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第7話 訓練、そして

暫く歩き、冒険者ギルドについた。いつも通り扉を開けて掲示板の方には行かずにその足でレナさんがいる受付に向かう。


「レナさんこんちわ」


「えーとテツヤ君ね。どうかしたの?」


「訓練場を使いたいから受付を頼む」


訓練場。どこのギルドであっても小さな村でもなければ基本的にギルドには訓練場が存在している。この訓練場は冒険者には無料で開放されているが使うためには受付が必要になる。


俺は今日、自身の訓練の為にこの施設を借りて色々と試したいと考えていた。この訓練場はテイマーの為にモンスターも入ることが可能で、グレイも入ることができる。


「訓練場ね。受付するわ」


「よろしく」


2分程で受付は終わり、もらった札を持って訓練場に行く。訓練場の係員に札を渡して中に入るとその広い訓練場では他の冒険者の姿もちらほらと見られた。


「グレイ」


俺はグレイを呼んでいつでも抜けるよう刀に手をかける。グレイが俺の前に来たのを確認して“グレイと対峙する”。


『主よ、本気で行かせてもらうぞ』


「問題ない。本気じゃなきゃ訓練にならんからな。さあ、来い!」


俺は来いと言った直後に横に跳ぶ。跳んだ次の瞬間、俺がさっきまでいたところに風の刃が突き刺さった。グレイの風魔法である。


実はこの世界、魔法にもレベルがついているにも関わらずにレベル毎に新しい魔法を覚えたりとかはしないのだ。そもそもが魔法とは自分がイメージをしやすい為に詠唱や技名があるので魔法に種類というか区別というか、似たものは多くても同じものは少ない。


風魔法一つ取ってもその風で加速する使い方もあればグレイのように風で攻撃することもある。ではレベルが上がると何が変わるのかというと、魔法の威力やコントロールが変わるのである。


レベルが低い時には威力が足らずに使えなかったものもレベルが上がると使えるようになるのである。ちなみにだが魔法には適正というものがあるらしく、適正がない魔法はいくらやっても使えないのだとか。実際俺も火、水、土、風、光の魔法は習得できなかった。神様のシステムも完璧ではなかったわけだ。


また魔法には火、水、土、風、雷、氷、光、闇の8種類があり、 俺が使えるのは雷、氷、闇の3つで今は闇しか使えない。ポイントが溜まれば他も覚えたいものである。


グレイの風魔法攻撃を避けた俺は闇魔法で俺の影を伸ばしてグレイを拘束しようとする。グレイは素早くバックステップしてそれを回避、地面を蹴って飛びかかってくる。俺は居合切りで迎撃するが牙で止められる。


この間わずか3秒。俺は闇魔法で影を増やして伸ばし、グレイは風魔法で周囲の風を唸らせてお互いに攻撃を放とうと力を込めたその時に、


「面白そうなんことしてんなあ。見ない顔だが新人かあ〜?」


間延びしてどこか気が抜けてしまうような声が横からした。


「…誰だ?」


「俺の名前はレウス ロベルト!Bランクの大剣使いだ!よろしくな!」


「グレイ、帰るぞ」


『確かに面倒くさそうだな。了解した』


レウスとかいう筋肉からさっさと離れようとした俺とグレイだったがあっさりと回り込まれてしまう。


「おいおい待てよ。どうせなら俺と模擬戦しようぜ!な?な?」


「断る。俺は暑苦しいおっさんと好き好んで戦う趣味はしていない」


「そんなこと言わずにさ〜。一回だけでいいから。な?」


無視して俺たちが横を通り抜けようと考えて横を通り過ぎようとした。すると


ガキンッ


「…なんのつもりだ?」


「こうすれば戦わざるを得ないだろう?」


背中の大剣を俺に向けて今も押し切ろうとしているレウスはとても良い笑顔で言った。


「戦うつもりはなかったんだが……」


キィンッ


受け止めていた大剣を刀で弾きかえす。そして怒気を含めた声で言った。


「かなり、怒れたな」


次の瞬間、本気で殺気をぶつける。俺は以外と本気で怒っていた。いや、キレていたというべきか。俺は昔から調子に乗ってるやつや自分中心で考える“他人”が嫌いだ。俺がそういう思考をしているのは良いという超理不尽な考え方なのだが。


