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第百五十一話 それでようやく晩餐会が今日の夕方に決まったんだけど、昼前に王城に出向いていろいろあるっぽいな

連続更新中。

楽しんでいただければ幸いです。




 王都について三日が経過した。正直、白ヒツジ亭で一日中過ごす怠惰な生活にはそろそろ飽きてきたぞ。だってここにいるとアツキサトの白うさぎ亭に泊まってるのとほとんど変わらないんだからな。景色がちょこっとだけ違うけどさ。


 あと食事に関しては部屋で済ませる方針に完全変更、匂いに関しても魔石式の消臭機能付き空気清浄機を設置したので何も問題は無い。といってもそこまで匂いの強い料理は出してないけどね。


「それでようやく晩餐会が今日の夕方に決まったんだけど、昼前に王城に出向いていろいろあるっぽいな」


「その話が来たのが昨日の夕方というのも凄い事じゃな。もう少し早めに分かっておったじゃろうに」


「例の暴君鮮血熊タイラントブラッディベアの両腕をオークションしたいらしい。報酬とは別扱いらしいけど、たぶんものすんごい額になるぞ」


「加工して保存すれば魔物除けとしては最適じゃろうし、力の象徴としても末代まで誇れるじゃろうな」


「自分で討ち取った魔物じゃないとしてもね。金で買うってのも凄いけど払える額になるのか?」


 少なくとも億単位だろ? それで領都が半永久的に魔物に襲われにくくなるんだったら安いのかもしれないけどさ。


 流石にあの竜とかのクラスの魔物には効かないだろうけど。


「出すじゃろうな。ソウマの売る菓子を食いまくる奴らじゃぞ。さぞかし金を貯めこんでおるじゃろう」


「そういえばそうだった」


 銀貨食うような真似してた奴らだからな。倉庫の奥に金貨が唸ってるんだろう。


「そろそろ出かけた方がよいのじゃ。しかし、迎えも寄越さぬとはの」


「魔導車を出すから問題ないぞ。ヴィルナもドレスに着替えるんだし、普通の馬車だと向こうがかわいそうだ」


「乗り降りする際に気が気ではないじゃろうが、それは向こうについてからも変わらぬじゃろう」


 貴族連中でも迂闊に近付いてこない事くらいわかるしね。俺たちの世話をすることになったメイドさんたちはもっと大変だとおもうけど。


 今のドレスより数ランク落ちる服の時でもカロンドロ男爵の所のメイドが割と怯えてたしな。


「わざと汚しに来た時以外は怒らないよ。ヴィルナもそうだろ?」


「そうじゃな。ソウマがそういうのであればそうするのじゃ」


「そういった不心得者もいないとは限らないけど、流石に真正面から喧嘩なんて売ってこないだろうけどな」


 スティーブンと仲がいいのも、俺が魔物の討伐をしてるのも知ってるんだろうし。


「それでは王城に向かうとするかの。向こうでも色々準備があろうしな」


「そうだな。それじゃあ着替えて車を出すよ」


「頼んだのじゃ」


 直ぐに着替えて魔導車を取り出し、あっという間に王城へとたどり着いた。


 歩くと時間がかかるけど、魔導車だとあっという間だよな。


◇◇◇


 王城に着くなり暴君鮮血熊タイラントブラッディベアオークションの控室に案内された。暴君鮮血熊タイラントブラッディベアの両腕は既に会場に展示されているけど、アレを運び出すには相当にでかいアイテムボックス持ちが必要だぞ。


 それにしても俺達ってあまり歓迎されてない? 最初はそう考えたけどおそらく俺の事を警戒してるというか、力とかいろいろ測りかねてるからなんだろうという結論に達した。そりゃこんな服着てるような人間をどう歓迎するか悩んでるんだろうな。


