騙し騙され…真っ逆さま!
気付けば3ヶ月以上更新してない…。亀だ…。亀過ぎる!!いや、亀に失礼か…!!というわけで久々の更新でございます。どうかお楽しみください!
--ああ、やっと…。やっと会える。永かった…。こちらに流れ着き、奇しくもまた王に仕えることになり、前回の失敗をふまえて、今度こそしくじらないように慎ましくするつもりだったんですが…。陰陽師に見抜かれることになるとは…。上手くいかないものです。ま、この世に居続けるのもこれで最期にしておきましょう。ふふ…、前と違って今度はちゃんと悪役になれたわ。
もう、あの人に濡れ衣を着せた昔の私じゃない。でもそうね、最期だものね…。末期のお酒でも飲みながら盛大に暴れてみようかしら。さあ、紂王様…。あなたが助けて下さった命を踏みにじって、散らして御覧に入れましょう。
さあ、人の子よ。悪(私)を狩れ。そして繁栄を築け。そして歴史(過ち)を繰り返せ。そのたびに人は学び、悪(私)はその歴史に名を刻む。----
悪名高き九尾の狐、玉藻ノ前はこのとき多くの婦女子をさらっていた。
そしてその数日後、彼女は討伐軍の矢の雨に打たれ、長刀で斬られて死んだ。そして、その亡骸の首に着けていた首飾りはとても美しく、誰かが盗んだとか。彼女の思い出の品を。しかしというかやはりというか、首飾りを身に着けたされる所有者の多くはある日突然人が変わったように異性をたぶらかしたそうな。そして、その所有者は近い内に不慮の事故に巻き込まれ死んだとか。その時、必ず首飾りはどこかに無くなっていたとさ。--何かを繰り返すように--
ある女性の独白――(いつ見てもあの人は強かった。自分の意見すら自信が持てずに言えなくなった私にとって憧れで理想の体現だった。
私が仕事を覚えるまであの人はサービス残業してまで根気強く私に教えてくれた。私が失敗を認めなかった時、あの人は私が折れるまで諦めなかった。
その時から破れ去って胸にしまい込んだ夢がちらついた。初めて仕事に挑んでいた時の気持ちを思い出せたし、それがとても楽しいことに気づけた。
……なのに、私はあの人達の関係を壊してしまった…。いっそなじって欲しくてわざとムカつくようなしゃべり方をした。ああ、でも…もしやり直せるならあの時、私は…)…ユルサナイ。ワタシヒトリニオシツケトイテジブンハイイコチャンデイタイナンテ、ツゴウガヨスギルノヨ。ワタシヲワスレタノ?ナラナオサラユルスモンカ!オマエガニゲテワタシガスベテセキニンヲトルナンテゼッタイニユルサナイ。ゼッタイニ…!)――
「ぷっ…くくっ…はははは!!」
(だあああっ!!こんのっ…大根役者があああ!!!おまいは作戦をパーにしたいんかっ!もう合図飛ばして勝手にやったる!)
こみ上げる笑いを抑えきれずに肩を震わせる遥人を気味が悪そうに見る。
「気でも狂ったんで…」
ザラララッ!バシンッ!
突如、玉藻の後ろに吊り上げている明日香の方から金属音鳴り響き、振り返ろうとした瞬間、頬に強烈な痛みが走った。
「つっ!!???」
何が起こったのか分からず理解出来ずに一瞬呆然とするがその一瞬を逃がさなかった明日香がいた。明日香がそれを使って攻撃した直後に首の拘束が僅かに緩み、巻き付いていた尾からぐっと首を引き抜いて地面にずり落ちた。
どさっ!
