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第14話 奴隷

アッシュ村ーー


ビートの街から北西に歩きで5時間ほどのところにある村。この近くにはCランク以上推奨の『毒沼の廃城』というアンデット系モンスターの生息地がある。


俺が今回ここを選んだのはまず一つ目、近辺で1番アンデット系モンスターが強い場所だから。二つ目はあまり人が来ないからの2つだ。ここは環境があまりにも悪いので冒険者も滅多に近づかない。ここにしかない素材などもあるのだが依頼もあまり多くは出ないため人が来づらくなっている。


そのためアッシュ村は村にしてはかなり大きい規模だが冒険者も商人もあまり来ないので寂れている雰囲気がぬぐえない。宿も一件しかなく、閉鎖的だ。


「よし、それじゃ訓練を始めるか」


借りた宿の一室に戻ってきた俺は怠惰ベルフェゴールを刀に戻すと呟いた。ちなみにグレイは宿の庭の納屋で寝泊まりしている。デカくなったので宿に入れなくなった。


怠惰ベルフェゴール、全力で“堕落フォーリンダウン”を使え」


「はーい」


怠惰ベルフェゴールの刀身に現れた紫の魔力はだんだんと俺の身体を覆っていく。俺はその魔力を取り込んで一体化するイメージを持って操作していく。怠惰ベルフェゴールが出した魔力を取り込んでいくうちにこのまま何もかもやりたくないという欲求が出てくるがそれを理性で抑える。


「…………ふぅ」


全身に怠惰ベルフェゴールの魔力が馴染んだところで息を吐いて“堕落フォーリンダウン”を解いた。取り込んだ魔力が体内で循環しているのを感じながらその魔力を体外に放出していく。取り込んだ全ての魔力が体外に出たところで怠惰ベルフェゴールが話しかけてきた。


