表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/48

いやまあ、酷い目に遭ってます…

はい、お久しぶりですね?十晴でごぜいます。戦闘って難しいね。人間関係とかアンポンターンな十晴には難しすぎたのです。早くギャグ路線に戻したい…。まあ、何はともあれお楽しみ下さい!!

「あっ…ぐうぅぅぅっ!!」


のっけから凄いことになっております。


尾が明日香の首を締め上げ、宙ぶらりんになるよう高さを調整して足を浮かせている。


「お前っ…!!」

「駄犬風情が調子に乗るなっ!!」

ガッ!

「げはっ!!」


緋牙は遥人に踏みつけられ、地面に這いつくばっている。


「さて、私の駒があなた達にとって最重要な取引素材を手に入れた訳ですけど…面倒ですしこのまま食用の鶏みたいに絞め殺しちゃいましょう」

ギリリリ…。


「う…ぁぅ…かふっ…っ!!」

容赦なく絞め上げると声が更にか細くなる。


「止めろっ!止めてくれっ!!」

絶望に満ちた目で懇願する。



はい、前回をご覧になった人はご存知かとは思いますが明日香と遥人は、-----グルです。


回想~



「直球に言う。玉藻を助けてくれっ!!」


私の肩を掴み、目を合わせた遥人は真剣な顔で私の神経を逆なでる発言をした。


「は…?なに突飛な事言ってんのあんた。ツッコミ待ちなら結構きついんだけど?」

戸惑いと呆れを含んだ目で見られてるのが分かったのか、必死に取り繕おうとして口をもごもご動かし、「あ…」やら、「そ…」やら、何か言いたそうなのだが言いかけて口を噤む。

(ああ、やっぱこいつ…。普段の遥人だわ…。まあ、ちょっとつついてやるか)

2年も付き合ってたんだ。遥人がこういう気まずい空気になると下手に発言をしないようにして口下手になることくらい知ってる。


「助けるってあのいけ好かないぶりっこ玉藻の事?言っとくけど私は【今のあの子】は嫌いなの。あんたも馬鹿?振った女に寝取った女助けろって?ふざけんじゃないわよ」

馬鹿らしいと言わんばかりの冷笑を隠そうともせず冷たい視線を遥人に寄越す。


「私は今すぐにでも此処から出たいの。分かるでしょ?」


「無理だ。今、外は人が歩けるような環境じゃない。地面の熱気で皮膚が焼け焦げる。それに…」


遥人がそこで話を止めると、いつの間にか手に先程見た中国刀が握っていた。


「行かせてやれないんだ…。明日香、お前が下に降りようとすると切り刻むようになってんだよ…」

溜め息を吐いて、私を見る。

「え、なにそれ?ものっそい胡散臭い。」

(間違っても言えないけど…、うっそくさっ!!自作自演?でも現に天変地異みたいな現象がそこかしこで起こってるし…。よし、ため…)


「間違っても試そうとするなよ?」

「っ!?」

一歩降りようと足を動かそうとする前に言葉が遮る。

「あれっ?顔に出てた?」

「いや、違う。お前が降りようと考えてるのが手に取るように分かってうずうずするんだよ。体が勝手に動くっつーか、なんか斬り殺したくなるっつーか…」

「元カノ相手に随分容赦なさすぎませんっ!?少し位、ほんの一部でいいんで玉ちゃんに向けてる好意を分けて貰えませんか!?」

こいつ、サラッと凄い事言ったよ!今!!張り倒しても許されますよね私!!?

(えっ?えっ?ほんの数週間前ですよね!?振られたの!?しかも私が振ったんじゃなくて振られたんですよ!?それなのにこの扱いっ…!!そう、例えるなら、ダイヤモンドとシャーペンの芯みたいな感じですよっ!元は同じ炭素なのに片や大事に加工され、大事にされるダイヤと方や文字書いてるとたまにボキッと折れて誰にも見向きもされないシャーペンの芯!)