「ごほごほっ!うえぇぇっ…はぁはぁ…」
酸欠でグラグラする頭から来る気持ち悪さを抑え、生理的な涙で霞んだ視界を拭う。
体を起こすと玉藻の頬を叩いたそれがジャリと無機質な音を鳴らす。その手に持っていたのは細い鎖だった。
「な、に…はぁ、考え…は、てんのよ…っ!はぁはぁ…」
「いや、すまないすまない。ついこらえきれずに…。ほら、鎖だって着替え待ってる間に鍵代わりに使われてたやつ持ってきたんだからだからそんな殺気だった目で見ないでくれよ」
苦笑いで明日香を見る。
「おっと…、そうだった。立てるか?犬持く…」
緋牙の首に当てていた刃を退けて手を差し伸べるが、
「触るなっ!!」
「おっと!…って、さっきまで剣を向けたり踏んづけたりしてたしな。そりゃ拒絶されるよな…」
払いのけようとした手を引っ込めてよける。困惑と警戒の表情が遥人を見ていたことに気づき、目をそらす。
「何が目的だ。答えようによっては…っ!」
「ん~。残念だけど答えてる暇はないんだ。どうせどう答えても疑わしいだけだろうし。そんなやつを問いただすよりかは、お前がここに来た理由の心配でもしてやってくれよ。
俺はもうあいつの古傷を抉んのは御免なんだよ…。後、下手にあいつを助けようと動くなよ?動いたら予定が狂うし、何より俺がお前のその首跳ねるかんな?」
緋牙の怒号を遮り、真面目に取り合おうともせずに剣を片手にうず高く積まれた廃材の山に向かう。
「大体ここら辺か?まぁ、あの丈夫さなら頭斬っても元に戻るだろ。プラナリア並みだったし…。なんにせよ、一人でも味方になりそうなやつは欲しいからなっ!!」
廃材の山を見つめ、瓦礫に埋まっている雅鬼を避けて切り崩していく。
一方、「…けんな。ふざけんな、ふざけんな、ふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなぁぁあぁあぁ!!!!よくも私の顔に怪我を…えぐっ!!」バシッ!
怒りをわめき散らしながら空に浮かんでいる備品をところ構わず乱雑に飛ばしていると今度は横っ腹に鎖が当たり、当たった所を片手で押さえてよろめく。
「うるっさい…!!けほ…、ピーピーわめくな…、頭に響くわ。癇癪持ちか…」
明らかに疲労の色が見える顔で玉藻を睨む。
「黙れぇぇっ!!!あんたが…!!あんたらが私をこうなるまで追い詰めたんだっ…!あんたら見てたらすっごいイライラするの。どいつもこいつも、問題から逃げようとする。居心地悪くてストレスで胃が痛い…。誰も私を咎めようとしない…。良心の呵責で不安になる…!」
バリバリと頭を掻く爪は血に染まり、かきむしって千切れた髪が指に絡んでいた。
「でもそれもやっと、終わったの…。【あの子】は消えた。私だけになったの…。でもね?私、まだ不安なの。貴女が消えてくれないと私、一生心がすっきりしないと思うの…。だから死んで?」
頭をかきむしる手が止まり、私を見た玉藻の目は最早、私に恥ずかしそうに笑った顔を見せていた時とは別人のものだった。
歓喜と怯えと憎悪が入り交じり、錯乱した声が私に嫌われようとして演技し続けた成れの果てだとしたら、ひどく怖くなった。
無理をしてこうなったのか。
でも、今の言葉で玉藻の心が見えてしまった。
「…そっか。私、そんなに…嫌われてたんだ…」
当然と言えば当然というものか。
どれだけ玉ちゃんが私を気遣おうとして嫌われものをやって見せようが、
私がやせ我慢して2人の仲を祝おうがもう何もかもが遅すぎた。
私が別れ話を切り出されたあの時、子供の駄々のように二人を責めたら良かったのか。それとも二人を軽蔑すれば良かったのか。
――私にはそんなことすら出来ないし、二人を嫌いになる事なんて出来なかったのにね――
