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辺境に追放された悪役令嬢、特撮オタク保育士の知識で領地を聖地化したら死神公爵に溺愛されました  作者: 栗原りんご
第1章 ヴォルフラム編

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18. ヒーロー計画、始動!

やっと!ヒーロー達が動き始めます!

王都からの長い道中を終え、屋敷の門をくぐった途端、私はマキナさんに捕まった。


「あー、ちょっとマキナさん! 引っ張らないで、服が伸びちゃう!!」


長旅の疲れを労う間もなく、目を血走らせたマキナさんに引きずられるようにして自室へ戻る。彼女の頭の中は、私が王都で仕入れた素材と「新しい開発」のことでいっぱいなのだ。

バタン、と扉を閉めるなり、私は向き直って真剣な面持ちで切り出した。


「マキナさん、今回作ってもらうのはおもちゃじゃありません。……『武器』です」


「おや、実戦投入はまだ先だって言ってなかったかい?」


「遠征に行って現実を知って……ちょっと、それどころじゃなくなっちゃって。今のままじゃダメなんです。守る側も、守られる側も」


私の決意を汲み取ったのか、マキナさんの表情が職人のそれに変わる。


「で? ただの武器じゃないんだろう?」


「ふふん。魔道具(武器)に魔核を使うのよ」


「……言うと思ったよ。だがね、それは私も試したことがあるんだ。でも、うまく発動しなくてね」


「それはマキナさんが、魔道コンロみたいに『魔核自体の魔力』を絞り出そうとしたからじゃない? そうじゃなくて、『術者の魔力を魔核を通して発動する』の! 魔核を増幅器アンプにするのよ!」


「……っ!!」


マキナさんが絶句する中、私は机に向かい、さらさらとデザインを書き上げていく。

それは、以前作ったスターレンジャーの剣とは一線を画すもの。


「今回作るのは、覆面の騎士ルクシアの剣、『ソードルクシア』よ」


「……ほう。最初から魔核が埋め込まれているんじゃないのかい?」


「うん。より構造を複雑にして、魔核を自分で武器に『入れて』使うギミックにするの!」


「……!!」


マキナさんの目が、かつてないほど激しく輝いた。


「術者の魔力を、自分で装填した魔核で増幅・変換して放つ……。ふふ、ははははは! 面白い、面白すぎるよルーナ! なんでそんな単純で、かつ官能的なことに気づかなかったんだ!!」


「早速作るぞぉぉおおおおうおおおおぉぉ!!工房を空けておきな! 今夜は寝かせないよ!!」


マキナさんは嵐のように工房へ駆け去っていった。一人残された私は、手元に残った極上の布地を見つめる。


(実は、ヒーロースーツ用の布地もこっそり購入していたんだけど……正直自分で作れる気がしないわ。とりあえずこれらはしまっておくとして。マキナさんは今武器で頭がいっぱいだし、布はあとでいいかな)


私はそっと布地をしまい込むと、空腹を満たすべく食堂へ向かった。


食堂では、アルスとエルナが私の隣の席を陣取っている。アルスは庭の方を気にしながら、少し不機嫌そうに口を開いた。


「なあ、さっき庭に見慣れない奴らがいたけど……あいつら誰だよ。不審者じゃねーのか?」


「ふふ、あとで紹介するよ。私の新しい仲間になる人たち」


「ふーん……変な奴ら連れ込んでなきゃいいけど」


そんな会話をしながら、料理長の野菜たっぷりな食事を楽しむ。


「そういえば奥様、おっしゃっていた『コマツ(小松菜)』と『ホウレン(ほうれん草)』、ようやく収穫できましたよ!」


料理長の言葉に私の目が輝く。


「えっ! ついにメインの葉物野菜が!? 食べ終わったらすぐ厨房に行く!」


「私も行く!」


エルナが元気よく立ち上がる。アルスも「……俺も行く」と、結局三人で厨房へ駆け込んだ。


「さぁ念願の『青汁』を作るよ!!」


私が魔核を埋めたミキサーで材料を粉砕し始めると、ドロリとした深い緑色の液体が出来上がっていく。それを見た二人が、一歩、また一歩と後ずさりした。


「……ねえ、ルーナ様。それ、本当に飲み物?」


「うわ、すげー色。嫌な予感しかしないんだけど……」


私はまず、自信満々にコップを料理長に突き出した。


「ほれ、料理長! イッキイッキ!」


料理長はまじまじとコップを見つめ、引きつった笑みを浮かべた。


「……その、なんというか、非常に健康的な見た目でございますな……」


「いいから飲んでみて!」


「は、はいっ! 頂きます!」


料理長は覚悟を決め、グイッと一飲みした。喉を鳴らして飲み干した彼が、驚きに目を見開く。


「……っ! ん!? 奥様、これ、見た目よりずっと飲みやすいですぞ!」


その言葉を聞いて、恐る恐る双子も手を伸ばす。


「……ん。本当だ、思ったより苦くないかも」


「飲めなくは……ないけど。でもやっぱり、これもっと甘い方がいい」


「やっぱりそう思うよね。本当は牛乳を使って飲みやすくしてあげたいんだけど、この土地にはまだ家畜がいないんだ。だから早く土を良くして、家畜の餌になる『トウモロ(トウモロコシ)』を育てて、温室も造る。そうしてここで牛を飼えるようになったら、ミルクたっぷりの特製ドリンクにしてあげる。それまではこれで我慢してね!」