多分の驚きと中くらいの悲しみとほんの少しの呆れが私を直撃し、


「ねぇ、遥人。私、今、どんなカオシテルカナ?」


=(イコール)理不尽な扱いに対する怒りが出ます。ここ、『女心と秋の空、すけこまし道2級試験。恋愛のもつれに対する適切な対処について』に出ますよ?有段者なら応用してヤキモチを焼かすという上級テクに持って行きます。


…話は幾分か脱線しましたが、まあ、あれです。(なんでこんな男好きだったんだろう…。)っていう言葉が今、頭にちらついてるんです。大事な場面なのに元カレにダメ男の烙印押しそうになってます。表情が痙攣を起こしたのかピクピクするのが分かるし、目の前に居るこの男が自分の発言を酷いと思っていないのが丸わかりなこの「のぼけー」っとした顔!!余計腹立つわー。


「え?いや…そうじゃな…、のわっ!?なんでそんな顔して、「誰かさんの心無い斬り殺したくなる発言で」……違う違う違うっ!!お前は勘違いをしているっ!!あれはあのー、そのー…」

ああ、私の勘違いですか。でも、「斬り殺したい」とかそういう物騒な発言にはある程度気をつけろって言ったのにすっかり忘れていやがるようなのでご丁寧に教えてやれば、一瞬で冷や汗が多量に吹き出し、焦って言葉が出ないようです。弁解の余地を求めて慌ててるようですが、話が続かんし何よりまだ、


「私、今、どんな、カオシテル?」

絶賛ブチギレ中です。え?前にひっぱたいてこれでチャラにするって言ってたんじゃ?ですかって?むりむりー。今のこいつの言動は私がしぶしぶ建ててやった無罪放免フラグを引き抜いてポイっと捨てたんですぜ!?…駄目だ。頭ガンガンしてきた…。特に眉間辺りが皺になったら怖いなあ?


「……えっと…、喜怒哀楽の怒と楽が入り混じった感じ…、かな?7割方怒で楽が無理やり戻そうとしてるのが良く解ります。はい…」

直視出来ないのか手で私の顔見ないよう壁を作って顔を背けている。


人をまるでモザイク処理が必要なまでに凄いことになったかのような反応をするなんて酷いなあ?


「誰の所為でなったんだろーねー?」

「明日香さんったら白々しいですなー!はははは…」

ぐりんと首を傾げ、目を合わせようとするとサッと目線を逸らす。


「そういえば私まだ銃弾残ってたんだよねー。どうしよう?私怒りに任せてあんたの脳天撃ち抜きたいなー?もしくはあなたの息子さんにしようかなー?…っ!?」


服から銃を取りだそうとして、やっと銃が二丁も無くなっていることに気づいた。

(しまった…。スカート切って仕舞う場所無くなったから上着のポッケに入れたり手に持ったりしてたんだけど…、どっかで落としたと思いたいけどまさか…、というか一人しか思い浮かばないけど黒也君に盗られたかな~…。不意打ちで殴られて気絶した時か…。しかも、さっき使わなくて銃弾のストックがフルなのを持ってく辺りちゃっかりしてるなぁ…。ああ…嫌な想像しかできないっ!主に玉ちゃんが撃たれる場面が様々なカットで思い浮かぶ…!うっわ…、考えたら胸くそわるっ!)


だってそう思いませんか?間接的に知り合いの死亡原因が私が持ってた銃って怖いわー。


幸いな事に、遥人には気づかれていないようだった。


「いや、俺にはまだ子供はいませんよ!いたら不倫だよ!?それか隠し子!それに三股なんかする度胸は俺には無い!!しかもなんで銃なんか持ってんの!?ねえ!?銃刀法をぶっちぎりで違反してんじゃねえか!!」

当然の反応ですね。でも、私も遥人が剣持ってた事に驚いたからおあいこね。


「二股男がえっらそうに…。本当は何処のことだか解ってるく・せ・に?それに私、ちゃんとナイフも持ってるのよ?」

幸い、ナイフは持って行かれなかったけど…。あれですね?黒也君。実用性が薄かったんですね?解ります。でもねぇ?私の中であなたの株、下がってますよ?ぶっちゃけ言うと、女に腹パンする男とか無いわー。私の人を見る目も腐ったかなー。告白しなくて正解だったわー。うん!返事はごめんなさいだ!