(私、ここまで嫌われるようなことしたかな…?…白々しいか。あまりにも磨けば光る子だったから立派になって欲しくてつい厳しめに接してたからなぁ~…。出来た時にはちゃんと褒めて、終わった後にはちゃんとアフターケアもしてあげてたつもりだったけど、独りよがりの善意でから回ったのかな。ああ、すみません。目頭が熱くなってきた)
玉藻の目を見る。
(もう先輩後輩の関係には戻れないのかな…。誰が悪いんだろ?私?玉ちゃん?遥人?全員か…)
私は現状に満足してしまって動かなさすぎた。遥人は不確かな関係の不安から逃げた。玉ちゃんは若さからの純粋な好意を押さえきれなかった。
(さて、…話をつけない事には結論は出せないし、…さっさとすませて邪魔者は退散するとしますか)
「三枝さ…「来るなあぁあああ!!」
せめて一週間前に彼女が遥人を取られて怒ってないかと私に聞いたあの疑問の答えを、と口を開いた私を見て、悲鳴に似た拒絶を叫びながら尾の刃をこちらに飛ばしてくる。
「もう駄目か…。先に謝っとくね?痛いのは我慢してね?…遥人!」
鎖を手繰り寄せ、瓦礫を切り崩している遥人に合図を送る。
「ちっ…。ほらよっ!」
私の顔をちらりと見た後、小さな舌打ちして玉藻に向けて一本の刀剣を投げつけた。
「っ!残念!まだ尾が残ってますよ!」
軽々と飛んできた刀剣を防ぐがそれでいい。
注意は一瞬だけ逸らせられたら良いのだ。
「はい、その隙もらった!」
鎖をぶん回し、玉藻の足元に向かってしならせながら飛ばすと、鎖はぶれる事なく一直線に飛んで玉藻の左足に絡まる。
「いつっ!やっ、あ…!」
驚いた表情で私を見る玉藻を無視して鎖を軽く引くとガッチリと絡まってほどける様子がなかったので今度はそのまま鎖を強めに引っ張った。
もちろん玉藻は片足を掬い上げられたようなものなので、
「きゃん!!!?」
転倒します。
そして転んだのを素早く確認したら間髪入れずに鎖を掴んだまま玉藻の方に向かって陸上選手ばりの走りで詰め寄ります。(ランニングシューズじゃないから無理に走ったためこの時、右足がくつずれを起こしました。後、軽く足を挫きましたよ。二重で痛いよ…)
玉藻、急いで起き上がろうとします。
それを見て私、まだ持ってた鎖を玉藻に投げつけました。
「ぐっ…!!」
玉藻のお腹に当たり、よろけて転けました。(一方的に婦女子に手を上げるって罪悪感はんぱないっす!)
そして私、玉藻に追い付いて転んでる玉藻のお腹の上に乗っかりました。(俗に言うマウントポジション)
どうです?走り出して僅か8秒の間に以上の行動を起こしましたよ。…酷すぎた。(何が酷いかって?こう、もうちょっと他の作戦なかったんかい!って思いまして…。だって女の子に手をあげちゃった訳ですし…ね?)
とりあえず、スカートのポケットからナイフを取り出す。
「いやっ!!」
身をよじって逃げようとするが、しっかりと体重掛けてるのでそうそう逃げられる訳がない。
「大丈夫よ。殺そうなんて微塵にも考えて無いから。分かったらちょっとの間、動かないでねーっと…。はい、ネックレスは没収ね」
空いてる手で玉藻の首に掛かっているネックレスを取り出してナイフでブチりと紐を切る。
「はあ…、よし、これで終わりっと!合ってるわよね?遥人!」
遥人に確認を取り、ネックレスを放り投げる。
まあ、さっき階段を登りがてらに事のなりゆきを遥人に話して貰った訳で、玉ちゃんは実はネックレスに操られてるとかそのネックレスのいわくがうんたらだとか聞いた。
(なんか、玉ちゃんの見てる光景が繋がってるから見えるとかがなんとなく分かるんだとさ。だから、緋牙や雅鬼が来てるのを知って、玉ちゃんが殺されそうだったから私を交渉材料にしようと襲いかかったんだって。…元カノ相手に外道だぜ。遥人…。まあ、今度、高級レストランで高い料理とたっかい酒で財布の中身をスッカラカンにしてやるけど)
