案件109.災厄が暴れる
リンドーとトゥエバがガチャダマンを撃破した頃、異救者たちの活躍で奥玉ダムの悪堕者は激減していた。
イザベロとクレイアも、聖女トリバコに封じられたマナキを守り切り一息つくと、ダニュアルことルッシルバが現れた。
「二人ともお疲れ様です!戦況が落ち着いたので、聖女様と一緒に安全な場所へ追放します」
「宜しくお願いします」
「後の事はお任せします」
ルッシルバはマナキたちを最寄りの異救者事務所へ『追放』すると、今度は翼が完全に修復したモズロウが現れた。
「悪堕者はほとんど片付けたよ。残るは―」
「闇淵サエラと、轟々翁だけですね・・・」
奥玉ダムの貯水池の岸辺では、リチャウターと黒皇が轟々翁相手に、大きな水しぶきが上がるほどの激闘を繰り広げていた。
『入れ歯弾!!』
轟々翁の口から入れ歯が連続で放たれ、リチャウターが避けると後ろの木の幹が抉られ、バキバキと音を立てて倒れた。
その間に黒皇が轟々翁の背後を取り、黒騎剣を横に構え首をはね飛ばそうとした。
『動脈硬化!!』
すると轟々翁の全身に太い血管がビキビキと浮かび上がり、刃が血管で止められてしまった。
「チッ!」
『高血圧砲!!』
今度は身体中の血管から血が勢いよく噴き出し、黒皇を押し出してリチャウターにも襲いかかった。
「強い・・・!」
「実力は堕悪トリオ以上で間違いないな・・・!」
「当然だ!轟々翁先生は『元ゴールドランク』、長い年月をかけて熟成した闇深案件なんだよ!」
サエラが得意気に話していると、エスクディアンをはじめ残りの異救者たちが集まってきた。
「道理で手強いわけだ」
「元ゴールドランクだろうと、負けないッス!」
「奴の体内のセイブレスたちを助けましょう!」
「あらら、他の奴らはやられちまったか・・・」
「最近の若いモンは根性がなっとらん!」
「この数を相手にするとなると、ワシも久々に本気を出さねばいかんなぁ・・・【巨大変異】!!」
なんと轟々翁が10倍近く大きくなり、首長竜のような姿に変わった!
「デカくなったッス!」
「奴は災暴、 巨大変異するのは想定内だ!」
闇異八大属性の一つ災暴は、頭部から絶えずエネルギーを放出し攻撃に特化している。
拳一振りで高層ビルを粉砕し、身に秘めた莫大なエネルギーを一度解き放てば、地面に巨大なクレーターを作る程のパワーを発揮する。
攻撃に特化しているが故に搦め手が苦手で、エネルギー消費が激しく活動時間が短いという弱点はあるが、巨大な姿へと変わる巨大変異や致命傷を負うと自爆して周囲に甚大な被害を与えるため、人が密集する場所では注意して対処しなくてはならない。
過去に登場した闇異及び異救者で災暴に該当するのは、お馴染みのカネリファイヤ、案件1で登場したリアフルボム、異救者超新星の一人マジステキラである。
「元ゴールドランクが事実なら、下手に『追放』できませんね・・・!」
「予定通りここで浄化しよう、そのためにこの盾男がいるんだ」
「みんな!ダムや周辺地域の防衛はおれに任せてくれ!!セイブレスの救出と轟々翁の浄化だけに専念するんだ!!」
「わかりました!ツドウさん、よろしくお願いします!!」
「生意気な小僧共め!年寄りを侮るとどうなるか、身をもって教えてやるわぁ!!!」
今度は轟々翁の口の中が発光し始め、危険を感じたリチャウターたちが攻撃して妨害を試みたが効果はなかった。
『敬老ノ火ィ!!!』
轟々翁の口から、径10mくらいの極太ビームが放たれた!幸い異救者たちは回避できたが、ビームの先には奥玉ダムがあった。
「まずいダムが!!」
『ジャンボシールド!!』
エスクディアンがダムの前に巨大な盾を出し敬老ノ火を受け止めたが、その凄まじい衝撃で地面が揺れ水が激しく波立ち突風が吹き荒れ、リチャウターたちは耐え凌ぐので精一杯だ。
「うううぅっ!!」
「轟々翁先生がこうなったら、このダムはもたないな。じゃあな異救者共、生き残れたら次の闇深案件でまた会おう!」
サエラは風で髪を揺らしながら、異空間の中へ消えて行った。
衝撃が収まりダムを見ると、ジャンボシールドは中心から抉られたようにドロドロに溶けていたが、ダムには傷一つついていなかった。
「なんとか守り切れた」
「ツドウさんのジャンボシールドが・・・!」
「なんて威力だ・・・!」
「来るぞ!!」
貯水池の水上で、轟々翁とリチャウターたちの激しい戦いが始まった!しかし頑丈な血管が張り巡る、轟々翁のボディを傷つけるには至らなかった。
「黒理アゼル!お前の呪いは効いてないのか!?」
「奴は身体中から血を放ち、黒呪毒が全身に回り切らないのだ!」
『高血圧砲!!』
巨大化した轟々翁の全身から放たれる血は、先程より攻撃範囲と威力が増し周りの木々は薙ぎ倒され、貯水池が赤く染まった。
一方エスクディアンのサドンシールドのおかげで、リチャウターたちはダメージを受けずに済んだ。
「当然その血を浴びればこっちも呪われる、状況が黒になるだけだ。奴の体内のセイブレス共が消化される前に、迅速に浄化するぞボンゴラ!」
「みなさん!よろしくお願いします!!」
リチャウターが救手ハグネードの構えに入ると、残りの異救者は轟々翁に邪魔されないよう総力を尽くした。
リンドーが御札弾を撃ちまくり、モズロウが槍を次々と投げ、トゥエバと黒皇は轟々翁の身体に取り付いて攻撃し、ダニュアルは追放でエスクディアンは盾で轟々翁の攻撃を阻止した。
(みんながセイブレスたちを救うためにがんばっている!必ずこの手で救ってみせる!!)
災暴である轟々翁に無策で必殺技を決めたら、自爆して体内のセイブレスが消し飛び、エスクディアンの防御力をもってしても奥玉ダムの無事は保証できない。
しかしリチャウター必殺の浄化技『救手ハグネード』なら、ヌクラマ国で暴走したカネリファイヤを止めたように、自爆させることなく浄化できるかもしれない。
「おのれぇ・・・貴様等の思い通りにはさせんぞぉ!!」
今度は轟々翁の全身が光り輝き出した。
「みんな気をつけろ!何か仕掛けてくるぞ!!」
『敬老感謝災ッ!!!』
危険を感じたエスクディアンは、ありったけの盾を出し仲間たちを守ろうとしたが、轟々翁は体内のエネルギーを解放し、自分を中心に大爆発を引き起こした!
「みんなぁ!!」
爆発の衝撃が収まると、轟々翁の周りには盾が散らばり、傷ついたリチャウターたちが横たわっていた。
「うぅ・・・!」
「守り切れなかったか・・・!」
奥玉ダムの上空では、攻撃から避難していたマスコミたちが戻り実況を再開した。
『悪堕者の圧倒的な攻撃で、エスクディアン以外の異救者たちが倒れてしまいました!果たしてこの怪物を倒すことはできるのでしょうか!?』
To be next case




