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第22話 二人の別れ

「「おはようございます、ご主人!」」


「「おはようございます、マスター!」」


「…………おう、おはよう」


俺は二本の妖刀と二人の義弟妹に起こされた。怠惰ベルフェゴールはいつも通りに紫の短い髪に赤い目、黒の半ズボンに半袖の服を着ている。隣にいる強欲マモンは蒼い長髪に赤い目、蒼い着物のようなものを身につけていた。


シロとハクは昨日の戦闘服から着替えて長袖、長ズボンだ。色は当然のように白。俺はいつも通りの漆黒の装備を身につけると妖刀を刀に戻してシロとハクと共に部屋を出た。


「おはよう女将さん。朝飯食える?」


「おはよう!いつでも食えるよ!」


「じゃあ、よろしく」


俺は席について運ばれてきた朝食を3人で食べる。相変わらず、シロとハクはガッついて食べるが俺はゆっくりと食べた。今日はギルドに行くだけだし急ぐ必要はないだろう。


飯のお礼を女将さんに言って、俺は宿を出た。そのままギルドに向かって歩く。ギルドに着くまでに街の人々に感謝をされた。こそばゆい感じがするが、まあ、悪いことではないだろう。


ギルドに着き、中に入ると早速レナさんが俺のところに駆け寄ってきた。


「おはようございますテツヤさん。ギルド長がお呼びですので一緒に来ていただけますか?」


「分かった。行きますよ、シロ、ハクも来い」


「「はい、マスター」」


レナさんの案内に従ってギルドの奥に入る。階段を上り、三階の奥の部屋の前でレナさんは止まった。部屋のプレートには「ギルド長室」と書かれている。


「失礼します!テツヤさんをお連れしました」


「入って」


レナさんが扉の前で言うと返事が返ってきた。中に入るとそこには腰まである銀髪と褐色の肌をもつ、ダークエルフと呼ばれる種族の女性が椅子に座ってこちらを見ていた。女性がギルド長なんだろうな。


「初めましてテツヤ君。そこのソファーに座ってちょうだい。レナは戻っていいわよ」


「わかりました」


「分かった」


レナさんが部屋から出るのを見てから俺はソファーに座った。シロとハクは俺の両隣に座る。ちなみにアンチはアイテムボックスのなかだ。


「それじゃあ話しましょうか」


「そうだな」


執務机から俺の対面のソファーに移り腰掛けたギルド長が話を切り出した。ギルド長は深緑のパーティードレスのようなものを着ている。


「あなたの要望の報酬だけど、許可します。普通の報酬と倒した魔物の売却額の合計は代わりに無くなるわ。それでもいい?」


「問題ない。で?俺をここに呼んだのは他の話があるからだろ?さっさと要件を言え」


「まあ、わかるわよね」


ギルド長はため息を一つ吐いて、服装を整えてから俺に改めて向き合った。


「あなたには王宮から召喚命令が来ているわ。それで行って欲しかったのだけど……」


「んな面倒くさいもんに行くわけないだろ」


「まあ、そうよね。別にいいわよ。ただ、これを伝える前に別の街に移ったっていう言い訳が必要になるけど」


「つまり拠点を変えろと?」


「まあそうなるわ。一応、お勧めはあるけど聞く?」


「頼んだ」


「そう。あなたには港都市アーネがお勧めね。色々なものがあるし、魔物も海の魔物が多くて新鮮よ」


「そうか、じゃあそこにするわ」


「あら意外と決めるのが早いわね。もっとゴネると思ったのだけど」


「そろそろ拠点を変えようか悩んでたからな。ちょうどよかった」


「わかったわ。明日の朝には出た方がいいわよ?騎士団が来るはずだしね」


「今日中に出るさ。世話になったな」


「どういたしまして」


俺はさっさと部屋を出た。通路を通ってギルド内に戻り、そのまま出て行く。俺は宿に戻って部屋を引き払った。女将さんや他の冒険者には残念がられたがそれはしょうがない。


宿を出て食料などの必需品を買った。アイテムボックスのおかげで大量の物を買えた。アイテムボックスの中にあるものは基本、時間が止まっているから便利だ。


俺たちは必要な物を買い終え、今度は鍛冶屋、つまりデンガのところに来ていた。


「ういーす」


「なんだ、テツヤか。どうした?」


「俺、今日中にこの街から出ることになったから挨拶に」


「はあ⁉︎お前が挨拶に来るなんて大丈夫か⁉︎」


「そっちかよ」


「まあ冗談だが。そうか、寂しくなるな」


「たまには戻ってくると思うぞ?またいい素材を手に入れたら仕事は頼むな」


「ああ、分かった。あ、ちょっと待ってろ」


そう言ってデンガは奥に入ってガサゴソやってから何かを持って戻ってきた。


「なんだそれ?」


「お前が注文したんだろうが……。ナイフだ、色々な種類のな」


「そういやそんなもんも頼んだな。助かる」


「へっ、いいってことよ。気をつけてな、また戻ってこいよ」


「わかってるって。じゃあな!」


「おう!」


俺はデンガの鍛冶屋を出た。ナイフはアイテムボックスに全てしまう。俺は振り返ってもう一度デンガの鍛冶屋をみてから街の南門に向かって歩く。


門に着くとそこにはレウスが壁に寄りかかっていた。


「レウスか、悪いが今からここを出る事になった。今までありがとな」


「けっ、お前が行っちまうのは残念だな。まあ冒険者やってるうちにまた会う事もあるだろう。じゃあな」


「ああ、またな。次会う時はもっと強くなってろよ?」


「言ってろ。次会う時はSSSランクになってテツヤ、お前を驚かしてやるよ」


「そいつは楽しみだ」


俺たちはそう短く言葉を交わしてすれ違った。レウスは街の中へ、俺は街の外へと歩く。


俺はグレイにシロとハクと共に乗って南へ走り出した。


「「またな、相棒」」


かなり離れてしまってお互いの声など届かない位置にいた2人の声は重なった。


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