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1.にこやかにステップしないでください


「フヒヒ、フヒヒ!見てよアレ!魔法少女ドレイン☆ばすたーの主人公、あずなちゃんの等身大フィギュアだ!」


「………」




幼馴染の大崎 裕也はキモチワルイ笑顔でにこやかに、足取りの怪しい変なステップで。

あずなちゃん?が掲示されているショーウインドウに向かっていく。


私、大原 奏には沢山の荷物を持たせて、自分だけ身軽だからと言って好き放題に勝手すぎる。




「ちょっと!置いていくんじゃないわよ!」


「おっとサーセン!しかし僕は悪くないからな!この人を惹きつけてやまないあずなタソの魅力が罪なんだキリッ!」


「……!…!…!!!」




裕也はこれでもかと言うくらいに、世間的にオタクといえばこんな感じ?なイメージを体現したような喋り方をする。

服装も何のキャラかは分からない女の子がプリントされたシャツまで着ちゃって、自分はオタクだ!と恥ずかしがるそぶりも見せず歩き回っている…。


…しかし。しかしだ。




「む。今のはキリッ!が上手くなかったでござるかな?ではもう一度…キリッ!」


「~~~っ!!!止めなさい!そのキリッ?はとにかく止めなさい!」




裕也の言うトコロの『キリッ!』と表情を変える時だけはやけにカッコイイのだ。

顔は普通で、身長も体重も平均。普段は見栄えもしなく、こんなオタクは幼馴染でもなかったら絶対に縁を切っている。




「それより少しは自分で荷物を持ちなさいよ!」


「え?なんで?」


「なんで?じゃないわよ、普通にか弱い女の子に荷物持たせてるんじゃないわよ!」


「…え?か弱い女の子とか誰だしwwwテニス部の部長で身体能力ずば抜けた人間離れ人間じゃないか!そもそもコレは罰ゲームだRO!」


「ウザイ、ウザすぎる!」




…そう、これは罰ゲーム。

裕也にとある会話で脳筋…脳みそまで筋肉でマジ哀れwwwとか馬鹿にするものだから小テストの結果で勝負をしたのだ。


ただやるんじゃつまらないから『何でも一つ言う事を聞く罰ゲームありで!』とか言われ、頭にきていた私は売り言葉に買い言葉。

上等、やってやろーじゃない!と返事を返して見事に負けた。


くぅ…。そもそも小テスト満点とか勝ち目ないじゃない。




「いや、そもそも0点じゃ勝てませんワロス」


「なに読心してんのよ!?」




そして、負けた私は罰ゲームとして買い物のお手伝い。

バイト代が入ったからゲーム、漫画、アニメ、プラモ。とにかく沢山買うから荷物持ちしろと。


現状に至る経緯はこんなトコロだが、どうしてこう…いつもこんな感じなんだろう。

裕也の事を好きか嫌いか問われたら嫌い!って断言できるのに。


裕也の『キリッ!』も確かにカッコイイとは思うけど、それだけの理由じゃ一緒にいる方が苦痛と感じるはずなのに。




「さてさて、あずなタソには名残惜しいですが次に行くでござるよ!」


「ちょ、まだ買うの!?」


「フヒヒ、待っててねみやこちゃ~ん!」




再び裕也は怪しいにこやかなステップで私を置いていく。

周囲としても、裕也と同類みたいな人達からしても裕也の動きは危行に見えるのか凄く引いている。


てか、マジで置いていかないでよ。

普段は私が来ないような場所で一人にするんじゃないわよ。


…なんで私を、そうやって一人にできるのよ。




「そして背後から冷たい缶ジュースを頬ピタッ!」


「きゃぁ!?」


「おぉう!?凄く可愛らしい悲鳴が上がりましたぞ!」




ここは裕也のホームグラウンドと言わんばかりに私の知らないどこがでUターンしてきたのか背後に回って驚かせてきた。


てか、今自販機で買って回り込んできたの?早すぎでしょ!?周囲の人達も何が起こった!?って凄く驚いてるわよ!?




「罰ゲームは終了でござる!荷物も自分で持つし、休憩にカフェに行き美味しい物でも食べるでござるよ!」


「あ、ちょ…」




荷物を取り上げられ、代わりにジュースを渡される。

…しかも、私の好きなちょっとマニアックな炭酸ジュースだ。




「…メイドカフェ、とかいう変な所じゃないでしょうね?」


「変な所とは失礼な!あそこはメイドの神髄、メイドの聖域ぞ!?しかし、今行くのは奏氏の好きそうな動物喫茶なのだZE!」


「な、なによ急に扱いよくしちゃってさ…」




…いや、ホントは急にではない。

いつもこんな感じに自分の好き放題にやっているけれど、いつも私の好きな物に合わせて行動してくれるのだ。


小さい頃からオヤツが何種類か出された時は先に選ばせるし、元々親同士が親しいから一緒に遊園地行く事もあってその時も私の乗りたい物から遊ぶし。


口は悪くて、いつも言いたい放題。オタクでキモチワルイのに…。




「…ありがと」




いつも、お礼を言うのは私だ。その一方で、私は裕也に感謝されるような行動をとった記憶がない。

もしかして、いつも自分勝手でやりたい放題なのは私なんじゃないか。




「おぉ!奏氏がデレたぞ!このツンデレさんめっ☆可愛いのぅ、可愛いのぅ!」


「~~~っ!誰がツンデレだ、この変態が!」


「ありがとうございます!」




そこで感謝される理由が分からない!


この危行とオタクとキモチワルイのと変態っぽいのがなければ良い幼馴染なのに。

…あれ、そしたら裕也から何も残らなくなっちゃう?


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