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第百四十六話 こじゃれた料理や、今だとアツキサトで食える料理じゃない方がいいだろ? この世界には存在しない物だしね

連続更新中。

楽しんでいただければ幸いです。



 野外にテーブルとイスを出し、小型魔導コンロと大き目のヤカンも取り出した。続いてミネラルウォーターのペットボトルにそして。


「カップラーメンか!! いや、それも本当に久しぶりだな。昔はよく食ってたが」


「こじゃれた料理や、今だとアツキサトで食える料理じゃない方がいいだろ? この世界には存在しない物だしね」


「こっちにはラーメン自体が無いしな。牛丼、ラーメン、カレー。元の世界って本当に食べ物が溢れてたんだな」


「……こっちはさ、知ってると思うけど塩が高くて砂糖が希少で乳製品が無いっていうトリプルコンボだったんだ。今は砂糖が高い以外は何とかなりつつある。数年後、いろんな物を気軽に食べられる状況にしてるのがとりあえずの目標さ」


 塩の件はたまたまだったけど、ニドメック商会の一件が無くても慎重に塩市場を破壊する気でいたんだよな。


 とりあえずいいペースで状況は変わってきてる。あまり不幸な人を増やさない方法で、いい方向に向かわせたいんだよね。


「そのあたりは領主や国王の仕事だろう。俺達ブレイブの仕事は平和を守る事さ」


「俺は戦う以外の方法でもこの世界を平和にしたいんだ。……何を選ぶ?」


「醤油、豚骨、塩、味噌、ラーメンじゃなくてうどんや蕎麦まであるのか。そういやうどんや蕎麦も食ってねえな」


「ひとつじゃなくてもいいし、欲しいラーメンは後で箱で渡すぞ」


「マジか!! それじゃあ基本のコイツだな」


 一番基本のアレ。ビッグサイズのカップラーメンにお湯を注いで三分待つ。カレー味とかもいいんだけどな。


 ちなみに俺は同じカップラーメンのシーフード味を選んだ。


「そこまで旨いって味じゃないんだけど、安心する味というか懐かしい味だよな」


「本当に懐かしいぞ。十数年ぶりに食うカップラーメンは……。次はカレーだな……。お、カップ焼きそばまであるのか」


「近くに穴を掘ってそこに湯を捨てるか? カップ焼きそばも最近は色々増えたけどね」


「ノーマルや塩、油そば? それは普通の味っぽいけど、なんだこの馬鹿でかいの」


 二番目にでかい奴な。流石に一番でかいアレは寿買(じゅかい)にもあつかってなかった。


【ラインナップに追加しますか?】


 あれひとりで食いきるのはヴィルナか雷牙(ライガ)位だし、数人で分けるんだったら小さいの人数分用意する。


 ……ルッツァもひとりで食えるかもしれないな。でも追加しなくていいぞ。


「それを選ぶと他のが食えなくなる気がするけどな。……躊躇なくお湯を注いだか」


「今回はこれで〆る。お湯を捨ててっと、あ~、このソースの匂い。チープだけど色々滲みる味だ」


「まだ少しパリパリいってるがいいのか? ってそういえば堅いのが好きだったっけ?」


「完全にふにゃふにゃになると食った気がしなくてな。ラーメンの方は仕方がないが」


「食ってるうちに柔らかくなるしな」


 ……ノーマルとカレー、それにカップ焼きそばか。数は三つだけど、カロリーで行くと一日分超える気がする。


(ヴリル)が上がると異様に腹が減るようになる。なんでかは知らんが、こっちの世界に来てからの方がそれが酷いんだ」


「大食いにそんな秘密もあったのか。そういえば他のブレイブも後半になる程食う量が増えてた気がするな」


「なんか食った分が腹の中で消えてるというか、消化中に胃の中で(ヴリル)に変換されてるって感じなんだ。お前もそのうちそうなるぞ」


「その時は食うだけだろうな。いつも多めに作ってるから多少増える位だと問題ないぞ」


 ヴィルナも最近は本当に一人前大盛位しか食べなくなったし、俺も同じ位しか食わないから結構余るしな。


 というか、原因はヴィルナが料理の練習中に試食してるからってのは分かってる。若干性能が上がった鑑定機能で相手が病気かどうかは分かるようになったしな。相変わらずヴィルナとかシャルを鑑定しても食用可とか出やがるけど。


「さて、食後は組手じゃなくて(ヴリル)を使った様々な力の勉強だ。まずは基本の身体能力向上。この世界の場合は魔力でも可能だが、身体能力については(ヴリル)の方が数倍勝る」


雷牙(ライガ)の動きとかが凄まじかったのもそれでなのか」


 モニターで見てた時より凄かったしな。


 いや、リアルに体験したからって訳じゃないと思うぞ。


「組手の時は割と軽めだったけどな。お前の力が分からないのにいきなり(ヴリル)を全開じゃいかないぜ。これが普通の動きで、こっちが(ヴリル)を纏って少し強化した場合。……そしてこれが全力の半分程度か」


