第51話 vs『首狩り兎』②
今回は少しグロテスクな表現があります。
苦手な方は注意してお読みください。
「さあ、第二ラウンドだ」
告げると同時に影渡りを使って少女の背後に現れる。
「なっ⁉︎」
キィィンッ!
ギリギリで反応されたせいで流されたが次の瞬間には俺は元の場所へと移動し終えている。
「おいおい、その程度か?」
ゆらゆらと身体を動かしながら俺は挑発をする。
「舐めないでっ!」
短剣が6本迫るがグレイプニルを近くの木に結び自分を引っ張ることで大きく避ける。
左手を前に出し、5本のグレイプニルが少女に迫る。少女はそれを全て弾くと手元の糸を引く動作をした。
同時に俺が足場にしていた木が倒れる。幹を糸で切り裂いたらしい。周りの木も一斉に倒れ始める。
俺は影渡りで再び少女の背後に移動し怠惰を振り払う。だが、確かにそこにいたはずの少女に刃は当たることがなかった。
「消えた…?」
そこに確かにいたはずだ。だが姿は見えず、手応えは全くない。
ゾクリ…
「っっっ‼︎」
ガギンッ!
急に背筋が冷え、背後にグレイプニルを盾のように纏わせる。すると、俺の首筋に到達しそうだった短剣を受け止めることができた。
「雷弾!」
すかさず雷魔法を放つが、手応えはない。霧に包まれたような気がし続けている。
辺りは切り倒され、重なり合った木のせいで視界が悪い。足元は草が生え茂っているので足音もしない。
流石は暗殺者系のSS級冒険者ということだろう。
俺は手を地面について更に力を引き出す。
「52枚の道化たち」
俺を中心にして漆黒の影が四方八方に伸び、そこから俺とそっくりの姿形をした52人の道化たちが姿を表す。
黒い装束、ステッキにトランプ。俺より少し弱いくらいの実力である道化たちは周囲に一斉にトランプを放つ。
「くっ!」
すると、付近の草むらから少女が飛び出してきた。少女は空中でトランプを避けると俺に向かって駆け出す。
が、俺に届く前に更にトランプの一斉投擲を喰らい、全身にトランプが刺さり倒れる。
「っ⁉︎いや、まだだ!」
だが倒れたはずの少女の体は消え、そのことに気がつくと同時に二体の道化の首が宙を舞った。
ステッキを構えた道化たちは姿の見えない少女の手によって次々と首を刎ねられていく。
ある者は両手両足を切断され、ある者は胴を真っ二つにされ、ある者は全身にナイフを突き立てられ、またある者は生皮を剥がされ、
どういった経路をたどっても最終的には全ての道化の首は刎ねられ、殺された。
キンッ!
反射的に怠惰を構えるとその鍔元に短剣が当たる。
キンッ!
背後へと強欲を振り払えば、また短剣が当たる。
キンッ!キンッ!キンッ!
グレイプニルを辺りへと振り回せば数度短剣が当たる。
キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!
ありとあらゆる方向から見えざる少女が繰り出す短剣が現れる。
だが、俺はその事に全く恐怖を抱かずに冷静に防御を繰り返していった。
ギンッ!
次第に短剣が当たる音に変化が訪れる。甲高い音を立て、一定のペースで振るわれていた短剣はリズムが崩れ、力も少なくなってきた。
ギュリンッ!
「なっ⁉︎」
大きく薙ぎ払い。すると、ペースを完全に崩した少女が焦った様子で体勢を立て直そうとしていた。
「はあっ!」
少女は咄嗟に手元の糸を操り、付近の倒木を俺に向けて無数飛ばす。だが倒木など簡単に俺は斬り捨てることができた。
俺にダメージを与えることは出来ず、足止めにも殆ど効果がない。
「それまでか?堕落」
怠惰を少女へと振り下ろす。驚愕の表情を浮かべた少女に刃が当たる瞬間、少女はまたも消え去った。
「もらったわ!喰らえ、首狩り‼︎」
少女は既に俺の背後におり、その短剣に黒い魔力を纏わせて俺の首を刎ねんと迫る。
だが
「それまでか、と聞いたぞ?」
その攻撃はこの展開を予想をしていた俺にいとも簡単に受け止められた。そして、受け止めたのは怠惰の刃。
「まずっ⁉︎」
「物質劣化」
堕落を応用した技である物質劣化は、急速に触れた物質を劣化、腐敗させていく。
腐敗し、強度を失った少女の短剣はボロボロと崩れて俺が前へ押し出した怠惰の刃を受け止めることは出来ない。
チンッ……
斬って、納刀。胴をバッサリと斬られた少女は地面へと崩れ落ちる。
「ごぽっ…」
倒れた少女は口から血の泡を吐き出していた。まだかろうじて息があるようだが、時期に死ぬだろう。
辺りは静寂に包まれていた。