私は双子の肩をそれぞれ叩き、真剣な顔で念を押した。


「特にエルナ! 頑張って毎日コップ一杯は飲むんだよ。健康な体を作るのもヒロインへの第一歩なんだから!」


「えぇー……わかった、頑張る……」


「アルスもだよ! これを飲めば身長だってぐんぐん伸びるんだから!」


「……っ! 身長……? 本当かよ。……なら、まあ、飲まないこともないけどさ」


アルスが露骨に食いついたのを見て、私は心の中で小さくガッツポーズをした。


「奥様の野望のためなら、この緑の液体、喜んで頂きますとも!」


料理長も深く頷き、私は不敵に笑いながら自分も一杯飲み干した。


一息ついたところで、私はアレンたち一行を呼んで屋敷と領内を案内した。

アレンとリオン、そしてシオン。さらには家族を養うためにやむなく盗賊に身を落としていた平民の男たちを含めた計七名。


案内中、私がギルバート様の妻であることを明かすと、彼らは腰を抜かさんばかりに驚いた。


「へっ、辺境伯夫人……様!? 貴族だったのかよ!」

「マジか……全然そんな風に見えなかった……」

「僕ってば、今までなんて失礼な態度を……!」

「いいのいいの、気にしないで。そんな柄じゃないし、今まで通りでいいから」


私は改めて、彼ら七人の顔を真っ直ぐに見つめた。孤児のアレンとリオン。そして家族を想って泥を啜った男たち。


「さて……あなたたちに何をしてもらうか、発表するわね。『ヒーローショー』をやるよ!!」


「「「ひーろーしょー……???」」」


呆然とする彼らに、私は一歩踏み出し、拳を握りしめて声を張った。


「いい? 今のこの領地に必要なのは、ただ強いだけの騎士じゃない。子供たちが『あんな風になりたい!』って目を輝かせて、明日を信じられるような『希望』が必要なんだよ!騎士団が返り血を浴びて戦うのは、この地を守るため。でも、子供たちはその血に怯え、剣を振るう姿に恐怖を感じている。このままじゃ、守る側と守られる側の心は離れていくばかり」


私はアレンの胸元を指さした。


「だから、あなたたちがその『壁』を壊す。

誰にでも分かりやすい、圧倒的な正義!

悪を挫き、弱きを助け、最後には必ず勝つ。

どんなにボロボロになっても立ち上がるその背中を見せて、子供たちに教えてあげるんだよ。

『この地には、僕たちを守ってくれるカッコいいヒーローがいるんだ!』って。

恐怖を憧れに、絶望をワクワクに変える。それが私の目指すヒーローショーなんだ!」


私の熱に当てられたのか、アレンたちが気圧されたように唾を呑み込む。


「そして、いずれは自分たちのくには自分たちで守る!そのための意識改革! まずは朝、私と一緒に畑仕事! 昼過ぎからは台本を頭に叩き込んでもらって、3の刻からはひたすら特訓。働かざる者食うべからず、おっけー?」


私は男たちに向き直る。


「売った分はちゃんとお給料として出すから安心して。畑仕事で筋肉もつくし、台本を読めば字の勉強にもなる。一石二鳥でしょ? シオンさんは曲と歌の練習ね! 台本と歌は私が用意するから、それまでひたすら野菜を育てる! そして市場で売る! 青汁販売も始めるから、特訓と販売は交代制ね」


私の言葉に一瞬だけ救われたような、希望の混じった顔をした。


「……盗賊だった俺たちが、ヒーローに……?」


その声には、自分たちのような存在がそんな光り輝くものになれるのかという、迷いと戸惑いが混じっていた。


「そう。あなたたちだからこそ、伝えられる強さがある。奪うために使っていたその力を、誰かを守るための勇気に変えて。家族に、子供たちに、胸を張れる自分になるんだよ!」


「辺境領、盛り上げていくぞー! ほら、円陣組んで! 手出して!おー!!」


「「「お、おー……!!」」」


戸惑いながらも、七人と一人の拳が夕暮れの中で重なった。辺境に新しい風が吹き荒れる予感に、私は不敵に微笑んだ。アレンの拳は、ほんのわずかに震えていた。

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