「最後は見えねえって。どれだけ早いんだよ」


「最高速度は多分マッハ超えるぞ。ブレイブサンダーが無くても旅が出来た秘密だ」


「まさか変身して走ってたのか?」


「魔物が多い場所なんかはその方が早いんだ。その分腹は減るし、事前に大量の食料を用意しとかなきゃならない」


 正体ばれとか気にしないでいいと、そんな運用方法もあるんだな。


「次にシールド。氣弾(ヴリル・ブレット)よりも簡単な技だが覚えると重宝する」


「金色の光の板?」


「形は様々だし、俺の身体が金色に光ってたら全身にこのシールドを展開させてる状態だ。そのうち無意識にシールドを張れるようになる」


「それはかなり強力なのか?」


「変身解除級の攻撃でも無効化可能だ。ただ全身に纏う分それなりに(ヴリル)を使うし、持っている(ヴリル)の量が少ないとかえって不利になる事もある。特にお前は(ヴリル)の保有量が少ないみたいだしな」


 変身時間や必殺技の回数に制限がある位だしね。


 色々考えて戦わなきゃいけないのは今までと同じか。


(ヴリル)を纏う方法だが、さっきの懐中電灯を自在に使えるようになると、自然にできるようになる。いきなり(ヴリル)を纏うと、人に怪我をさせたりするからやろうとするなよ」


「それでして見せるだけで、お前もやれって言ってこなかったのか」


「制御できない力はどんな力でも暴力に過ぎない。まだ数日だが、お前はちゃんと分かる奴だと確信してる」


「力におぼれてたら、この辺りの経済とかいろいろ破壊しつくしてたんだろうけどな。物があってそれを作る人間や売る人間、それぞれの生活があってそれは一方的に奪いつくしていい物じゃない。だからいろいろ段階を踏んで進めてきた」


 それでもかなり性急に進めてきたのは認める。少なくない人がこの流れにはついてきていない筈だ。


 だけど今はいろんな条件が重なって、生活基盤を築くには絶好のチャンスの筈。選り好みをしても幾らでも仕事はあるし、能力を生かせる場所がいくらでもあるんだから。


「スティーブンの言う通りだな。先の先まで見通す恐ろしい奴だって言ってたぞ。そのくせ足元にまでしっかり目が向いている。隙が無い怖さだってよ。あいつがあそこまで言う奴なんて初めてだ」


「腹が減るのも、仕事が無いのも、誰かが死ぬのもできれば避けたい。冒険者稼業に飛び込む奴らでも、最低限の手助けはしたい。でも、おんぶにだっこじゃ成長しないし、ある程度自分のスタイルってのは強要されないで自分で見つけるものだと思ってる」


「それが基本だ。紅井(あかい)の野郎はそれで相当苦労したからな。自分の型が分かってないのに、戦場(いくさば)の真似をしたばっかりに何度も死にかけたしな。戦い方を押し付けた戦場(いくさば)の責任も大きいんだが」


 五代目ブレイブのバーニングブレイブ紅井(あかい)(ほむら)


 情熱だけはあるけど戦いは素人の紅井(あかい)(ほむら)がブレイブになったシリーズで、最初にファイティングブレイブの戦場(いくさば)戦司(とうし)が自分の戦い方を押し付けたんだよな。それで空回りしたあげく、前半はボロボロになる展開が続いていた。


 主役のブレイブが大怪我をしてひと月変身不能とか当時は相当驚く展開で、その一ヶ月間は歴代のブレイブが救援に来るという展開になっていた。あれはあれで受けたんだけどね。


「十分経験を積んだベテランと同じ戦い方をした上に、持ってる武器すら別物ってのは無理を通り越して無謀だ」


「それも知ってやがったか。自分の分を超えない、自分の力を正確に知る。誰かを守る時には目を瞑らなきゃならない事もあるが、基本は超えちゃならないラインだ。何かを始める時、まず最初にやらなきゃいけない事さ」


「実践して誰かに死なれるのも寝覚めは悪いんだけどね」


「そういう奴は必ず別の場面で誰かを巻き込む。オルネラとかいう少女だったか、不幸な出来事だがこの世界で冒険者の道へ進んだならば自業自得だ」


「意外に厳しいんだな」


「この世界に来てすぐの俺だったら、手取り足取り教えただろう。実際に何度か手ほどきしてやった冒険者もいる。だがその多くが自分の力を過信し結果として大きな被害をもたらした。それで気が付いたのさ、この方法はダメだと」


 あの雷牙(ライガ)勇慈(ユウジ)がそこまで言うんだ。余程の事があったんだろう。


「力には責任が伴う。その先にある名誉や財宝だけを求めれば、不幸な結果が必ず付いて回る。だから俺は俺が認めた奴にしか教えないし鍛えない」


「俺の事は認めてくれたんですね」


「お前は力を過信もしなけりゃ振りかざしたりもしないよ。人となりは大体理解した。これからもよろしくな、アルティメットブレイブ」


 ああ、このひとが俺をブレイブの一員だと認めてくれた。


 なんだろう、今までやってきた事が正しかった、そんな気がする。


「こちらこそよろしくお願いします」


「敬語は無しだ。よろしくな」


「こちらこそよろしく」


 約束通り、大量のカップラーメンや焼きそばなどを箱で譲渡し、ついでに牛丼も寸胴三つ分渡しておいた。その後、上機嫌の雷牙(ライガ)と一緒に魔導車でアツキサトへと帰還した。……あの量で何日くらい持つんだろう? 普通の人間だったら半年分くらいあるんだけどね。


 この日、夜遅くまで貰った懐中電灯を使っていたら、豆球よりは大き目の光を生み出す事に成功した。


 というか今の俺にはこの辺りが限界っぽい。


 もっと(ヴリル)を鍛えないといけないな……。





読んでいただきましてありがとうございます。

誤字報告ありがとうございます、本当に助かっています。

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