で、その時一応はプランを練っていたのだが大根役者(遥人)が大事な場面で笑い出すというとんでもない大根っぷりで台無しにしたので勝手にやらせていただいた。
ちなみに本来のプランは私が囮になって玉藻が油断した所を遥人が剣でネックレスを切れる範囲まで近づき、なおかつ私から一瞬だけ気を逸らさせたらその隙に私が鎖で一発しばいて呆気に取られた所を遥人がすかさずネックレスを切る。というプランだった。
「ああ、これで終わったは…「違う!早くその女から離れろ!!」
遥人がほっとした顔でネックレスを受けとり、私の顔を見て終わったことを告げようとするが緋牙が声を荒げて私を見た。
「……はは、やっぱり…、先輩は甘いですねぇ?」
なじるような、名残惜しそうな声が聞こえた次の瞬間、強い衝撃を受けた私の体は宙を舞いながら屋上の鉄柵を超えてそのまま奈落へと落ちていった。
「さよなら。せめて一瞬で死ねますように…、と祈っておきましょう。あ、ははははは…。あはははははははは!!」
落ちる私を見ながら彼女は狂ったように笑っていた。ただ、その顔は後悔と絶望が占め、目には沢山の涙が溢れていた。
時はさかのぼって明日香と遥人が口論をしている間、屋上では、
「……っ!」
(…やっと戻れましたが、そろそろ限界ですね。…所詮は残りカス…。自分で掛けた術に蝕まれるなんて無様なものです…。こんなことなら最初から『あちらの人格』を使うべきでしたね…。いえ、あちらの人格は不向きでしたからこちらで良いのですが…(ジャマダジャマダジャマダ。ハヤクオマエハキエロ。モトハワタシノカラダナンダカラハヤクキエロ!!(うるさいわね…!弱虫が!しゃしゃり出るんじゃありませんよ!?(ダーマーレ~。ホボワタシガアイツラトヤリアッ!テたんだから無能な貴女に言われたくありません~。あ、しっつれーい!私を確立してくれた事とか、この姿にしてくれた事とか、色んな知識が解った事とか、何よりあのウザイ子ちゃんを封じてくれた事には感謝してますよ?さて鬼さんは潰したし、ゆっくりと犬を手玉にとっ(っ!侵食が止まらない、頭が、乗っ取られる…!!失敗した…。元の人格がリミッター代わりだったか。乗っ取るつもりが乗っ取られるだなんて間抜けな終わりなんてまっぴら御免よ!…せめて、こいつの存在を誰かに知らせないと…)
雅鬼は集中的に用品を落とされ、全身を地面に縫い付けるように串刺しにされた為か、身動き一つ出来ずに瓦礫に埋もれ、緋牙一人で玉藻を相手にしていた。黒也との連絡は気付かれると更に状況が危なくなるので出来ない。
「……。ねぇ?」
「なんだっ!!女狐!」
繰り出される尾を避けながらその尾を掴もうとするが出した手が別の尾に切り落とされそうになるためなかなか掴めず、焦る緋牙に何かを言おうと口を開いた玉藻。
「いや、『私』はそろそろ限界なんで話して置こうと思いましてね?」
「話?」
「はい、話とはあなた達を誘惑しようとした事ですよ?」
「ああ、あの頭の悪さ駄々漏れな自信満々な胸くそ悪い【アレ】の事か?」
「ふふ、流石に気づいてました?【あれ】はね?私じゃないんです」
「まあ、男を侍らしながらもご主人の顔色を執拗に伺ってたから気づいたけどな。男といちゃつくときだけ【アレ】が出て、後は気付かれないように周りの様子を伺ってたのが元の人格だったんだろ?」
「あら、そこまで?」
「あれはもともとご主人へのアプローチだったんだろう?それくらい分からなかったらご主人の観察、ストーキング、使用済みコレクション、下着マニアの俺の矜持が廃る!!」
(旦那、そんな矜持は今すぐ溝に捨てろ!)
