第50話 vs『首狩り兎』①
今回は久々?の戦闘回です。これからは暫く戦闘回が続きます。
これからもよろしくお願いします。
「ライダー指揮官!もう防壁が持ちません!」
「指揮官!魔法部隊の魔力も底を尽きます!」
「重装歩兵部隊の3割が死亡!残りの5割は重傷です!これでは戦線を維持できません!」
「こちら弓兵部隊!もう矢がありません!」
ロマリア王国第二砦。そこは今、アメシア帝国軍の攻撃を受けていた。
指揮官であるライダー=ハタサンは部下から次々に届けられる悪い報告に頭を抱えていた。
ドンッ!
「糞がぁっ!帝国め、どうしてここまで我ら王国を狙う⁉︎」
怒りのままに拳をテーブルに叩きつけ叫ぶが現状が良くなるわけもない。舌打ちを1つすると矢継ぎ早に指示を飛ばす。
「魔法部隊には余った魔力回復薬を全て飲ませろ!その後、即座に防壁の再構築!攻撃魔法は使わなくてもいいから全て防壁作成に力を回せ!」
「歩兵はどうしましょう⁉︎」
「重装歩兵部隊は退却!軽歩兵と騎兵を掻き集めて戦線に投入しろ!一点突破のあと即座に退却、攻撃を繰り返し消耗を避けろ!弓兵部隊は下がって軽歩兵部隊と合流して作戦行動を行え!」
「「「「了解しました!」」」」
「秘書官!」
「はっはい⁉︎なんでしょうか!」
ライダー指揮官は部屋の隅にいた秘書官に声をかける。
「文官は裏から逃げろ。護衛はつけられないが食料をやる。なんとか逃げ延びて王に伝言を伝えてくれ」
「で、伝言?」
「ああ、『第二砦指揮官ライダー=ハタサンは最後の1人となろうとも防衛に力を入れる。王国に変わらぬ忠誠を』と」
「り、了解しました!」
去っていく秘書官を見ながらライダーは深くため息を吐く。
「はあ…。損な役回りだぜ、全く。さて……最後まで足掻いてやろうじゃねえか」
指揮官室から出たライダーは自身の得物である両刃の長剣を掴むと戦場へと走る。
外へ出ると目の前には傷つき血を流しても戦い続けようとする自軍の兵士たちとほぼ損傷の無い敵軍兵士がいた。
「俺はロマリア王国第二砦指揮官ライダー=ハタサン!この砦を落としたければ俺を殺してみろ!」
剣を抜き声を張り上げ、敵に向かって突撃していくその姿はロマリア王国の兵士たちに僅かばかりの希望を抱かせた。
対するアメシア帝国軍の兵士はそれに構わずただただライダーへと攻撃をしていく。
時に斬り、時に突き、時に払い、時に刺し、時に叩き、だがその攻撃の中を潜り抜けライダーは反撃をしていく。
獅子奮迅の働きをしたライダーだが、あくまで彼も人間であり限界は来る。
足がもつれた所に敵の女獣人から掌底を喰らい、後方へと吹き飛ばされる。鎧ではなく直接内部に効く掌底をまともに受けたライダーは内臓を傷つけられ吐血した。
「がはっ…⁉︎」
「まあ、普通の人間にしては良くやった方じゃない?数秒でもSS級冒険者と斬り結べたんだから」
地に倒れ伏すライダー見下ろし女獣人…『首狩り兎』は言う。
「敬意を表して苦しまずに殺してあげる」
ナイフを持った手を振り上げる獣人の少女を見ながらライダーは自分の死期を悟る。
命乞いをするべきだろう、許しを請うべきだろう、降伏するべきだろう。頭の中をグルグルと様々な考えが回るが、出てきた言葉は全く違うものだった。
「…どうか……この国を…守って、くれ…………っ!」
返答など有るはずもない。そして、最後まで国のために戦った1人の漢へとその凶刃が振り下ろされる直前、空を影が覆った。
そして聞こえる希望の声。
「安心しな。全部まとめて守ってやるよ!」
気がつけば目の前には薄笑いを浮かべる黒装束の少年がいて、先ほどの女獣人の少女は姿が見えない。
「お前…は……?」
「俺か?俺はこの国を守るためにやってきた唯の冒険者さ」
薄れゆく視界の端で最後に見えたのは少年の周りに佇む蒼い飛龍と、雄叫びを上げて敵に突っ込んでいく自軍の旗を掲げる軍勢だった。
「…さて、俺たちもやるとしようか」
気を失った男を背後にして俺は振り返る。そして俺に刺さるような視線と殺意を向けている獣人の少女に声をかけた。
「お前が『首狩り兎』か?」
「ええ、そうよ。私がSS級冒険者の『首狩り兎』。それが分かっていて私の前に立つって貴方バカなの?」
「いや?別に俺は馬鹿じゃないぞ?あ、クリア。お前も好きに暴れてこい」
『わかった』
少女に返答しながら、クリアに暗にここから離れろと言う。素直にクリアはこの場から離れ、敵味方入り乱れる戦場へと
向かった。
「ふぅん?ある程度の実力があるみたいね。名乗りなさい」
「お前に指図される覚えはないんだが…。まあいい、俺の名はテツヤ。新たなSS級冒険者の1人だ」
