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偽りの国のヴェリタ   作者: 楽楽
序章  堕ちた世界
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第20話  再臨・邪滅の暴君

目の前にいるのはロスト。

このままじゃ殺される。

ロウワーさんも、リベルもやられた。

誰も助けに来ない。

でも……私には異能(アルス)がない……


『…………っ"…!!』


クレアは私の背後に隠れている。

涙を流し、ぬいぐるみを抱きしめて……

私がなんとかしなくちゃいけない。


異能(アルス)があれば………

目の前のロストに敵ったかもしれないのに。

ロストが私たちに手を伸ばす。

掴まれたら………解放されることはないだろう。


私に力があれば…

その記憶を最後に、私の意識はブツりと消えた。



気がつくと、何もない空間にいた。


『………あれ…私……』


この空間にいるのは私だけ…?そう思った。

しかしこの空間にもう1人……

ネックレスを私に渡したあの悔人、あの男がいた。

あの男は後ろを向いていて、私に背中を見せている。

なぜかわからないけど……私と同じような感じがした。

上手く言えないけど……そんな感じだった。


…………私は死んだのだろうか?

ここは死後の世界…?

だとしたら……クレアは……


『……………なんで…"』


胸が苦しい……痛い

鋭利なもので何度も刺されたようだ。

私のせいで人が死んだ。


『……力があれば…助けられた…………

あったら…死ぬことなく…クレアも、2人を助けられたのに…』


どうして……

私はこの世界で助けられてばっかりだ。

でも…私は誰かを助けられない。

弱い…そのせいでリベルをロウワーさんを、クレアを死なせてしまった。


『……私だけ生き残って………私も死ねば良い…"』


私の口から、その一言が溢れた。


『………………』


男がこちらを見つめる。

私と男は目が合った。


『…………他者を……救い……敵を……討つ…』


『…己の弱さに………敵を…邪悪を許せなかった…』


男はそう呟いていた。

己の弱さ……男はそう言った。

まさに……私だ。

私の弱さに…絶望した。


この時、私はあの男に何か近しいものを感じた。


『…………お前に……聞きたい……』


男は私に聞いた。


『………お前は……自分が憎いと思うか……?』


私は迷う暇もなく……こう答えた。


『…憎いよ、何も出来ずに………死ねば良いんだよ…

助けられてばかり、助けようとしても何もできない……』


『………弱い人間だよ』


男はしばらく何も答えなかった。


『何故かはわからないが……魂が…ずっと言っているんだ……』


『邪悪を討ち………他者を救えと………』


『…………他者を……救え…?』


《俺が授けたネックレスを持っているか……?》


男はそう聞いた。


『え……?うん……つけてるよ…』


もしかして……不屈の憎悪の核心を見つけられなかったから……怒っているのだろうか?

それを条件に悔想領域から出れた……

そうに決まってる。

約束も守れない人間、処罰を受けても何も言えないな。


『……私に何かするなら、全て受け入れる。私はもう異質な存在なんかじゃない、"弱い罪人"だよ…』


男は私へ近づく。

ゆっくりゆっくりと近づいてくる。

近づくほど、彼からは黒い後悔の念が押し寄せた。

でもそれに恐怖は抱かなかった。


《ズッ……》


男が私の目の前に来た瞬間、男から黒い後悔の念が漏れ出す。

床へと広がり、そこから1つの長い棒状のものが浮かび出てきた。

それは黒いどろっとした液体がまとわりついている。

やがてそれが落ちると、真っ黒の剣が姿を現した。


『………罪は死で償うわけね』


私はそれに否定もしない。

今はただただ、自分が許せない。

死も受け入れる。

それだけだった。


男が剣を引き抜く。

きっと次の瞬間には私は死ぬ。


(助けられなくてごめんね)


私はゆっくりと目を閉じて死を待った。

だが、、いくら経っても何も起きない。


(あれ…?)


何かと思い私はゆっくりを目を開けた。

そこには男が立っているだけ。

そして私を見つめていた。


『……私を殺すんじゃ…?』


『力があれば……と言ったな。』


男はそう返してきた。

質問の返答があっていないが………


『……己の無力を呪い、それでも抗おうとするその眼……』


『……他者を救いたいか?』


男はそう聞いてきた。


『……救いたいよ、でも……助けられずに死んだ』


こんな事を言う自分が恥ずかしい。

もういっそのこと罪関係なく殺してほしかった。


『……お前の命はまだ潰えていない』


男はそう返してきた。


『え?』


私はまだ死んでいない……?

まだ生きてるのか…?

確かに…というか思ってみれば死んでいて殺して欲しいって矛盾してるな…

ここは死後の世界じゃない…でも異空間……

悔想領域か…?


『もう一度問おう……他者を救いたいか?』


『……救いたい………でも、力が…』


情けない。

力が無いから、弱いからと言う理由で戦えない。


『……お前に…もう一つ条件を提案しよう』


え?

もう一つの提案…?

核心を探す以外に何かあるのか…?


『……なに?』


『…………他者を救うと誓ってくれ』


男はそう言ってきた。

他者を救う……それが二つ目の条件…?


『……条件って…悔想領域から出させるため?』


私は悔想領域に逃げたようなもの……

自分だけ……

私は拳をぎゅっと握った。


『この悔想領域から出るのに条件は要らん。

今の窮地からお前達を救うことに二つ目の条件を提案した。』


『……え?窮地から…?救う…?』


『神に、運命に見捨てられたこの残酷な世界で、他者を救うと誓うのなら、お前を現身として邪悪を討ち滅ぼそう。』


男はそう提案してきた。

これでクレアを守れるなら………

私に迷いはなかった。


『……誓うよ、もう誰も死なせたくない』


私はそう言うと男はまた床の黒い淀みから一つの剣を取り出し、私へと差し出した。


『良いだろう。邪悪を討ち滅ぼす刃がもう一枚あっても悪くはない……これは契約だ』


男は私に力の使い方を話してくれた。

聞いた後、私は差し出してきた剣を握った。

すると身体が床へ沈んだ。


『……悪を討たぬ限り、死ぬことは許されない。』


『名を呼ばれた時……如何なる時でも、姿を現し、魂に刻まれた命を果たそう……"』


その言葉を最後に、私は悔想領域から外に出る。

そして気がついた時には…


『……!!』


私は元の場所にいた。

目の前にはロストが手を伸ばしている。

後ろにはクレアが居る。

まだ助けられる。

もう…誰も死なせない。


手にはネックレスがある。

彼が言っていたように、邪悪を討ち滅ぼす。

私の心にもう怯えはない、決意がみなぎっていた。


『………これ以上は死なせない…』


もう私は弱い人間じゃない。


『……(めい)を果たせ』


そう言って私はナイフを、邪滅の刃を抜き取った。

ロストが襲いかかるよりも前に私は力を解き放った。


『……"邪滅(じゃめつ)暴君(ぼうくん)"』


その場に1人の暴君が再臨した。

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