黒也が建てた恋愛フラグが清々しい程にへし折れた瞬間。


「俺の元カノそんなに凶器持ってたの!!?。後、命の危険がちらつくのでせめていつものように怒鳴って下さい…」


「あらそう?じゃあお言葉に甘えて…こほん、てめぇ女なめとんのかゴラアァァァ!!!ああん!!!?」

「さーせん!!なめてなんかないです!!」


「しかも、人を殺そうとするわ、邪魔するわ、禄な事しかしねぇのか!?」「ちがうんです!!あの時は操られてたんです。言葉のあやを間違えて誤りになったんです!!」

「ちっ!!たくよぉ…。おめぇこれ終わったらオシャンティで高級で静かなレストラン予約しとけよ?埒あかないから今度話を着ける場を設けてこい。3人でじっっくり話し合いを存っ分にしようや?くれぐれも条件満たしとけよ?上記のレストランなら私も大声で怒鳴らなくて済むからなぁ?飲み物引っかけなくて済むからなぁ?後、とんとん拍子で物事進めたいならなぁ!?」

「…っ!…解った。だけどあんま期待すんなよ?それと、ありがとうな!!」くっそ!私の怒鳴った内容ちゃんと理解したみたいでムカつくわあ。あ、私さっき玉ちゃん助け出す事にOK出しました。じゃなきゃ(今度)とか、(3人で)とか言いませんよ。後、遥人のこんな純粋に感謝言えるとこが苦手です。私の性格上、相手の性格も悪けりゃ多少は悪態つくけど、入ってきたばかりの玉ちゃんみたいな純粋なのが苦手で見てると自分が嫌になるの。自分が汚れてるなって思い知らされるんです。ついでに言っときますが苦手なだけで嫌いではない。むしろ好ましいよ。雅鬼は普段ひねてる態度取るけど根が純朴だから好きよ。like的な意味で。嫌いなのは我が愚弟や部長みたいな自分を彷彿とさせる腹に一物持ってるタイプで所謂同族嫌悪なのよ。ちなみに緋牙もおんなじで、犬なのに猫被ってます。あいつ、馬鹿のフリした外道だからね?純粋一途ってのは合ってると思うけど、あいつの場合は…っと、またも話が逸れましたね。すみません。


「そういや、操られてたっていう割には意識しっかりしてなかった?」

いや、さっきから気になってたんですよ。尋ねてみれば、待ってました!という感じで喋り始めた。

「やっとか…、んーと、どこから話したものか…。おおざっぱに説明するとだな?俺は他の奴らと違ってとっておきだったみたいでな。ある程度自分で判断する位の自我を残されてたんだ。そんでお前と対峙した時、はっきりと疑問が生じたんだ。『何故俺は今、明日香に対してバラバラにするとか言ってんだ?』ってさ。そこからは今まで自分がやってきた事に対して芋づる式に疑問が浮かんできてな?だんだん頭が痛くなってきて、『ああ、俺、今まで正気じゃなかったんだ』って具合に元に戻りまして「ちょっと待って?」

「ん?」

説明してくれてるのはありがたいんだけどそれじゃああんたいつから…。


「いつから…、正気、だったの?」

「んー…。お前らと話しできた辺りからかな?」

「えーー…。まじー…。…もしかして、あんたがうずうずして切り刻む発言したのって」

「はい、俺まだ玉藻の支配下なんだ。衝動的に刀を振り回したくなったり、会話は出来るけど蚊を叩くみたいに無意識に殺したいんだ。自分でもおかしいことに気づいてんだけどさ。どうにもならなくておまえ達に切りかかった訳です」

お手上げのポーズを取り、困った表情をする。


「えええぇぇー…、怒って損した…。」

怒るのにも体力いるんですよ。常に怒ってたら小じわが増えるって言うしね。

「怒って損したて…」

がっくりと肩を落とすもののほっと安心したようだ。

「ああ、そういや玉ちゃん助けるプランは有るの?」

「おう、有るぞ。明日香、お前人質になってくれ」

何気なく聞いて、明るい顔で言われた言葉に一瞬固まった。あーあー、そうでしたよ。こいつは建てたフラグを自分でへし折る奴ですよ。私の好感度だだ下がりよ。

「前言撤回。怒って正解だったわ」「おまっ!?助けるって言ったろ!」


ここからは先は前回を見て下さいね。


九階にて


「ごめん。やっぱり着替えたいからちょっとここで待ってて。予備に上下の着替え、ロッカーに入ってるの」

肩を貸して貰い、やっとこさ九階の更衣室にたどり着く。後4つ登れば屋上に到着するが、きついんです。体力的にも精神的にも衣装の露出度的にも!

