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ラッキースケベが思ってたのと違う ~ハーレムのはずが世界を巻き込む能力だった~  作者: 那須 儒一
3章 逃亡編

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第39話 水晶の町?

年輪を重ねた巨大な熱帯樹の上方に、

水晶を灯りとするツリーハウスの町がひしめき合っていた。


枝々に渡された足場と回廊を縫うように、無数の水晶が街灯代わりに吊るされ、淡い光を放っている。


ここが……水晶の町、クリステラ。


「うわぁ、綺麗な街ですね!」

最近、どこか塞ぎ込みがちだったエアリー王女の顔に、久しぶりに柔らかな笑みが灯った。


デュナンと因縁ありげな視線を交わす、

ステラと呼ばれた少女に案内され、俺たちはレオンハート公の屋敷へと向かう。


「……にしても、まさかお前がレオンハート公家の子息だったとはな」

リザリーが眉をひそめ、訝しげにデュナンを見る。


「ははは……話す機会がなかったからね」

デュナンは少し気恥ずかしそうに、鼻の頭をかいた。


「それに、こんなに可愛らしい許嫁までいたなんて!」

ミザリアが嬉々として視線を向けると、

即座にステラが食ってかかる。


「“元”許嫁よ! もと・ね!!」

なかなか気の強そうな子だ。


ふと、ネコショウに目をやる。

一歩踏み出した瞬間、わずかに足取りを乱した。


すぐに何事もなかったかのように体勢を立て直すが、尻尾の動きだけが鈍い。

――その遅れが、無理をしている証のように見えた。


俺の視線に気付いたのか、

「……問題ありません」

そう言い切る声は、いつもより少し掠れていた。


「ネコショウ、長旅で疲れただろ。

今度は俺が担いでやるよ」


「え、リョウカ様……ま、待ってください!」

俺はネコショウを抱え上げ、そのままお姫様抱っこする。


「みなさんが見ている前で……恥ずかしいです……」

顔を両手で覆い、頬を赤らめるネコショウ。

三本の尻尾が、ひらひらと宙を舞った。


「くぉらぁ! 

うちのネコショウに気安く触ってんじゃねぇ!」

背後からリザリーの怒号。


次の瞬間、俺は思い切り蹴飛ばされていた。


「うぉっ! 危ねぇって!」

バランスを崩して倒れる俺を尻目に、ネコショウは風魔法で宙に浮かび、今度はリザリーが抱き留める。


「リザリー様……あ、ありがとうございます」


「最近、構ってやれてなかったからな。

これぐらい、いいんだ」

そう言うリザリーは、ほんの一瞬だけ、遠い目をしていた。


「まったく……どこにいても賑やかな方々ですわ。ね、お姉様」


「あ、ああ……」

カサンドラの問いかけに、アグリアスは心ここにあらずといった様子だ。


「いいわね。あなたは楽しそうで……」

ステラが、ぼそっと言葉をこぼす。


「はは……ステラは、楽しくないのかい?」


ステラは、キッと睨み返したものの、それ以上なにも言わなかった。


どこもかしこも、内面に火種を抱えている。

……どうすれば、みんな仲良くなるんだ?


いや、そんな簡単な話でもないか。


「カサンドラ、荷物持とうか?」


「な、なんですの突然……。

気持ち悪いですわ。なにか下心でも?」

ミント色のサイドテールを揺らし、

露骨に距離を取られる。


「いやいや、俺なりに気を遣ってるんだって。

その言い方、さすがにひどくないか?」


「さっきのネコショウさんへの行動といい……女性に触りたいだけではありませんか?」


「確かに前科はあるけどさ……

アグリアス、なんとか言ってくれよ!」


「ああ……リョウカは女好きだぞ」

アグリアスが上辺だけの言葉で、短く返す。


“居場所”が揺らいでいる。

どうにかしたいのに、どうしようもできない。


――気づけば、クリスタルを削り出した建物の前に立っていた。

太い樹木が絡みつき、屋敷そのものが巨大な装飾品のようだ。


「ここが、僕の実家だよ」

  

案内されるまま、クリスタルの床を進む。

内部にまで伸びた樹木は、すでに屋敷の一部と化していた。


正面の木扉が開かれ、赤い丸絨毯が敷かれた書斎へ通される。


「デュナン・レオンハート……ただいま戻りました」

デュナンはかしこまり、膝をついて頭を下げる。


部屋の奥、机の傍に深緑の髪の男が背を向けて立っていた。


「今さら、なぜ帰ってきた?

貴様は勘当したはずだ。天頂トーナメントに参加したいなど、戯言を抜かしおって……

メルフォード公との婚約も反故にして、自分勝手だとは思わんのか」


「……申し開きのしようもございません」


「まあよい。貴様とは話す気にもならん」


男が振り向く。

睨まれている――いや、そう見えるだけかもしれない。

それほど鋭い眼光だった。


「エアリー王女。

王都侵略の件は西の地にも届いております。

御父上の件、誠に残念ですが……

誘拐されたとの御触れがあった貴方様が、ご無事で何よりです」

先ほどまでの威圧が嘘のように、深々と頭を下げる。


「いえ……デュナン公のお陰で、逃げ延びることができました。

どうか、彼をあまり責めないであげてください」


エアリー王女もまた、頭を下げた。


「愚息には、もったいないお言葉です」

レオンハート公は俺たちを見据える。

「私はこの地を治める、アーバス・レオンハート。

皆様、長旅で疲れたでしょう。客間を自由に使ってください。

今後のことは……休まれてから、ゆっくり考えましょう」


束の間の休息を得ることとなった。


――水晶の光が、夜を昼のように照らしながら町を包んでいた。

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