第百二十一話 ここがヴィオーラ教の教会か……。結構大きな敷地を持っているんだな。教会部分は立派だし、奥の寄宿舎も割と良さそうな造りだ
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楽しんでいただければ幸いです。
今日はヴィルナとの結婚式の下見というか、この世界の教会とかがどんなものなのかを調べる事にした。
ヴィルナは相変わらずまだ家から出る気はない。その時間は家で料理の練習というか色々しているので文句はないのだが、一応これ、俺たちの結婚式の下見だからな。
【言い方が悪かったのでは?】
教会に下見に行くんだけど行かないか? って聞いたぞ?
【結婚式のという重要な言葉が不足していたと予測します】
……確か言ってなかった? でも、このタイミングで教会に行くなんてそれ以外に理由なんてないだろ?
【今までも色々手出しして来ましたし、教会を訪ねてまたなにか始める気だと呆れたのでは?】
確かにそれは少しあるよ。
この教会の役割とか聞きたいし、ここが孤児院とか運営してるんだったらいくらか寄付をしてもいい。
その上ではっきり言うが、宗教系でまともな所なんてほとんどないと思ってる。元の世界では一応仏教徒だったけどな。神様の存在は怪しいとしても、全部最終的に人が作り出したモノだろう?
【この世界の場合、女神が降臨した後にその女神を信仰したのが始まりですね。教会を建設したり教義を説いたのは人の可能性が高いですが】
大体神様なんて人外の存在が、人の生き方にあれこれ指図する訳ないだろ?
こうしなさいって神様が指示した証拠がある場合は認めるけど、神様の言葉を拡大解釈したり伝える人間が都合のいいように言い換える可能性はゼロじゃない。
【神罰を下す神様も稀にいますけどね。そうすると悪魔とか荒神とか別の呼び方をされる場合があります】
手出ししてくる神様もいるんだ……。
【どの世界も神かそれに準ずる存在に管理されていますので、あまりに不敬ですとそれなりの神罰が下りますよ? その存在の多くは自身を信仰するものには寛大ですが、敵対する存在には容赦がありませんので】
教義とかは信徒が神にこれだけ強く信仰してますってバロメーターみたいな物のなのか。
神託ってのもあるの?
【大きな厄災の時などの時に神託があります。神時間なのでかなり誤差がありますが】
ダメじゃん。
というか、神的な存在がどの位の時間存在してるのか知らないけど、そうなると数年とか誤差の範囲なんだろうな。
【数百兆年規模の神も結構な数で存在します】
そこまで行くと間違いなく百年単位で誤差だな。
超越種って理解が及ぶ存在じゃないし、神託を下された方も理解に苦しむのかもしれない……。それで教義とかが複数存在する。理屈はあうのか。
【直接降臨してサポートする神的存在もいます】
それはまた……。とりあえず神的存在が本当にいる事や、宗教的な存在の意義も分かった……。
人にとって害にならないんだったら敵対する事も無いし、誰かの救いになるんだったらやっぱり必要なんだろうな。
教会への訪問も結婚式の手順として受け入れるしかないか。
それじゃあ、女神ヴィオーラを信仰するヴィオーラ教の教会から伺うとするかな。
◇◇◇
北エリアの中央付近。といっても、現在は外部に町が拡張され始めてるので、この場所でも最終的にはかなり中心部寄りに位置する事になるだろう。
この場所には女神ヴィオーラを信仰するヴィオーラ教の教会があり、そしてその裏には寄宿舎というか様々な施設が立ち並んでいた。
「ここがヴィオーラ教の教会か……。結構大きな敷地を持っているんだな。教会部分は立派だし、奥の寄宿舎も割と良さそうな造りだ」
寄宿舎の方はどちらかというと実質本位というか、壊れにくそうな造りにしてある気がする。
「当教会に何か御用ですか?」
「ここのシスターさんですか? 今度結婚をする予定でして、教会の下見に来たのですが」
「おひとりでですか?」
「寒さが苦手らしくて、式を挙げるのも春先になりそうです」
それでも下見くらいは一緒に来るんだろうけどね。今回の一件は俺の伝え方が悪かったと思っておこう。
