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【9/5コミカライズ開始】今世はあえての悪嫁です。~義母に奪われた我が子を、愛でるべくして返り咲く  作者: 越智屋ノマ@10/8書籍発売『兄王陛下』/コミカライズ進行中
コミカライズ記念SS

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【コミカライズ記念SS②】何よりの贈り物

久々の休暇、レオンはジェシカと二人で王都に出かけていた。

アレクは屋敷でお留守番だ。今日は夫婦ふたりきりで、気ままな街歩きを楽しむことになっている。


「夫婦で街歩きなんて、初めてね」

どこかそわそわしているジェシカを見ると、レオンの心も自然と浮き立つ。

実は今日は、密かな目的があった。ジェシカにジュエリーを贈るのだ。


――『そのネックレスは役目を終えたようだから、また新しい贈り物をさせてくれ』


以前、レオンはジェシカにそう約束した。

思えば妻への贈り物など、6年前の出征時に魔導具のネックレスを贈って以来だ。あのときは愛を囁く余裕もなく、ただ命の無事を祈って渡すばかりだった。


……これだけ愛しているというのに。

我ながら、つくづく武骨な男だと思った。


「どうしたの、レオン。難しい顔をして」

「いや、なんでもない」

「そう?」

ふしぎそうに首をかしげるジェシカから、レオンはそっと目を逸らした。

今日のことは、まだ内緒だ。


   *


カフェで食事を楽しんだ後、レオンは頃合いを見計らって切り出した。

「ジェシカ。少し寄りたいところがある」

「ええ。どこにいくの?」

「来れば分かる」


ジェシカを連れて向かったのは、王家御用達として知られる王都随一のジュエリーショップだった。

色とりどりの宝石がきらめく店内に、ジェシカの瞳もまた輝く。

「まあ……!」

その顔を見られただけでも、連れてきた甲斐があるとレオンは思った。


「お待ちしておりました。ノイエ=レーベン侯爵様、奥方様」

すぐに店員がやってきた。「え?」と驚くジェシカの肩をそっと抱き、レオンは店員に導かれて店舗奥のサロンへと向かった。


ふたりが腰を下ろした頃合いに、店員がテーブルの上にアクセサリーケースを置いた。

深紅のベルベットに包まれた蓋が、ゆっくりと開かれる。


ジェシカが、小さく息を呑むのが聞こえた。

中に収められていたのは、ネックレスだ。

二本の細いアイビーの蔦が絡み合い、輪を描くようなデザインである。その蔦に包み込まれて、青と緑の二粒の宝石が寄り添うように輝いている。

青は、レオンの瞳。

緑は、ジェシカの瞳を思わせる色だ。


「これ……私達の瞳の色?」

「ああ」

気恥ずかしさを覚えつつ、レオンは深くうなずいた。


「アイビーには永遠の愛という意味があるらしい」

できるだけ、何気なく言ったつもりだ。


……だが実のところは、「何気ない」どころの話ではない。

石の選定からデザインの細部に至るまで職人と納得いくまで話し合い、試作品も幾度となく試した。今日を迎えるまでに、ひそかに万全の準備をしてきたのだ。


ジェシカの頬が、赤く染まる。

「すてき……。でも、いつから用意してくれていたの?」

ジェシカが問うと、店員がにこにこしながら口を開いた。

「侯爵様がご自身で石をお選びになりまして。デザインにつきましても細やかなご希望を――」

「それは言わなくていい」

思わず遮ってしまった。……下準備など、本人の見えない所で済ませるべきだとレオンは思う。


けれど、ジェシカは。

「レオンが……! 嬉しいわ」

心の底から嬉しそうにするジェシカを見つめるうちに、気恥ずかしさなどどうでもよくなってきた。


「――着けても良いか?」

「ええ、おねがい」

レオンはネックレスをそっと手に取り、ジェシカの後ろに回った。細い銀の鎖を、首もとに回す。白い肌に、二粒の宝石がきらりと光った。


留め具を留めると、ジェシカが振り向いた。

「……どう?」

花が綻ぶような笑顔だ。

「ああ。よく似合う」

「ありがとう、レオン」


その一言に、ふっと肩の力が抜けた。

「……やっと贈れた」

「え?」

「6年もの間、何もしてやれなかったからな」

「そんなことないわ。あなたは、私にアレクを残してくれたもの」

「それとはまた別の話だ」


あの六年間の埋め合わせなど、できるとは思っていない。失くした時間は、戻らないのだ――。


「だから、これからだ」

「え?」

「これから先は、いくらでも君を喜ばせたい」


幸せそうに目を細めていたジェシカが、ふと何かを思い出したように口を開いた。

「でも、出征前の日にもくれたでしょう? あのネックレスも、今でも宝物よ」

「ああ」

レオンもまた、目を細める。


――ジェシカは今も、あれがただのアクセサリーだと思っている。

時間を巻き戻す力を秘めた古代の魔導具だったことを、ジェシカは知らない。その事実を記した手紙は母に燃やされ、ジェシカの手には渡らなかった。


そう。知らせる必要はない。


そして役目を果たしたあの魔導具は石が砕け、今では何の役にも立たない。それでもジェシカは大切にしてくれている。花嫁道具のチェストの引き出しに丁寧にしまってくれているのを、レオンは知っているのだ。


あの魔導具は、ジェシカを守って役目を終えた。

そして今日贈ったものには、人の運命を変える魔法などない。二人の瞳の色をした宝石と、永遠の愛を象徴する蔦飾り。それだけだ。


――けれど、それが何よりの幸せだった。




お読みいただき、ありがとうございました!

おかげさまでコミカライズもコミックフェスタ総合ランキング4位、少女・女性ランキング2位と好調な滑り出しです(2026/9/10時点)。


バーバラが……。ババーバラが……美魔女マシマシなのに相変わらずえげつないです。バーバラだけでも見に来てほしい(いえ、他のみんなも見てください( ;∀;)! 後悔しません)


原作にもない素敵なシーンも盛りだくさんなので、お付き合いいただけましたら幸いです^^


コミカライズはこちら↓↓↓

https://comic.iowl.jp/titles/254710


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