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せっかく授かったラッキースケベが思ってたのと違う〜授かった瞬間に裏切られた〜  作者: 那須 儒一
三章 逃亡編

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光と影?

クリステラの中央に、天まで届く水晶の塔が煌々と輝いている。

その輝きは闇夜を照らし、星々の瞬きさえ、かき消していた。


みな、長旅の疲れもあり、すやすやと寝息を立てている。


俺は一人、テラスに出て輝く水晶の塔を見上げた。

「あんな眩しいもんが、あったら遮光カーテンが必須だろ」


「スゴイでしょ。あの塔……」

テラスの柵に寄りかかっていると、隣にデュナンが歩み寄ってくる。


「わりぃ、起こしちまったか?」


「いや、僕も眠れなかったから丁度いいんだ。

あの塔はね、ここのクリスタル全体を輝かせるためのものなんだ」


「輝かせる?」


「ああ。水晶には魔除けの効果があるからね。

その輝きだよ――あそこに、僕の兄が眠ってる……」

光と影が交じる中、デュナンの表情はよく見えなかった。


「兄……そうなのか」


一呼吸置いて、デュナンが口を開く。

「僕のこと、いろいろ聞かないのかい?」


「ん……話したいのか?」


「そうだね。君になら、少し話したいかな」


「はっ、なんだよそれ……気持ちわりぃ」


「ははは……」


「このクリステラは、輝きの裏に陰がある。

この地域にはね、夜行性の魔蟲まちゅうが地を這っていてさ。

クリスタルは――それを退しりぞけるためのものなんだ」


「まちゅう?」


「虫の化け物だと思ってくれればいいよ」


「なんで、そんな物騒なところに町を作ったんだよ……」


「魔蟲は、町の防衛代わりにもなるんだ。

ほら、耳を澄ましてみてよ……」


ズズズズズズ……

言われてみれば、大樹の下から何かが這うような、蠢くような、擦れた音が微かに聞こえてくる。


「それでも万が一があるから、ここの住民は夜は出歩かないのさ……」


「へぇ~、ならあれはいいのか?」

木板の回廊を、一人の少年が歩いていた。


「お~い! 夜は出歩いちゃダメじゃないか!」


少年がデュナンの声に反応した――次の瞬間。

バキッ、という音と共に、少年の足元の回廊が踏み抜ける。


……まずい!

俺は柵を乗り越え、駆け出した。


「うわ、うわぁぁぁあ!」

次第に少年の周囲の床板が崩れ落ち、少年の身体が地上へと投げ出される。


――ダメだ。指先が、虚空を掻いただけだった。


「仕方ねえ!」

そのまま、地上目掛けて飛び降りる。


――くっ、届け!

空中で少年を抱きかかえ、頭を守るようにして落ちていく。


視線の先で闇が蠢いている。

生き物の気配が、はっきりとこちらを向いた。

……あれが、魔蟲?


次の瞬間、デュナンの魔法で俺の身体を風が包み込み、宙に浮いた。

そのまま、回廊の上まで引き戻される。



「あ、ありがとう……」

少年は俺の腕の中で泣きながら礼を言った。


「いいってことよ。それより、ケガはないか?」


「う、うん!」

少年は力強く頷く。


「まったく、リョウカくんは……いつも無謀過ぎるよ」


「仕方ないだろ。体が勝手に動いたんだから」


「そうだね。キミは最初から、そういう人だ。

……だから僕は、キミに答えを求めてしまうのかもしれないね」


「なんだそれ」

デュナンの言葉の真意は、俺にはわからなかった。


「――道具屋のピーターだね。家まで送るよ。

リョウカくんは、先に寝ててくれ」

そう言って、デュナンは少年の手を引いた。


「デュナン兄ちゃん、ありがとう。

昼間に落とし物をして、探してたんだ。ごめんなさい」

ピーターと呼ばれた少年は、少し顔を伏せる。


「兄ちゃん……か。

そうだね、弟を助けるのが兄の役目だもんね」

デュナンは、少年の頭をくしゃりと撫でた。


「ふぅ……なんにせよ、あの子が助かってよかった。

ふぁ~……さて…俺は寝るかね」

背伸びをして、客間へ戻る。



「ぐふぇっ!!」

突然、腹部への圧迫で目が覚めた。


「お寝坊さんは、いつまで寝てるのかしら……」

目を開けると、ミザリアが俺の腹の上に腰掛けている。


「おい、ミザリア……もう少し寝かせてくれ」


「そうね。寝ててもいいけど、このままじゃ――

このパーティー、いずれ解散するわよ」


珍しく、ミザリアは真顔で俺を見据えていた。


「……わかってるよ」


「そう。それならいいんだけどね。

みんなを繋ぎ止められるのは……あなたしかいないのよ」


「それも、わかってる……」


「ふふ。別に責めてるわけじゃないのよ。

……ごめんなさいね」


そう言って、ミザリアは誰もいない室内を見渡す。


「ミザリア……」

立ち上がろうとする彼女を呼び止める。


「もう少し、座っててもいいんだぜ?」


「ふっ、変態……」


軽い笑みだけを残し、ミザリアは部屋を去っていった。

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