第16話 はじめてのいらい
「測り終わったぞ、明日の朝までに仕上げてやるから朝イチで来いよ!」
「わかった。じゃあまた明日」
俺はデンガの言葉を聞いて、シロとハクを連れて鍛冶屋を出る。間に合わせのショートソードは既に購入済みだ。俺は2人を連れたままギルドに向かった。
いつも通りにギルドの扉をくぐるとギルド内から一斉に視線を向けられる。その殆どは畏怖と感謝だが、一部は妬みなどの視線を向けてくる。そしてその視線がシロとハクの珍しい姿に向かった。嫌悪するような視線を冒険者たちは向けた。
「「ひっ⁉︎」」
シロとハクが短い悲鳴を上げた。俺は2人を撫でてからカウンターへ向かう。いつも通りにレナさんのところだ。
「こんちわレナさん。この2人の登録、お願いしていい?」
「こんにちわテツヤさん。この2人ですか?どなたでしょう?」
「俺の家族だよ」
ガタッ‼︎
目の前のレナさんと酒場の冒険者は一斉に立った。他の受付嬢や冒険者は思考停止している。レナさんはいち早く思考が回復したようで動揺しながらも質問してきた。
「あ、あのテツヤさん?どう見ても似てないんですが……」
「そりゃ義理の弟妹たちだからな。てか冒険者にそういう事を聞くのはルール違反だろ?早く作ってくれ」
「あ、はい!」
俺に言われて未だに納得できていないようだがレナさんはギルドカードを出して登録を済ませていく。登録が終わり、俺は適当な依頼を受けると二人を連れてギルドを出た。
宿に戻り、グレイを連れて俺はいつもの門番に挨拶をし、出て行く。今回受けた依頼はブルボアの討伐だ。基本直進攻撃しかしないので戦いやすいだろう。俺は双子をグレイの背に乗せる。
「グレイ、いいか?」
『いつでも、主よ』
「そんじゃあ、よーい……」
ドゥンッ‼︎
俺とグレイが全力で地面を蹴る。お互いにレベルが上がった今では時速200kmは軽くスピードが出る。前回は何時間もかかった狩場に僅か数分でついた。俺たちは急ブレーキをかけて止まった。
「とーっちゃく!」
俺の隣のグレイの背からシロとハクが降りてくる。が、地面に足をついた途端に倒れた。二人ともフラフラしている。情けないぞー。
「それじゃ、これ」
俺はアイテムボックスからショートソードを二本出してシロとハクそれぞれに渡す。それと防具屋で買ってきていたローブとグローブ、ブーツもそれぞれに渡す。二人は未だにフラフラしながらもそれを装着していった。俺は二人が着替え終わったのを確認して話し始めた。
「それじゃまずはこれを読んでもらう」
そう言って俺がアイテムボックスから取り出したのは一冊の本。白い表紙に金糸の刺繍がしてあり、聖なる力(笑)を感じさせそうな一品だ。ちなみにこれは遺跡で見つけたものだが、俺が読もうとすると弾かれて読めない。どうも俺の魔力に反応しているようで、特に闇の魔力が弾かれた。
二人はその本をじっと見つめている。俺が鑑定で見た通りならこの本はこの二人に適合するはずだ。なぜなら
名称 虚無の魔導書
等級 特別級
効果 忌み子と呼ばれていた人物が書き記した魔導書。忌み子と呼ばれる者だけが持つ魔法能力を開花させる。著者が死亡しているため、著者が持っていた能力が受け継がれる。
まさに忌み子専用の本だ。俺は未だに表紙をじっと見つめている二人の前に本を押し出してやる。
「開けばわかる。それはお前らが使え」
二人はおずおずと手を伸ばして本に触れた。瞬間、本のページがパラパラと捲り出し、光った。その光を浴びたシロとハクは倒れる。
1秒、2秒、3秒、4秒、……5秒!二人は跳ね起きた。顔にはびっしょりと汗をかいている。嬉しそうな二人を尻目に俺は鑑定をする。
名前 シロ
種族 人間
性別 男
年齢 8歳
職業 無し
レベル5
スキル
特殊スキル
無属性魔法(覚醒)
信頼共鳴
称号
忌み子
無限の可能性を秘めし者
名前 ハク
種族 人間
性別 女
年齢 8歳
職業 無し
レベル5
スキル
特殊スキル
無属性魔法(覚醒)
信頼共鳴
称号
忌み子
無限の可能性を秘めし者
ちゃんと覚醒出来たようだ。嬉しそうな二人を撫でて俺は魔法を何か扱ってもらった。一言で言うならばそれは白。ただただ白い魔力が全てを掻き消して行く。ふざけて出した俺の影分身もその魔力に触れるとだんだんと消えていった。
結論として無属性魔法で出来ることは、超幅な身体強化、無属性魔力に触れたのものの消滅、そしてオリジナルの魔法の開発と仕様だ。全く同じことは出来ないが、無属性魔法は各属性魔法と似たような現象を起こせることが分かった。
そこまで分かったところで実際にブルボアと戦わせてみたが圧倒的だった。これなら使い物になるだろう。称号の影響もあるのか、最初は下手だった剣術もだんだんと様になってきていた。
日が暮れてきたところで戦闘をやめ、二人を連れて街に帰った。ちなみにいくら急に強くなったからといって時速200kmを超える猛スピードには耐えられなかったようで、街に着く頃にはグロッキーになっていたが。
ギルドに今日倒した分の素材を渡して、依頼の報酬と一緒に清算する。報酬の一部を二人に渡すと二人とも興奮して笑っていた。微笑ましい。
ーーこれからが楽しみだ。




