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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第二十章◆◆ 華やかな時代の終焉と新たな宣伝材料の模索について

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◆639◆

 全格連ネタでシェルシェをからかっても、凪の海の様に全く波風が立たないと見るや、


「結局ミノンは、ユールズモン宝飾店のイメージキャラを降りる事にしたんだねー?」


 より危険度の高い妹ネタに向かってふわふわと舵を切るコルティナ。


「ええ、『最後の大会には一片の悔いも無いコンディションで臨みたい』、という本人の強い希望です。ユールズモン側も快く承諾してくれました」


 それでも動じることなく、穏やかな笑みを浮かべたまま応じるシェルシェ。


「ユールズモンの人達はさぞ怖かっただろーなー。シェルシェ直々にクンロクを入れられちゃったら、首を縦に振るしかないもんねー。さながらヘヴィメタのライヴの観客の様に激しくブンブンとー」


「ふふふ、おかしな事を言わないでください。脅迫などこれっぽっちもしてませんよ。ただ、『ミノンの降板による損失を最小限度に抑える様、後の事についてはコルティナに頼んでおきます』と言っただけです。あの業界では私の脅しなどより、あなたの名前を出した方が遥かに効果的ですからね」


 ちょっぴり茶目っ気を含んだ笑みと共にからかい返すシェルシェ。


「無茶振りもいい所だけど、それだけシェルシェに信頼されてるって事だよねー? これは期待に応えないとー」


 ふわふわと受けて立つコルティナ。


「ふふふ、親友のよしみでよろしくお願いしますよ。政財界の魑魅魍魎相手の裏の根回しならともかく、大衆の心を掴む広告戦略に関してはあなたの方が上ですから」


「任せてー。早速だけど、イメージキャラの後任については、ミノンの抜けた穴を埋めて余りある逸材に心当たりがあるよー。あとはその人が首を縦に振ってくれれば万事OKー」


「頼もしい限りです。その首を縦に振らせる為なら、マントノン家も協力は惜しみません」


「それを聞いて安心したよー。じゃー、早速首を縦に振ってもらおうかなー、シェルシェ?」


 しばしの沈黙が、この二人が向かい合うマントノン家の応接室に訪れる。


「私にユールズモンのイメージキャラになれと?」


 底知れぬ圧のこもった笑みと共に沈黙を破るシェルシェ。


「いいアイデアでしょー? 話題沸騰、売り上げ倍増、株価上昇間違いなしの人選だねー!」


 底知れぬ圧を柳に風と受け流し、ふわふわと微笑むコルティナ。


「マントノン家の人間がいつまでもイメージキャラの座を独占していては、本業のタレント達から反感を買いませんか?」


「一年だけでいいよー。本来ミノンが務めるはずだった分をねー」


「なるほど、妹の抜けた穴は姉が埋めるのがスジ、と?」


「そういうことー。それなら本業のタレントさん達も納得するよー。もっとも納得しなくても、シェルシェが相手じゃ納得せざるを得ないけどねー。うっかり批判でもしようものなら、所属してる芸能事務所ごと潰されそうだしー」


「その理屈だと、あなたが所属するララメンテ家は何度も私に潰されている事になりますが」


「私は批判じゃなくて、面白おかしく話を脚色してるだけだからセーフだねー! どこまで許されるかのラインはちゃんと心得てるから大丈夫ー!」


「おそらく、そのラインは伸縮自在のゴムか何かで出来ているのでしょう。それはさておき、私はミノンの後釜になるつもりは毛頭ありません」


「ユールズモンがどうなってもいいのー?」


「構いませんが、何か?」


「やっぱり、血も涙もない悪の大首領だー!」


「冗談です。あなただって、私が絶対に引き受けないと見越した上で提案したのでしょう? で、本命の案は?」


「ミノンの路線を引き継いで、男装の似合う美形王子様系タレントを何人か選んでおくよー。後は個々に面接して決めるつもりー」


「私を起用するのに比べれば、至極真っ当な線です」


「さらにその面接の様子をドキュメンタリー形式に仕立てて、テレビ番組として放送するのー」


「タレントが栄光を勝ち取るまでの軌跡を感動的に描く、いわゆるオーディションものですね。ユールズモンにとってもタレントにとってもいい宣伝になりそうです」


「でも、それじゃありきたりすぎてつまらないからー、視聴率を取る為のヒネリをちょっと加えまーす」


「ヒネリ?」


「面接官には『徹底した経営手腕で成功した業界の大物』を起用してねー、ノコノコ面接にやって来た美形王子様系タレント達に、強烈かつ執拗な圧迫面接をしてもらうのー」


「ああ、栄光の価値を高める為に苦難を与えるのですね」


「そういう建前でー、実の所は美形王子様の笑顔がだんだん曇って行く様子を楽しむのが目的だよー! 曇らせマニアにはたまりませんー!」


「世の中には色々なマニアがいるものですね」


「もちろん、その面接官はシェルシェにやってもらうのー! 番組のタイトルはズバリ『マントノン家の虎』!」


「お断りします!」


 虎の尾の上でふわふわとステップを踏むコルティナと、それによって少し波風が立ったマントノン家の虎。

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