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第百三十八話 どんな感じになるかなと思ったけど、これでしたらいいですね。すいません、突然こんなことをお願いして

連続更新中。

楽しんでいただければ幸いです。



 忙しいと時間の流れが速いというか、四月もあと一週間となった。


 こっちの世界には結婚式を引き受けてくれる業者なんてなくて、細かい調整も俺自身が走り回ってしないといけない。


 二週間ほど早いけどヴィオーラ教に出向いて、テーブルとかのセットを届けてみた。実際に並べてみないとどんな感じになるかわからないし、そのテーブルの上に料理を並べるとどうなるのかってのも確認したかったからなんだけどね。


「どんな感じになるかなと思ったけど、これでしたらいいですね。すいません、突然こんなことをお願いして」


「いえ、今回も多額の寄付をいただきましてありがとうございます。毎回これだけの額を寄付していただける方もいませんので」


 毎回十万シェルも寄付する奴はいないだろうからな。札束が訪ねてくるようなもんだろう。


 おかげで別棟で行う披露宴の予備練習というか、実際に料理を並べたらどうなるかの実験にまで付き合ってくれる事になったのはありがたい。というか、実際に食べて貰う所までセットなんだけど……。


「これ、本当に食べてもいいんですか?」


「披露宴の料理ですよね? こんなに豪華な料理が出てくるんですか?」


「できるだけ服が汚れにくい物を考えたんですが、この辺りの料理は外したくなかったので入れました。主食もライスよりもパンがいいでしょうし」


 参加したシスターたちは目の前に並んだ料理に驚いていた。


 献立はバケットをはじめとするパン。それに付けるバターやジャム類。メインデッシュのローストビーフとクリームシチュー、そしてデザートのフルーツタルト。ランチだしサラダ系は無くてもいだろうという判断だ。


 ローストビーフの肉汁やソース、後はパンにつける蜂蜜やジャム辺りが服を汚しそうな気がするんだよね。後はフルーツタルト。載ってるイチゴとかブルーベリーを服の上に落とさなきゃいいんだけど……。


 ちょっと量的に少ないかなと思ったけど、ディナーじゃなくてランチだしこの位でいいかなと思ったんだけどね。なんだか試食担当のシスターの反応をみると、これでも割と多めだったみたいだ。


「パンにジャムとか蜂蜜をかけ放題って……。これ、パン自体も凄く美味しいっ!!」


「このローストビーフって料理。使われてるお肉も凄いけどかかってるソースがすっごいよ。お行儀悪いけどパンにつけてもおいしいし」


「まだ少し寒いですし、このクリームシチューの温かさはいいですね。なんと言いますか、優しい味です」


 シスターたちの反応は上々だ。ヴィオーラ教は割と資金的に余裕がありそうだし、普段からそこまで節制してない筈なんだけどね。シルキー教の方も最近は食べる分には困ってないけど。


 それにしても今も寒いかな? もう四月だし俺は半袖でもいい位なんだけどね。 ヴィルナが特殊って訳じゃなくて、本気でこの辺りの人は寒さに弱いみたいだね……。毛皮の外套が異様に売れる訳だ。


「流石にクライド様ですね。これだけの料理を披露宴に用意する方は居ませんよ? このフルーツタルトだけでも、おそらく普通の披露宴の料理全てを超えているでしょう」


「そのあたりはひとそれぞれでしょうね。流石に今回はカロンドロ男爵やスティーブンも来ますので」


「そういえば参列される方が全員商会の頭とか貴族ばかりでしたね。あれだけの人が揃う結婚式も滅多にありませんよ」


 そりゃそうだろうな……。


 この辺りだったら男爵自身の結婚式でもない限りありえない参加者だし、男爵が結婚式を挙げる事はもうないだろうしね。


「あと飲み物なんですが……。ワインで問題ありませんよね?」


「お昼ですし、少し薄めたワインでもいいと思いますよ。この位ですと問題はありませんが」


「呑兵衛ばかりだから問題ないと思いますよ。もう少し強い酒でも酔いそうもない人ばかりですし」


 ルッツァ達は当然だけど、スティーブンも酒に強かったしな。


 ウィスキーとかでも同じような飲み方でいけそうな気がする連中だし。みんなそれなりに地位も名誉もある人ばかりだから、限界を超えて飲んだうえに悪酔いして暴れたりするほどガキじゃないだろう。