「確かにその格好はきついよな…」


さて、明日香さんの今の衣装。パンツもろだし。血とか汗で白シャツが禍々しく赤く染まってゾンビみたい。

(普段露出し慣れてないのにいきなりこれはきつい!!)

公私においての普段着は春秋冬共に長袖、ロンスカばっかり。(一応、私生活では上の条件内でお洒落してる)

夏場は流石に暑いので半袖、膝丈スカート、靴下か蒸れないストッキングのコンボが基本的なので、今の格好はスースーして恥ずかしい。

ちなみにパンツとかジーンズ系統は怖くて履けない。体系とかそれ以前にトラウマがあるので…。


「ここで待ってて?すぐ着替えてくるから」


「おう、わーった。ここなら誰もいねぇから安心しとけ」

「ありがと。んじゃね」



一旦別れて浸水した廊下を歩き、ロッカールームに入ると真っ先に三枝玉藻のロッカーに向かう。


バカリ、

「さて、やっぱりか。私が抑えても収拾する気配が無かったしね~…。しかっし…」

本来なら鍵の掛かっているロッカーはいとも簡単に開き、中をみれば切り刻まれた玉藻の私服、ロッカーの中に書き込まれた罵詈雑言。放り込まれた生ゴミが散乱していた。


「ついにロッカーに落書きまで来たか…。いや~、女の嫉妬は同性であっても怖い怖い。さ、時間無いし代わりに私のロッカー置いとくか…。後、玉ちゃんの私服は私が管理してるのよね~。残念でした~」

(やっぱり無理だったか。お姉様方は抑えられても、私より年下は集団化するわな…。玉ちゃんの行動は…。)

「ま、生ゴミは掃除するけどね」

ロッカーの中の生ゴミをほうきとちりとりを使って掻きだし、切り刻まれた服と一緒にゴミ箱に生ゴミを落としていく。なんなのか分かんない生ゴミの汁は更衣室まで浸水してる水をすくい、それをロッカーの中に入れ、ゆすいでゴミ箱に捨てる。勿論ごみ袋の口は縛っとかないとくちゃいので縛って玉ちゃんの目の届かない所に持って行く。そして中の物を一旦出して濡れない場所に置く。後はロッカーを移動させて中の物を入れ替え、紙製のネームプレートを私のと差し替えれば、

「よし、設置完了っと。あれ?玉ちゃんのネームプレートの裏側になんか書いてある。…そういや引っかけてある手鏡もなんか違和感が…」


まずはネームプレートの方を先に見てみると裏側には中華的な模様が書かれている。

「んー…?呪い?おまじない?どっちにしても気味悪いし見なかったことにっ…」


ひらっ。

うっかり手を滑らせ、水溜まりの上に落としてしまった。ネームプレートはあっという間に水が染みて模様が滲んだ。

「うわっちゃー…。油性じゃなくて水性かー…。まあ、戻しとけ戻しとけ。バレなきゃいいんだよ」

そんないいかげんで行き当たりばったりで考え無しな性格だから彼氏が出来ないんだよ。(明日香の弟談)


「鏡の方は、いかにもなんかあったよね?これ…」

ロッカーの扉の内側に引っかけてある手鏡のガラスが欠けてうっすら血が付いているのを発見する。

その鏡を触って揺すると僅かにずれて取り外せるのが解り、空けてみるとと片手ぐらいの大きさのメモ帳が入ってた。血が付いてたのは多分開けようとして欠けたガラス部分で切ったのだろう。パラパラとページをめくってみるとメモ帳の内容は日記のようだった。

「玉ちゃん…。いつの間にこんな仕掛けを作ってたの?」

感心した表情でメモ帳が入ってる場所をなめ回すように見たり、手鏡を開け閉めしているがそもそも論点がずれてる。


(メモ帳を見てる時間は…、ないな。後で見るか…。これ以上待たせるわけにはいかないからさっさと着替えよ…)