雅鬼、実は動けない&喉が潰れて喋れないだけで実はピンピンしてます。
その場に被害に遭っている女性が居れば間違いなく、「とっとと廃れろ!!」とか言いながらマジ蹴り十数回以上ブチこまれる事、想像に容易い問題発言である。
「それ…、堂々と言う事じゃありませんよね?」
ドン引きしながらも攻撃の手を緩めない。
「そうなのか?ご主人は黙認してるが?時々、苦い顔して胃をさすってるけど」
「私、…色々とあの人に謝りたくなってきました」
危ない人物?にストーキングされつつ、彼氏は後輩に寝取られ、更に彼氏を寝取った後輩の後始末に追われ、なおかつそれらを一切面に出さない女性に同じ女としてあまりに憐れでどれだけストレス貯めてたか考えるだけで頭を下げたくなった。もしかしたら玉藻以上かもしれない。
「…まあ、きっかけは与えましたが、【あれ】はこの子が生み出した存在なんです」
気を取り直し、【あれ】が出来た理由を喋る。
「この子が嫌な事や辛い事に陥った時に『今、辛い目に遭っているのは私じゃない。他の誰かなんだ』という自分の中に空想上の他人を作り上げた訳です。【あれ】は玉藻の辛いことを引き受けて、わざと嫌われるように振る舞っていく内に自我が芽生えはじめた。『気づいてほしい。もうしたくない。嫌われたくない。許せない…。許せない。なんで私がこんな目に?なんで私を生んだの?なんであなたの嫌な部分を私が引き受けなきゃいけないの?』とね。私がしたのは簡単に言えば、人格を二つに分けただけ。つまりこの子は今、二重人格なんです」
「なんでそんな事を教える…」
「だから言ったでしょう?私はもう限界だって。【あれ】に乗っ取られそうなんですよ。元の人格は今、紙に封じ込めてるし、私の本体である首飾りの力も【あれ】が奪っちゃったから無いに等しいし、正直手詰まりですよ」
はあ、とため息をこぼす。
「さて、わタしはもウ、無理ッポいですからココマデ、みたい、デスネ…」
言葉のトーンが不自然に代わり続ける。
「今回ハ三流ノ小悪党、だったけど、ソレナリにタノシめたわ。ああそうそう、ここいっしゅうかん、やたら女性社員がケガ、してたでしょ?【あれ】が、自分の気に入らない奴に無差別にしてたんですよ?そのなかに殺したいほど憎んでるけど、嫌われたくないって怯えてる人がいてですね、その人はね、貴方の主人なの…。じゃあなんで嫌われるような態度取ってたと思います?それはね…っ!「ダマレダマレダマレダマレ!!!!」あらあら、私はここまでみたいですね?それじゃ後、頼みましたよ?」
諸悪の根源は最後まで持つことなく、ここで退場した。
「ああ、なんかダメな人格出てたと思いますけど気にしないでくださいねぇ?」
敗者復活。いや、伏兵と言うべきか?
さて、この直後扉が壊されるのだが後は皆様ご存知の通りでございます。
ーー明日香が服を着替えた更衣室にて、
(あれ、私、屋上に居たのになんでこんな所に…、)
彼女は水溜まりの上を歩いて行き、窓を見る。
赤々と染まった街並みは先ほど見ていた風景と同じだった。
ふと、彼女は気付く。自分の手が透けていることとイスの上に置かれた血みどろの服とボロボロのスカートに。
それを理解した瞬間、(まだ、なのに。屋上に行かなきゃ…!言わないと、間に合わなくなる前に!)
と扉をすり抜け、上に登っていく。
玉藻のロッカーのネームプレートの裏側の文字はインクが溶けだして完全に何が書いてあったのか分からなくなっていた。
【小ネタ劇場:緋牙、未知との遭遇を経験するその①】
家のリビングにて
ひ「ふ~んふふんふ~ん♪」
緋牙がテーブルに座り、ご機嫌に鼻歌を歌いながら糸を通した針をすいすいと動かしながら布で人形を作っている。
しかも結構丁寧で綺麗に作ってる。
いつも私に向かって抱き締めと称したベアハッグをかましてくる様子から想像できないがこいつは大抵の事は器用にこなすのだ。
さて、問題はその作っている人形なのだが、自惚れでも勘違いでもなければ、まさかなのだが人形の容姿がその…。
ひ「よし、やっと出来た♪ご主人人形!」
糸切りバサミで糸を切って興奮気味に出来を確認している。
モチーフ教えていただきありがとうございます。
別に人形作る位は良いけど…。あ、私今絶賛ゲームプレイ中です。
ひ「おっと!」
ポロリとソーイングセットの中に仕舞おうとした針を手から落としてしまい、針の先端が人形の肩を軽く突く。
あ「?」
今、何か肩に違和感があったような?
ひ「危ない危ない。無くならなくて良かった」
ホッとして、針を元に戻していた。
とりあえず、その人形何に使うの?観賞用?
その夜の深夜の2時、
明日香が自室で眠っている頃、
ひ「いやー危なかった~。針が目に当たったらご主人に怪我させる所だった」
リビングのソファーに寝そべり、人形を片手に持って呟く。
ひ「俺が特定の誰かを題材にして人形作るともれなく呪具になるからな。まぁ、呪ったり繁盛させたりするのが本来の俺の役目なんだがな」
『お?誰かが母さんに縁を繋げようとしたから来たけど、良い型があるじゃねえか!これなら外に出てこれそうだ♪』
思考に耽っている緋牙が知らない内に、微かに人形の手が動いた。続く。




