上田原の戦い5
(信濃・海野)
真田幸隆「……ひたすらに負け続けるフリをせよ。」
(信濃・葛尾)
村上義清「武田のいくさのパターンは決まっておる。」
(甲斐)
高坂昌信「板垣様と甘利様が先陣を駆け。相手を突き崩す。」
(海野)
真田幸隆「その板垣様のところに諏訪の衆が加わり、佐久において実戦を積み重ねることにより。その強さは他を寄せ付けぬものとなった……。」
(葛尾)
村上義清「強いのは武田では無く。」
(甲斐)
高坂昌信「板垣様であり、甘利様。」
(葛尾)
村上義清「それを正面からぶつかって行けと新参の海野の衆に指示したところで……。」
(海野)
真田幸隆「士気が上がるわけもないばかりか……。」
(甲斐)
高坂昌信「敵前で逃亡を企てるものが出て来ても不思議なことでは無い。」
(葛尾)
村上義清「それならそれを作戦にすればよい。」
(甲斐)
高坂昌信「先陣を切る板垣様。叶わぬ村上。隊を乱し、後退を余儀なくされる村上を見て更に追い打ちを掛け敵陣深くに切り込んでいく板垣様に甘利様。」
武田晴信「いつものうちの勝ちパターンと言えば勝ちパターンであるのではあるが……。」
高坂昌信「今回村上はそれを狙っていた。と……。」
武田晴信「敵があまりにも弱過ぎる。となれば気を付けるものなのではあるが……。」
(葛尾)
村上義清「武田は強い。特に板垣は強い。ただ今回の板垣は強過ぎた。」
(海野)
真田幸隆「強過ぎる。と言うよりは……これまで板垣様は……勝ち過ぎた。」
(葛尾)
村上義清「特に諏訪の衆は板垣の傘下に収まってから負けと言うものを知らぬ。」
(海野)
真田幸隆「志賀城において山内上杉を全滅させたことが……。」
(甲斐)
高坂昌信「自信を超え。過信となってしまっていた。」
武田晴信「これは板垣自身にも言えることなのではあるのだが。」
高坂昌信「結果。板垣様と甘利様は敵陣奥深くまで誘い込まれることになりました。そうなりますと……。」
(海野)
真田幸隆「村上優位な地点において板垣様を迎え撃たれることになる。」
(葛尾)
村上義清「とは言えそこは板垣のこと。それも見越して突っ込んでくるのが奴の奴たる所以。」
(甲斐)
高坂昌信「逆に相手を蹴散らし一気に形成を武田に引き寄せるだけの力が……。」
武田晴信「板垣と甘利にはある。その怖さを一番知っているのが……。」
(葛尾)
村上義清「そう。この私。村上義清である。」
(海野)
真田幸隆「その村上が外でのいくさを選択したことには理由がある。」
(甲斐)
武田晴信「今回義清がターゲットにしたのは板垣では無く……。」
(葛尾)
村上義清「目的は1つ。武田晴信。お前の首だ。」