「双翼の指輪をされてるのに、この位の寒さで下見に来られないんですか?」
「寒いのが本当に苦手らしいんですよ。今回は俺の伝え方も悪かったのかもしれませんが、今回は教会の下見ですし」
「それだけの服を着られてるという事は、もしかするとクライド様ですか?」
「はい、そうです。こういった場所にどんな格好でくればいいのかわからなかったもので」
以前カロンドロ男爵の晩餐会の時に着ていかなかった方のスーツ。
今は俺が売った最高級の服を何着も仕立ててる筈だし、このクラスの服でも問題ないだろう。
おかげでここまで歩いてくる間、誰も近付いてこなかったよ。
「お連れの方に一緒に来るように強要されなかったんですか?」
「相手の意思は尊重しますよ。命に係わる事ですと強要する場合もあるかもしれませんが、それ以外の時は譲れる事は譲るモノでしょう?」
「本当に噂通りの御方なんですね……。貴族の方などは強要する事も多いそうですので」
この辺りにいる貴族はそこまで酷く無いみたいだけど、地方都市には割とその手の貴族も多いらしい。
「そういう事ですので、教会の中を見学させていただきたいんですが。あと、結婚式の予約がどの位の時期から可能なのかも」
「クライド様ですと、参列される方も貴族や商会の頭クラスの方ばかりですよね?」
「おそらく……。参加人数は少ないと思うんです。おそらく三十人程度」
カロンドロ男爵は来るだろうし、スティーブンとリリアーナ。あとは商人ギルドのミケルとか冒険者ギルドのロザリンド。
ルッツァ達と、エヴェリーナ姫。お付きの人とかも来るだろうから、その位で収まるかな?
「おそらくもっと参列されると思いますよ。教会の中に全員入れればいいのですが……。こちらにどうぞ、ここが教会の入り口になります」
「かなり広いんですね。二百人くらいは座れそうな感じですね」
「信者の方が祈りを捧げに来ることもありますので。結婚式をご予約されている時には、信者の方には事前に通知します」
独自の連絡網があるのか?
携帯電話も無いのに?
……数ヶ月もあればそのくらいできるのかな。
「この辺りですと、結婚式ってどんな流れなのですか?」
「教会で司祭様から祝福をしていただき、その後に誓いの言葉、指輪などの交換、後は入り口まで歩いていきまして、後は外に出て終了ですね」
指輪などの交換?
双翼の指輪はあるし、俺の腕には一般人には見えないけどブレスレットがあるから却下。
となると、ネックレスとか? 別の指に付ける指輪でもいいけど。
「既に双翼の指輪などを送られている方ですと、ネックレスなどが一般的ですね。この場合、男性側から女性側に渡すだけでも大丈夫です」
「なるほど、着る服なんかは指定がありますか?」
「白に近い服でしたら問題ないですよ。一般の方ですと一番いい服を用意して来られる方が多いですね。白に近いというのも、昔は染められていない服が多かったのが由来と聞いています」
なるほど、一般人だと染めてる服も買いにくい時代があったって訳か。
この辺りの服は割といろいろ染めてある気がするな。それより、もうひとつ聞いておかないと。
「ウエディングドレスとかは無いんですか?」
「ウエディングドレスを用意するのは、国王の結婚式とか大貴族の結婚式くらいですね」
この世界にもあるのか……。あるんだったら、せっかくだからウエディングドレスは準備しておこう。
「ありがとうございます。これ、少ないですが寄付です」
「まあ、こちらこそありがとうございます。……大銀貨十枚!! あの……」
「正式な予約に来た時にはまた別に用意します。昨年の魔物被害で孤児も多くなっていますし、役立ててください」
「本当にありがとうございます。貴方に女神ヴィオーラ様の祝福があらんことを」
「それでは……」
さて、大体の流れは分かった。
その前にやらなきゃならない事は多そうだな。結婚式の日取りを決めた後に告知とか……。
男爵とスティーブン、ルッツァ達と各ギルドくらいでいいかな?
……ついでだし、後でもう一ヶ所のシルキー教の教会も訪ねてみるかな。
読んでいただきましてありがとうございます。




