「三万円の社長」
初投稿です。
婿養子の実態に触れていきます。
社長の俺、使える金は三万円。
笑える話だろ?
会社の口座には億単位の金があるのに、
俺の財布には、これしかない。
——そんな俺の生い立ちは、特別でもなんでもない。
俺は、ごく普通の家庭に生まれた。
金もなければ、権力もない。
ただ、家族はちゃんと“家族”だった。
あの頃は、まだ知らなかった。
あの女が、笑顔のまま人を壊していく“悪魔”だということに。
今の妻と出会ったのは、大学時代のコーヒー屋のバイトだった。
⸻
そう、初めて出会った頃のあいつは——
可愛くて、甘えん坊で、やたらと距離の近い女だった。
「ねぇ、これどうやるの?」
コーヒーの入れ方も、レジの操作も、何一つまともにできないくせに、
なぜか俺にだけ、何度も聞いてくる。
「教えて?」
そう言って、袖を軽くつかんでくる。
正直、放っておけなかった。
他のバイトもいるのに、あいつは決まって俺のところに来る。
——頼られている。
そう思った。
だから俺は、何度でも教えた。
どんなに同じことを聞かれても、嫌だとは思わなかった。
……もしかして、いけるかも。
そんな下心が、なかったと言えば嘘になる。
……今思えば、あれは“偶然”なんかじゃなかった。
⸻
気づけば、閉店後も一緒にいる時間が増えていた。
「今日、ちょっとだけ飲んでいかない?」
そう言われて、断れる理由なんてなかった。
他愛もない話をして、笑って、距離はどんどん縮まっていく。
肩が触れても、離れない。
むしろ、少し寄ってくる。
その意味を、考えないほど鈍くはなかった。
——期待していた。
完全に、あいつのペースだった。
⸻
……その夜、俺は自分から踏み込んだ。
もう、引き返せない場所に。
⸻
……そして、その日を境に、彼女は何も言わずに姿を消した。
連絡もつかない。
バイト先にも来ない。
まるで——最初から存在しなかったみたいに。
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次回、すべてが動き出します。




