第29話 真相②そして…
拷問が終わった。
どうやら宝玉は既に存在していないらしい。それも、手放したとかではなく何度かこの都市でも見られていた変異種らしき魔物が取り込んだらしいのだ。
はじめは宝玉の力で魔物を支配しようとしたらしいのだが、逆に宝玉の力を取り込んで手がつけられなくなり暴れた。
そして祠が崩れてその中にあった禍々しい刀を喰らったところ、完全に狂気に飲まれたように暴走して海へと帰ったらしい。
そこからは分かるように他の魔物を都市にぶつけて襲っていたというわけだ。
………というか、禍々しい刀って嫌な予感しかしない。
ん?ああ、あのギルドマスターなら精神を壊したんで殺した。いやぁ、常人は【悪夢】に耐えられないことをうっかり忘れてたよ。
ま、必要な情報は手に入れられたし良いよな?
「それじゃ、変異種とやらを狩りに行くぞ」
「「はーい!」」
「ちょ、ちょっと待て!お前たちだけで行くのか⁉︎」
女が俺を焦って呼び止めて聞いてきた。
「ああ。なんか問題あるか?」
「いや、問題というか……」
「問題ないなら行く」
俺たちは詰め所からズカズカと出て行った。
そのまま港までくるとモンスターハウスを開く。出てきたのは、俺の持つ全ての従魔たち。
マーナガルムのグレイ、アイシクルワイバーンのクリア、レブナント、ハイ・レブナント、ハイ・グール、ファントムアーマー達。
俺は従魔達を見ると声をかけた。
「準備は良いかお前たち。行くぞ!」
『『『『『『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!』』』』』』
従魔達の咆哮を後ろに俺は海に手をつけ、魔法を行使する。
「【氷広場】」
瞬間、本来ならありえないスピードで海面が俺の手を起点として凍ってゆく。
俺は魔法を行使したまま凍った海面に足をつけて歩き出した。後ろにはシロとハク、従魔達がついてくる。
海面は凍っていないところもあったが、俺は魔法を行使したままだったので近づいていくと凍り出す。
そして歩き出して暫く経った頃だった。
ゴゴゴゴゴゴゴッ
そいつは凍らせた海面を海中から叩き割って俺たちの前に姿を現した。
名前 無し
種族 海龍【暴食】
性別 無し
年齢 1127歳
レベル318
スキル
潜水Lv8
泳法Lv8
剛顎Lv6
咆哮Lv4
水魔法Lv8
氷魔法Lv8
身体強化Lv3
魔力強化Lv3
魔力操作Lv4
特殊スキル
海流操作
暴食
称号
龍族
海神の呪福
暴食の呪縛
「は?」
ヤバい、こいつはちょっとマジでヤバいかもしれない。俺がそう思った瞬間。
「グルァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァア‼︎」
「ぐおっ⁉︎」
咆哮。俺はただの咆哮で吹き飛ばされそうになった。
実力差。俺とこいつの間には普通ではどうにもならない実力差がある事にはじめっから気付かされた。
普通なら心が折れるだろう、膝が震えるだろう、涙を流しへたり込み、失禁するかもしれない。だが、俺はそんな状況で只々、嗤っていた。
俺はこの状況が、不利で理不尽な状況が愉しくて愉しくて仕方がなかった。
「ヒャハハハハハハッ!」
腰から怠惰と強欲を同時に抜いて構える。
抜くと同時に黒紫と黒蒼の瘴気が刀身から出てきて俺の腕から全身へと絡みつく。
「切るの?切るの?」
「何処から奪いましょう?」
「黙っていろ、行くぞ!」
俺は怠惰と強欲を黙らせて海龍へと突っ込んだ。
「その命、頂くぞ‼︎」
「グオオオオオオッ!」
俺と海龍の咆哮が重なった。