「申し訳ありません。いろいろと準備が整っておりませんで」


「構いませんよ。おそらく予定よりかなり早く来たんだと思いますし」


「男爵領からおこしでしたので半月はかかると思っておりましたので……。急に開催される事となりましたのでオークションに参加される方も、予定の半分程度になりました」


 どうせ落札できるような貴族は王都の別荘で暮らしてるんだろうしな。


 ここまでさびれてる王都で暮らすくらいだったら自分の領地で暮らした方がいいんだろうけど、自分の領都よりはるかに劣る王都を見て悦に浸ってるのかもしれないし。


「こちらが控室になります。何か必要なものがありましたら申し付けください」


「大丈夫ですよ。アイテムボックス内に必要なものは揃っていますので」


「そうじゃな。多少の飲み食いは良いのじゃろう?」


「はい、あまり匂いのきつい食べ物でなければ大丈夫です」


 そりゃここでカレーとか食べたら大変だろうけどさ、流石にそこまではしないよ。ここには俺たちと一応世話係のメイドっぽい子が何人かいるし。


 揚げたての唐揚げとかも匂いがきついけどさ、アレを空腹時に嗅ぐと流石にいろいろときついんだよね……。


「あそこ迄遠巻きにしなくてもいいのにな」


「わらわが座る椅子の上にかぶせる布でひと悶着あったじゃろう。そのまま座らせるのが問題あると思われたほどじゃぞ」


「俺の椅子にかぶせる布は断ったけどな。あんなのいらないって」


「その服を着てそのセリフを言えるのはソウマ位なのじゃ。近付くメイドどもが怯えておったじゃろう」


 これも最高級のスーツだからね。


 流石に地方から出てきた冒険者がこんな服を着ているとは思ってもいなかったんだろうな。


「ワインとコップを持ってくるのも忘れてるくらいだしね。あの水みたいなワインを飲むくらいだったら俺がワインを出すけど」


「確かにアレは薄すぎなのじゃ。ここで出すワインがあの食堂並みに薄いかどうかは知らぬが」


「とりあえずグラスとワイン。赤の十五年物だけど俺は割といいと思うんだけどね」


「……このクラスのワインを割となどと表現するのもソウマ位じゃ。これ一本でどれだけの値が付くか……」


「ワインは飲むための物だ。投資の対象でもなけりゃ、誰かに自慢する為の物でもない。美味しく呑めりゃそれでいいのさ」


 そうでもないヴィンテージのワインとかの存在も分かる。


 需要と供給のバランスが完全に狂った世界の僅かな存在は、天井知らずの値を付ける事も理解できる。だって絶対に手に入れたい物ってあるからね。わざとその状況を作り出す存在は悪そのものだけど。


「瓶入りのワイン……。しかもあんな見事な赤いワインなんて」


「微かにワインの香りが流れてくるけど、芳醇というか蠱惑的というか」


 メイドたちが騒いでるけど、俺にしてみれば普通のワインなんだけどね。


 ヴィンテージのワインなんて物凄いよ? アイテムボックスにある普通のワインで一番古いのは白の三十年物だけど、合わせる料理がちょっと難しいかなってレベルで。


 でもあの反応で、晩餐会がどのレベルか分かった気がした。そこまでの料理は出ないみたいだな。


「すいません、あの、落札額の一割が手数料として引かれますがよろしいですか?」


「一割ですか……。いいですよ。ここでのオークションもただじゃないでしょうし」


「ありがとうございます。ではこちらでオークションの様子をお楽しみください」


 手数料というか、おそらく税金だろう。


 一割で留めたのはそれ以上請求するとこちらが不満を言い出しかねないからだろうな。一割でも相当な額だろうし。


「それではこれより暴君鮮血熊タイラントブラッディベアのオークションを開催いたします」


 オークションが始まった。


 形式はよく見かける値段を自分で申告する方式みたいだな。徐々に釣り上げていくのか、それとも圧倒的な資金でねじ伏せるつもりなのか。


「では最初に右腕、続いて左腕の競売を始めます。開始価格は各一億シェルです」


 って、最低一億? 日本円で百億だぞ。……という事は一割で最低十億円? そりゃ先にひとこと言ってくる訳だ。


「一億五百万!!」


「一億八百万!!」


「一億千五百万!!」


「一億三千万!!」


 すげぇ金の積み合いだ。というか開始数分で三千万シェルも上がったんだけど、落札させた貴族は払う時には大金貨を千両箱みたいなのにでも入れてくるつもりか?


「凄い額じゃな」


「そうだね。普通だと持って帰るのに苦労しそうな額だよ」


「その感想が流石ソウマなのじゃ。あれだけの額を耳にすれば多少は動揺するものじゃぞ」


「どうせそこまで必要じゃない金だしね。貰ってもその後の処理に困るだけだよ」


 寿買(じゅかい)で使う金はもう天文学的数値を軽々突破して使いきれる額じゃないし。すでに金に困るって段階は終わってるんだよな。


 それどころかあまり俺が金を稼ぎすぎるとその分の金をどうにかして市場に流し直さないといけないし。金を彫刻にして教会とかに寄付するしかないんだよな。


「今の会話……」


「あんな服を着てる時点で想像できたでしょ。あの女性の装飾品ひとつであんたたちの生涯賃金を軽く超えそうだから気を付けるのよ。あのドレスに汚れひとつでもつけたら流石に首が飛ぶわよ。物理的に」


「僻地の冒険者じゃなかったんですか? ここ最近まで無名でしたよね?」


「世の中には私たちの知らない人も多いのよ。失礼の無いように対応する事、でもあまり近付いたらダメよ」


 やっぱりそれ方面の心配か。


 ん? オークションはそろそろ落札額が決まりそうだな。


「十五億七千万シェル。他ありませんか? 暴君鮮血熊タイラントブラッディベアの右腕は十五億七千万で落札されました」


「約十六億か。大金貨で千六百枚ってほんとに千両箱コースだな」


「まだ片手じゃぞ。おそらく左腕も近い額で落札されるじゃろう」


「もう後が無いから持ってきた予算を全部突っ込むだろうしな。確かにあの手の体毛一本でもかなり使い道が多いんだけどね」


 今世界に金を還元しないといけないから問題なんだよな。


 使うったって、日ごろ使う額なんて精々数万シェルだし。欲しい物もそんなに無いしね。


「続いて左腕です」


「二億!!」


「四億五千万!!」


「八億!!」


 うん。上がり方がさっき以上だ。


 さてどうなる事やら……。


暴君鮮血熊タイラントブラッディベアの左腕はニ十億で落札されました。おめでとうございます。続いて紅瞳蛇(ガーネットバイソン)の皮……」


「他のオークションも行うのか。確かにあの両腕だけだと勿体ないもんな」


「あれ程の額はつかぬじゃろうがな……」


 この後十点ほどオークションが行われ、そのすべてが落札されてこの日のオークションは終わった。


 なんでも、たまに入札が無い時もあるそうだ。


 開始の時点で額が高すぎたり、客の興味を惹かなかった事もあるそうで……。そりゃそうか。





読んでいただきましてありがとうございます。

誤字報告ありがとうございます。助かっています。

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