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ガンソード・マギア ~序列最下位、銃剣魔法使いの英雄譚~  作者: 瀬里@ピッコマ/Lineマンガ連載中


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12/20

12. 守るべきもの

壇上に置かれた試しの石に、ディルクは近づいた。

ディルクに向けられるのは、魔力なしの不義の子どもに対する冷たい視線だ。


母とラウラの姿が、会場の端に見える。

ディルクは呼吸を整えると、試しの石に触れた。




ファルケハインの人間は、魔力感知能力が低い。

ディルクは半分はアルトナー家の血を引いているため、魔力が目覚めた今、その魔力感知能力はかなりものだ。

そして、その魔力感知能力は、試しの儀の参加者たちの魔力をかなりの精度でとらえていた。


ディルクが狙うのは、序列二十位。

最下位のガンソード・マギアを得ることができるぎりぎりの順位だ。


オスカーに復讐を果たすための最低限の力として、ガンソード・マギアは必要だった。

けれど、過剰な力を見せつけてはならない。

今日、ディルクは初めて魔力が発現したフリをする。

それも最低限、ギリギリ。将来が約束されたオスカーにとっては、取るに足らない程度の情けないほどに貧弱な力を。


ディルクは試しの石に触れ、ほんのわずか魔力を流す。

徐々に、魔力を流し、序列二十位で止めるつもりだった。

それなのに。


(なんだこれは!)


試しの石は、強制的にディルクの魔力を引き出そうとする。

ディルクの中に入り込み、暴力的なまでに侵食し、暴こうとするそれに、必死に抗う。


(ふざけるな!)


「くっ」


ディルクが必死の形相で魔力を抑え込もうとしている様子を周りがどう受け止めたのか。

会場からは、嘲笑する声も聞こえる。

そんな中、ガタン、と椅子を鳴らして立ち上がった者もいたが、それが誰かを確かめる余裕などディルクにはなかった。


(暴かれる……そんなことはさせない!)


ディルクは、試しの石に引き寄せられる自らの魔力を抑え込む。

そして、少しずつ魔力を流し込むことに成功する。

徐々に、試しの石が光を帯びる。

おい、と会場からは戸惑いの声があがる。


(序列二十八位……二十五位……二十二位……二十位、ここまでだ)


ディルクは魔力を遮断した。

途端に、白光がふつりと途切れる。


「魔力なしじゃなかったのか?」

「不貞の子どもでは……」


憔悴しきったディルクには、会場のざわめきは耳に入らなかった。

ただ、会場の端から、涙ぐんでこちらを見守る母の姿に、笑みを返した。




「ガンソード・マギア、序列二十位<あかつき>の契約者は、ディルク・ファルケハインとする」


式典の最後、ディルクは当主からガンソード・マギアを受け取り、契約を行う。

契約は、ガンソード・マギアとディルクの間の主従契約に近い。これで主以外の者は<暁>を扱えない。

父である当主テオドールとは、受け取りの際一瞬目が合ったがそれだけだった。

過分な興味を引いてしまうと、オスカーとクリームヒルトに目をつけられてしまうため、無関心を貫いてくれている今の状態が心底ありがたかった。

ディルク自身もこの男と慣れあうつもりは、全くない。

四年後、見殺しにする男なのだから。


ディルクは、鈍色の、小さな銃身のガンソード・マギアをその手に握りしめる。

回帰前から焦がれたガンソード・マギアを、ディルクは、とうとう手にいれたのだった。



◇◇◇◇◇◇◇



試しの儀のあとは、新たな銃剣魔法使いの誕生を祝っての祝賀会が開かれる。

回帰前はもちろん参加したことがなかったから、今回の参加が初めてだ。

母とラウラも家族として招かれることになった。不貞の疑惑がなくなった今、彼女たちを粗雑に扱う理由もなくなり、二人もそれなりの待遇を受けている。

ただ、彼らは、ファルケハイン一族に取ってみると妾とその子どもたちということでやはり異質だった。

誰も話しかけてくる者がいない。


「兄さま、あれ、食べたい。いいのかな」

「ああ、こんなごちそうめったに食べられないから、遠慮せずになんでも食べとけよ」

「うん、そうだよねっ、……おいひいっ、はにこへ、もぎゅもぎゅ」

「ラウラ、しゃべるか食べるかのどっちかにしろよ」

「ディルクう、頑張ったわね。ほんとに……ふえっ、母さん、あの時は本当にどうなることかと、ふっ、ううっ」

「母さんは泣くかしゃべるのどっちかにしようよ」

「だってえ」


ディルクと母とラウラに話しかける者はいなかったが、こんな状態だったので、逆にありがたかった。

三人だけで、会場の隅に陣取って、飲食とおしゃべりを楽しんだ。


「初めまして、ディルク君。銃剣魔法使いへの叙任おめでとう」


そんな内輪の場へ、訪れた人物がいた。


(誰だ?)


ディルクの前に現れたのは、目元のほくろが印象的な、赤髪の品のよい貴婦人だった。

貴婦人の後ろには、うつむきがちなフィーネの姿がある。


「初めまして、アルトナー公爵夫人。お祝いのお言葉、ありがとうございます」


ディルクは、その人物が誰か悟り胸に手を当てて礼をとる。


「同じアルトナーの血筋としてうれしく思うわ。マヌエラ夫人。お子さんをご立派にお育てになったのね。ご実家の亡きエディンガー子爵も喜んでらっしゃるでしょう」

「公爵夫人にそのようなお言葉を戴けるとは、ありがたい限りです。二人とも、私には過ぎた子どもたちです」


一角に集まった赤毛の一団は、かなり目立っていた。


(アルトナー公爵家が俺たちを気にかけただって?)


回帰前にはなかった展開に、ディルクは驚く。


(ここで少しでもつなぎを作れれば……、いや、中途半端なつながりではだめだ。嫉妬で消される確率が上がるだけだ)


予想しなかった展開に、対応を迷う。

その時だった。


マヌエラが、突如、ふらりと体を揺らすと、音もなくくずおれる。


「母さん⁉」


手を伸ばしたディルクの腕の中で力を失う母の体は、驚くほど軽かった。




マヌエラは、本邸の客室に運びこまれた。

ディルクとラウラが部屋の隅で見守る中、医師が訪れ去っていく。


「ごめんなさいねえ。ディルクの晴れの舞台だったのに。母さんが台無しにしてしまったわ」

「そんなのどうでもいいよ! 母さん、大丈夫なの?」

「ええ、心配かけてごめんなさいね。ラウラもほら、いらっしゃい」

「ふっ、えぐっ、ううっ」


ラウラは、母にしがみつく。

いつもは気丈なラウラだが、突然母が倒れたことにおびえて、先ほどから、ずっと泣き通しだった。

しっかりしているように見えるが、ラウラはまだ八歳の少女なのだ。


「あの、ありがとうございました」


ディルクは、振り返り、部屋の端でずっとディルクとラウラを見守ってくれていたその人にお礼を言った。


「母のためにすぐに医者を呼んだり、部屋を手配してくださったり。本当に感謝しています」

「いいえ。このくらいなんでもないのよ──夫人、覚悟を決めたかしら?」

「はい、公爵夫人」


泣きすぎて眠ってしまったラウラを膝の上でなでながら、マヌエラは顔を上げた。


「私たちをアルトナー領へ連れていってください」




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