第15話 名前
俺は村長に金貨を3枚払うと双子を連れて村を出た。アイテムボックスの中を見るがまだ結構な額のお金が残っている。今までやってきた依頼に素材の売却でかなりの金額が貯まっていたし、この前のレッドオーガの討伐では報酬は金貨1枚になった。それにレッドオーガ亜種とほぼ無傷のエンペラーオーガの素材も売却したのでちょっとした金持ちだ。
俺は双子に俺の手を掴むように言うと黙って従う。やはり目が死んでいる。まあ、なんとかなるだろうと軽い気持ちで考えながら俺は転移した。
ーー“影の家”
俺の闇魔法で作った擬似異次元空間にある家だ。原理としてはこの世界のありとあらゆるところにある影を魔力で反面世界に繋げてその影の薄い薄い空間を拡張する。
と言っても感覚でやっていることも多いから詳しくはできない。モンスターハウスみたいに俺だけが有した奴が入れる場所が出来ないかなと考えて作った魔法だ。
見た目は暗い空間にある真っ黒な一軒家で二階がある。俺はドアを開けて中に入ると椅子に腰かけた。ちなみに家の中や家具も全て真っ黒だ。
「よし座れ。あ、床じゃなくて俺の対面の椅子に座れよ」
床に座ろうとした双子を制して椅子に座らせる。特に抵抗もせず素直に椅子に座った。それを確認して俺は話を切り出す。
「それじゃあお前ら自身のことを教えてやろう。安心しろ、お前たちは悪魔の子じゃない立派な一人の人間だ」
双子はその言葉を聞いてぽけっとしている。目に光が少し、ほんの少しだけ戻った。
「お前らのその異常なくらい白い肌と髪、そして真っ赤な眼。それはどれもれっきとした病気だ。先天性白皮症、アルビノと言われている。病気と言っても何か害があるわけじゃない。安心しろ」
双子は未だにぽけっとしているがその瞳には段々と強い光が戻ってきていた。あと少しだ。
「お前らは人間だ。それは誰にも否定させない、俺が辛かったら守ってやる、悲しかったら慰めてやる、嬉しかったら喜んでやる、もう一度言うぞ、お前らは人間だ。俺がそれを証明してやろう」
双子の目には強い生きている光が戻っていた。どちらも涙を浮かべている。
「お前らは人間だ、名前をやろう。男はシロ、女はハクだ。いいか?お前らは人間だ、そして俺が家族になってやろう」
双子の涙腺は崩壊した。涙がポロポロと溢れている。俺はシロとハクを抱き寄せてギュッと抱きしめてやる。二人が俺の腕の中で泣いているのを感じながら俺は二人に見えないよう、ニヤリと笑った。
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俺は泣き止んだシロとハクを連れて“影の家”から出てビートの街についた。宿に戻って大部屋を取ると部屋でシロとハクに向かい合ってこれからのことを話す。
「シロ、ハク。俺は見れば分かると思うが冒険者だ。だからお前らにも冒険者を一緒にやってもらう。分からないことは教えてやるから安心しろ。何か聞きたいことはあるか?」
「あの…」
シロが手を挙げておずおずと質問する。
「僕たちは今まで戦ったこともないからご主人様の役に立てないと思います…」
「安心しろ、俺が教えてやる。それに最初から強い奴とは戦わせないし俺も手伝ってやるから大丈夫だ。武器は用意も用意してやるからな。わかったか?」
「「分かりました、ご主人様」」
「まず、そのご主人様ってのやめようか」
「「えっ?」」
このあと話し合って結局呼び方はマスターに落ち着いた。でもマスターも中々こそばゆい感じがする。
「そ、それじゃ鍛冶屋に行くぞ」
「「はい、マスター」」
宿から出ておっさんのいる鍛冶屋に向かう。双子は俺の後ろを黙ってついてくる。双子に周りの人がおどろいたような顔をした後に嫌な顔をしてみるが、2人を連れているのが俺だとわかるとすぐに去っていく。英雄パワー様様だ。
「おっす、おっさんいるかー?」
鍛冶屋に入ると俺はカウンターの奥にいるだろうおっさんに声をかける。直ぐに返事が返ってきた。
「おっさんじゃねえって言ってんだろうが!デンガだ!」
「分かった分かった。ところで剣を作って欲しい。ショートソード二本だ」
「ショートソード?いいが材料は?」
「これでどうだ?」
俺はアイテムボックスから売らなかった分のエンペラーオーガの角を取り出す。デンガは一瞬固まったがすぐに動き出した。
「よし、分かった。作ってやる。が、誰が使うんだ?」
「この二人だ。こいつらにサイズは合わせてくれ」
俺の後ろに隠れていた二人を前に出してデンガに見せる。デンガは驚いたが俺にお人好しだなと言うと了承して二人に合うサイズを測りにいった。
……別に善意から買ったわけじゃないんだけどなぁ。