メモ帳を予備の上着のポケットに入れ、制服を脱いでいく。


「上着とシャツは血でえらい事になってるからなー。洗っても血は落とせないしこの血の量じゃクリーニングにも出せやしない…。はあ、持ち帰って捨てるか…」

(全体の4割に血が付いてると処理が面倒ね…。スカートは言わずもがな持ち帰って捨てるけど。というか、恥っずかし!太もも丸出しでパンツ見えてるし!しかもブラとロングガードルの色揃ってないのにな~…。とほほ…)

さて、男性諸君は知っているかどうかは知らないが勝負下着というのは上下の色・柄・気合いと「狙ったあいつを仕留める」と言った気概が揃ったそれなりにお値段の張った下着の事なのだよ。例を言えば、『ちょっとエッチな恋愛漫画はーと』みたいなやつに出てくるキャラは大抵勝負下着だよ。それでうっかり見られて『キャー!エッチー!』とか言う女キャラはあざといよ。まだピンクのブラでいちごパンツの方がリアリティあるわ!毛糸なら尚良し!普段から勝負下着のやつぁまず居ねえだろ。居たとしても少数だと言おう!

ん?私のブラの色は教えませんよ?男性読者へのサービスタイム?はっ!(笑)私じゃ務まんないって!せいぜい布の擦れる音くらいしか演出出来ないって。髪は血が固まってるから無理。つか動かすと痛い。いやあ、つくづくサービス精神に欠ける女ですいませんね?


シャツのボタンを留め終え、次に散切りスカートを脱いで予備のに履き替え、後は上着を羽織ってボタンを留めて終わり。

「一気に色んな事が起きて、イライラが溜まってたからねー…。誰かに八つ当たりでもしないとやってけない…。ま、理不尽な八つ当たり兼ガス抜きに付き合ってくれてありがとさん。遥人。さて、もう一人私のグチにでも付き合ってもらいますか」


更衣室のドアを開け、また水溜まりの廊下をパシャパシャと歩いていく。

だけど、日記をめくっていた時、見てしまった。無視できない、その綴られた筆跡を。

最新の日にちの記録にはこう書かれていた。


『先輩…。許さなくていいです。むしろ許さないで、嫌って欲しいんです。今の性格を演じ続けたらいつかは最低な女に成り下がってあなたが心底絶望する女になれる筈だから。だから、お願いです。先輩。無理しないで泣いて下さい。あなたが祝ってくれる度、あなたの目がほんの一瞬だけ泣きそうなのに気づいて下さい。』


「なっさけないの…。後輩に…、玉ちゃんに無理させたのは私じゃない…。まったく、はた迷惑な女ねぇ私。祝ってるのに涙目とかホント迷惑過ぎるっつーの…」

歩く彼女の頬には一筋の涙が伝っていた。



屋上前の扉にて、


「なんとか作戦は練ったけど、チャンスは一度きりよ?演技はちゃんとしてよね。…それはそうと本体はネックレスの方だったのね…。後、玉ちゃんの着けてるネックレスの輪っかの材質は革で合ってた?」


「ああ、合ってる。後、音立てるなよ?どうやって目立たなくしてるかは知らないけど、右袖に隠してるは鳴らすなよ。左袖のに関してもだが…。だけど切る場所がぶれたら間違いなく…」

「玉ちゃんに一撃必殺の止めがさっくり刺さるわね。解ってるわよそれくらい。怖いから最悪の状況を何度も頭ん中でシュミレートしてるし…。それじゃ、お願い」

ふう、とため息を吐いて地面に座る。


「あいよ。タイミングは任せとけ。んで、それまで粘れ」

片手に剣を持ちながらもう片方で私の襟をひっつかむ。

「酷い男ねぇ~…」

「ま、お前だけには言われたくねぇよ」


にへらっと笑った顔をすぐに無表情に戻すと、剣を持ってる方を扉に向け、振りかぶったと思った瞬間に、扉がバラバラになって崩れ落ちた。


(うわ、すごっ…、じゃなくて演技演技)


