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第8話 異変①

あの後、俺たち冒険者は一部の者を除いてギルドから出された。なんでもランク上位者と職員たちで対応を会議するらしい。


俺は時間が余ってしまったのでまた武器屋にやってきた。


「おっさんいる?」


「デンガだっつってんだろうが。こんなに早く来ても何も出来てないぞ」


「それはわかってるさ」


俺は苦笑しながらカウンターに行った。


「矢が足りないかもしれないからな。追加で300くれ」


「お前はどんな使い方をするんだ…。普通そんなに消費しないぞ」


「やって見せようか?」


「裏に庭があるからそこで見せてくれ」


俺はデンガに言われた通りに裏庭に行って藁人形を出して的にした。アイテムボックスから買ったばかりの弓と矢を出す。


名称 強弓

等級 普通級ノーマル(高品質)

作成者 デンガ モーズ


名称 大矢

等級 普通級ノーマル(高品質)

作成者 デンガ モーズ


俺は弓に矢を5本同時に掛けて弦の限界点ギリギリまで引く。ギリギリまで引き絞ったそれから指を離す。


ズバンッ!!


飛んでいった矢は藁人形を貫いてその身に半分以上を埋めていた。2本だけ……


「……下手な鉄砲数撃ちゃ当たる」


「お前さん、これは矢の無駄遣いだぞ?」


「うるせえ!当たればいいんだ!」


「ま、何も言わんがな」


そんなこんながありつつも俺は無事に矢を買うことが出来た。


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同時刻 ギルド


「……これは確実に異常です。明らかに最近おかしなことが起こりすぎています」


発言したのはギルドで受付をしているレナさん。正体は冒険者ギルド ビート支部 事務長のレナ ロイルス。彼女の普段の穏やかな雰囲気はなりを潜め、代わりに酷く冷たい雰囲気が漂っていた。


「ま、俺も最近は異常な事が多すぎると思うぜ。この間のアーマーマンティスの大発生もそうだ」


次に口を開いたのはレウス。彼はこのギルドで最も高いランクとかなりの戦闘能力をギルドに認められてこの会議にも参加していた。


「アーマーマンティスつったらEランクの雑魚でここら辺では今まで上位種は出たことがなかった。それなのにこないだ出たのはCランクのクイーンマンティスだぞ?そして今回はオーガときた」


クイーンマンティス。適正ランクCの4メートルにもなる巨大なカマキリだ。習性としてはEランクのアーマーマンティスを大量に産み、自らの兵として使役する。また、単体でも高い戦闘能力をもつ。


それがテツヤが来る前にこのビートの街の近くに現れた。ギルドは冒険者を派遣し討伐したが多くの被害が出た。


「さっき他の街のギルドにも連絡をとってみたわ。どこも異常が起きてるらしいわね」


今まで黙っていたが口を開いたのは妙齢の女性。腰まで伸びた銀髪に褐色の肌、そして長い笹状の耳。世間一般にダークエルフと言われる存在だ。緑のパーティードレスのようなものに身を包んだ彼女はさらに続ける。


「つまり他のギルドからの救援は望めない。私たちだけでやるしかないわ」


「でもそれじゃあギルド長!」


「無理があるのは分かってるわ。でも衛兵の力が借りられない今、これしかないの」


そう、前回のクイーンマンティス騒動で討伐に参加した多くの衛兵は怪我をして今回は動けない。残り少ない衛兵は街の防衛に必要なので動かすことは出来ないのだ。


「ごめんなさい。私たち冒険者だけでは無理があるのは分かっているのだけども……」


「いやギルド長。今回はなんとかなるかもしれないぜ?」


レウスはそう言って笑う。


「レウス。なぜそう言えるの?今回は前回に比べてこちらの戦力は少ない。でも相手はアーマーマンティスよりも強いレッドオーガ達で勝ち目は少ないと思うのだけど?」


「期待の新人って奴さ。確か…テツヤとかいった気がする」


「テツヤ…。レナ、知ってる?」


「あ、はい。私が登録をしましたので」


「そのテツヤについて分かるところを教えてくれる?」


「はい、2週間と少し前に登録した黒髪黒目の少年です。遺跡の崩落を報告した少年でもあります。最近はEランクにして多くのDランクの依頼もかたずけています」


「へえ。それでレウス?この子の何処が期待なの?」


「もちろんその戦闘能力と様々な魔道具、そして従魔だな」


そう笑いながらレウスは言ってテツヤを絶賛し始める。


「なんつっても従魔はあのシルバーウルフだぜ?まだ弱いみたいだがそのうち経験を積んで強くなるだろうな。テツヤ自身も模擬戦で俺を打ち負かすほどに強いぞ」


「貴方を?それは強いわね。それにシルバーウルフか…」


シルバーウルフ。グレーウルフの上位種だが世間一般にはそう認知されてはいない。グレーウルフとは違って群れることはなく、単独で行動をする。また魔法を使うので近、中、遠距離の戦闘をこなす。適正ランクはBだ。


「それは凄いテイマーもいたものね。普通シルバーウルフは懐かないのに」


そう、シルバーウルフは基本テイムが出来ない。出来るのはよっぽど強力なテイマーだけだ。


「それに本人の戦闘能力もかなり高いから笑っちまう。得物は刀だったな、それもかなりの業物だ」


レウスの脳内には今日模擬戦をしたテツヤが浮かんでいた。グローブから鎖を伸ばしつつ刀を手に自らに迫るテツヤの姿がハッキリと見えていた。


「そこまでレウスが言うなら安心かしら?」


「あの人にそんな力があったんですね……」


レナさんはギルド長とは違い驚いていた。見た感じあの細い身体でレウスに勝てるようには見えなかったのだ。そんなレナを置いておいてギルド長は方針を決定する。


「それじゃあビートの街 冒険者ギルド長としての決定よ。今回のことは緊急依頼としてオーガの討伐を出すわ。参加者はEランク以上を強制よ」


「「「「はいっ‼︎」」」」


会議室にいた他の職員たちが揃って返事をする。


「緊急依頼『レッドオーガ達の討伐』。参加ランクE以上!ギルド長 ルルイス ミーナイツの名で作成しなさい!」


テツヤの知らないところでまた一つ問題が起こり始めた。


「……面白くなりそうだ。テツヤ、お前の隠してる力を見せてもらおうか」


テツヤもここにいる誰もまだ知らない。今回のオーガの異変がこれから起こる事の始まりに過ぎないことを。かくして歯車は回り始める。進む先には何が待ち受けるのか。

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