「ヒュ〜ウ。こりゃあなかなかに楽しめそうだ!」


「楽しませないよ。半殺しだ」


レウスの大上段に振りかぶった大剣が俺に迫る。当たる前に怠惰の柄頭を剣の腹に当てて軌道を逸らし、カウンターで斬り返す。が、手甲を切れずに刃が埋まる。少し肉を切る感触。薙ぎ払ってきた大剣を怠惰から手を離してバックステップで避ける。


「ガルーダのブーツ、起動」


ブーツの能力を発動させて空中に飛ぶ。レウスが唖然としている間にもう一つの魔道具を起動する。


「ウィップグローブ、起動」


左右のグローブから出てきたのは合計10本もの“鎖”。名を“グレイプニル”。怠惰(ベルフェゴール)を封印していた鎖だ。俺は実はあの空間からレージングルやらドローミやらグレイプニルやらを持って帰って来ていた。その内のグレイプニルをウィップグローブに登録出来ないかを試したところ出来たので今に至る。


グローブから飛び出した10本のグレイプニルがレウスを捉えようと縦横無尽に動き回る。レウスはグレイプニルの対処で手一杯だ。


「くそ、なんだこれは!」


「伝説の鎖の拘束術だ。楽しんどけ」


「笑えるな!これを突破してみせてやる!」


レウスが大剣を振り回してグレイプニルを薙ぎはらう。そして振り切った剣先から剣線が飛んできた。


「風魔法っ⁉︎」


俺は怠惰に魔力を乗せて迎撃、そして今の攻撃でわざと訓練場の土を巻き上がらせる。レウスが俺を見失ったその隙に闇魔法で影を立体化させてから俺は


「死神のローブ、起動」


死神のローブの効果で姿を消す。影には俺の30%の魔力をもたせてある。その影がレウスに特攻、俺は影の後ろにまわる。


「ふんっっ‼︎」


影の全力の一撃を弾いてレウスが一瞬体制を崩す。その瞬間に俺は死神のローブの効果を消してレウスの目の前に姿を現わす。


「っなっ⁉︎」


「終わりだ」


怠惰の切っ先をレウスの喉元につけ、俺は勝利を宣言した。


◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎



「いやー、お前強いんだなー!」


「それはどうも」


「これでも実力的にはAランクって言われてたんだけどなあ」


「ふーん」


「釣れねえなあ」


俺は模擬戦を終えて訓練場を出てきていた。それと何故か知らないがポイントが増えていた。それも500ポイントもだ。多分、強敵を倒すっていうポイントの稼ぎ方のやつだろうと考えている。自分でも何言ってるかよくわからないけど……


「なあ、このあと飲み行かねえか?」


「黙れおっさん。まだ昼過ぎだぞ」


「いいじゃねえか。そのうち日も暮れるさ」


「お断りだ」


「そんなこと言わ…」


バタンッ‼︎


「誰か…誰か助……けて」


突然1人の冒険者が全身ボロボロの満身創痍でギルドに入ってきた。直ぐにギルドの職員が駆けつける。


「大丈夫ですか⁉︎しっかりしてください!」


「それよりも…報告….がある……。北…の……山の洞…窟に…オーガの…大軍……が……いる…。俺たちの……パーティー…は…恐らく俺以外……全滅…だ」


「え⁉︎」


「相手は…最…低でも……レッドオーガ…以上…の…奴等……しかいない…。数は……見え…た…だけで…も…百、以上。ジェネラル……オーガ…も…いた……。早く、連絡を…して…くれ……」


オーガ。適正ランクD〜Cの緑の巨人だ。体長は3〜4メートル程で非常に凶暴な魔物。パーティーならDでも狩れるが単独ではCは欲しい。


レッドオーガはそんなオーガの上位種だ。適正ランクC以上。体長5〜7メートル。オーガと違って赤い皮膚をもつ。オーガよりも強力な個体で群れることもある。


次にジェネラルオーガ。適正ランクB以上。体長7〜8メートルの赤い巨人。レッドオーガの上位種であり、レッドオーガを指揮する能力をもつ。それなりの知能があり、単体でも強力な上に群れると最悪なほど強い。


こんなジェネラルオーガと配下のレッドオーガが100匹以上。それも少し見ただけでだ。これは討伐というよりも戦争に近いことが起こる。


ギルドがざわついている。冒険者たちは怯える者、意気込む者、冷静な者など様々だ。職員は青ざめながらも緊急の会議のためにギルドマスターのところへと走っていった。


隣ではレウスが獰猛な笑みを浮かべて上がりまくったテンションを必死に沈めようとしている。


俺はこんな様子を見ながら今日はまだ、厄介ごとが起こりそうだな、と頭のどこかで考えた。

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