一方私はいかにも苦しげ、と言った感じに顔を作る。


「あらぁ?駒が全部なくなったと思ってたら…。やっぱり、特別に創っといて良かったですね」


背を向けてるから声しか聞こえないけど玉藻の声が聞こえる。


「遅くなってすまなかったな…。だが、収穫はあった」

「ふぐっ…!!」

ぐっと掴んでいる襟を引っ張り、私を引きずりながら玉藻の所まで歩いていく。


「ご主人っ!!?」

聞き慣れた声が聞こえ、一瞬身体がびくついたが演技しなければならないのでシカトする。

「っ!!貰った!!」

「あぐっ!!」

血が飛び散る音が聞こえたが、見れない。心配で今すぐにでも助けたいが、出来ない。だって、目的があるのだから。

「あっはは♪よそ見は禁物ですよ?」

「鴉の奴っ…!!くそっ!!!!」

ザシュッ!!

「うがっ!!」

ピン刺しのように緋牙を貫いた刃を床に深く差し込む。

「動かないで頂けますでしょうか?今ここでこの女を殺されたくなかったら、ね?」

「ぐっ…」

「ほら、女はくれてやる…」

遥人が物凄い勢いで私を玉藻の前に投げる。

ゴッ!

「げほげふっ!!はひゅー…、ひゅー…、」

肩から地面に叩きつけられ、勢いのまま何回か転がり、玉藻の前で止まる。

ちなみに咳とか息に関しては演技じゃないの。遥人に襟掴まれてたから引きずられた時に本当に息できなかったの。いやー、人間って首締まってる時に急に息吸える状態になると咳き込むもんだね。

ぐったりした状態で薄目を開けてみると玉藻がこちらを見ていた。

「随分と逃げ回ってくれましたね?鬼ごっこはお終いです。ああ、遥人さん。この犬を拘束してもらえますか?特別なショーを見せてあげたいの」


「解った。その女はどうするんだ?」


緋牙の首に刀の刃を当て、片足で背中を踏みつけた遥人が尋ねると、

「そうですね。とりあえずは…」

悩ましいと言わんばかりの仕草をしてからちらりと私を見ると、尾の一つが私に向かって伸びていき、マフラーのように首に優しく巻き付き、


「人質ですかね?」


にやりと黒い笑みを見たと思ったら尻尾がいきなりきつく締めつけ、上昇し始めた。

「はうっ!?」

嫌でも足が立ち上がり、次第に地面から足が浮いてくると同時に首が締まって息が出来なくなる。


そこから先は、冒頭に戻ります。

「俺なら好きに切り刻んでも焼き殺してもいいからその人だけは止めてくれ!!」

「い・や♪」


今にも泣きそうな顔で玉藻に懇願するが当の玉藻は心底愉快と言った感じに拒否する。


「ああそうそう。遥人さん」

遥人の方に目線を合わせる。

「なんだ?」

「あなた…。正気なんでしょお?」

ニタリと残虐性が感じ取れる下品な笑みで遥人を見る。

「!!?…なんだよ。バレてたのかよ…」

気まずそうに顔を伏せる。

「ええ。自分の駒くらい見ればすぐ解ります。といってもあなたは半分残ってるから半信半疑っといった所でしたしね…。大方この女と組んで私の隙を突くといった算段だったんでしょうが残念でしたね?」

徐々に体が震えてきた遥人を可哀想な物を見る目つきで遥人を見るが、

「残念はてめぇだ。ばーか」

伏せた顔を上げると笑いをこらえた遥人がいた。



【番外編・明日香の好感度メーター】


今の所、


緋牙・ペット認識


「はう!?なんだろう、どきどきする…。俺、狼なのに犬ライフとか…。ご主人だけに反応するマゾッ気を刺激しまくりですね!」


明日香・「癒やしが無い。ペットセラピーとか興味あったのに…」


雅鬼・はよ家賃払え


「うわーお。俺の待遇マジヒデェ…」


明日香・「1ヶ月7万でいいから払ってから文句言え」


黒也・これからも『後輩』としてよろしくね?


「明らかに線引きされただと!?しかも『』で強調してる!?」


明日香・「いやね?一気に好感度下げたからね?黒也君…」


遥人・さよなら


「妥当だな。言える立場じゃないが、幸せになれよ。ブーケ位はくれてやる」


明日香・「お前らなんか祝ってやる」


玉藻・戻ってきなさい。後、お幸せに。


「明日香先輩…」


明日香・「無理言ってごめんね?」


終わり。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