「ご主人だいぶ制御に慣れてきたねー」


「……まあな。加護の精神異常系の耐性も手伝ってるからかなり制御は楽だ」


「もう、乗っ取れないねー」


「乗っ取るな。殺すぞ」


「はいはーい」


人型になった怠惰ベルフェゴールがベットの上でゴロゴロと転がっている。ため息を一つ吐いて俺はベットに寝転ぶと酷使した精神と身体を休めるため目を閉じた。






◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎





朝、俺は怒号と何かを殴ったような音を聞いて目を覚ました。ムクリ、と体を起こして耳をすませるとその音は村のはずれから聞こえてくるようだ。


「ったく。なんだってんだかな。おい、怠惰ベルフェゴール起きろ」


「……うーん、あと5年……」


刀状態の怠惰を俺は両手で掴み、思いっきり曲げる。


メキ、メキ……メギメギギギギッ


「…いだだだだだだだっ⁉︎」


「よう、起きたか怠惰ベルフェゴール?主人よりも遅い起床とはいいご身分だな?」


「いや、あの、これは違うんだよ?ボク、昨日、魔力をいっぱい使っちゃったから疲れてて、これは仕方なかったんじゃないかなぁ、なんて思うんだけど……」


俺は冷や汗をダラダラと流しながら弁明をする怠惰ベルフェゴールにいつものニッコリ笑顔を向けるとただ一言だけ


「両手の指、な?」


「嫌だあぁぁぁぁぁ‼︎」


怠惰ベルフェゴールが咄嗟に後ろを向いて逃げ出そうとするがすでに遅い。ウィップグローブから伸びたグレイプニルが怠惰ベルフェゴールをグルグルに縛りつける。


「まあ、折檻はいいか。取り敢えずお前は村のはずれで何が起こっているかをバレないように確認して来い。今すぐにだ、分かったか?」


「うん、わかったよ。じゃあ行ってくるね」


怠惰ベルフェゴールが部屋の窓から出て行こうとしたので俺はそれを止める。


「ちょっと待て」


「ん?」


「もし万が一にもバレたりしたら…」


「バレたりしたら?」


「グレイプニルで縛りつけた状態でグールの群れの中に1週間ほっとく」


「絶対バレない様にするよ!」


また怠惰ベルフェゴールはダラダラと冷や汗を流しながら気配を消して外に跳んでいった。


〜20分後〜


「ただいまご主人〜。帰ったよー」


「おかえり、で報告は?」


窓から怠惰ベルフェゴールが帰ってきたので早速何があったかを問い詰める。


「んっとね、村の人が髪が真っ白の兄妹を殴ったり蹴ったりしてたよ?」


「髪が白い?」


「うん、真っ白だったよ。あとはその子に村の人が悪魔の子が!って言ってたよ」


「おっけー。だいたい何が起こってるか分かった」


ーー白い髪

これは《先天性白皮症》つまり《アルビノ》のことだろう。昔は白い髪の子は忌み子とされてたから、この感じ中世ヨーロッパの時代でも忌み子なんだろう。


ふーん、と思考しながら俺はいいことを思いついた。前から欲しかったしちょうどいいかと思い笑みを浮かべる。


「よし、怠惰ベルフェゴール。そこに行くぞ、今すぐにだ!」


「……うあー、悪いこと考えてる時の顔してるよー」


うるさいな。ギロリと睨んで怠惰ベルフェゴールを急かす。急いで宿から出て村のはずれに行くとそこには8歳くらいの兄妹を殴ったり蹴ったりしている村人がいた。


「おい、何してるんだ?」


俺が声をかけると村人はビクッとする。あ、そういえば気配は殺してたな。村人は驚いたもののすぐに表情を戻し説明をしてくれた。長いがまとめるとこんな感じだ。


曰く、この兄妹は双子でどちらも白い髪だったので村のはずれにある倉庫にずっと監禁していたとのこと。この子を産んだ母親はショックで死亡してしまい、父親は狩りで死んでいる。


村人たちはこの忌み子を殺そうとしたが、村長が珍しいので奴隷商人に高く売れるだろうと生かしておいたが奴隷商人も気味悪がって買ってくれなかった。


仕方なく一旦倉庫に戻したが、今朝、村人が倉庫の中を覗くと双子が村人が育てていた作物に手をつけていたのを発見して今に至る。


そりゃ、満足に食事も与えなけりゃ手を出すだろと思ったが口には出さない。今は自分がどうやって野菜を育てているかを自慢げに語る村人を横目で見ながら双子を神魔眼で鑑定する。



名前 無し

種族 人間

性別 男

年齢 8歳

職業 無し

レベル1


スキル


特殊スキル

無属性魔法(未覚醒)

信頼共鳴シンクロ



称号

忌み子

無限の可能性を秘めし者




名前 無し

種族 人間

性別 女

年齢 8歳

職業 無し

レベル1


スキル


特殊スキル

無属性魔法(未覚醒)

信頼共鳴シンクロ


称号

忌み子

無限の可能性を秘めし者



「へえ」


俺は思わず声を漏らしてしまった。これならば俺の求めていたもの以上になるかもしれない。俺は未だに自慢げに語る村人に向かいなおってこう言った。


「おい、村長とやらを呼んでこい。用件は………この双子を買うと言え」


村人は驚きながらも急いで村長の家に走っていった。


〜15分後〜


村長らしき老人がやってきた。当然、呼びに言った男もいる。


「何でもこの悪魔を買っていただけるようですが本当ですかな?」


「ああ、本当だ。で、いくらだ?」


俺は早速村長と交渉に入る。こういうことは何よりも勢いが大事だ、間違いない(持論です。真似しないでください)


「そうですなあ、2人で80万モールほどでいかがですかな?」


「舐めんなよ爺さん。奴隷の相場は1人金貨3枚、つまり30万モールだ。なのに2人で80万モールだと?ふざけてんのか?」


「いえ、この2人は珍しいですから。1人35万ほどでどうでしょう?」


「いい加減にしろよお前。だいたい売れ残りだろうが、1人5万だ」


「それは低すぎますな。28万で」


「ダメだ、8万」


この後も壮絶?な値段交渉が行われ、結果としてアルビノの双子は2人で30万に落ち着いた。


そして俺は、奴隷を手に入れた。

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