第177話 終わりと、始まり③?
無数の光の柱が白城を吹き飛ばす。
大地が裂け、白い城壁が崩れ落ちた
「ネコショウ!」
俺はネコショウを抱きしめ、ラッキースケベの加護で守る。
――静寂。
白い世界が色味を帯びてくると、白は瓦礫と化していた。
「リョウカ様……ありがとうございます。
でも、離してください……」
ネコショウは泣いていた。
「――離して!」
彼女は駄々をこねる子どものように叫ぶ。
「嫌だ……ネコショウ、どこにも行かないでくれ……」
泣きながら懇願する。
理由だって知りたい。
――三年前ぶりの彼女の温もり。
失くしたと思っていたものが、腕の中にあった。
「……これ以上はダメです。……来る」
ネコショウの爪が、俺の服を強く掴んだ。
彼女の瞳が、何かに怯えるように揺れていた。
ネコショウの言葉と共に、空間に暗い裂け目が走る。
――圧が落ちてきた。
魔王が現れた。
「……なんだこの有様は。
よもや新生七幹部でも押されているのか?」
魔王の視線が、抱き合ったままの俺たちに注がれる。
「なんだネコショウ。リザリーを殺してもいいのか?」
魔王はリザリーに刀を向ける。
「魔王様……どういうことですか?」
リザリーは事情を知らないのか、魔王の元へ飛んでいく。
「なに、こいつらに幹部を半壊させられたからな。人手を確保するために、お前を人質にした」
事情は分かった。
全ての元凶はこいつだ!
「おい、タカミヤ……」
「よくも俺の妻を泣かせたな」
「お前……誰かと思ったら、転生者の小僧か」
タカミヤはこちらに向き直り、刀を構える。
――三度目の対峙。
「俺が二度も殺し損ねたのは、アーサーを除いてお前だけだ」
「うるせえ。ごたごた言ってねえでかかって来いよ!
それとも、人質をとらないと俺には勝てねえのか?」
自分がここまで誰かを憎いと感じるとは思わなかった。
「やめてください。リョウカ様!」
背後からネコショウの声が響く。
「大丈夫。一発ぶん殴るだけだ。お前を泣かせた奴は許さねえ」
黒い刀身が閃いた。
――次の瞬間、俺の左腕が宙を舞った。
背後でネコショウの悲鳴が上がる。
それでも、前に出ることをやめなかった。
目の前の男を殴ることしか考えていなかった。
「そうだ……お前には加護がある。
だが、端から削っていけば、いずれは死ぬだろう?」
タカミヤの言っていることは半分正しい。
三年前の俺なら確かに死んでいただろう。
タカミヤが俺の右手を斬り飛ばす。
「声を上げぬ度量は認めよう。四肢を斬った後で首をはねてやろう」
アドレナリンが勝っているのか、不思議と痛くはなかった。
タカミヤが俺の足に斬りかかった。
次の瞬間――
切り落とされた腕が、焔と共に再生する。
そのまま、タカミヤの頬をぶん殴る。
タカミヤは仰け反り、口端から血が流れる。
「どういうことだ……?」
タカミヤは射殺すような眼光でこちらを睨む。
ベンヌの循環の焔と共に俺の腕は再生する。
「お前……さらなる加護を宿しているのか」
「ああ、何度斬られても死なねえぞ」
「ははは、面白い、面白いぞ。
俺に傷を付けたのはお前で二人目だ」
タカミヤが再び刀を俺の頭上から振るう。
――ギンッ!
次の瞬間、刀はアーサーの大剣によって俺の頭上で止められる。
「アーサー、どういうつもりだ?」
アーサーはタカミヤの圧などものともせずに、ため息をつく。
「魔王様、あなたの目的はなんですか?
まだ、襲撃は終わってませんよ」
アーサーの不穏な言葉と共に、足元に散らばる残骸が互いの位置を確かめるように青白い線で結ばれる。
次第にそれは魔法陣となり、瓦礫と化した白城全体を覆う。
「わかった。水を差したな。早く宝剣を手に入れろ。本気のお前と殺り合いたい」
「わかりましたよ。宝剣を手に入れても私では、あなたに勝てませんよ」
「いや、お前なら俺を殺せる逸材になる。早くしろ!」
タカミヤは今までの殺意が嘘のように消えさった。
「それと、リザリーとネコショウは私に一任して下さい。あなたが絡むと作戦に支障がでますから」
「そんな、冷たいことを言わなくてもいいじゃねぇか」
こいつ、本当にあの魔王か?
これじゃ、ただのわがままなガキだ。
「ほらほら、邪魔だから帰ってください」
「……ちっ、仕方ない。おい、リザリー、また今度、酌でもしてくれ」
魔王はリザリーに向け手を挙げると、
「はいっ!」
――とリザリーの声が跳ねる。
あれ……なんだこの雰囲気。
俺とネコショウの視線がリザリーに注がれる。
「な、なんだ。こっちを見るな、お前たち」
「気を引き締めろ。相手があのアルルカなら、これではすまないぞ」
アーサーからの激が飛ぶ。
魔王が空間の歪に消えた後、地面の魔法陣は一層、輝きを増す。
――大地が揺れる。
――アルルカが仕掛けたトラップは光の爆発だけではなかった。
次の瞬間、魔法陣を中心に四方の海から高波が押し寄せてきた。
俺たちは、完全に包囲されていた。




