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【9/5コミカライズ開始】今世はあえての悪嫁です。~義母に奪われた我が子を、愛でるべくして返り咲く  作者: 越智屋ノマ@10/8書籍発売『兄王陛下』/コミカライズ進行中
コミカライズ記念SS

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【コミカライズ記念SS①】夫と息子のラブレター

おかげさまでコミカライズが配信開始となりました。記念SS第一弾です^^

ある晴れた秋の休日。

レオンは自室の文机に向かい、一通の手紙をしたためていた。


『親愛なるジェシカへ

こうしてあなたと夫婦として過ごせる幸せを、私は日々噛みしめている。今朝、食卓でアレクと話していたときのあなたの笑顔が――』


口ではうまく言えないことも、文字だとすんなり伝えられるから不思議なものだ。開け放った窓から吹き込む秋風も心地よく、すらすらと筆が乗った。


――そのとき、突風が窓から吹き込んだ。


「あっ……」

書き上げたばかりでインクを乾かしていた便箋が、ふわりと舞い上がる。


伸ばした手がわずかに届かず、便箋はそのまま窓の外へと飛び出していった。

「……っ!」

便箋は風に弄ばれながら、ひらひらと庭へ落ちていく。

窓から身を乗り出して、レオンは顔をこわばらせた。


――まずい。

誰かに見られる前に回収しなければ。

邪竜の群れを前にしたときですら動じなかった『氷の騎士侯爵』は、俊敏な動きで部屋を飛び出した。


     *


「なんだろう、これ」

庭を散歩していたアレクは、目の前に舞い落ちてきた紙を拾った。

「お手紙……?」

何気なく目を落とす。


『親愛なるジェシカへ

こうしてあなたと夫婦として過ごせる幸せを、私は日々噛みしめている。今朝、食卓でアレクと話していたときのあなたの笑顔が――』


「…………」

5歳のアレクでも分かる。

どう見ても、これは母ジェシカへのラブレターだ。


「お母様に? ってことは、これを書いたのは――」

ふいに、頭上にヌッ……と影が落ちた。

「アレク……」

「うわっ、お父様!」

振り返ると、父レオンが立っていた。

いつも無表情なその美貌が、おそろしいほど強張っている。


「返してくれ」

「これ、お父様が書いたの!?」

「…………ああ」

レオンは耳まで真っ赤だ。

(お父様、すっごく照れてる)

すなおに便せんを返しながら、アレクは首をかしげていた。


「お父様、お手紙だといっぱいお話しするんだね」

「…………っ」

レオンの顔がさらに赤くなった。

「だってお父様、いつもあんまりしゃべらないし」

「……まあ、そうだ」

「お手紙だと、ぜんぜん違うね」

「……話すよりも書くほうが自然にできる」

「そうなの!?」

アレクは、ぱっと顔を輝かせた。


「じゃあ、ぼくも書く!」

「ん?」

「お母様にラブレター!」

「ラブレター……」

その単語に何やら気恥ずかしそうな顔をしながらも、レオンはしばらく考え――やがて頷いた。

「……一緒に書くか」

「うん!」

     *

「わあ……!」

レオンは、アレクを自分の部屋に連れて行った。アレクは文机の引き出しを覗き込んで、目をキラキラさせている。色も柄もさまざまな便箋が、何種類も収められていた。


「すごーい、いっぱいある! お父様、いつもお母様にお手紙を書いてるの?」

「いや。書こうと思って、買ってはいた」

「こんなに?」

やはり気恥ずかしくなって、レオンは口をつぐんだ。


――六年前。

邪竜討伐へ向かう前夜にも、一度だけジェシカへ手紙を書いたことがある。

口では言えなかった想いも、文字にすれば驚くほど素直に溢れ出した。あれ以来、妻への手紙を書く機会はなかった。


だが先日、王都で人気の文具店の前を通りかかったときに思い立ったのだ――また書いてみようと。


「これ、かわいい! シールも貼っていい?」

「ああ。好きなものを使いなさい」

「わーい」

アレクはさっそく椅子に座り、わくわくした顔でペンを握った。

『お母様。いつもありがとう――』

隣からそっと覗けば、幼いながらもしっかりとした文字が並んでいる。ふだんから、勉強もよく頑張っているのだろう。


レオンは密かに誇らしく思いながら、自分も新しい便箋を一枚取り出した。

予定とはずいぶん違ってしまったが――たまには、こんな休日も悪くない。


     *


その夜。

「まあ。二人とも、私にお手紙を?」

ジェシカは目を輝かせた。

「お母様、読んで!」

「ええ」


『お母様。いつもありがとう。この前のピクニック、すごくたのしかったね。また三人でいこうね』

その下には、湖畔で遊ぶ3人の絵。色とりどりのシールも、とてもかわいい。

「ふふ。ありがとう、アレク。宝物にするわ」

「ほんと?」

「もちろん!」

アレクを抱きしめてから、ジェシカはもうひとつの封筒に目を向けた。


「それじゃあ、次はレオンの――」

思わず目を見開いていた。

……封筒が分厚い。一見すると、手紙というより書類のようだ。


「いや…………私のは、今見る必要はない」

ぼそりと呟くレオンの顔が、とても赤い。


「ここで読んだらいけない内容なの?」

「そういうわけではないが」

「じゃあ、今読ませて」

「…………」

封を開け、ジェシカは一枚目に目を通す。

そこに綴られていたのは、日々の中でレオンが見つめていたジェシカの姿だった。


笑顔がまぶしく、愛おしい。何気ない仕草や交わした言葉。そして、今こうして家族三人で過ごせることへの、溢れんばかりの喜びと感謝が綴られていた。


読み進めるうちに、ジェシカの頬も赤く染まる。

「ありがとう、レオン」

そしてジェシカは、ふと思った――6年前の手紙には、何と書いてあったのだろう?

出征前に書いてくれたあの手紙は、ジェシカに届くことはなかった。

何が書いてあったのか以前レオンに尋ねたけれど、レオンは首を振っていた。――「あの手紙は、無事に役目を終えたんだ」と、淡く笑って言っていた。


あの日の手紙は届かなかった。

けれど今は何度でも、レオンの言葉を受け取ることができる。


「それじゃあ、私も二人にお返事を書くわ」

「ほんと!?」

目を輝かせるアレクの隣で、レオンも優しい笑みを浮かべる。二人の手紙を胸に抱き、ジェシカは幸せそうに笑った。


コミカライズが9/5よりコミックフェスタ先行配信となりました。

⇒ https://comic.iowl.jp/titles/254710

1話無料で読めますので、ぜひぜひお越しください^^


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