上田原の戦い6
(甲斐)
高坂昌信「……殿の首でしたらいつでも簡単に……。」
武田晴信「お前が今いる場所であったらな。」
高坂昌信「でもせっかく厄介な板垣様と甘利様を優位な状況で包囲するチャンスを得たにもかかわらず、何故村上は彼らを無視したのでありましょう。」
武田晴信「あいつらうるさかったからな……。いやいや俺にあって板垣や甘利に無いものがあるだろ。」
高坂昌信「……若さ以外に……なにか御座いまするか。」
武田晴信「調子に乗り過ぎるなよ。密室だから。を良いことに何でも出来るのはお前だけではないんだからな。」
高坂昌信「存じ上げております。」
武田晴信「簡単に言えば、今板垣と甘利が居なくなってしまったが皆の立ち位置に変化はないだろ。」
高坂昌信「はい。これが殿が亡くなってしまった場合、たとえ板垣様や甘利様が健在であったとしましても。」
武田晴信「後継者が決まっていない場合は内紛が。仮に後継者が決まっていたとしても……。」
高坂昌信「理由を付けられ左遷に放逐。最悪の場合は死が待ち受けています。」
武田晴信「そうなってしまったら外征どころの騒ぎでは無くなってしまう。それを村上は狙っていた。と……。」
高坂昌信「……となりますと気になりますのが……。」
後退し続けることを指示された村上の先方であった海野の衆。
(海野)
真田幸隆「下がれども下がれども板垣様に追い掛けられ。村上の助けの無いまま追い込まれ……。」
待ち受けていた運命。それは……。
真田幸隆「為す術もなく板垣様の餌食となってしまった……。」
敵陣深くで首実検を始める板垣信方。
真田幸隆「……その場に私が居た可能性もあった。……海野の衆の首を見ることになっていた。……私の手で落とさなければならなくなっていた。と言うことか……。」
真田幸隆は板垣信方より、このいくさから外されていた。
真田幸隆「征服される。と言うことは……こういうことなのか……。」
ただ幸隆にとって幸いしていたことが1つあった。それは……。
真田幸隆「海野の衆が村上に恨みを抱いてくれたことだ……。」
(甲斐)
高坂昌信「どう言うことですか?海野の衆を討ったのは板垣様でありまするが。」
武田晴信「確かに板垣が海野を討っておる。それは紛れもない事実なのではあるが。ただその原因となったのが。」
(海野)
真田幸隆「『退け。』と指示したにもかかわらず見殺しにしたのが誰であったのか?」
(甲斐)
高坂昌信「村上義清。」
武田晴信「そう。帰属して来た国人に対し領主が軍役などを課す代わりにしなければならないことが1つだけある。それは……。」
(海野)
真田幸隆「帰属している国人が危機に陥った時は必ず助けなければならない。」
(甲斐)
武田晴信「成功する失敗に終わるは別にせよ、これを怠ると『あいつは頼りにはならない。』のレッテルを貼られてしまうことになる。それだけはやってはならぬ。」
高坂昌信「でも今回村上は、そのやってはいけないことをやってきた……。そこまでして殿と板垣様甘利様との距離をとらせ。かつ時間稼ぎのため海野の衆を見殺しにしてきた。と……。」
ここで村上義清は用意の一手を放つのでありました。




