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辺境に追放された悪役令嬢、特撮オタク保育士の知識で領地を聖地化したら死神公爵に溺愛されました  作者: 栗原りんご
第2章 アステリア編

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71. 目覚めよ、鉄の巨人

評価、ブクマ、リアクションありがとうございます!

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感想もぜひぜひお待ちしております<(_ _)>

全員が弾かれたように階段を駆け上がり、カイエンの部屋のドアへと殺到した。



バァン!!!!!!



「な、なになになになにー!!?」


扉が勢いよく開き、ひっくり返りそうになったカイエンが情けない声を上げる。


「カイエーーーーーーーーン!!!」


ルーナが彼の胸ぐらを掴まんばかりの勢いで詰め寄った。


「その台座……! って、なんか光ってない!? カイエン、あんた一体何したの!!」


「なんもしてへん! 急に光りよって、ハイテクなおもちゃかと思てスイッチ探しとっただけや!」


涙目でお宝(台座)を差し出すカイエン。その台座は、王宮の巨獣と共鳴するように、部屋中を黄金色に染め上げるほどの眩い輝きを放っていた。


「はぁ……。不届き者だと思ってたけど、あんたのその強欲さのおかげで、詰んでいた盤面がひっくり返りそうだよ」


ネレイスが呆れたように、しかし口角を上げて呟いた。


「カイエン……くくっ、まさかこれを持ってくるなんて……ふふふ。いや、でも君のおかげで道が開けたよ」


マキナがおかしくてたまらないといった様子で肩を揺らし、それから真剣な表情で台座を見つめた。


「……マキナ、これで動かせるな」


ギルバートの低い声に、マキナが力強く頷く。


「あぁ。これが……これがあれば、心臓は動き出す。研究棟へ行くぞ!」


「っへ? これ持っていかれるんです!? えええぇぇぇ!!!! いややいやや、ウチのお宝がぁ!」


台座を必死に握りしめて首を振るカイエンに、ネレイスが拳を固く握る。


「カイエン! お前というやつは、こんな時まで!」


「3倍だ」


「はい?」


ギルバートの短い言葉に、カイエンの動きがピタリと止まった。


「今回の報酬、3倍にしてやろう」


カイエンは一秒の迷いもなく、輝く台座をギルバートに差し出した。


「どうぞ持ってって。なんなら玄関までお運びしましょか?」


「(……現金なやつ)」


ルーナが冷ややかな視線を送るが、カイエンはすでに指を折って報酬の計算を始めている。


ギルバートがその背に台座を括り付けようと、カイエンの手から受け取った瞬間――。

シュン……と、黄金の輝きが消えた。


「え」


「もしかして……」


全員の視線が集中する中、恐る恐るカイエンが触れると、再び台座がカッと眩しく発光する。だが、ギルバートが触れるとまた消える。他のメンバーが試しても、台座は沈黙したままだ。


「これは……」

「やな予感……」


カイエンの顔が引き攣る。どうやらこの「心臓」は、持ち主である彼にしか心を開かないらしい。誰が触れても消えてしまう黄金の輝きが、カイエンが抱え直した途端、嫌がらせのように眩しく拍動を再開した。


