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「“跡取り”のはずが、ただの使用人だった」  作者: もり


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俺に届かないもの

今日もよろしくお願い致します。

生前贈与も一円ももらえないと分かった俺。


だが、俺にはまだ届かないものがある。


まずは——お中元とお歳暮だ。


お客様からよく言われる。


「社長、この前お中元送りましたよ。届きました?」


「ありがとうございます……え? うちには届いてないですよ?」


おかしい。


そう思って調べてみると、犯人はすぐに分かった。


たぬきと女豹。


このダブルボランチが、ゴール前で完全に止めていたのだ。


ただし、糖尿病のたぬきが食べられない甘いお菓子だけは——


「これ、お前のところに来てたぞ。」


メッシ級のスルーパスで俺のところに回ってくる。


自分の好きな物は隠す。


食べられない物だけ俺に回す。


なんとも分かりやすい性格である。


おかげで、お客様にお礼の電話もできない。


そして、もう一つ届かないもの。


それは——株主優待だ。


QUOカード。


ギフトカード。


割引券。


俺が毎回楽しみに待っている株主優待である。


なかなか届かないので会社に問い合わせると、


「発送しております。」


……あっ。


またダブルボランチだ。


これも完全に止められていた。


しかも、自分たちが使わない割引券だけは、


「はい、これいらないから。」


と、メッシ並みのスルーパスで俺に渡してくる。


人の郵便物を何だと思っているのだろう。


プライバシーなんて、この家には存在しない。


ところが——。


一番チェックが厳しいものがある。


それは現場で出たアルミや鉄くず。


俺が仕事を取ってきて、解体で出たアルミや鉄を売りに行く。


すると、どこからともなく現れる。


「おい、鉄売ったか?」


「早く持ってこい。」


……なんで分かるんだ。


こっそり売りに行っても、必ず嗅ぎつける。


どうやら、金の匂いだけは犬より鼻が利くらしい。


周りの職人も呆れて言う。


「会長、あんなに金あるのに、まだ欲しいんすか?」


すると、たぬきは——


「ブヒヒヒ。」


と笑っている。


こんなにセコい人間、俺は見たことがない。


……だが、ふと思った。


もしかしたら——


これが、小金持ちになる秘訣なのかもしれない。


……俺は真似したくないけど。

ブクマ、評価よろしくお願い致します。

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