「へえ、貴方がそうなの。確か、『鎖鴉』とか言ったわよね」
「ああ、そんな呼ばれ方もしたな」
軽口を言い合いながらもお互いに警戒は続ける。一挙一動を把握し、常に先手を取れるようにお互いが自然体のまま身構える。
「『疾風』を殺して天狗になってるのかしら?私はあんなのとは格が違うわよ?」
「確かに、そうみたいだな」
俺は『首狩り兎』の言葉に頷く。確かに、そのステータスは『疾風』などとは比べ物にならなかった。
名前 ネア ミルヘーグ
種族 獣人(兎族)
性別 女
年齢 17歳
職業 【暗殺者】【忍頭】【操り人形士】
レベル247
スキル
短剣術Lv8
糸術Lv8
隠密Lv8
体術Lv6
気配察知Lv9
聴覚強化Lv8
身体強化Lv7
魔力強化Lv6
魔力操作Lv6
高速思考Lv3
闇魔法Lv7
特殊スキル
首狩り
未来予知
称号
集落の姫
努力する者
天賦の才能
影の者
竜殺し
伝承者
龍殺し
圧倒的なまでに多いスキルに物騒な『首狩り』とかいう特殊スキル。装備はわからないが、相当な強敵だというのはわかる。
だが、それでも俺は一切の動揺はしなかった。
「確かにお前は強いかもしれんが、それでも負ける気はしないな」
「へえ…言うじゃない」
少女は眉をピクリと動かしながらも表情には殆ど出さずに疑問を持った。それは
『私の強さを知っているのにどうしてこの男は恐れない?』
といったものだった。だが、気にするだけ無駄だと切り替えて短剣の先をテツヤへと向ける。
対してテツヤも切り替えて、背負っていた傲慢を抜き構える。黄金の刃は日の光を浴びて輝いた。
「行くぞ」
先手を取ったのは、テツヤ。下段に構えた傲慢を斬りあげるがそれは少女が左手に持った短剣に受け流された。
「……」
「はぁっ!」
ギャリィィンッ!
受け流されて体勢を崩されたテツヤに少女が右手に持つ短剣が迫るがその場で回転しつつ斬り払った傲慢によってそれは嫌な音をたてて防がれる。
「へぇ、口だけじゃないみたいね」
「そっちこそな」
一旦距離を置いた2人は軽口をたたき合い、次の瞬間には刃を合わせる。
上段から迫る傲慢を少女は短剣をクロスして受け止める。すかさず傲慢から左手を放し腰から強欲を抜き放って斬りかかるが体を捻った少女によって避けられた。
「黒矢!」
少女は闇魔法により黒い矢を飛ばすが全て強欲によって斬り払われる。テツヤは傲慢を背中に戻し腰から怠惰を抜き、その勢いで氷魔法で作った氷の刃を飛ばす。
だが、その氷の刃は少女に届く前にバラバラになって消滅した。しかも、少女はその場から動いた様子もない。
「ちっ!」
舌打ちを1つすると怠惰と強欲を構え少女へと疾る。
「はぁっ!」
左手の強欲を避けにくい脇腹を狙って突くように引き絞り、右手の怠惰は肩から腰へと斬り裂くように振り下ろす。だが、右手を振り下ろす前に自身の右手は止まった。
「はぁ?…っっっ⁉︎」
ぱんっ
そんな音をたてテツヤの右手がなくなる。いや、正確には右腕の肘から先が急に離れた。
即座に背後へと撤退。左手に強欲を持ったまま警戒をする。
「ふふふっ、見事に引っかかったわね?」
少女は薄笑いを浮かべてこちらを見ている。その様子にどこか背筋が冷える気がした。
「今のは、なんだ?」
「さあ、なんでしょう?」
踊るようにその場でステップを踏む少女を睨みながら自身の右手を切り離した謎の攻撃が何なのか考える。
幸い、答えは簡単に出せた。
「糸、か」
「せいか〜い」
よく見ると、少女の周りにはとても細い糸が張り巡らされていた。その糸には少女の魔力が微量だが纏われており、ゆらゆらと蠢いている。
「高純度の高位真銀製の金糸よ。触れれば腕くらい簡単に切り落とせるわ」
「ちっ、そういうことかよ」
アイテムボックスから霊薬を取り出して右腕に振りかける。すると、失った右腕が生えてきた。
何度か握ったり離したりして感覚を確かめると頷いて強欲を両手で構える。
「俺を待ってて良かったのか?」
霊薬を出す時も腕の確認をしている時も手を出してこなかった少女に問いかける。
「問題ないわ。だって負けないもの。」
「そうかい。その判断、後悔することになるぞ」
軽い調子で答える少女に怒りを覚えるが、実際にしてやられたのだからしょうがない。
「こい、グレイプニル」
ウィップグローブから飛び出す鉤爪つきの計10本の鎖。その矛先を少女に向けながらテツヤは油断せずに構えた。
「影の道化」
黒い魔力がテツヤを包み込み、服装が変わる。冷たく無機質な泣き笑いの表情をした仮面をつけ、顔を少女に向けて言う。
「さあ、第二ラウンドだ」
感想等、お待ちしています。




