が氣を鍛える為にくれた魔道具さ」
「あれだけの力を持ちながら、まだ弱いと言うのか? ……それにソウマの魔力は相当上がっておるのじゃ。おそらくわらわ以上じゃろう」
「魔力か……。俺あまり魔法得意じゃないしな。こう……、高威力で限定的な魔法は欲しいと思うけど」
いつもせっかく倒した魔物の素材がほとんど手に入らないしな。
粉々にするケースが多すぎるから、もう少し被害が少ない魔法は欲しいと思ってるんだよね。
「暴君鮮血熊を討伐して、いまだに弱いというのも凄まじい事じゃな。その物差しで測れば、この世界に強者がいなくなってしまうじゃろう」
「事実さ。今の俺じゃ雷牙の足元にも及ばない」
最低でも雷牙はライジングブレイブの最終フォームまではパワーアップしてるだろうし、状況次第だと俺が知らないフォームを手に入れてる可能性すらある。
ライジングブレイブは劇場版とかで何度も最終フォームが更新されてるしな。
「あの男はそこまで強いのか?」
「今の所は世界最強だと思うよ。魔物に関してはそれ以上が存在する可能性もあるけど」
黒龍種アスタロト。流石に雷牙ひとりじゃ勝てない相手だろうしな。今の状態じゃ俺がいても戦力的に倒せるかどうか……。
ん? めずらしくメイドさんが近付いてきた。
ここでも割と近いとはいえ、そこまで近くに寄ってこなかったのにな。
「クライド様。謁見の準備が整いました」
「わかりました。ありがとうございます。ヴィルナ、行こうか」
「わかったのじゃ」
メイドさんと一緒に謁見の間へ向かい、玉座の前で待たされた。
だだっ広い大広間のど真ん中に、真っ赤な絨毯が敷かれている。その上で待たされてるんだけど、流石に最高級品というか相当なレベルの絨毯だってわかる。
【五ランクは上の絨毯を既に生産済みです。必要でしたら好きなサイズの物も作成可能ですが】
いらない。というか、俺の家にそんな絨毯敷いてみろ、シャルが一日中そこで寝転がるだろ? 絨毯なんかも作ってたんだな……。目的は予想できるけど。
しかし、この位置って玉座から割と近いんだけど、暗殺とか心配してないのか? 俺にメリットが欠片も無いからしないし、しようとも思わないけどね。あ、国王が玉座に座ったな。
「クライド、この度の暴君鮮血熊討伐、見事であった。討伐に向かって討ち死にしたレミジオの無念も晴れたであろう」
レミジオ子爵って、討伐に出て殺されてたのか。
そういえばレミジオ子爵領が壊滅したって話だったし、生きてたら再建しようとするよな。スティーブンもあそこの鉱山が破棄されたって言ってたし。
「ここに報酬として神金貨一枚と、レイドラント王国子爵位を授ける。もしも望むのであれば、旧レミジオ子爵領を領地として与えるがどうか?」
「まだ若輩者故、領地経営は荷が重すぎます。領地に関しては辞退させていただきます」
領地経営なんて流石に無理だ。
自分の領地って事になると、俺もアイテムボックス内の資源を出さざるを得ないし、そうなると様々な場所でいろんなバランスを崩す事になる。
おそらくそれは不幸しか生み出さないだろう。
「聞いておる通りに無欲だな。何か他に望む物はないか?」
「クライド家にはまだ家紋がありません。何か良い紋があればそれを家紋にしたいと思います」
「うむ。明日中には形にして渡すとしよう。では神金貨と子爵位を示す錫杖を受け取るがよい」
大臣っぽい男から神金貨と子爵位を示す錫杖を受け取り、大臣と国王に頭を下げた。
こういうのって苦手なんだよな~。カロンドロ男爵みたいな間柄だったらいいんだけど。
「これにて国王陛下への謁見を終了とします」
国王レオナルド・モルビデリが退出後、俺達も謁見の間を後にした。
そこまで威圧されたわけじゃないんだけど、王者の風格というか圧倒される相手だったな。
今までの人生であそこまで大物って言うとスティーブン位だし……。ずいぶんと仲良くなったけど、あいつも国王と同格の大物なんだよね。
これであとは晩餐会か。
どんな料理が出てくる事やら……。
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