「参加されるのは立派な方ばかりですし、その辺りの心配はいらないのでしょう。あと飾りつけについてなんですが」


「今日は花瓶に花を活けてみたんですが、何か問題がありますか?」


「いえ、この時期に見ない花も多いですので」


「昔集めてアイテムボックスに収納していた花の中から良さそうな物を選んだんですが、何か問題のある花が混ざっていましたか?」


「今日飾られているのはすべて披露宴で使われる花ばかりですね。当日も同じものを用意できますか?」


「大丈夫ですよ、たくさんありますので。今日使った分は教会で使っていただけると花も喜ぶと思いますよ」


 この世界に来た時に集めてた物とか採集依頼のついでに集めてた物がほとんどだけど、綺麗な花はプラントで育てたりもしてるしね。


 というよりは、アイテムボックス音声に頼まれて結構な数の植物の種子を集めてる気はするな。役に立ってるんだろうし、こういう時にも利用できるからいいけどな。


【多様性は正義です。惑星開発にまだまだ必要な種子があります。今後も協力をお願いします】


 いいけどさ。


 こいつも色々大変なんだろうな。ほぼ他人事だけど。


「本当にクライド様は素晴らしい方ですね。後で教会の方に飾らせていただきます」


「花瓶の方も使ってください。当日用にはまた用意しますので」


「あの花瓶だけでも相当しますよね?」


「あれひとつ割ったら一年位タダ働きは確実かな?」


 なんか他のシスターが話してるけど、確かにこの辺りで買うとあのくらいの花瓶でも高いだろうな。


 あれは本番用じゃなくて、今回の練習用に揃えた割と安めの花瓶なんだけど。本番のに比べたらの話だけどね。


【白磁の花瓶ですので、この辺りで買うと一年どころか死ぬまでタダ働きだと思います】


 だろうね。ボーンチャイナはこの辺りでそのうち始める予定だし、教会においておけばいい宣伝になるだろう。この辺りはスティーブンやカロンドロ男爵にも話してる。


 白磁工房は立ち上げと品質の安定に苦労するだろうけど、一度軌道に乗れば莫大な財を生み出す産業に化けるのは間違いない。


「もし割っても怒らないであげてくださいね。半分飾って残りを予備にしたら幾つか割っても大丈夫でしょうし」


「お優しいですね。わざと落としたのでなければ私も怒りませんよ」


「いや。怒るよね?」


「怒られるに決まってるじゃない」


 シスターたちは素直ないい子みたいだな。でも、後で怒られるのは確定だろう。おしゃべりしてるシスターたちは元の世界での中学生くらいに見えるし、あのくらいの年齢の子はあのくらいが普通なのかな?


 それはそうと教会の物を壊したら少しは怒られるだろう。わざとじゃないにしても仕方がないでは済ませられないし。


「当日の飾り付け用のテーブルクロスなどは用意しますので、このままここで使ってください。テーブルや椅子もそのまま寄付します」


「今後この教会で披露宴を行いたいという人が増える気がしますね。祝福される方が増えるのはいい事だと思います」


「シスターアレシアが祝福されて欲しいよね」


「あれだけ美人なのにどうして相手が見つからないんだろうね?」


 いや、それは本人のいないところで言おうよ。


 ほらさ、美人のシスターさんのこめかみに青筋が浮いてるよ?


「それではまた一週間前に最終確認に伺います。では今日はこの辺で」


「ありがとうございました。はい、そこの二人はちょっと居残りですよ~」


「「ごめんなさ~い!!」」


 脱兎のごとく逃げ出した。


 素直にここで説教を聞いてれば、短めですんだのかもしれないのにな。


 でも、本当にあれだけ美人でも相手が見つからないとかあるんだ。結婚は相手が必要だし、出会いが無いと難しいしね。


 俺はヴィルナと出会えて本当によかったよ。





読んでいただきましてありがとうございます。

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