ガタガタと震え、一歩後ずさるカイエン。その肩に、ギルバートが静かに、だが逃げ場を塞ぐような重みで「ポン」と手を置いた。


「…………」


無言の圧に、カイエンは天を仰いだ。


「……分かった、分かったわ。行けばいいんでしょ行けば! 報酬3倍、きっちり耳揃えて払うてや!!」


やけっぱちの叫びを上げながら、カイエンは台座をひっつかんだ。

屋敷を飛び出そうとする大人たちの背中に、二つの小さな声が投げかけられた。


「アルス……エルナ」


呼び止めるギルバートに、アルスは震える拳を握りしめ、真っ直ぐに父を見上げた。


「足手まといなのは分かってる。……でも、エディを助けたいんだ。あいつ、さっき初めて人間らしい表情したんだ。それに! 俺の新しい魔法で役に立ちたい!」


「エルナも……。エディくん、初めてできたお友達なの。光魔法もためしてみたい! お願い……!」


子供たちの必死な眼差しに、一同が言葉を失う。そこへ、ゼクスが静かに一歩前へ出た。


「私がお二人を守りましょう。……ルーナさん、いいですか?」


「ゼクスさん……いいんですか……?」


「フッ、あなたたちには大きな『借り』がありますからね。命に代えても、お守りしますよ」


その時、マキナが不思議そうに首を傾げた。


「……エディ? その子は、一体だれだい?」


ずっと研究棟に籠もり、満身創痍で戻ってきたばかりのマキナは、エディの存在を知らなかった。


「あ、マキナは知らないんだっけ。説明すると長くなっちゃうんだけど……」


ルーナが素早く、これまでの経緯――彼が「脚本家」として王宮に存在していたこと、そして今はその王宮へ自ら走って行ってしまったことをマキナに伝えた。


「なるほど……。その子が。脚本が具現化したような存在、か」


マキナは眼鏡の奥の瞳を鋭く光らせた。その存在に、彼女は不思議な縁を感じずにはいられなかった。

広間には、マキナの両親も不安げな表情で立っていた。


「他国の者にこの国の命運を任せてしまって、申し訳ない……。マキナ……待っているよ」


「はい、お父様、お母様。行ってきます!」


「行こう。私たちの希望……魔導機甲アーマード・ギアの元へ!」


一行は屋敷を飛び出した。外は王宮付近に魔獣が集結し、不気味な静寂を保っていたが、彼らが動き出した途端、それを阻むように黒い影が蠢き始めた。


「魔獣たちがまた活発化し始めてる。一気に駆け抜けるよ!」


ルーナが叫ぶ。ギルバートが手早く馬を用意させた。


「アルス、俺の馬に乗れ。エルナ、お前はゼクスの馬だ」


「ネレイス様~! ちゃんと守ってくださいよ~!」


台座を背に括り付けたカイエンが、半べそをかきながら叫ぶ。


「……行くぞ!」


馬に跨がり、手綱を強く握る。四人の戦士が同時に叫んだ。


「「「変身!!!」」」


眩い光と共に、四人の姿が戦闘形態へと変わる。地を蹴る蹄の音と、魔力を帯びた風が吹き荒れた。


「ガアアアアッ!」


立ち塞がる下級魔獣の群れ。ギルバートの剣が閃き、ネレイスの拳が敵を弾き飛ばしていく。だが、数が多い。


「いやぁぁぁああああ!!! むりぃぃぃ!!!」

「カイエン! ちったぁ黙っとれ!」


「アルス、エルナ、今だよ!」

「わかった!」


アルスがルクシライザーで放った火球が、魔獣の足元で連鎖爆発を起こす。


「エルナも!」


エルナのステッキからは純白の光が放たれ、闇に潜む影を焼き払い、視界を切り開いた。


「……足手まといどころか、最高の援護ですね!」


ゼクスが驚きと共に笑みを零す。猛スピードで魔獣の包囲網を突破し、一行はついに魔導研究棟の重い扉の前に辿り着いた。


「はぁ……はぁ……着いた……!」


馬から飛び降りたマキナが扉を押し開ける。


「ウチもう5回はあの世見た気がするぅ……」


カイエンは膝をガクガクさせながら、黄金の台座を必死に抱え直して後に続いた。奥では、セドリックとリィンが武器を構えて身構えていた。


「あなたたちは……!」

「ボクだよ!」


ルーナたちが変身を解き、マキナが後ろから姿を見せると、二人は目を見開いた。


「……なんで、ここに台座が……! 王宮の最深部にあったはずだろう!?」


セドリックが絶句する。


「まぁ細かい話は置いといて。さぁ、さっそく起動しよう!」


一行は「鉄の巨人」の元へと駆け出した。


「ファーーーーーーーー!!! ロボット! ロボットだ! リアルロボーーー!!! はじめまして私ルーナマリアって言いまーす!」


興奮状態で名刺を出す勢いのルーナだったが、ロボットは沈黙したままだ。


「あ、喋んないタイプなのか……残念」


「かっ、かっこいい……」


「おっきー!」


アルスとエルナが目を輝かせる中、ついに起動の時が来る。


「カイエン、それを胸の空洞に!」


「ひぇぇ、さいならウチのお宝、こんにちは報酬3倍……!」


カイエンが震える手で台座をはめ込むと、重厚な駆動音と共に、機体の各所が黄金のラインで発光し始めた。


(この流れ……操縦者もウチってことにならん? 無理やでほんまに勘弁して!)


顔を真っ青にするカイエン。


「さて、カイエン」


「たんまたんま! ウチやなくてもいいかもしれんでしょ!」


「それもそうか」


まずはギルバートが乗り込むが、動かない。続いてゼクス、ネレイス。誰が試しても、機体は沈黙を貫く。


「ロボットといえば、私でしょ! 前世の知識もあるし、こういうのは選ばれしヒロインが動かすって相場が決まってんのよ!」


自信満々にルーナが操縦席に飛び乗る。


「……」

シーン。


「ガーン! なんでぇぇえええ!? 主人公補正どこいったのよ!!」


ルーナの絶叫が虚しく響き渡る。


「……あとは、ボクだけか」


マキナが意を決して、最後に操縦席へと座った。カイエンがゴクリと唾を呑み込む。

マキナが台座に手を触れたその瞬間だった。

「カチリ」と小気味よい音が鳴り、黄金に輝く台座が機械仕掛けのように滑らかに姿を変えていく。装飾の一部が展開し、マキナの手に馴染むような一対の操縦レバーへと変形したのだ。


「これ……ボクを、待っていたのかい?」


マキナがレバーを握り込むと、機体の瞳にパッと「青い炎」が宿り、黄金の魔力が全身を駆け巡った!



ゴォォォォ……



長い眠りから覚めるように、鉄の巨人の瞳に青い炎が灯った。


「動いた……!!」

「よっしゃぁああああああ!!!!」


カイエンの歓喜の叫びが、起動する鉄の巨人の地響きのような咆哮と重なった。

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