第44話 その後
第4章のエピローグです。
短いのでご了承ください。
「お久しぶり〜」
「だな」
俺は気がつくと辺り一面が全て真っ白の空間にいた。そして俺の目の前にはデュオルがいる。つまりここはきっと精神世界なんだろう。
「いやあ、君は本当に無茶をするね」
「そうか?」
「そうだよ。この世界に来たばかりの時は他人なんてどうでも良さそうだったのに今は自分の命をかけて他人を救おうとしているんだよ?」
「他人なんて別にどうでもいい。ただ、大切な奴らは守りたいだけだ」
「ツンデレ?」
「ぶっ殺すぞ?」
真顔で首を傾げながら爆弾発言をしやがったデュオルを殺意を込めつつ睨む。デュオルは苦笑いしながらゴメンゴメンと謝るとどこからかお茶と羊羹を出した。
「はいこれ」
「お、サンキュ」
ずずっ
「「はぁ〜」」
熱い緑茶と羊羹のコンボは素晴らしいと思う。そうこうしながら、まったりした俺たちはそろそろ本題を話すことにした。
「で、今回俺が呼ばれたのは何でだ?戦闘直後にこうなったって事は何か理由があるんだろ?」
「ああ、うん。まあ有るにはあるんだけど……」
何故かやけに歯切れが悪い。そんな様子のデュオルを見ながら何か嫌な予感を感じながらも俺は話を聞くことにした。
「いいから言ってくれ」
「あー、もう!分かった、言うよ。いいかい?君の残りの寿命はあと1年ちょっとしか残ってないんだ」
「は?」
へ?今なんて言った?ジュミョウガアトイチネン?
「現実逃避しても無駄だよ、君の寿命はあと1年しか残っていない」
「おい!それはどういう事だよ!」
「暴食含む妖刀の能力の使いすぎだよ。今回の戦いで君は自身の寿命を削ってしまった。精神侵食の時に妖刀の記憶を垣間見ただろう?あれが証拠さ」
「マジかよ……」
「ちなみに死骸人や吸血鬼などに魔物化しても寿命は延びない。これは魂の問題だからね。でも1つだけ、君がもっと長く生きる方法がある」
「本当か⁉︎」
「本当だよ。いいかい?残り1年以内に傲慢の妖刀を探しだすんだ。その効果は自身が『見下した』者を殺した時にその魂の寿命の10分の1を自分の者にすること」
「てことはその傲慢を見つけて契約して寿命を伸ばせってことか」
「そういうこと」
「よし、まだ死にたくないし探し出してやるさ!」
「うん、その意気だよ」
そうしてまた緑茶を飲んで羊羹を摘まみつつ話をしているのだが、今回は中々目をさます気配が無い。
「そりゃあれだけダメージを負ったらそう簡単には目を覚まさないよ。気がついてなかったかもしれないけど身体も結構なダメージを受けてたんだからね?」
「例えば?」
「出血多量に右鎖骨骨折、左脇腹から切られた傷で大腸が傷ついて各関節のズレに右脚の火傷と指先の凍傷、まだあるけど聞く?」
「いや、いい……」
戦闘中はアドレナリンが出てて気にしなかったけどこうやって聞くとかなり危険な状態だった。というかこれ、日本だったら助からないんじゃないかと思う。
「そうだ、多分ここの時間感覚でも1週間は目を覚まさないと思うから修行でもしていったら?」
「修行?」
「そう修行。身体は鍛えられないけど技術は鍛えられるからね。何もしないよりは良いと思うよ?」
「確かに何もしないのはな………。よし、じゃあ修行するか」
こうして俺は精神世界での修行を始めるのだった。
その頃、現実。
「………それで、具合はどうなのだ?」
「身体にはもう問題はありません。ですが、魔力欠乏と妖刀といわれる武器による精神的なダメージが深いため未だに危険な状態です」
「クソったれ!お前はまだガキだろうが!何1人で抱え込んでんだ!」
「レウス殿、気持ちは痛いほどわかるが落ち着くのだ」
王城の一室、そこにはベットに寝かされ未だに目を覚まさないテツヤとラグドーン王や冒険者レウスを筆頭として様々な人たちが集まっていた。
王都中のありとあらゆる人がテツヤを救おうと手を貸したが、未だにテツヤは目を覚ます様子はなかった。
テツヤが倒れてから現実世界では既に半月が経っており、グレイたちテツヤの家族たちはマトモに食事や睡眠を取っていないらしい。
「テツヤ君……僕は君を誤解していたよ。謝ることもあるし、早く目を覚ましてくれよ………」
「我も国王として、国のために戦ってもらったことに感謝をしなければ」
「俺はこいつが起きたら取り敢えず一発殴る。大人に頼れってんだ、全く」
各自思うところはあるのだろうが、テツヤが国中の人間から心配されているのは間違いない。
だが、そんな日も今日で終わった。
「……………あー、おはよう?」
「「「!!!?」」」
「「「マスター!」」」
精神世界での修行を切り上げて帰って来たテツヤを迎えたのは家族の温かい抱擁と、多数の人からの感謝の言葉。そして謝罪の言葉や歓迎。
そして、
「このっクソガキがぁぁ!!」
「ぐぺっ⁉︎病人になにすんだこのハゲ!」
「ハゲてねえ!クソガキが!」
全力で放たれた戦友の拳骨だった。




